ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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安定のお風呂回♡でも今回はちょっと変化球w


第九十二話   にゅるんにゅるん

「あ、ヤバい…コレちょっとドキドキするかも……」

 

 

 Love Gunのコマンダーキューポラに収まったエリカは、頬に朱を走らせ熱の籠った瞳で睥睨するように周囲に視線を巡らせていた。

 それはラブの短期留学中のみサプライズで彼女の為にエリカが用意したものでありレプリカにも満たない存在ではあるが、砲塔側面に描かれたハートを貫く徹甲弾のパーソナルマークとLove Gunのパーソナルネームは中学時代憧れぬ者はいなかった存在であり、ある種の崇拝の対象であった。

 例え仮初めの存在であったとしても、憧れであったLove Gunのコマンダーキューポラに自分が収まっているという事実は言葉で簡単に表す事が出来ない興奮を覚えるものらしく、今エリカの心の中は目の前に立ちはだかる全ての者を蹂躙して凌辱したいとかそんな妄想に浸っていた。

 そんなエリカが巡らせた視線の先にいたみほはそのある種の熱病患者の瞳を見て、それが自分と二人きりの時、攻守が入れ替わった時のみに見せるものである事に気付き呻き声を上げた。

 

 

「ふえぇ…エリカさん何で今その目になっているのぉ……?」

 

 

 自分は今間違いなくカリウスのコマンダーキューポラ上にいるにも拘らず、まるでエリカに組み敷かれ今にも制圧されるような錯覚に陥り、身体の芯が火照りその場で溶け落ちそうになっていた。

 まるでこの世で一番強力な快楽に溺れるているかのようなエリカの見せる表情が誰のものであるか思い当ったみほは、再び呻き声を上げて砲塔上に突っ伏した。

 

 

「うえぇ…ソレ相手を潰しに来る時のラブお姉ちゃんの顔だよぅ……」

 

 

 Love Gun搭乗の快楽に酔いしれるエリカとそんな彼女の様子に頭を抱えるみほの傍で、そんな事など一切気にも留めていないラブが、エリカと入れ替わりに乗り込んだティーガーⅡのコマンダーキューポラ上で満足気に砲塔を撫でていた。

 

 

「うふふ♪キング・タイガーにロイヤル・タイガー、巡り巡ってケーニヒス・ティーガーか…うん、やっぱりルックスはパンターに近いわね……う~ん、これで足回りの強度と速力があればね~」

 

「まあ如何せんおデブちゃん(重い)ですから」

 

「だよね~」

 

「いつもみたいな戦闘機動やったら、それこそ一発で足回りバラバラになっちゃいますよ~」

 

「あんな重たい起動輪やら誘導輪やら拾い集めるのなんて考えたくないわ~」

 

「ですよね~」

 

 

 余裕ぶちかましのラブの緩いオーラに中てられすっかり和んでいるティーガーⅡの搭乗員達と、お気楽に笑いながらガールズ戦車トークをラブはのんきに楽しんでいた。

 

 

「や~それにしてもさっきのマウスでの一撃は強烈でしたね~、たいちょ……まほ姉モロに塗料の飛沫浴びちゃってアレは後で大変ですよ~」

 

 

 三年対一、二年生の対決も午前中は三勝三敗の五分になった処で昼休みを迎え、使用する超重戦車をトレードして開始した午後の試合では、初戦から早々にラブがマウスに乗り込み継続のミカに魔女の口付けという新たな名を与えられた予測射撃を行った結果、まほのビットマンがモロに直撃を受け車内に引っ込み損ねたまほが塗料を浴びる結果となった。

 

 

「まほも解ってたはずなのにね~」

 

 

 会敵した際に塗料を浴びたまほの姿にラブも呆気に取られているうちに、ブチ切れたまほに力技で押し切られその試合は星を落とす事となった。

 そして次の試合開始前、今度はラブがエリカのティーガーⅡに興味を示し交代して搭乗する事となったが、憧れのLove Gunに乗り込んだ事でエリカは一種のトランス状態に陥っていた。

 

 

「解るわエリカさんその胸の高まり…こちら側の世界にようこそ……」

 

 

