ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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今回は鈴鹿が酷い目に遭いますが、えっちと言うか下品かもしれませんw


第十四話   鈴鹿の耐久レース

「一体何があったのよ……?」

 

 

 目の前のソファークッションに腰を下ろした愛に困った顔の鈴鹿が声を掛けたが、その瞳一杯に涙を溜めた愛の表情は泣いているような笑っているような複雑な表情で、その顔から今の彼女の感情を読み取る事は鈴鹿にも出来なかった。

 ラブの退院を受けて帰国するルシアの見送りと、()()()()()()()後に艦上の空港区画から仲間達と共に寮に戻った鈴鹿だったが、制服からラフな部屋着に着替え明日からの新学期に備え寛いでいた処に思いがけぬ訪問者である愛を迎えていた。

 しかし一緒に寮に戻った後、ラブを風呂に入れていたはずの愛が何故か鈴鹿の部屋に来ているのは、一体何があったというのだろうか。

 見れば微かに上気した頬とバレッタでアップに纏めた髪が如何にも湯上りですといった風情を醸し出していたが、その雰囲気はどこか疲れ切った印象が強かった。

 ソファークッションの上で膝を抱えて固まっている愛に困り果てた鈴鹿が、どうしたものかと途方にくれ始めた頃になって漸く愛がその重い口を開いた。

 

 

「……泊めて」

 

「は?」

 

 

 口を開いてくれたはいいが最初のその呟きの意味が理解出来ず、思わず聞き返した鈴鹿であったが、愛から返って来る言葉はどれも要領を得ないものであった。

 だが鈴鹿はそこで終わりにする事なく愛の隣に腰を下ろすと、じっくりと時間を掛けて優しく()()して行くのだった。

 

 

「さ、慌てないでいいから、何があったのか私にも分かるように聞かせてくれる?」

 

「…うん……」

 

 

 チーム一のクールビューティー、黒魔女の鈴鹿がさり気なく肩を抱き寄せてやると、それだけで少し落ち着いたらしい愛はポツポツとこの一時間程の間に何があったのか語り始めた。

 

 

 

 

 

「う~、お風呂にず~っと入れないってやっぱ精神的にへこむわねぇ…ま、私の場合三年前に散々経験してるんだけどさ……」

 

 

 普段はポニーテールにして尚腰まで届き、緩いウェーブを描く美しい真紅の長い髪が今は入浴の為に高く結い上げられ、思わず生唾を飲み込む程美しい彼女のうなじが露になっている。

 そしてそのうなじに掛かる後れ毛と流れ落ちるボディーソープの泡は、見る者の理性をいともたやすく吹き飛ばす破壊力を備えていた。

 たっぷりと泡立てたボディーソープをデコレートしたスポンジでラブの背中を流す愛は、そのヴァイオリンの名器を想わせる艶かしい背中に抱き付きそうになる自分を抑えるのに必死だった。

 互いに一糸纏わぬ姿で泡に塗れ、もし今彼女の背中に自身のたわわを重ねれば快楽という名の淵に溺れる事は容易かったがラブがまだ()()する事は許されておらず、更にルシアから別れ際にそれに関して念押しされているので何としても堪えねばならなかった。

 しかしそれでも徐々に意識がボディーソープの泡と共に蕩けて行き、ラブの背中を流しているはずの手の動きが怪しいものへと変わり始めていた。

 

 

「…あい……愛?ねぇ、ちょっと…ソコはもう自分で洗えるから……」

 

 

 余計な事をせぬよう意識を集中していたはずがいつの間にかぼ~っとしていた愛は、気が付けばあれ程やってはならぬと自分に言い聞かせていたにも拘らず、ラブの背中にその身長からしたら反則的なサイズのプルンプルンなたわわを押し付けて、熱心に身体を上下させ人間ボディスポンジをしながらその手はラブのたわわの南半球を洗うという荒業に出ていたのだ。

 

 

「……!?ご、ごめんなさい!」

 

「う、うん…大丈夫よ……」

 

 

 慌ててラブの背中から離れた愛であったが、胸の鼓動の高まりと無意識ながら人間ボディスポンジで刺激してしまった事で、たわわの先っちょが硬くなっているのを自覚していた。

 

 

「髪…解くね……」

 

「えぇ…お願いするわ……」

 

 

