ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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明けましておめでとうございます。

新年初投稿になります。


第十三話   せめてもの気持ち

 千代美が夕食の下拵えを終え一息ついた八時頃に英子が仕事を終え帰宅した。

 

 

「ただいま~、遅くなってごめんね~って、なに?とってもいい匂い」

 

「あ、お帰りなさい英子さん」

 

「え~?なになに?夕飯作ってくれたの?そんな気を遣わなくていいのに~」

 

「これだけお世話になって少しでも恩返ししたくって…」

 

「もう、気にしなくていいのに、でもとっても嬉しいわ」

 

「良かった…それじゃ座って待ってて下さい直ぐに出来ますから」

 

 

 そう言うと千代美は再び千代美はキッチンに立ち下拵え済みの品々を仕上げに掛かる。

 

 

「ウソ!?これ全部千代美ちゃんが?」

 

「はい、お口に合えばいいんですが」

 

「凄い!凄過ぎるわ千代美ちゃん!」

 

 

 並ぶ料理に感嘆の声を上げる英子、そのテーブルに並んだ品々とは?

 

 

「えっと、カワハギの煮付けにじゃがバタ炒めにほうれん草の胡麻和え…こっちは叩きゴボウのきんぴらに根菜スープまでってなに?この至れり尽くせり……ねえ?千代美ちゃん、千代美ちゃんの事お嫁に貰えないかお母様にお願いしてもいい?」

 

「え、英子さん一体何言ってんですか~!?」

 

「とにかく頂いていい?もう我慢出来ないわ」

 

 

 思わず吹き出しながら千代美も答える。

 

 

「ぷっ、はい、どうぞ♪」

 

 

 そこから英子は旺盛な食欲を見せ、瞬く間に出した料理をたいらげて行った。

 それを見た千代美も頑張って作った甲斐があったと笑顔になる。

 

 

「ふぅ~!もう食べられない~!こんなに美味しい手料理って何時以来かしら~?」

 

 

 そう言うなりそのまま英子は後ろに倒れ込む。

 千代美は苦笑しつつお茶を入れながらお粗末様でしたと言った。

 どうにか起き上がった英子は真剣な顔で千代美に言う。

 

 

「いやもうマジな話私の腕じゃ千代美ちゃんの脚元にも及ばないわ。今度亜美に会ったら自慢してやろ、アイツ絶対悔しがるわ~♪」

 

「も~、止めて下さいよ~」

 

 

 二人してひとしきり笑った後、英子は真顔に戻り千代美に今日の事を話し始める。

 千代美も姿勢を但し話を聞く態勢を取った。

 

 

「ええとね、まず今日の夕方残っていた砲弾の取り出しがやっと終了したの。何しろ想像以上に弾薬架の歪みが酷くて少しずつ矯正しながらの摘出作業だったらしいわ。陸自の責任者の方曰く、爆弾付きの知恵の輪解いてるみたいだったって言ってたから」

 

「そうでしたか……」

 

「今日は残念ながら日も傾いて作業し辛くなったから現場検証は明日からになるわ、でもこれでやっと私達も前に進めるわ」

 

 

 そう言うと英子は左の掌に右の拳をパチンと叩き付ける。

 だがその後の話は若干声のトーンが下がっていた。

 

 

「それとね、恋さんの事だけど帰って来る前病院に確認したけれど、未だ意識は回復していないの。恋さんの意識が回復して証言が得られればいいけど今は待つしかないわね」

 

 

 そこまで話した処で重い空気になるのを避ける様に、千代美に今日は食事の支度以外何をして過ごしたか訪ねて来た。

 千代美もお昼を買いに行ったコンビニが自分の地元に無い店である事、夕食の買い物に行ったスーパーの品質と品揃えと価格が素晴らしかった事を伝えた。

 それと例のDVDを見た事も…。

 

 

「あ~、アレ見たんだ~」

 

「はい…それであの、英子さんも私の試合……」

 

「見たわ♪」

 

