ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

157 / 309
本当についさっき投稿分の修正が終りました……。

今回のお風呂ネタはいつもと少し様子が違いますw
R指定大丈夫かなぁww


第二十一話   ここをキャンプ地とする

 美しい一列縦隊を組む揮下の戦車群を引き連れて先頭を行く、隊長車兼フラッグ車であるパンターG型のコマンダーキューポラに収まっているのは、私立エニグマ情報工学院付属女子高等学校の隊長である古庄晶(ふるしょうあきら)その人だ。

 試合会場の観戦エリアにある運営本部前に先に到着していたラブの姿を認めた彼女は、大きく手を振りながら大きな笑顔を作っていた。

 

 

「晶ちゃん……やっぱり綺麗に隊列組むわね、強い子はそういう処から既に違うわ……」

 

 

 亜美達に新設校リーグ戦を完勝で勝ち上がる事を宣言しておきながらも、強い相手と戦える事を何よりも渇望しそこに喜びを見い出すラブは、その生まれ故というだけでなく本人が心の底から戦車道を愛しているのであろう。

 そんな彼女にとって晶のように戦車道に真面目に取り組み、大きな可能性を秘め新たなライバルとなり得る存在は何にも変え難い貴重な存在であった。

 その晶発案による試合前の現地合同調査を三日前から共に行なった両校だが、その結果はこれまで全国大会などで行なわれていた通常の会場の偵察行動と違い、会場に潜む危険箇所の発見とその情報の共有他、対戦する当事者同士の信頼関係が深まる非常に意義のあるものとなっていた。

 ラブは笑顔で手を振り近付くエニグマの隊長の姿に、有意義且つ充実したこの三日間の事を思い起こし自然と笑顔を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

「輸送車の数が多いと思ったらこういう事だったのね……」

 

 

 元役場の三階にある炊事場は学校にある調理実習室のような作りになっていて、おそらくは街のカルチャースクールで料理教室などに使用されていただろう形跡が所々に垣間見えた。

 晶がポカンと眺める調理台の上には民宿などで見掛ける特大の炊飯器がズラリと並んでおり、両校併せて総勢75名が余裕でお代わり出来るだけのご飯が炊き上がっていた。

 

 

この子達(AP-Girls)食べさせないとホント動かないのよ……」

 

「食べれば食べただけ養分が全部乳に行くラブ姉が言うな!」

 

「ぐっ…また凜々子が酷い事言った……」

 

 

 パンツァージャケットの上から可愛い花柄のエプロンで飯炊きをしていた凜々子はデカいしゃもじを突き付け速攻でラブに毒を吐いていたが、異次元サイズのラブ以外のAP-Girlsのメンバー達も年齢を考えれば全員洩れなく規格外なサイズを誇っていた。

 戦車道とアイドル活動の二足のわらじのカロリー消費量は普通の戦車道選手から見ても想像を絶する世界であり、実際彼女達はよく食べる事でそれを補いたわわのサイズも維持していたので、決して燃費が良いとはいえなかった。

 

 

「いや…私らからしたらみんなあり得ないんだけど……」

 

 

 スラリとした体型ながらも中々立派なものをお持ちな晶だが、凜々子を始め同い年のAP-Girlsのメンバー達のたわわと自分の胸を見比べ溜め息を吐いていた。

 

 

『……』

 

 

 晶同様スタイルの良いエニグマの隊員達も皆一斉に複雑そうな表情になり、ラブ達は掛ける言葉が見付からず曖昧に笑うしか出来なかった。

 だがそんな事をやっているうちにドタドタと多数のミリタリーブーツが階段を上がって来る音が聴こえ、調査に出ていた者達が戻って来た事に気付いた凜々子は話題を変えるようにひとつ手を叩くと号令を掛けて昼食の準備を再開していた。

 

 

「さぁ、みんな戻って来たわよ!サラダと牛乳の準備は出来てるわね?」

 

 

 凜々子の確認する声に飯炊き部隊のメンバー達から問題なしの声が返り、次々と用意していたケータリング用のトレイにご飯を盛り始めた。

 

 

「本当に美味しい…そりゃ私だってカレーぐらいは作れるけどさ、だけどこうやって販売出来る物を私達と同じ高校一年生が作ってるって……」

 

 

 初めて笠女の学園艦カレーを口にした晶はまずその味に驚き、次いでそれを笠女最強とも云われる給養員学科の生徒達が作っている事に更に驚いていた。

 

 

「最初の試作の段階で地元横須賀の海自の方達に監修してもらって、それを元に彼女達が味を創り出してお墨付きを頂いた上で販売を開始したのよ」

 

