ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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お約束のお風呂回です♪



第七十四話   オンセン・ウォー!(again)

「Go!AP-Girls!Let's Rock 'n' Roll! 」

 

 

 熊本城公園に築かれた仮設ステージの上で、AP-Girlsがフルパワーで暴れ回っている。

 激しい戦車戦を終えたばかりの少女達の、果して何処にこれ程のパワーが秘められているのか。

 試合終了後に行なっているこのAP-Girlsのミニライブが、厳島流生誕の地である熊本で行われる初のライブであり、厳島の姫君の帰還を待ち侘びていた地元の者達の熱狂は只事ではなかった。

 

 

「凄い…ミニライブでこの盛り上がり……」

 

「さすが厳島流発祥の地ね……」

 

「やはりあの子は正真正銘のプリンセスなのよ……」

 

 

 初戦となった聖グロ戦を皮切りに始まった連戦の中、AP-Girlsのライブは常に大盛況であったがやはりこの熊本の盛り上がり方は、これまでとは一線を画するものであった。

 

 

「それにしてもあれだけハードな試合をこなした後なのに、こんなにステージで暴れられるってあの子達一体どんな体力してんのよ!?」

 

 

 カチューシャがそう言う傍からステージの端から端へ、夏妃が得意の連続バック転20連発を決めて見せ観客からは割れんばかりの拍手が巻き起こっていた。

 そしてステージ前の特等席では大のお気に入りの夏妃の活躍に、まほがハイテンションで拍手をしてしており、アンチョビの眉間に縦皺を入れさせていた。

 

 

「にしずみ……」

 

『あの朴念仁は本当に学習しねぇ……』

 

 

 あまりに相変わらず過ぎるまほに、一同何とも渋い顔でアンチョビがいる事も忘れはしゃいで夏妃に熱い声援を送る彼女の背中を見ていた。

 それぞれが様々な想いで見守るAP-Girlsのステージの盛り上がりは、最高潮に達していた。

 結局そのミニライブはいつも以上に拍手が鳴りやまず、これまでより3曲程多くアンコールに応え彼女達の汗は一層輝いて見えたのだった。

 

 

「Excellent!すっごい盛り上がりだったわねー!」

 

 

 すっかり興奮して顔を紅潮させたケイのテンションは相当に高い。

 

 

「ウム全くだ、熊本での厳島の人気は凄まじいものだな…いや全く大したものだ……」

 

「ちょっと、アンタさっきからどうしたのよ?」

 

 

 ライブ自体は楽しんでいたようだが、それが終わってからは少々ムスッとした顔をしているアンチョビを、カチューシャが胡散臭げに見ている。

 

 

「ん?あぁちょっとな……あの暴れん坊共に少しお灸を据えてやらねばならんのだ」

 

「ヒッ!?」

 

 

 アンチョビがほんの一瞬浮かべた表情にカチューシャはビクッとその小さな身体を震わせ、裏返った声で短く悲鳴を上げた。

 

 

「スマンがちょっと行って来る」

 

 

 それだけ言うと立ち上がったアンチョビは、脇目も振らずステージ裏のAP-Girlsのテント張りの楽屋目指して足早に突き進んで行く。

 

 

「一体どうしましたの?」

 

 

 硬直してしまったカチューシャの様子に、訝しんだダージリンが問い掛けたが反応がない。

 

 

「カチューシャ?どうし──」

 

「あの子の…ドゥーチェ・アンチョビのあんな顔始めて見たわ……」

 

 

 ダージリンが覗き込んだカチューシャの顔は、彼女が度々見せるビビった時の顔だ。

 

 

「Why?どういう事うよ?ちょっと覗きに行ってみる?」

 

「そうね……」

 

 

 野次馬根性丸出しなケイと明らかにケイと同様ながら、それを上手く隠しているつもりで全く隠せていないダージリンに続き、ゾロゾロと野次馬の群れがそれに付いて行く。

 

 

「お前達は一体何を考えているのだぁ!?」

 

「ちょっとぉ、千代美こそ何よ急に~?」

 