 一度意識してしまった途端動きがギクシャクしたものになり、結果互いに無用なボディタッチを繰り返しては色っぽい声を上げるという悪循環に陥っている。

 ただ髪を洗っているだけなのにラブは毛先まで敏感になり感じてしまうのか、時折身悶えながら息を荒げてハァハァし始めていた。

 もしこの光景を動画に撮っていたとしたら、古い馴染みのケダモノ達はご飯三杯はお替り確実な上に、例え悪魔に魂を売ってでも手に入れようとするだろう。

 

 

「あ…ソコ……」

 

「えっ!?」

 

「ご、ごめんそうじゃないの…さっきからソコ痒かったのよ……」

 

「あぁ……」

 

 

 髪を洗って貰っていたラブが思わず漏らした言葉に愛も過剰反応してしまい、こうなるともう二人揃って泥沼であり何をやっても裏目に出るようなっていた。

 

 

「あ、愛…私もう……」

 

「ダメよ…ルシア先生に言われたばかりじゃない……」

 

「だけど……」

 

 

 フィルムで保護されて見えない右目の分まで左目をうるうるさせたラブに、上目遣いで見つめられた愛は目を合わせたらお終いとばかりに慌てて目を逸らす。

 

 

「さ、さあ流すから前を向いて目を瞑って……」

 

「……」

 

 

 まだ何か言いたげなラブであったが、愛がシャワーの温度を確かめる姿にそれ以上の事は諦めたのか前を向くと切なげに肩を落としていた。

 

 

「終わったわ…少しだけ湯船で温まっててくれる?その間に私も髪を洗ってしまうから……」

 

 

 ラブの髪をコンディショナーで仕上げて再び結い上げた愛は、やはり視線を逸らしたままバスタブを指差した後、自分の髪を洗う為に結い上げた髪を解き始めた。

 まさかここまでの事態になるとは予想していなかった愛は、一刻も早くこの悪夢のような禁欲地獄を終わらせるべく荒っぽい手付きで自分の髪を洗っていた。

 だがこれはまだ始まりに過ぎず、解禁日までの二週間、二人はウザがるAP-Girlsのメンバー全員を巻き込みアホの子全開な愁嘆場を演じ続けるのであった。

 そして大急ぎで自分が髪を洗う間だけラブを湯に浸からせた愛は、無言を貫き湯上りのラブの身支度を終えると、自分の髪は碌々乾かさずに部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

「…それで部屋を飛び出して来たと……」

 

「…うん……」

 

「…それで暫く私の部屋に泊めて欲しいと……」

 

「…うん……」

 

 

 事情を聞いた鈴鹿は脱力すると共に何とも云えない疲労感を感じ、目の前でこの世の終わりのような顔で打ちひしがれている愛に困り果てた顔をしていた。

 

 

『なんて顔してんのよこの子はもぅ……』

 

 

 あまりの馬鹿馬鹿しさに突っ込む言葉も見付からず部屋から追い出したい衝動に駆られかけもしたが、濡れ髪を結い上げただけの愛をそのままにして風邪でもひかれると尚厄介な事になるので、鈴鹿は艶やかな黒髪をわしゃわしゃとした後に長い溜め息を付いた。

 

 

「全くめんどくさい……とにかく髪を乾かしなさい、そのままじゃ風邪ひくわよ?」

 

 

 ドレッサーを指差した鈴鹿に促された愛は、項垂れたままノロノロと鏡の前に座ると緩慢な手付きで髪を解きドライヤーで温風を当て始めた。

 

 

「ねぇ愛、私はラブ姉の様子を見に行って来るから鍵を貸して頂戴」

 

 

 髪を解き生乾きの状態で振り向いた愛はその生気のない顔と相まってまるで落ち武者のようで、ポケットを弄り取り出して放り投げたキーホルダーは力なく二人の間にポトリと落ちた。

 

 

「大丈夫かコイツ……それじゃあちょっと行って来るからちゃんと髪を乾かすのよ?」

 

 

 返事はないがどうにかドライヤーは使えているのを見た鈴鹿は、部屋を出てラブの下へ向かった。

 

 

「他の連中には後にするか…迂闊に話をすると凜々子辺りは真っ先に逃げそうだし……」

 

 