「またエライ本格的な事を……」

 

「だって販売してお金を頂く以上は絶対変な物は出せないじゃない、水産系の学校で作って販売しているお魚の缶詰なんかと一緒よ」

 

「そっか……」

 

「因みに、横須賀の飲食店で海軍カレーを名乗って提供するには、この野菜サラダと牛乳を必ず付けるのが決まりなのよ。この二つを付けないと海軍カレーを名乗る事は出来ないのよ~」

 

「へ~、そうなんだ……」

 

 

 カレーを受け取った両校の隊員達は皆思い思いの場所で昼食を取っていたが、既に違う学校であり対戦相手でもあるという垣根は見えず、互いに入り混じりすっかり馴染んでいた。

 最初こそエニグマの隊員達もトップアイドルと間近にふれ合える機会に浮付いた感じが見受けられたが、今は普通の友達感覚で言葉を交わし、AP-Girlsもまたそれを好意的に受け入れている。

 それはAP-Girlsにも彼女達がパ~ジリンのような下心などなく同じ高校戦車道の選手として、それ以前に同じ高校一年生として接している事が伝わっているからに他ならなかった。

 

 

「午後からは私達も外に出て直接自分達の目で確認して回ろうね~」

 

 

 食後のコーヒーを楽しみながらラブがいつも通り間延びした口調で晶に午後からの予定を提案したが、それに頷きながらコーヒーを口にした晶はその味と香りに大きく目を見開いていた。

 

 

「うわっ!?これダルマイヤーじゃない!」

 

 

 やはりドイツ系の学校の生徒だけあって口にした事があるらしく、晶に続きあちこちで同じように驚きの声が上がっていた。

 

 

「うふふ♪さすがエニグマの名を冠するだけあって判るのね」

 

「いや…特別な時位しか私達も飲めないですよ……」

 

 

 屋内とはいえ極めてアウトドアな環境で供されたコーヒーがダルマイヤーである事に驚きを隠せない晶だったが、そんな彼女の様子にラブも学食で日常的に飲んでいるとは少し言い出し辛かった。

 

 

「さて、午前中ざっと偵察して貰った感じはどうだったかしら?」

 

 

 二杯目のコーヒーが行き渡った頃、ラブが午前中調査に出ていた者達を広げた地図の周りに集め、それぞれのグループの報告を受けそれを晶が地図に書き込んで行くのだった。

 

 

「──街の東側の住宅街は大分倒壊が進んでたわ」

 

「あれはちょっとした火で直ぐに延焼しそうよね」

 

「市街地戦は火事がつきものだけど、あまり燃え過ぎるのも困るわね……」

 

「その市街地の先の県道に抜ける旧道だけど、山裾の辺りは崖が大規模に崩落する可能性があるわ。私達の班が調査してる間もずっと小石が落ち続けていたもの」

 

「サッカーボール位の石も結構転がってたね」

 

「それもう立ち入り禁止でしょ……」

 

「まぁ私らの試合後はまた更にそういう場所が増えるでしょうけどね~」

 

「でも基本情報があると無しじゃ大違いだわ、他の試合会場も同じ事でしょ?」

 

「そうね、今後の為にもしっかり調査しておかないとね」

 

 

 様々な報告と意見が出る中ラブと晶は広げた地図に午前の調査の結果を書き込み、午後はそれを基にしてより細かい調査を行なう方針を取り決めていた。

 

 

「う~ん、やっぱり人が住まないと家もだけど荒れてますね~」

 

「サンダース戦で試合に使った炭鉱島がそうだったわ…でも荒れてはいてもつい最近まで人が暮らしていたから、その痕跡っていうか匂いが残ってるのよね……」

 

「あの試合…あの試合だけではないですが私達も中継は見ていました。戦車道の選手としてはこういう環境は大歓迎ですけど、その場所が何故そうなったかを考えるとちょっと切ないですね……」

 

 

 昼食と休憩をしっかりと取った後、ラブと晶はそれぞれ副官を伴い自分達の目で試合会場を確認するべく午前中の情報を元に調査活動を行なっていた。

 途中住宅街に足を踏み入れその区画での発砲が果たしてどの程度影響をもたらすか検証していたが、一軒の住宅の玄関先に半ば雑草に埋もれ打ち捨てられた補助輪付き自転車を目にした晶の声音は、どこか寂しげなものになっていた。

 

 

「あの炭鉱島もこの街も、破壊した後に再生が待ってるのが救いってとこかしら……?」

 

