恋愛戦車道初の戦車戦をお届けします。
因みに作者の英語はかなりいい加減です。
※ご指摘頂いた誤字脱字修正致しました。
国道16号線、横須賀市内の
この約15kmのうち一部は他の国道とは少々様相が異なっている。
山坂の多い横須賀はそれ故トンネルの多い街であり、その呪縛は当然国道と言えども逃れる事は出来ず、横浜方面から横須賀中心地に入る北地区には上り下り計16本のトンネルが集中しているのだ。
その中でも
この区間で行われる戦車戦では互いに尻を捕り合い周回したり、逆走や枝道からの奇襲、更には上下車線を隔てる住宅をぶち抜いて攻撃も出来る。
トンネル内に対しては砲撃禁止、逆にトンネル内からの砲撃及びトンネルを抜いてトンネル外への砲撃は可能、但しトンネル内で停止する事も禁止されている。
そしてトンネル内に弾着してしまうと即時失格という変則ルール、だがこれが予想外の展開を生み対戦相手にも観客にも一番人気のステージなのだ。
その国道16号線で行われる戦車戦が通称16号戦なのである。
この変則ルールの16号戦に措いて臨中は圧倒的な勝率を誇っていた。
テレビモニターの中のトンネルから一台のパンターが全力疾走で飛び出してくる。
ラブの乗機Love Gunだ。
コマンダーキューポラから上半身を乗り出し、深紅の髪を靡かせラブが行く。
「綺麗…」
そんな言葉が思わず口を突いて出てしまう、それ位Love Gunを駆るラブは美しかった。
しかしその直後振り返ったラブが、車内から取り出した職員室からでも借りて来たらしい学校名が入った拡声器を使ってまほを挑発するセリフに思わずコケそうになる。
『や~い!まほののろま~!でんでん虫~!悔しかったら追い付いてみろ~♪』
「アイツは子供か…」
呆れて苦笑しつつ見ていると少し遅れてまほのティーガーⅠがトンネルから出て来る。
しかしトップスピードで大きく劣るティーガーⅠでは全く付いて行けない。
ここまでに相当子供じみた挑発をされたのだろう、まほの顔は茹でダコになっている。
「コイツも子供か…」
今度は心底呆れつつ見ているとまほが咽頭マイクで何か指示を出した。
そしてまほがキューポラ内に引っ込むと、ティーガーⅠがドリフト気味に右に回頭しそのまま民家に突っ込んで行く。
どうやらショートカットして反対車線を戻ってくるはずのLove Gunに側面攻撃のトラップを仕掛けるつもりの様だ。
上空からの映像に切り替り暫くすると、まほの狙い通りLove Gunが反対車線をやって来た。
果してこれは作戦成功かと思った瞬間今度はLove Gunが民家に突っ込み、道路と並走する形でまほのティーガーⅠに向かって家々を薙ぎ倒しつつ前進を始める。
両車の間が残り三軒程まで前進した辺りで遂にLove Gunの75㎜が火を噴く。
吹き飛ばされた家屋の瓦礫がティーガーⅠに降り注ぐ。
これに今度はまほも応戦し周辺の家々を粉砕しながら大乱闘が始まった。
「これは怪獣映画か何かか?」
もうそんな感想しか出て来ない馬鹿試合にもやがて終わりが訪れる。
辺りの見通しが随分良くなった辺りでLove Gunが車道に戻り横須賀方面に逃走を開始した。
そしてトンネルに逃げ込むその寸前晒された後部に、88㎜ティーガーⅠ必殺の一撃が放たれこれは勝負ありと思われたその刹那、ふらりと斜めにLove Gunが民家に突っ込み静止した。
哀れ標的を見失った徹甲弾はそのままトンネルに飛び込み内壁に大穴を開ける。
これには思わずコマンダーキューポラから顔を出したまほも頭を抱えて絶叫した。
『しまったぁっ!!』
その絶叫を合図に審判団より告げられる無情なコール。
『黒森峰フラッグ車、トンネル内弾着により失格!よって臨海中学の勝利!』
そのコールと共にLove Gunのコマンダーキューポラが開き、再び拡声器を構え微妙に困った様な笑顔のラブがこう言う。
「
言われたまほも大声で怒鳴り返す。
「あーっ!煩いぞラブ!セコい手使いやがって!」
「も~、そんな怒んないでよ~、後で取って置きの地元の美味しいカレー屋さん連れて行って御馳走してあげるからさ~♪」
この言葉にまほはパッと笑顔を輝かせまた怒鳴り返す。
「ホントか!?ウソ付くなよな!大盛じゃなきゃ許さないぞ!」
「分かってるって~」
ここで切り替わった映像の、特設会場の観客席では中継を見る人達からこの間抜けなやり取りに爆笑が起こっている。
でもそこでふと思った、この中継のカメラ数とこれだけ声を拾う集音マイクは凄いと。
それともう一つこのアホなカレーの王女さまはこの中継映像見たのだろうかと?