 Love Gunのコマンダーキューポラ上でハァハァするエリカに向かい、ここ数日ラブの指揮の下たっぷりと操縦席でその世界に浸っていた小梅が、少々熱っぽい危ない目付きでエリカに向って呪文のように呟いていたが、小梅以外の者達も同じような目付きで既に全員同じ病に冒されているらしい。

 何やらおかしな雰囲気で始まったその試合は、まるでラブが乗り移ったかのようなエリカが試合開始早々から無双した結果、背後でティーガーⅡに乗ったラブの後押しもあり一、二年連合が勝利し再び勝敗を五分に戻したのだった。

 

 

「なんだったんだアレは?エリカがラブに見えたんだが気のせいか……?」

 

「いや…気のせいじゃないと思う……」

 

「しかしマウスもヤバかったが、ティーガーⅡに乗ったラブが何というかその……」

 

「解るよ…さっきから私もキュンキュンが止まらないんだ……」

 

「あんざい……」

 

 

 ハッとしたまほがアンチョビの顔を見ればトロンとした()()()の表情で見つめられ、もし周りに誰もおらず二人だけであったら、辛抱堪らんまほは間違いなく突撃していただろう。

 恐るべきはラブの色気、戦車に乗っているだけで周りをハァハァさせるのは世界広しと云えど彼女以外他に誰もいないであろう。

 その後も双方譲らず一進一退の攻防を続け陽も傾きかけた頃、試合の方は意外な形で結末を迎える事になるのだった。

 

 

「う~む、一、二年生がこれ程まで粘るとはなぁ……」

 

「そりゃお前、あっちにゃ反則が服着たようなのがいるんだから当然だろう?」

 

「それにしたってだなぁ……いずれにしてもペイント弾が心許ないからもう一度補給しよう」

 

 

 まほは咽頭マイクに手を添え共用無線でエリカを呼び出すと、この日もう何度目になるか解らぬ補給タイムを取る事を通達した。

 

 

『え?何言ってるんですか隊ちょ……まほ姉、さっきの補給でもう弾薬庫はカラッポですよ?』

 

「は?ちょっと待てエリカ、今何と言った?」

 

『聞いてなかったんですか?さっき弾薬庫の前でこれで最後と言ったじゃないですか……』

 

「いやだってオマエ…私はてっきり時間的にもう最後とかそんな意味かと……」

 

『ここまでにどれだけ撃ち合ったと思ってるんですか?全車今積んでる分だけで全部です、弾薬庫はもうカラッポ、ペイント弾の在庫はもうありませんよ?』

 

 

 無線越しのエリカの報告が俄かには信じられず、まほは愕然とした表情でギクシャクと首を回しアンチョビの方へと向き直った。

 

 

「…まさか一日で全弾撃ち尽くすとは思わなかった……」

 

 

 仕方なく手持ちの残弾のみで戦った最終戦は、どうにか三年生が意地を見せギリギリ星一つの差で逃げ切ったが、まあ最後という事でエリカ達が三年に花を持たせたというのが本当の処か。

 

 

「浸水しないよう各部ハッチはしっかり閉めなさい!」

 

 

 丸管材で組まれた足場の上で8名の隊員がゴーグルを付け、各自高圧洗浄機を構え待機している。

 

 

「成る程考えたわね、云わば即席のシャワーゲートって事か……」

 

 

 エリカの指示の下、ペイント弾ですっかり色が変わった戦車達が列をなしてゆっくりと足場の間を通過し、水溶性の塗料を洗い流している。順番待ちをしているLove Gunの車内で外の様子を窺っていたラブは感心したようにそんな感想を口にしていた。

 

 

「最初に使った時は普通に使用したんですけどね、それがどうにも作業効率が悪くて。考えた結果、これが良いだろうという事になって施設課に頼んで足場を組んで貰ったんです」

 

 

 操縦席から振り向いた小梅が、身を乗り出して腕を伸ばしラブに向かってチョコポ♡キーの箱を差し出しながら答えると、ラブも嬉しそうに受け取りながら納得したように頷いた。

 

 

「そっか、じゃあゲートが出来るまでの辛抱ね……処で小梅さん♡」

 

 

 ラブが自分の名を呼ぶ声音に危険なニュアンスが混じっているのを感じた小梅は、もう一度振り向いて砲塔バスケットの隙間から無理矢理顔を出したラブがチョコポ♡キーを銜え期待の籠った目で自分を見ている事に気付き、自分の予感が正しかった事を実感した。