 

 現れるなり声を荒げるアンチョビに、ステージで掻いた汗をタオルで拭いながらスポーツドリンクを口にしていたラブは、ポカンとした顔で怒鳴り込んで来た彼女の事を見ていた。

 

 

「何よじゃない!隊長のお前が先頭に立ってあんな事を平気でやるから、AP-Girlsのメンバー達まで危険な事をやるようになったんだろう!?」

 

「だから何の事よ~?訳が解らないわ~」

 

 

 肩を怒らせるアンチョビに、事態が呑み込めずラブは呑気に返す。

 

 

「お前さっきふらふらとLove Gunの砲身の上を歩いてただろうが!隊長であるお前が率先してそんな事をやっててどうするんだ!?」

 

「あぁ何だそんな事~?大丈夫よ、私達日頃からその辺の感覚も鍛えてるんだから~」

 

「やかましい!全員そこに座れ!」

 

「ち、千代美?」

 

 

 問答無用で怒鳴り付けるアンチョビにラブも怖気付く。

 

 

「愛!お前も試合中に走行中の戦車から洗車に飛び移るとは何を考えている!?それに霧恵お前もだ!あんな急斜面飛び降りるなんて言語道断だぁ!」

 

 

 有無を言わせぬドゥーチェ・アンチョビの迫力に、愛と霧恵もビクッとして縮こまった。

 

 

「私達とばっちりよね……?」

 

「あ?あぁ…だよな……」

 

 

 ヒソヒソと言葉を交わす凜々子と夏妃に、アンチョビはキッとした目で牙を剥き鋭い風切り音を立てて指揮用鞭を突き付けた。

 

 

「凜々子!夏妃!聞こえておるわ!貴様達も同罪だぁ!」

 

『ヒィっ!?』

 

 

 眼光鋭く睨まれて、凜々子と夏妃は思わず抱き合い悲鳴を上げた。

 

 

アンツィオ(ウチ)とやった時もお前等ヘリから飛び降りただろ!次から次へとどうしてそう危ない真似ばかりするのだ!?いくらトレーニングしてるからといって怪我でもしたらどうする?全く無茶ばかりして大概にしろよ!?」

 

 

 アンチョビの剣幕に恐れをなしたAP-Girlsはズラっと彼女の前で正座をして、これ以上はない位に小さくなって嵐が過ぎ去るのを待っていた。

 

 

『こわっ……』

 

『Wow!凄い迫力ね!』

 

『あの子あんな顔もするんですのね……』

 

『……』

 

『だからノンナ!何で私のパンツ用意してんのよ!?チビってなんかないわよ!』

 

『ぶっ!』

 

 

 テントの外でヒソヒソと大騒ぎをする野次馬共に向け、アンチョビが鋭い視線と共に鞭を振った。

 

 

「ソコっ!」

 

『ヒエッ!?』

 

 

 覗きに精を出していた野次馬達は、蜘蛛の子散らすように逃げ出した。

 だがしかしこれだけ怒られて尚身の軽いAP-Girlsの少女達は、この後も色々な場面で度々それを発揮してしまうのであった。

 

 

「あれ?どうしたんだお前達……?」

 

 

 逃げた野次馬達と入れ違いでエリカを伴い現れたまほは、アンチョビを前に揃って正座で反省しているAP-Girlsを不思議そうな目で見ている。

 

 

「ん?あぁ西住か…ちょっとな……それよりお前こそどうした?」

 

「あ、いやな、みんな煤塗れの汗塗れだろ?折角だから西住流(ウチ)の道場の温泉でひとっ風呂どうかと思ってな」

 

「道場のお風呂……あぁ、徹甲の湯ね♪」

 

『徹甲の湯ぅ?』

 

「何それ?」

 

 

 アンチョビとまほとラブのやり取りにAP-Girls全員が妙な声を上げた後、凜々子が他のメンバーを代表して短く疑問を口にした。

 

 

「え?ああ、それはね──」

 

 