そして更にもう一つ…。
「この二人本当に仲がいいんだな……。」
ラブとまほ…遠い親戚…でも小さな頃から行き来があって姉妹同然だったという。
普段は表情に乏しいまほがラブと一緒に居る時は表情が豊かになる。
妹のみほと同様、あるいはそれ以上に心を許せる存在なんだろう。
だからこそ昨日あれ程感情的になってしまったのも仕方の無い事なんだ。
同じ立場なら私だってきっとああなってしまうと思う。
「あ、終わった…ってもうお昼回っちゃってるんだ」
16号戦を見るのに夢中で昼ごはんの事をすっかり忘れていた千代美は、マンションのはす向かいにあるコンビニで何か買って来て済ます事に決めた。
向かった先のコンビニは○と♡と☆のマークの見た事無いお店だった。
「家の辺りには無いお店だなぁ、ご当地のお店かな?」
店内を少し物色してから千代美はサンドイッチとカフェオレとミネラルウォーター、それとコンビニオリジナルのスイーツを買ってマンションに戻る。
そして買って来たサンドイッチをパクつきながら次のDVDを見始めた。
今度は自分が対戦した時の物だが見始めてからある事実に気が付く。
「コレ…当然英子さんも見てるんだ~!」
そう言う傍から画面の中を自分が絶叫しながら駆け抜けて行く。
『うひゃぁ~!!ダメだダメだ!その先のブロック塀を吹き飛ばしてそこに飛び込め~!』
やっぱり映像と音声をしっかりと拾われている。
これを英子さんに見られたと思うと、恥ずかしくて部屋の中をのた打ち回りたくなった。
私とラブの戦いはいつも知略の限りを尽くし、騙し討ちと不意討ちの応酬…と、言えば聞こえはいいが詰まる所はおもちゃ箱を引っ繰り返した様な大乱戦。
つまりは西住の事を何も言えない馬鹿試合を演じていたのだ。
「月刊戦車道だけじゃなくてコレも見て私の事知ってたんだぁ……」
英子さんが帰って来ても恥ずかしくて顔を見られないかもしれない…。
そんな考えに囚われてしまう千代美だった。
しかしその後も何試合か見続けるうちに陽も大分暮れて来た頃。
「あ、夜のごはんどうしよう?」
思えば横須賀に来てからまだちゃんとした夕食は取っていない。
そこまで考えた時ひとつのアイディアが頭に浮かんだ。
そうだ、これだけお世話になったのだからせめてものお返しに夕食を作ろう。
疲れて返ってくる英子さんの為に夕食を作ろう!
車でここに来る時直ぐ近くに大きなスーパーがあるのが見えたから、あそこに行けばきっと色々あるだろう、ならばこうしてはいられない、早速買い物に出発だ!
──そしてそれから暫くしてスーパーからマンションへ帰る道に、スーパーのレジ袋をぶら下げたホクホク顔の千代美の姿があった。
「いや~、これは大収穫だ♪」
実に凄いスーパーだった。
どれもモノが良いのにとにかく安い!特に鮮魚類は地魚が凄かった!
こんな良い物がこんなに安くていいのだろうかと思う程だった。
これなら腕の振るい甲斐がある、これまでいろいろ教えてくれたお母さんに感謝だ!
でも英子さん好き嫌いないかな?喜んで貰えるかな?
「ヨシ!喜んで貰える様精一杯頑張って作ろう!」
そう言うと千代美は英子のマンションに向かう脚を速めるのだった。
年内投稿はこれが最後かな?
明日も投稿出来ればいいけど…。