 

 

「ダメ!やりませんよ!もし愛ちゃんに知れたら後が怖いです!」

 

「ちぇ~、でも愛の事なんで知ってるのよ~?」

 

 

 ポ♡キーゲームを拒絶された上に愛の名を出されたラブは不思議そうに首を捻るが、あれだけ大ぴらにやっていながら気付かれていないと思っている思考は、やはり天然と言わざるを得まい。

 

 

『うわぁ……』

 

 

 小梅はただ生温かい目でラブの事を見るしか出来なかった。

 そうこうするうちにLove Gunの洗浄の順番となり、高圧で温水が吹き付けられ蒸気が上がると共にペイント弾の塗料が洗い流されて行く。

 

 

「あ~あ、Love Gunでいられるのも今日でお終いかぁ……」

 

 

 高圧で吹き付けられる水音が響く中、小梅が如何にも残念そうな声音でぼやいている。

 

 

「うふふ♪ごめんね小梅さん、でも私も黒森峰で隊員としてLove Gunに乗れるとは思わなかったもの。本当に感謝してるのよ、ありがとう小梅さん♡」

 

「え…?ラブ先輩いったいどうやって此処に!?」

 

 

 気が付けば長い手足に苦労している様子のラブが、窮屈そうに自分の直ぐ傍にいる事に小梅は仰天して大きく目を見開いて固まった。

 

 

「ナイショ♪ホラ、私パンターには誰より詳しいから」

 

 

 そういう問題ではないと言おうとした小梅だが、驚きのあまり言葉が出ず口をパクパクしている。

 

 

「これは私の感謝の気持ち、ほんのお礼よ♡」

 

「ひゃあ♡ラ、ラブ先輩!?」

 

「うふ♡愛にはナイショね♪」

 

 

 どうやって砲塔バスケットから操縦席まで移動して来たか謎なラブが、小梅の頬に感謝の印と称してバッチリと口紅の後が残るように口付けをした。

 そしてその柔らかい唇の感触と、汗と煤に塗れて尚甘美な彼女の匂いに中てられた小梅は操縦席に座ったまま蕩けてしまい、それを羨ましがった他の搭乗員達も小梅と同様のご褒美を貰って洗車中のLove Gun車内は悶々としたピンクの空気が充満していた。

 

 

「パンツァージャケットはクリーニングに回しますのでそのまま回収させて貰います。仕上がったら後で笠女学園艦の方にお送りしますので……あ、ドゥーチェもそれで宜しいですか?」

 

「あぁ、それで構わないが……」

 

 

 全ての演習を終えた後、既に通い慣れた感のあるスーパーで買い物をして戻った寮の風呂場の脱衣所で、エリカはアンチョビが手伝って脱がせたラブのパンツァージャケットを回収し、軽く畳みながらラブとアンチョビに向かってそう言った。

 

 

「そんな事隊長さんにさせたら悪いわ……」

 

 

 ブラウスもアンチョビに脱がせて貰い、ミニスカートは自分で脱いだラブはインナーのみの姿でまめに働くエリカに少し困った顔をしていた。

 

 

「別に大した事ではないから構いませんよ。それにこれだけ汚れると、さすがに全員委託業者にクリーニングに出す事になってますから」

 

 

 気にしないで下さいといった風にエリカがラブに向かって微笑んだその時、アンチョビがラブのブラのホックを外してしまった為に抑圧から解放された彼女のたわわがぷるんと大きく弾み、不意打ちを喰らったエリカはその瞬間をガン見してしまい大打撃を被っていた。

 

 

「ぐはぁ!」

 

「いやん♡」

 

 

 思わずブラが落ちぬよう両手で胸元を抑えた仕草が、完全に追い撃ちであった。

 

 

「さ、まほ、こっちおいで♪」

 

 

 マウスに搭乗したラブから特大の魔女の口付けを受けた結果、水溶性とはいえ盛大にペイント弾の塗料の飛沫を浴びてしまったまほを、ボディスポンジ片手にラブが手招きしていた。

 

 

「な、なんだよ……?」

 