 ラブと愛の部屋へと向かう途中、鈴鹿は如何にして自分に掛かる火の粉を最小限に止めるか手立てを考えているが、被る被害をゼロで済ませる事が出来ないのは解かっていた。

 

 

「ラブ姉、いるんでしょ……?」

 

 

 インターホンで呼び掛けてノックもしたがラブからの返事はなく、鈴鹿は仕方なしに愛から預かった鍵を使い恐る恐る部屋に入っていった。

 

 

「入るわよ……ラブ姉?」

 

 

 照明こそ灯っていないが日が傾くまではまだ少し間があり、レースのカーテン越しの陽光で室内はまだ明るかったが最初に覗いたリビングにラブの姿は見えなかった。

 

 

「ラブ姉……?」

 

 

 そのままリビングに足を踏み入れた鈴鹿はキョロキョロと室内を見回して、リビングから繋がる二人の寝室のドアが開いているのに気付きそちらに歩を進めた。

 

 

「この部屋に入るのはなんか気が引けるなぁ……ねぇラブね…あぅ……燃え尽きてる……」

 

 

 日頃からメンバー同士の部屋の行き来は頻繁だが、それでも寝室、特にラブと愛の寝室は今や二人の()()()でありそこへ足を踏み入れるのはさすがの鈴鹿でも憚られるようだった。

 実際気乗りしない顔の鈴鹿がそれでも室内を入り口から覗いてみると、そこにやっとラブの姿を見付ける事が出来たが、彼女はベッドの上に所在なくアヒル座りをしていた。

 背中をこちらに向けているので表情を窺い見る事は出来ないが、その背中と愛が相当慌てて結ったらしい髪はあちこちにアホ毛が飛び跳ね虚ろに揺れていた。

 

 

「ラブ姉……」

 

 

 この時愛を自室に迎え入れた事を激しく後悔した鈴鹿であったが、それは既に手遅れであり彼女は撤退可能な一線を越えキルゾーンの只中にいる事も自覚していた。

 

 

「すず…か……?」

 

 

 錆び付いた旋回砲塔のような動きで振り向いたラブは、そこでやっと鈴鹿の存在に気付いたらしく虚ろな瞳で彼女の事を見つめていた。

 

 

「そう私よ…ったくなんて顔してるのよ……ホラ、しっかりしなさいよ、たかだか二週間かそこいらの事で何をどうやったらそうなるワケ?」

 

 

 右目の視力回復手術の成功の喜びから一転、実にしょうもない理由で不幸のどん底な顔をするラブに鈴鹿は心底呆れた目を向ける。

 いくらバカップル真っ盛りな時期とはいえそこまでなるかと鈴鹿などは思うのだが、蜜の味を覚えたばかりの二人には何を言っても無駄だった。

 

 

「だって……」

 

「あ~もういいわ、取り敢えず今夜は愛の事は私の部屋で預かるから」

 

「うぅ……」

 

 

 その『だって』で全てを察したように鈴鹿が面倒そうに言えば、ラブは悲劇のヒロイン宜しくベッドの上にぱたりと倒れこんだが、そんな彼女をほったらかしにして鈴鹿は愛の当面必要になりそうな物を手早くかき集めると愛の普段使いのドラムバッグに詰め込んで行った。

 

 

「今夜から学食が使えるからみんなで食べに行くけどラブ姉はそれまで少し休んでな、まだ今日退院したばかりなんだからさ。だから愛だって私んトコ来たんだ、その気持ちは酌んでやんなよ」

 

「……」

 

 

 言うだけ言うと鈴鹿は特に返事を待たず、ベッドの上で猫のように丸くなってしまったラブを一瞥するとドラムバッグを担ぎ上げさっさと部屋を出て行った。

 

 

「さて…この状況アイツらにどう説明したものか……下手すりゃ面白がるだけ面白がって面倒事は全部人に押し付けてケツ捲くるようなヤツばっかだし……」

 

 

 鈴鹿が部屋に戻ると愛も髪は乾かし終わっていたが特に編んだり結い上げたりするでもなく、ただ無造作にヘアゴムで束ねたのみでラブ同様あちこちでアホ毛が踊っていた。

 

 

「こりゃ重症ね…しかし器用な……ネコか?」

 

 

 ソファークッションの上でこちらに背を向け起用に力なく横になる愛の姿は確かに猫を思わせるが、その姿からはただ怠惰な印象しか感じられない程くてっとしていた。

 