 その昔、現西住流家元である西住しほが花の女子高生(笑)であった頃、長い休みに帰省した際に道場演習場で砲撃訓練に勤しんでいた時の事、跳弾した一発の徹甲弾が貫いた地面から見事温泉が湧き、以来その経緯から徹甲の湯と呼ばれ関係者に親しまれているのであった。

 

 

「さすが西住流家元…温泉まで戦車で掘り当てるとはやる事がハンパねぇぜ……」

 

「いや、いくらしほママでも狙って出来る事じゃないから!」

 

 

 腕組みして納得したように何度も頷く夏妃に、ラブがすかさず突っ込んでいる。

 

 

「そうか、そういう事なら急いだ方がいいな。オイ、今日の処はこれ位で勘弁しておいてやるがこれからは気を付けるんだぞ!いいな!?」

 

「は~い……」

 

「返事は短く!」

 

「…はい……」

 

「…まぁいい……さ、急げよ」

 

 

 やっと解放されいそいそと立ち上ったAP-Girlsだったが、やはり今時の子らしく慣れぬ長時間の正座で完全に足が痺れたようで珍しくヨタヨタ歩いていた。

 

 

「それでな…済まないんだが安斎、お前も来て欲しいんだが……」

 

「へ?何で私が?」

 

「そのな……お母様が是非にと言ってるんだ」

 

「家元様がぁ!?」

 

「あぁ、それに親戚連中が集まってるだろ?今日はみんな宿舎の方に泊まるんだが是非話がしたいと…何か昼間はあまり話が出来なかったからってさ……厳島の親族の方も、三年前の事で安斎に礼を言いたいらしいんだよ」

 

「え゛……!?」

 

 

 スタンドの一つを埋め尽くしていた、両家親族の事を思い起こしアンチョビは固まった。

 

 

「オ、オイ、やだよそんなの勘弁してくれよ。大体お礼なんて今までに充分言われてるし、そもそも西住の親戚と話すってなんだよぉ!?」

 

「頼むよ一緒に来てくれあんざいぃぃ!私独りじゃあの連中捌き切れないんだよぅ!」

 

「オマエなぁ!」

 

 

 突如グダグダな泣き言を言い出したまほに、堪り兼ねたアンチョビも声が大きくなる。

 

 

「あら?宜しいんじゃなくて?卒業前に親族と顔合わせをしておけば、後々何かと立ち回りも楽なんじゃないのかしら?」

 

「あ!この野次馬いつの間に戻って来やがった!?」

 

 

 気が付けば上品ぶったダージリンがテントの隙間から顔を突っ込み、野次馬根性で目をギラ付かせてこっちを見ており、更にそのダージリンの顔の上下に他の野次馬達が顔を出し、まるでトーテムポールのようになっていた。

 別のテントの隙間からも他の者達が同様に顔を覗かせており、その中にちゃっかり混ざって聞き耳を立てていた絹代を見付けたアンチョビは、目一杯の悪意を込めて大きな声で絹代に向かってダージリンを形にはめる爆弾を放り投げた。

 

 

「オイ絹代!ダージリンが卒業前にお前のご両親に大事な話がしたいそうだぞ!」

 

「おぉ!紅茶殿!遂にその気になって頂けましたか♪」

 

「うぎゃあ────っ!」

 

 

 目を輝かせた絹代の声にダージリンが絶叫して失神しかける。

 

 

「ったくドイツもコイツも……」

 

 

 イラ付くアンチョビを余所に、まほは目が合ったテントの隙間から首を突っ込んでいるみほに対しても、有無を言わせぬ決定事項を伝えるのであった。

 

 

「みほ、お前もだぞ!今夜は実家に来るようお母様から厳命が出ているからな!」

 

「へ……?ふぇ──っ!?何で私までぇ!?」

 

 

 突然の事に思わず絶叫したが、それでその状況から逃げられる訳ではない。

 

 

「そ、そうだ良かったらお前達も来ないか?新しい研修センターのお風呂なら広いから問題ないしな…問題があるとしたら……移動手段ぐらいかなぁ?」

 

 

 それに思い至ったまほが、腕を組んで思案顔になった。

 