「なんだよじゃないわよ、洗って上げるって言ってんの。さ、早くこっちいらっしゃい!」

 

「い、いいよ自分でやるから……」

 

 

 そんなまほは腰が引け、顔どころか全身が真っ赤になっている。

 

 

「ダメよ、顔やら髪やら自分じゃ洗いきれないわよ?時間立てば落ち難くなるんだから観念してこっちに来なさいよ、構わないわよね千代美?」

 

 

 アンチョビは即座にドゾっと両手で差し出す仕草を見せ、その目をネタGETと輝かせている。

 

 

「ああああんざいぃぃぃ……!」

 

 

 いともあっさり生け贄の如く差し出されてしまったまほだが、涙目の彼女に対してアンチョビの方はといえば期待に震えてワクテカで生唾ごっくん状態だ。

 

 

「バカねぇ…こんな状態で放っておいたら髪だって傷んじゃうじゃない、まほだって可愛い女の子なんだからちゃんとお手入れしなきゃダメよ?さ、こっち向いて……」

 

 

 ラブは手始めにまほが試合中自分で大雑把に拭いはしたものの、派手な色で迷彩ペインティングを施したような彼女の顔を自前のクレンジングジェルで落し始めた。

 

 

「これでいいと思うわ…流すからね、目を空けちゃダメよ?」

 

「フム……コレ中々良さそうだな、綺麗に落ちるじゃないか」

 

 

 綺麗に洗い流されたまほの顔を覗き込んだアンチョビが頻りに感心している。

 

 

「でしょ?試してみて、ウチ(厳島)の製品で刺激もなくて肌にも優しいのよ?AP-Girlsは日常からメイクが義務付けられてるからこれが手放せないの。使ってみていいようなら後で送ってあげるわ、また例によってモニターって事で使用感レポートしてくれるだけでいいからさ」

 

 

 商魂の逞しい処も見せつつラブは手際よくまほの顔を洗い流すと、いよいよまほの身体を泡立てたボディスポンジで優しく丁寧に洗い始め、パンツァージャケットから染みて身体のあちこちを染めていた塗料が泡と共に流れ落ち始めた。

 

 

「ちょっとこれはもう一度洗わないとダメそうね~」

 

「も、もういいよ!後は自分で──」

 

「ダ~メ、私の砲撃でこうなったんだもの、()()まで私にやらせなさいよ」

 

「ど、どういう意味だよぅ!?」

 

 

 ここまで洗われた段階でラブの指使いにちょっとヤバい事になり始めたまほが抵抗を示したが、そんな彼女のリアクションが逆効果となり微妙にラブの嗜虐心をくすぐってしまったらしく、ラブの瞳に淫靡な光を宿らせてしまうのだった。

 そんなラブがアンチョビにチラリと目を向けてみると、彼女が再び生唾ごっくんしながらギラギラに脂ぎった目でドゾっとラブにGOサインを送っていた。

 

 

「ふふっ♡やっぱりストイックに鍛えて来ただけあってとても引き締まってるわねぇ♪」

 

「え……?ひゃあ!な、なにを!?」

 

 

 ラブがまほの背中にボトルのポンプをプッシュして直接ボディーソープを大量に垂らしたと思うと、その背中にたわわを押し付けにゅるんにゅるんと上下に動き人間ボディスポンジを始めた。

 

 

『う゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛────っ!』

 

 

 そのラブが繰り出した大技に全ての目が釘付けになりどよめきが起きる。

 アンチョビに至っては瞬きすらせず、全てを記憶に焼き付けんと目を血走らせてガン見していた。

 

 

「や…ちょ……ソコはちが…あぁ!だ、ダメ…ん……うぅん♡」

 

 

 ボディソープで泡々にされ全身をにゅるんにゅるんと責められたまほは、身長差のあるラブに背後から腰の辺りに腕を回して抱き締められ爪先立ち状態でカクカクと小刻みに震え、時折崩れ落ちそうになりながら息を荒げて歌わされていた。

 

 

「あら?まほも随分と可愛い声で鳴くじゃない?」

 

 

 キュッと糸のように細くした目でたわわの谷間で虚ろな表情をするまほを見下ろし、ラブは微笑を浮かべているがその表情は正真正銘サキュバスのそれだ。

 