 

「ホラ愛、これ持って来たから」

 

 

 背中越しに彼女の目の前に担いで来たドラムバッグを鈴鹿が下げて見せると、えらく緩慢な動作でそれを受け取ろうと愛は手を伸ばしたが、手に重みが掛かった瞬間バランスを崩しソファークッションの上からドラムバッグ諸共転がり落ちていた。

 

 

「……」

 

「益々ネコだね…ちょっと愛大丈夫……?」

 

 

 鈴鹿がフローリングの上に敷かれたラグの上の転がった愛を助け起したはいいが、こちらを向いた顔は嘗て見た事がない程ポンコツで、鈴鹿はまじまじと見直してしまうのだった。

 

 

「おら、しゃんとしなさいよ全く……髪結ってやるからここに座りなさい」

 

 

 足元を指差せば四つん這いでのそのそとやって来た愛は背中を丸めて座り込み、その背中に今日はもうバーゲンセール状態の溜め息を付く鈴鹿であった。

 そしてその夜の夕食は久しぶりに学食にAP-Girls全員が顔を揃えたが、その雰囲気は何とも気まずく、食事の間中もキレ易いブルー・ハーツのメンバー達などは小規模な噴火を何度も繰り返していた。

 何しろラブある処常に影のように付き従う愛が最も遠い席に着き、あからさまに目を逸らし続けるので悲嘆にくれるラブが只々うっとおしかったのだ。

 

 

「全くとんだ織姫と彦星がいたものね……」

 

「この場合どっちが()()になるんだよ?」

 

「夏妃下品!」

 

 

 一応車長である三人が臨時の対策会議を行ってはいるが、こんな下らない事に頭を悩ますのは馬鹿馬鹿しいと内心皆思っているだけに芳しい意見が出るはずもなく、互いに如何にして厄介事を押し付けるかを考え牽制しあっているだけで話など纏まる気配はなかった。

 結局夕食の間そうしてウダウダやるうちに決まった事といえば、今夜は鈴鹿が愛を預かる事と就寝前のラブの身の回りの世話はLove Gunのメンバーに任せる事だけで、夏妃と凜々子はまんまと逃げおおせた気になっているようだった。

 だが自他共に認める腹黒魔女の鈴鹿がそれを許すはずもなく、翌日から()()()までの二週間実践訓練に参加出来ないラブの役回りを彼女は徹底して二人に押し付けていた。

 

 

「いいから愛がベッドで寝なさい」

 

 

 夕食後寮であるマンションに戻り翌日の支度を済ませると、就寝までのひと時を新たに持ち込んだギターで曲作りに費やす事で気を紛らわせていた愛だったが、鈴鹿が寝支度を始めると彼女もラグの上に小鳥の巣のように寝床を構築し始めた。

 だがそんな彼女に対して鈴鹿は自分の寝室を指差すとベッドで眠るよう促したが、居候の身でそれは出来ぬと固辞していた。

 

 

「ダメよ、そんな調子でこんなとこで寝たら一発で風邪ひくわよ?」

 

 

 黒魔女に似合いの黒いキャミソール姿の鈴鹿が愛をベッドに押し込んで、代わりに自分がリビングで寝るべく立ち去ろうとすると、その手を愛が抱き止めた。

 

 

「えっ!何よ?一緒に寝ろっての?イヤよ、アンタに私の匂い付ける気はないわ、あの敏感で嫉妬深いラブ姉がそれに気付かない訳ないじゃない!私これ以上の面倒は御免被るって…うっ……!」

 

 

 咄嗟にその手を振り解こうとした鈴鹿であったが、瞳を潤ませ真っ直ぐ見つめて来るロリ巨乳に眩暈を覚え絶望的な表情を浮かべていた。

 愛としては独り寝が寂しいというよりも、鈴鹿からベッドを取り上げるのが申し訳ないといった気持ちが強いのかもしれないが、鈴鹿としてはそれこそありがた迷惑でしかない。

 

 

「だから……!そんな目で私を見るなって!」

 

 

 角谷サイズのボディに蝶野サイズ越えのたわわを備えた愛は一応()()なのでキャミソールを身に着けているが、それは明らかにラブの好みの物でこの状況下では危険物でしかない。

 

 

「迷惑なら私廊下で寝るわ……」

 