 

「そんな事なら簡単よ、ウチの航空戦力総動員すれば何も問題ないわ」

 

「え?いいのか頼んでも?」

 

「ええいいわよ、早速手配しておくからみんな集めておいてよ」

 

 

 かくして凹むアンチョビとみほを余所にスーパースタリオンとオスプレイを全機投入して、スタンドを埋める各校の隊員達の輸送作戦が実行され、西住流道場に到着した者達はまほが言っていた新しい研修センターの規模の大きさに圧倒されていた。

 

 

「広っ!デカっ!」

 

「これが……道場?」

 

「ホテルとかじゃなくて?」

 

「でもホント随分と新しいような……」

 

「ここはさっきも言ったように研修センターなんだよ。講義や会議用のホールとかがあって、最近じゃ戦車道を使った企業の社員研修なんかも受け入れているし、それ以外にも地元の行事なんかにも貸出してるんだ。建て替えてからまだざっと二年位なんだよ」

 

「二年か……前の建物はもっと小さかったわよね」

 

「あ、あぁそうだな……」

 

 

 こんな処でもラブが不在であった時間の長さ突き付けられたまほは、それ以上何も言えなかった。

 

 

「と、とにかく風呂に入ろう、いつまでもこのままじゃ本当に風邪をひいてしまうからな」

 

 

 まほに促されAP-Girlsと彼女達とこの6連戦で戦った6校の主力選手達が、まるで観光ホテル並みの規模を誇る大きな西住流の研修センターへと入って行く。

 

 

「広っ!デカっ!」

 

「これが……お風呂?」

 

「プールとかじゃなくて?」

 

 

 少し前に聞いたような会話がまた交わされている。

 しかしそう言いたくなる程に、新しい研修センターの徹甲の湯は広かったのだ。

 

 

「ふぅ……中々に良いお湯ですわね。やはり大分冷えていたので、全身が解れるようですわ」

 

「それは良かった、存分に温まって行ってくれ」

 

 

 頬をピンクに染め上機嫌なダージリンに答えたまほも、気持ち良さそうに肩を解している。

 

 

「それにしてもこれだけ大きな浴槽に、こうして湯が溢れ続けるんだから凄い湯量ね!」

 

 

 上せぬよう出たり入ったりを繰り返すカチューシャも、滾々と湧き出る湯量の多さに驚いている。

 

 

「うん、お母様が()()()()()時の水柱本当に凄かったそうだ、ここだけじゃなくて実家にパイプラインで送ってもまだ余裕だからな」

 

 

 ラブの厳島家が桁外れ過ぎるのだが、まほとみほの実家である西住家もやはり只事ではなく、改めてラブとまほとみほの三人はお姫様なのだと皆が再認識するのであった。

 

 

「Hey!まほお疲れ!で、どうだった?久しぶりにラブと戦った感想は?」

 

「どうってお前……」

 

 

 背中を流していたケイがやって来て湯に浸かり、形の良いたわわをプカプカさせながら至ってざっくばらんに感想のコメントを求めて来た。

 

 

「そりゃ強かったよ…相変わらずデタラメにな……アイツの強さは口じゃ説明出来ないのは、ケイだって解ってるはずだろうが」

 

 

 まほは少しぶっきらぼうに答えたが、その視線の先の洗い場ではラブが例によって愛に背中を流して貰っている。

 小柄な愛は自身も泡々になりながら、時折その小さな身体に不釣り合いな程良く実ったたわわを、プ二プ二とラブの背中に押し付けながら彼女の身体を清めていた。

 

 

『……』

 

 

 気が付けば温泉内の全ての視線が、ラブの泡々なたわわに集中していた。

 

 

「何よ……?」

 

『いえ、別に……』

 

 

 ラブのトーンの低い声が浴室に響き、皆慌ててラブのたわわから目を逸らした。

 

 

「にしずみ……」

 

「あぁ安斎、今日はランチで無理を言って済まなかったな。でもお蔭で親戚達も喜んでいたよ」

 

 