 

「さぁ終わったわ、まほとっても綺麗よ♡エリカさん、お願いしていい?」

 

「え……?あ、ハイっ!」

 

 

 泡々をシャワーで洗い流し、クテっとなったまほの耳元で甘い声と共にほわっと吐息の止めを刺す事も忘れずに行ったラブは、慌てた様子のエリカにまほを託すと今度はアンチョビに目を向けた。

 

 

「ねぇ千代美、お・願・い♡」

 

 

 この上なく淫靡な笑みと共に媚びるような声で右手を差し出すと、ビクッとした後にふらりと寄って来たアンチョビは、傅く侍女の如く恭しい仕草でラブの背中を流し始めた。

 

 

『ヨシ!主導権取った!やっぱり何事も攻勢に出るって大事ね、これなら今日は私が変な事(R-指定)されなくて済むわ!あぁ、今日ほど千代美に背中流して貰うのが気持ち良い日はないわ♪』

 

 

 厳島の絶対の女王の笑みを崩す事なく、ラブは内心ガッツポーズを取っていた。

 これはどうやら毎度毎度お風呂回の度にいいように全身隈なく弄ばれて来た彼女が、それを回避する為に考えに考えた作戦のようであった。

 そしてそれはどうやら成功し、彼女は久しぶりにゆっくりと入浴を楽しむ事が出来たのだった。

 

 

「うぅ…全身つるっつるにされてしまった……」

 

『……』

 

 

 ラブに恥ずかしい処も含め全身万遍無く泡々にされたまほが、脱衣所でがっくりと項垂れ着替えのブラを身に着ける傍で、当のラブも何食わぬ顔でアンチョビの介助を受けながら異次元サイズのブラに異次元サイズのたわわを押し込んでいた。

 

 

「なんか結局毎晩コレやってた気がするわね……」

 

 

 入浴後の食堂には寮で用意してくれた夕食と、アンチョビとエリカとラブの三人で作ったメニューが追加され、直下達が転がして来た麦ジュースの大樽も当然のように鎮座していた。

 そしてエリカの音頭で乾杯をすれば、今宵も飲めや歌えの大騒ぎが始まるのだった。

 

 

「──しかしなぁ、エリカがLove Gunに乗った時只事じゃない暴れようだったがアレは一体……?」

 

 

 お腹もあらかた満たされた頃になれば、ああでもないこうでもないと戦車談義に花が咲く。

 今も今日のお遊び試合についてアレコレ話をしていたが、まほがエリカがLove Gunに搭乗した際に発揮した異常な強さに言及すると、エリカは何を思い出したのか潤んだ熱っぽい瞳で恋バナでもするように滔々と語り始めた。

 

 

「うふふ♡まほ姉はそんな事も解らないんですか?まぁ乗って見れば解りますよ♪」

 

「お、おう…そうか……」

 

 

 エリカの発する色気に気圧されたまほはそう答えるのがやっとだったが、小梅を始めLove Gun搭乗経験者達はエリカの言に揃ってウンウンと頷いていた。

 そしてこれは余談ではあるが、ラブが帰投後元に戻す前にとまほもお試しでLove Gunのコマンダーキューポラに収まってみた処、その高揚感から堪らん事になりそれを目撃した者達が我も我もと列をなし、結局全隊員がLove Gunのコマンダーキューポラで決め顔でポーズを付けて記念撮影をする事態となり、その撮影に丸二日を要する事となったのだった。

 

 

「ゴホン…それはまあ置いといてだ、やっぱお前が超重戦車乗るととんでもない事になるな……」

 

「え~?なにがよ~?」

 

 

 話を変えるようにアンチョビが一つ咳払いをしてそう言うと、ラブは不満気な顔をした。

 

 

「なにがじゃねぇよ…ヤク虎もそうだがな、マウスに乗ったお前を見た瞬間、私は自分で白旗揚げたくなったぞ……使ってるのがペイント弾と解っていても生きた心地がしないんだよ……」

 

 

 思い出した途端にその表情に鬱が入ったアンチョビは声まで陰鬱になっていた。

 

 