「だからそういう問題じゃなくて!…あぁもう解かったわよ……」

 

 

 ブローしたマイバッハの12気筒が白煙を噴くように溜め息を吐いた鈴鹿が愛の頭の上からバサッと毛布を被せると、そのタイミングでリビングに置いてある彼女の携帯が鳴った。

 

 

「先に休んでなさい…はい、もしもし?あぁ大丈夫よ……」

 

 

 リビングに移動して携帯を手に取った鈴鹿は通話ボタンを押しながら、スラリと長く美しい脚を伸ばしキャミソールの裾をふわりとさせながら爪先で寝室のドアを閉めた。

 

 

「えぇ、ごめん…そう、愛を寝かし付けてたのよ……で?ラブ姉は素直に寝た?」

 

『寝たと思う……?』

 

「思わない……」

 

 

 通話相手のLove Gun砲手である瑠伽の声は疲れが滲み、その短い答えに全てが集約されていた。

 

 

『まぁやりたい盛りだろうからしょうがないけどさぁ』

 

「瑠伽……」

 

 

 疲れているにしてもデリカシーなど欠片もなく直球過ぎる瑠伽の物言いに、鈴鹿はそれしか返す事が出来ず力なく肩を落としていた。

 

 

『寝かすまでにちょっとでも気を抜けば、直ぐにキスしようとするわ乳は揉まれるわでどんだけ溜まってんだか……』

 

「あぁそう…それで寝てくれたの……?」

 

 

 正直疲れている処にそんな話まで聞きたくはないが、ラブの世話を押し付けた手前そうも行かず、鈴鹿は辛抱強く瑠伽の話を聞いている。

 

 

『そりゃ寝たけどさ…最後まで私達の誰かを抱き枕にしようとするんだもの、仕方ないから二人のロングピローに愛のパンツァージャケット着せて抱かせたら呆気なく寝たわ……』

 

「……」

 

 

 瑠伽の報告に鈴鹿の目は完全に死んでいるが、それでも彼女の話はまだ止まらなかった。

 

 

『あれで夜中に目が覚めて匂いで盛って独りエ──』

 

「ごめん瑠伽、さすがにちょっとそれ以上は私も聞きたくないわ……」

 

『え?あぁそうね…ごめん鈴鹿……』

 

「いいのよ……お疲れ瑠伽、それじゃ悪いけど明日の朝もお願いね」

 

『えぇ解かってる、それじゃあね……』

 

 

 通話を終えた鈴鹿はどっと疲れが出たのか重い足取りで寝室に向かいそのままベッドに倒れ込みたかったが、既に愛が寝付いていたようなのでそれも出来ずそっと毛布に潜り込んで行った。

 

 

『疲れた…でもなんでこの寮のベッドってみんな大きいのよ……?』

 

 

 それは疲れ故の事だろうが今となってはどうでもいい事に突っ込みを入れながら、独り寝には広く小柄な愛との添い寝でも尚余裕のあるベッドで鈴鹿は泥のような眠りに落ちていった。

 

 

「ん…うん……あ……ン…あん……♡」

 

 

 疲れ切った鈴鹿も寝付き小一時間程経ち日付も変わった頃の事。

 それまで微かな二つの寝息が聴こえていた寝室に、何とも色っぽい声が洩れ聴こえ始めた。

 そしてその途切れ途切れの悩ましい声の合間には湿り気を含んだ何やら隠微な音もし始めて、それに呼応するように眠っている鈴鹿の肢体が時折ビクッと痙攣しているのが薄闇の中に見えていた。

 徐々に荒くなる呼吸と激しくなる喘ぎ声は完全の()()()()のソレだが、別に鈴鹿が無意識のうちにそのような行為を致している様子は見えない。

 しかしよく見れば隣で寝ているはずの愛の姿はなく、その代わり毛布が鈴鹿の胸元辺りでモゾモゾ蠢いており、それを見れば何が起きているのかは直ぐに解かる事であった。

 

 

「あ…そ、ソコは……だ、だめ……って、ちょっとぉ!」

 

 

 強い刺激に大きく弓形に身体を反らした鈴鹿はそこで覚醒し、大きく目を見開くと毛布を跳ね除け枕元のリモコンに手を伸ばし部屋の明かりを付けた。

 

 