 

 もう恥ずかしくて穴があったら入りたい心境だ。

 

 

「でも千代美ちゃんと恋さんの試合が一番内容が濃くて面白いわ、あの西住の娘がおちょくられるのも傑作だけどね~♪」

 

 

 そう言うと英子さんはカラカラと笑い声を上げる。

 

 

「いや、でもね、真面目な話あなた達二人、よくもまああれだけ次から次へと作戦を思い付くモノだと思うわ。正直私が現役時代でもあれ程の事が出来る子は自分も含めて居なかったわよ、知波単時代にこんな隊員が欲しかったわ~♪」

 

「いつもテンパってドタバタやってるだけです……」

 

「謙遜、謙遜、あの臨機応変ぶりは大したモノよ、自信を持っていいわ。」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「でも16号戦って面白いでしょ?」

 

「はい、ただあのトンネルルールが本当に厄介でいつもそれでやられます。行進間射撃が基本の砲撃戦になるのに迂闊に撃つと即失格になりますから」

 

「まああのトンネルトラップが臨中のお家芸だからねぇ」

 

「頭で解ってても引っ掛かっちゃうんです」

 

「それでも懲りずに挑んで来るんだから皆どんだけ16号戦好きなのよ?」

 

「ですね」

 

 

 二人顔を見合わせ思わず笑っていた処に英子さんの携帯の着信音が鳴り響いた。

 

 

「お、噂をすれば亜美からよ、早速千代美ちゃんの手料理自慢してやろう」

 

 

 そんな事を言いながら英子さんは電話に出た。

 

 

「ハイ、お疲れ亜美。ええ、こちらはやっと終わったわ。これで明日から現場検証に入れる。

え?何よそれ!?そこまでヤバいシロモノって事?明日ね?分かった待ってる」

 

 

 そこまで話した処で英子さんは私を見てニヤっと笑うと付け加える。

 

 

「それとねぇ、今夜の夕食は超美味しい千代美ちゃんの手料理御馳走になっちゃったぁ♪」

 

 

 そう言いながら私に向かってVサインを出す姿を見て溜め息を吐いたその瞬間。

 

 

「うわっ!」

 

 

 驚いた英子さんが携帯を落っことした。

 床に落ちた携帯の中で亜美さんが何か喚き散らしているのが聴こえる。

 

 

『ちょ◆☆∀◎※@!!きいД●Иш*Й!!!千代美さん!千代美さん!?』

 

 

 私が戸惑っていると英子さんが携帯を指さすので恐る恐る出てみると…。

 

 

「あの……」

 

『千代美さん!?()()だけ!?()()だけなの?私は!?私はまた明日横須賀行くんだけど!』

 

 

 再び盛大に溜め息を吐いていると英子さんはヤレヤレのポーズをしている。

 

 

「分かりました、明日何か作ってお待ちしています…」

 

『きゃ~っ♪これで私も更に頑張れるわ!それじゃ明日ね!』

 

「……切れちゃいましたけど…」

 

 

 それだけ言うと切られてしまった携帯を英子さんに渡す。

 

 

「あの馬鹿は何しに来る気なのよ…まあ仕方ないか。と、いう訳で明日の夜もお願い!」

 

 

 そう言うと英子さんは私に向かって手を合わせてお願いして来る。

 私ももう苦笑してそれに応じるしかなかった。

 

 

「はい、分かりました…それでその、私からもお願いがあるのですが」

 

「何かしら?」

 

「Love Gunを一目だけでも見る事は出来ないでしょうか?もう残弾の取り出しは終わったんですよね?例え遠くからでもいいのでお願いします!」

 

「う~ん……分かったわ、その代り少し早起きしてもらうけどそれでもいい?」

 

「ハイ!宜しくお願いします!」

 

 

 こうして明日の予定が決まりその日の夜は更けて行くのであった。

 

 

 




結局年を跨いでしまった中学編もあと少しで終われるともいます…終わるよな?

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