「安心なさい、厳島流が実戦でマウスみたいな超重戦車を運用する事はないんだから」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 アンチョビにバケモノ扱いされ少し悲しげな顔をしたラブがそれでも彼女を安心させようとそう言ったものの、やはりマウスでラブが迫って来る恐怖はそうそう打ち消せるるものではなかった。

 

 

「…まあ確かにアレは味方でもちょっと……」

 

「エリカさんまで……」

 

 

 微妙に視線を逸らしたエリカにまで言われたラブはがっくりと肩を落としたが、超重戦車による予測射撃などという恐ろしい光景を目撃した身としてはそう云わざるを得なかった。

 

 

「もういいわ……」

 

 

 涙目でいじけかけたラブはギターケースを開き愛用のギターをヤケクソのように掻き鳴らし始め、なし崩しの独演会へと突入して行った。

 練習試合からここまでほぼラブを独占していた黒森峰の隊員達も、それも今日で終わりという事が解っているのでハイテンションでラブに続いて盛り上がっている。

 そしてラブを構成する要素の半分と言っても過言ではない音楽が、そうやって騒いでいるうちに彼女の機嫌を直していた。

 

 

「さすがに疲れたわ……ねぇ、アンタ達試合のたんびに毎回こんな騒ぎやってるワケ?」

 

「い、いや…さすがに普段はこんな毎日はやらないよ、ラブがいるから特別だよ……」

 

 

 宴会の片付けも終え部屋に戻った処でギターケースを自分のベッドの脇に置いたラブが、ベッドに腰を下ろしながら何の気なしに聞けばまほが少し恥ずかしそうに答えた。

 何だかんだでラブの短期留学に一番はしゃいでいたのはまほだろう。

 そういう意味ではエリカの目論見は成功であり、彼女も満足げに微笑んでいた。

 

 

「あぁそうだ、夕方笠女学園艦から荷物が届いていたそうですよ」

 

「え?」

 

「ほら、これです」

 

 

 微笑んだ後に一息吐いたエリカが、ラブ宛てに彼女の母艦から届いていた荷物を指差した。

 その示す先を見れば壁のフックにガーメントケースが下げられており、何も心当たりがないラブは不思議そうに首を捻っている。

 

 

「なんだろ……?」

 

 

 壁際に寄ったラブは、壁に掛けたままガーメントケースのファスナーを開き中を見た。

 

 

「げ…これは……」

 

「なんだどうした?」

 

 

 ガーメントケースの中を見て固まったラブの傍へ、好奇心に駆られ皆集まって来た。

 

 

「制服……ですか?」

 

 

 今までに一度も見た事がないデザインのその服に、エリカは確認するように聞いてみた。

 

 

「あれ?これって……」

 

「たいちょ……まほ姉知ってるんですか?」

 

「え?あ、あぁ…多分……」

 

 

 よく解らない状況に思わず隊長と言い掛けまほ姉と訂正したエリカに、答え掛けたまほも今ひとつ自信がないのかどうにも歯切れが悪い。

 

 

「これ…ウチの、厳島流の制服なのよ……」

 

『厳島流の!?』

 

 

 古い記憶に思い当ったらしいまほ以外の者達が、ラブの答えに目を丸くする。

 答えながら彼女がガーメントケースから取り出した制服は、デザイン的には独逸戦車隊の軍服に似た物だがその色は厳島のイメージカラーであるマリンブルーより少し落ち着いた青みの強い青灰色で、右肩から胸部に垂らされる銀糸で編まれた飾緒とその先端に下げられた石筆が目を惹いた。

 

 

「しかもこれ第二種礼装じゃないのよ、なんでこんな物が……」

 

 

 ラブが呆然とする前で開いたガーメントケースから、一通のメッセージカードが舞い落ちる。

 

 

「あら、何かしら……?」

 

 

 拾い上げたメッセージカードを見たラブは、カードを取り落とすとその場で頭を抱えてしまう。

 

 

「どうしたラブ…?えっと……」

 

「…どうぞ……」

 

 

 ラブを気遣いつつもメッセージカードを拾い上げたアンチョビがどうしたものかと迷っていると、ラブは彼女の考えを見透かしたように顔も上げずに短く言った。

 

 

「そ、そうか?ええと…何々、明日の家元会議にはこれを着用して出席する事…亜梨亜……」

 

 