「あ…愛!アンタ何やって……あぁん…ちょ、それは……何て舌使い……ん…そ、そんな…や、やめておねが……だ、だめ……ら、らめぇ♡」

 

 

 明かりが灯った室内で毛布を跳ね除け露になったのは、鈴鹿のキャミソールをたくし上げチーム内でも上位に位置する彼女のたわわの健康的なピンク色の先っちょに吸い付く愛の姿であった。

 ラブの入院中と退院後の最初の入浴で一気に欲求が臨界点を突破していた愛は、眠りに付いたはいいが無意識のうちに心の中に巣食うケダモノが暴走し、黒森峰に短期留学中のラブにまほがやらかしたのと同じ事を鈴鹿に対してやっていたのだった。

 

 

「こ、このおバカぁ!」

 

「きゃん!?」

 

 

 先っちょから全身に奔った快感に意識が飛ぶ寸前、最後の理性を振り絞った鈴鹿が渾身の力で愛の頭を引っ叩くと、そこでやっと目を覚ました彼女は可愛い悲鳴を上げて鈴鹿から身を離した。

 

 

「え…私ナニを……?」

 

「ナニを?……じゃない!」

 

 

 涙目でプルプルする鈴鹿を最初は不思議そうに見ていた愛だが、目の前の鈴鹿はキャミソールが捲れ、剥き出しになった左のたわわの先っちょが少し赤くなり濡れて光っている事に気が付いた。

 

 

「……!まさか…私……!?」

 

「寝惚けてあの舌使い…恐ろしいヤツ……」

 

 

 薄っすらと汗を掻き頬を上気させた鈴鹿は、ガックリとその場で項垂れ手を突いた。

 一方の愛も自分の仕出かした事に漸く気付き、真っ赤な顔を両手で覆い突っ伏してしまった。

 

 

「…私このままじゃ確実に風邪ひくからシャワー浴びて来るわ……愛はそのままベッドで寝なさい、私はリビングで寝るから……その方がお互いの身の為だから言う事聞いて」

 

「…はい……ごめんなさい……」

 

 

 突っ伏した愛はそのまま土下座状態で、消え入りそうな声で答えるのがやっとだった。

 そして寝室を出て鈴鹿はバスルームへと向かったが、その足取りは夢遊病にでも掛かったようにフラフラと覚束ず、キャミソールも捲れ上がったままであった。

 

 

「どうしてくれんのよ愛のバカ…このままじゃとてもじゃないけど眠れないじゃない……」

 

 

 ブツブツと文句を言いながら何とも扇情的な姿でバスルームに消えた鈴鹿であったが、汗を流すだけにしては出て来るまでに少々時間が掛かっていた。

 明けて翌朝非常に気まずい思いで顔を合わせた愛と鈴鹿は互いに無言で、身支度もそこそこに部屋を出ると、仲間達と学食で朝食を取るべく集合場所である一階のエントランスへと向かった。

 

 

「お、おはよう鈴鹿…昨日はありがとう……って目が真っ赤だけどどうしたのよ?」

 

「何でもないわよっ!」

 

 

 知らぬとはいえいきなり地雷を踏み抜いたラブに鈴鹿が思わず声を荒げ、常にクールな彼女らしからぬ行動にラブのみならずAP-Girlsのメンバー全員が驚いていた。

 

 

「な、なに…何が起こったのよぉ……」

 

「さ…さぁ……」

 

「鈴鹿がとっちらかってる……」

 

「あれホントに鈴鹿なの……?」

 

「アイツあの日だったか?」

 

「おバカ!」

 

 

 呆然としたラブを残し真っ赤な顔で肩をいからせた鈴鹿はずかずかと大股で独りさっさと寮を出て行ってしまい、事情が飲み込めぬAP-Girlsのメンバー達はポカンとした顔で立ち去る鈴鹿の背中を見送っていたが、愛だけが両手で顔を覆いその場にしゃがみ込んでいた。

 思わぬ形で今まで誰にも見せた事のない一面を晒す事になった鈴鹿にとって、それは理不尽極まりない悪夢のような一夜であった。

 だが他の者達にとっても様々な災難が降り掛かる二週間はまだ始まったばかりだ。

 

 

 




ちょっと愛がキャラ崩壊し過ぎかなぁ?
でも恋愛戦車道はポンコツがお題目だからいいのかなww
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