 まほは依頼していたランチの出店の礼をアンチョビに述べたが、彼女はそれを軽くあしらった。

 

 

「ん、あぁそれは別に大した事じゃないから構わんよ…それよりな……」

 

「何だ?どうした安斎?」

 

 

 アンチョビの声音が先程のラブのようにトーンが低く、それに何か不穏なものを感じたまほは恐る恐るといった感じで話し掛けた。

 

 

「…夏妃は可愛いか……?」

 

「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛────!」

 

 

 地の底から響くようなアンチョビの一言に、自分がまたしてもやらかした事を瞬時に悟ったまほは、頭を抱えて呻き声を上げた。

 

 

『マジで学習して女子力を上げろこのポンコツ……』

 

 

 とことんボンクラなまほに皆一様に疲れた顔をしていた。

 

 

「何を騒いでるのよ~?」

 

 

 身体を流して貰ったラブが愛と共にやって来たが、湯煙の中ノーガードのたわわに全ての視線が集中して釘付けになっている。

 何処か開き直りの境地にでも達したのか、ラブは堂々とたわわを揺らしながら進水した。

 

 

「フン……」

 

 

 湯に浮かぶ特大のたわわ機雷に刺さる視線にラブが鼻を鳴らすと、全員わざとらしく目を逸らした。

 

 

「あ~そのなんだ、6連戦お疲れだったな」

 

 

 どうしてもたわわ機雷に目を奪われてしまうのを誤魔化すように、アンチョビがややぎこちなくラブに労いの言葉を掛けた。

 

 

「え?あぁ、ありがと千代美」

 

 

 やはり超重戦車故に相当肩が凝るらしいラブは、自分の肩を揉みながら時々ツボを押した痛みで顔をしかめつつもそれに答えた。

 

 

「ハードスケジュールにも拘らず、それを乗り切った笠女の体力は恐ろしいモノがあるな……」

 

「少数精鋭といえば聞こえはいいけどさ、たった5両しかいないからまだこんな事も可能だけどね…来年度以降戦力が増えればそうも行かなくなると思うわ……」

 

 

 僅か5両のⅢ号J型のみでこれだけの破壊力を誇るAP-Girlsだが、この先それが増強された時の事を想像した者達は背筋に冷たいものが奔るのを感じた。

 ノーゲームに終わったプラウダの隊長であるカチューシャも含めこの連戦で戦った者達は、誰一人自分達が勝者だと思っている者はいなかった。

 

 

「あ~あ……結局いっこも勝てなかったわぁ~」

 

 

 疲れた顔のラブは、肩凝りに抗うように首を左右に振りながらぼやいている。

 

 

「もういっその事シュトルムティーガーだけの編成にして、超長距離予測射撃に特化したチームにでもしようかしら……?」

 

『うわぁぁぁ────っ!』

 

 

 神妙な顔でラブのぼやきを聞いていた者達は、やけくそ過ぎるその一言で全員その場で転覆した。

 

 

「ゲッホゲッホゲッホ!こ、こここ怖い事言うなぁ!」

 

「そ、そんなの試合になりませんわ!」

 

「Jesus!一方的なジェノサイドじゃない!」

 

「カチューシャ様?さすがに湯船でそれは……」

 

「だからチビってなんかないわよっ!」

 

『ぶっ!』

 

 

 自分に向かって38cmロケット砲弾が雨あられと降り注ぐ地獄絵図がリアルに想像出来た者達は、急浮上して咳き込みながら悲鳴を上げていた。

 

 

「冗談よぉ……」

 

 

 荒い息で肩を上下させる者達にラブは口を尖らす。

 

 

「怖いよラブお姉ちゃん…それ全然笑えない……」

 

 

 まだ来年一年間、ラブと戦わなければならぬみほの語尾は震えていた。

 みほの脳内には整然と並び一斉に超長距離予測射撃を行う5両のシュトルムティーガーと、逃げまどい片っ端から吹き飛ばされる大洗チームの姿が思い浮かんだようであった。

 

 