 目の前の厳島の制服とメッセージカードを交互に見比べ、アンチョビは言葉に詰まってしまった。

 

 

「う~ん、学校の制服でいいかと思ったらこう来たかぁ……」

 

「あ、こちらにもまだ何かありますね……」

 

 

 気乗りしない声のラブに向けてエリカがその下に置かれた厳島ブランドの手提げ袋を指差すと、中身は想像が付いているらしく目でどうぞと返して来た。

 

 

「ショルダーバッグですね…女性自衛官、蝶野教官達も使われてるのに似てますけど……その…何と言うか凄く高そうな気が……」

 

 

 手に取ったバッグの吸い付くようにしっとりとしたレザーの感触と、華美ではないが細部までこだわった細工と設えに相当な逸品である事はまだ高校生であるエリカにもよく解る品であった。

 

 

「ふえぇ…こんなの私じゃ履けないよぉ……」

 

「みほ!?」

 

 

 バッグを手に呆然としていたエリカの足元で、同じ袋から箱を取り出しその中身を手に泣き言を口にしたみほの声にハッとさせられた。

 

 

「そりゃ私だってモデル経験もあるし夜会なんかでも履く事があるから余裕でその程度履けるわよ?でも家元会議なんか出たらただでさえ目立つのにこれ以上嵩上げてどうすんのよ~?」

 

 

 みほの手の中でバッグ同様美しい光沢を放つ15㎝のピンヒールを見たラブは、心底面倒な事になったといった風に盛大に溜め息を吐いた。

 

 

「あんな物を履いて歩けるものなのか……?」

 

「……」

 

「じょ…女子力を磨きます……」

 

 

 唖然として漏らした言葉にアンチョビから返って来た沈黙に、焦ったまほは慌てて力なく答えたが自分にはとてもあんなヒールを履きこなす自信はなかった。

 

 

「なぁラブ、さっき第二種礼装って言ってたけど……」

 

「あるわよ、第一種も……」

 

 

 質問し掛けたアンチョビに、皆まで言わせずラブは素っ気なく答えた。

 

 

「基本的に二種と一緒だけど剣帶やら短剣、場合によってはサーベル仕立ての軍刀なんかも身に着けるから煩わしいばっかりでホント面倒なのよ……」

 

「あ…でも帽子は略帽なんですね……スカートは……ワォ♪ミニのタイト♡」

 

 

 厳島の制服を物珍しげに検分していたエリカは、そのラブが身に着けたらお色気全開だろう事は間違いないデザインに興奮気味だ。

 

 

「その…ラブ……」

 

「なによ?」

 

 

 その如何にも言い難そうなアンチョビのもの言いに、何が言いたいか透けて見えているので自然とラブの返事も棘のある声音になっている。

 

 

「いや……だから──」

 

「お願いだからその制服を着て見せてくれよぅ!」

 

 

 アンチョビがお願いし掛けた事を辛抱堪らなくなったまほが被せるように叫び、タイミングを外されたアンチョビはその場に倒れ込んでいた。

 

 

「にしずみオマエなぁっ!」

 

「あ…いや、その……」

 

 

 床に転がった状態で指を突き付けアンチョビはまほを怒鳴り付ける。

 しかしその傍でそれを聞いていたエリカとみほも、興奮気味に目をギラギラと輝かせワクテカでラブに期待の視線を送っていた。

 

 

「…解ったわよ……千代美、手伝って……」

 

「あ…おう、任せろ!」

 

 

 力なく言ったラブにアンチョビは鼻息荒く答え、いそいそとラブの着替えの準備を始めた。

 過給機付き内燃機のブローオフバルブのような鼻息で被り付くまほとエリカとみほの前で、アンチョビの介助でラブの生着替えショーが始まり、三匹のケダモノはいつ鼻血を吹いてもおかしくない。

 

 

『お゛ぉ゛ぉ゛~!』

 

 

 インナーのみとなったラブがパンストにスラリと長い脚を通したが、そのパンストはそれがこだわりなのかバックシームのある物で、そのラインだけでケダモノ達は既にお腹一杯だ。

 

 

「な、何とあざとい……」

 

「美を極限まで追求した存在が厳島なんでしょうか……?」

 

「ふえぇ…大人過ぎるよぅ……」

 

「……」

 

 

 下らない事で騒ぎ続けるケダモノ達を余所に、アイボリーのブラウスに続いて上着と同色のミニを履くと、その全体的にタイトなデザインに一層メリハリの効いたボディラインが強調され、あまりにも見事な着衣エロに手伝うアンチョビも興奮を隠せない。

 

 

「ネ、ネクタイはどうする?」

 

「それ位は自分で出来るわ……」

 

「そ、そうか……」

 

 

 鏡の前でラブがネクタイを締める後姿を、四匹のケダモノが食い入るように見つめている。

 着替えの為に髪をアップに纏めているのでブラウス越しに見える黒いブラのラインが艶めかしく、室内にはそれでまた欲情したケダモノ達が生唾を飲み込む音と、ラブがネクタイを結ぶ衣擦れの音だけが聴こえていたが、今の状態のケダモノ達はラブが欠伸をしただけでも昇天しそうだ。

 

 

「…千代美お願い……」

 

「あ……おうっ!」

 

 

 呆けていたアンチョビだったが上着を手にしたラブに呼ばれ我に返ると、椅子に座ったラブの背後に周り制服の上着の着付けを始めた。

 

 

「そういえば…何でいつもこういう役は安斎なんだろう……?」

 

「…まほ姉も髪を伸ばしてみるといいかもしれませんよ……?」

 

「ん…?それは一体……?」

 

「……」

 

 

 不意にまほが実に素朴な疑問を口にしたが、エリカも敢えて女子力という言葉は使わず別の表現で答えてみたが、やはりそれでは今ひとつまほのは伝わらなかったようだ。

 そんなやり取りの最中にもアンチョビは着せた上着が着崩れていないか確認し、飾緒を整え纏めていた髪を解きポニーに結い直すと、心得ているように略棒を少し斜に構えて被らせた。

 

 

「よし…出来たぞラブ……」

 

「ありがと千代美……」

 

 

 目を閉じていたラブにアンチョビがそっと声を掛けると、彼女も目を閉じたままそれに応じた。

 そして座ったまま15㎝のピンヒールに足を入れると、何処も当らないか確認した後にスッと軽い身のこなしで立ち上った。

 

 

『おぉ……♡』

 

 

 四人の目の前にそのエロ過ぎなボディラインがモロに出る制服を一分の隙もなく着こなした女性将校にしか見えないラブが立つと、全員思わず感嘆の声を漏らしその場で崇めるように平伏した。

 

 

「ラ、ラブ…お願いだから写真を撮らせて貰えないだろうか……?」

 

「…構わないわ……」

 

「おぉ♪ありがとう!」

 

 

 息も絶え絶えな感じでアンチョビに迫られラブも平静を保ったように答えたが、目が血走り鬼気迫る雰囲気に内心怖くて彼女も断れなかったようだ。

 そしてお許しが出た事にアンチョビが歓喜すると共に、四人は一斉に携帯を取り出し時折ラブにポーズを取らせながら撮影を続けて行ったが、たわわに突き上げられ揺れる飾緒の先に下がった石筆やストッキングのバックシームにムラムラ来て、いよいよ辛抱堪らん状況になりつつあった。

 

 

「ハァ…ハァ……」

 

「ちょっと千代美、アンタ大丈夫……?」

 

 

 膝に手を突き前屈みで呼吸を整えていたアンチョビの顔を、同じく屈んだラブが覗き込む。

 

 

「……!」

 

「ねぇ?」

 

「ちょ、ちょっと外の空気を吸って来る!」

 

「わ、私も!」

 

 

 鼻を押え内股でキュンキュン状態のアンチョビが部屋を飛び出すと、それを追って即まほも部屋を飛び出してアンチョビと同じような姿勢で走って行った。

 

 

「わ、私ちょっと仕事を片付けて来ますね……」

 

「わ、私も手伝うわエリカさん……」

 

 

 不自然極まりない喋り口調のエリカに続き、セリフ棒読みなみほも連れだって部屋を後にした。

 

 

「…アイツら……」

 

 

 黒森峰短期留学最終夜はまだまだ先が長いようだ……。

 

 

 




やりたい盛りのケダモノに囲まれて、
果してラブは無事に最後の夜を過ごす事が出来るのか……w
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