「いくら私だってそんなつまらない事やらないわよぉ…そりゃあこれから先戦って勝って行く為の準備はしてるけどさ……」

 

 

 ラブのその言葉に、一同もいよいよかと表情が硬くなった。

 

 

「そこまで警戒しなくたって大丈夫よ、いくらなんだってそんな一気に戦力が増える訳じゃないもの。新一年生が一緒に行動出来るようになるまでそれなり時間が掛かるんだから」

 

 

 確かに彼女の言う通りAP-Girlsの特殊過ぎる人材の育成は一朝一夕に行くものではなく、まだまだ彼女の行く先は前途多難といえるだろう。

 

 

「でもこれだけ目立てば受験生も増えるのではなくて?そうすればその中から、それなりの人材も見つかるんじゃないかしら?」

 

 

 ダージリンが希望的観測というヤツを口にするが、AP-Girlsのリーダーであり厳島流の家元であるラブの言う事は何処までもシビアだ。

 

 

「歌って踊って戦車に乗るのよ?しかもカリカリチューンのモンスターマシンによ?それだけの人材がそう簡単に見つかれば苦労ないわよ……大体今いるこの子達だって見付け出すのにどれだけ苦労したと思ってるの?正直この先この子達以上の人材は集まらないとも思ってるもの」

 

 

 ラブは隣でその小柄なボディサイズには不釣り合いなサイズの、ぷるんぷるんなたわわを湯の上にプカプカさせる愛の頭をそっと撫でる。

 その特殊過ぎる存在にダージリンは一瞬だけ眉を顰めたが、それ故の人材確保の困難さがチーム自体の発展性を狭めている事も理解していた。

 

 

「ねぇ……あまり無理をしては駄目よ?」

 

「ありがと、まぁボチボチやるわ…あ~でも肩凝るわぁ……こういう時よ…無重力空間で暮らしたくなるのはさ……」

 

 

 事故の影響で完全には上がらぬ左肩を庇いつつラブがグッと伸びをすると、胸のたわわな柔らかい徹甲弾が一層強調される。

 

 

「…やっぱりそんなに凝るか……」

 

「ウチのメンバーはみんなそうよ……」

 

 

 ラブが隣に座る愛の肩を軽く摘んでやると、顔に似合わぬ色っぽい呻き声と共にその顔をキュッと顰めて、相当凝っている事が伝わって来た。

 

 

「うわっ…本当に全員がそんななのか……?」

 

「そうよ…というか笠女(ウチ)の生徒全員がそうね……」

 

『……』

 

 

 浴室内が静まり返り、カチューシャや杏に典子などライトウェイトな少女達は、揃って全員死にそうな顔をしていた。

 

 

「あ~、そのなんだ、良かったら私達がマッサージしてやろうか?」

 

 

 致死量レベルに重くなった空気を何とかしようと、アンチョビは些かぎこちなくラブに提案したのだが、今までが今までだけに彼女は目一杯警戒した疑いの目を向けて来る。

 

 

「あ!イヤ……他意はないから!いやもう誓ってホント!」

 

 

 わたわたと手を振ってアンチョビが何とかラブを安心させようとするが、それが尚更余計に彼女の不信感を煽っている。

 

 

「ホラ!お前達も!」

 

 

 焦ったアンチョビに促され総出で説得という名のペテンにでも掛けるように、浅知恵をフル回転させて入れ代わり立ち代わりローテーショントークで必死に丸め込もうしており、根負けしたのか諦めたのか面倒そうに手をヒラヒラと振りながらその提案を受け入れた。

 

 

「あ~も~解ったわよ煩いわねぇ、好きになさいよ……」

 

「お?おぉ!そうか、任せてくれ!直ぐに気持ち良くしてやるからな♪」

 

「その言い方がもうね……」

 

「あ……イヤイヤイヤ!」

 

 

 かくしてAP-Girlsのメンバー25名を6校の主力選手達が一斉にマッサージするという、実になんともカオスな図式が出来上がった。

 

 

「う~む、やっぱりお前が一番酷いな…タンケッテの装甲より硬いじゃないか……」

 

 

 アンチョビがラブの肩を揉み始めたが、あまりにもガチガチに凝っていてこれはちょっとやそっとでは解れそうにはない程だった。

 

 

「くうぅぅぅ……」

 

 

 ラブが金魚のように口をパクパクさせるが、それ以上の言葉が続かない。

 彼女の隣では日頃ボクササイズ等で鍛えているエリカが愛のマッサージをしていたが、試合中の事で嫉妬しているのかみほも張り付いてねちっこい手付きで余計な所をマッサージするので、愛の息遣いがかなりおかしな事になっていた。

 周りを見れば他の者達も、マッサージを受けるAP-Girlsのメンバー達が漏らす吐息に段々と目付きがヤバい事になって来ている。

 中でも凜々子の差し金で夏妃を専有して責めていた直下のフィンガーテクは凄まじいらしく、夏妃は既に陥落し彼女が漏らす喘ぎ声で、いともあっさり全員の理性のリミッターが壊れていた。

 

 

「あぁ!やっぱりぃ!だから…あぁん先っちょはダメって……だっ…まほ!?いきなり吸うなん……って、あぁ~んらめぇぇ♡」

 

 

 暴走重戦車と化したまほに対しアンチョビが怒るかと思いきや、彼女もまたまほと一緒にラブに張り付き夢中になって責めていた。

 

 

「ち、千代美までぇ!?あ…や、らめ……ペロペロらめぇぇ♡」

 

 

 今日に限ってはいつも一緒に攻め手に加わるAP-Girlsも、ラブと一緒にケダモノ達の餌食になり、25人のたわわな美少女達はお替りし放題で文字通りしゃぶり尽くされていた。

 

 

「アンタ達ってホント…愛、髪をお願い……」

 

「…はい……」

 

 

 好き放題され結い上げてあった髪もすっかり解れたラブがふらふらと湯から上がると、同様の状態の愛がそれに続き、更にその後をAP-Girlsがゾロゾロと繋がって行った。

 

 

「私達も洗うか……」

 

 

 やる事やるだけやった後の微妙な気まずさの中、まほも支給されたシャンプーセット手に取った。

 だがこの研修センターの洗い場にも同じ厳島ブランドの物が大型ボトルで備え付けられており、これはまほも知らなかったらしく最初は驚いた顔をしていたのだった。

 

 

「まほは知らなかったのね……この間熊本に来た後にしほママからオーダーが入って、ウチのグループと正式に契約して納める事になったのよ」

 

「え?お母様が?」

 

「えぇそうよ、私達戦車道選手って髪が傷み易いでしょ?しほママも自分で使って気に入ってくれて、それで契約してくれたのよ」

 

「そうだったのか……」

 

『さすが厳島……』

 

「こういうのも負けて勝つって言うのかしら……?」

 

「いや…違うと思う……」

 

 

 皆またしても厳島の商魂の逞しさの一端を見た気がしたようだ。

 そして再びの泡々タイム、解かれた深紅の長い髪を愛が洗い流して行く。

 その艶めかしい光景を全員が自分の髪を洗いながらもガン見してしまい、結果として愚かにもシャンプーの泡を目に入れて、どこかで聞いたセリフを喚きつつのた打ち回る事となっていた。

 

 

『目がぁ──!目がぁ──!』

 

「バカじゃないの……?」

 

 

 ラブはシャワーで泡を洗い流してもらいながら、冷めた目で辛辣な事を言う。

 

 

「何ですかこの騒ぎは?」

 

「あれ?しほママ?それに亜梨亜ママに蝶野教官まで……なんで?」

 

 

 きょとんとするラブの前に、三人の美女が小娘には負けぬとばかりに、大人の色気を戦闘濃度で散布しながら浴室へと入って来た。

 湯煙がその色気溢れる肢体を一層引き立て美しく見せており、滾々と湧き出て流れる湯の音がやけに生々しくラブ達の耳に響いていた。




お風呂回まさかの延長戦w

自分で書いといてなんですが、
ノンナのカチューシャの扱いが結構酷いですねww
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