 

 ラブも晶の視線を追って色褪せ錆び付いた子供の自転車に目を留めたが、暗くなりかけた雰囲気を変えるよう勤めて軽い口調で試合で使われた後の事に言及した。

 

 

「ですね…さて、次の確認ポイントは……」

 

 

 書き込みの増えた地図を広げた晶が指で現在位置を確認しながら次のポイントへのルートを辿って行くと、途端にその表情が渋いものに変わって行った。

 

 

「ここは…ねぇラブ姉、この付近は交戦禁止エリアにしておきませんか……?」

 

「あぁ…ここ……そうね、その方が間違いがなさそうだわ……」

 

 

 晶が指し示した地図上のポイントはそれなりの規模の元霊園であった場所で、全てが移転したとはいえ墓場を履帯と砲弾で荒らすのは皆気が引けたし何より気味が悪かったのだ。

 そして日が暮れ始めた頃、ラブ達は拠点としている元役場に戻って行った。

 

 

「さすがだわ……」

 

 

 調査隊が持ち帰った情報を整理し亜美が用意した特設サイトにアップロードするにあたり、情報工学の高等教育を受けるエニグマの隊員達はその能力をフルに発揮していた。

 

 

「そりゃまぁその専門教育を受けてますからこれ位は出来ないとねぇ」

 

 

 苦笑しながら自身も自前のノートPCに、超高速でデータ入力する晶をラブは尊敬の目でみている。

 そのラブもまた特設サイトにアップされ始めた他の試合会場の情報に目を通し、どの学校も初日から精力的に調査を行なっているのを知るのだった。

 

 

「あら~、武田菱とパーペチュアルユニオン(永遠の連合)女学園は最初が雪上ステージだったのね……」

 

「どれどれ…一面真っ白で調査もクソもあるか!って真奈(まな)のやつキレてますねぇ……ふふっ♪ラブ姉知ってます?武田菱の隊長やってる真奈って高知出身で寒いの大っ嫌いなんですよ」

 

「本拠地は確か甲府だったわね…でもなんでワザワザ……」

 

「何言ってんですかラブ姉、新設校の一期生で戦車道履修者なんて大概スカウトされた生徒でしょ~が。そもそもその極端な代表格が笠女じゃないのよ、忘れたの?」

 

「う゛……」

 

 

 晶の尤もな指摘にラブも返答に詰まる。

 

 

「ウチも母港は鹿児島ですけど、私みたいな地元組から北海道出身者までいますからね」

 

「まぁ確かにそうよね~、強豪校なんかホント全国からスカウトと受験組併せていっぱい集まるもんね…まほのトコ……黒森峰辺りじゃ海外からも留学してくるし」

 

 

 そう返しながらもラブは晶なら例え黒森峰に入学していたとしても、余裕で一軍レギュラーの座を入学早々勝ち取っていただろうと踏んでいた。

 何故ならラブのような存在は別として、新設校で隊長を務めるという事は伊達ではなく、既存校の一年生に比べてもその実力は頭一つか二つは確実に抜きん出ているのだ。

 だがその当事者である晶はラブの口から出たまほと黒森峰というキーワードに本人から聞いた話を思い出し、西住まほと血縁であり同い年である彼女とは新設校に身を置く自分などは普通なら戦う事が出来る相手ではない事を思い出し、その運命に胸中複雑な想いと感謝の念を抱いていた。

 

 

「それにしてもさぁ、真奈ちゃんの武田菱の母港が上杉の越後(新潟)って何の冗談なワケ?」

 

「あはは♪それね~、東京湾とかはもう学園艦を受け入れるのは限界に近いしあちこち近県の港に打診してはいたらしいけど、その中で母港にする学園艦がゼロな新潟が名乗りを上げたらしいですよ。今じゃ逆にそれをネタに両県共に盛り上がってるらしいですし」

 

「なにそれ~?」

 

 

 晶の話にラブも最初はそんな馬鹿なと思っていたが、晶が直接私立武田菱高等女学院の戦車隊隊長である國守真奈(くにもりまな)から直接聞いたという話に目を丸くしていた。

 

 

「学園艦の誘致かぁ…なんていうか敵に塩処じゃないスケールの話ねぇ……」

 

 

 それでも彼女は最後に大きく逸れた話の軌道を元に戻しながら今日の結果を纏め、本日の課業の終了を宣言し皆それに同意するのだった。

 

 

「さて、それじゃやるとすっか」

 

 

 口は悪いが女子力はチーム一な夏妃を中心に両校の料理上手により編成された飯炊き部隊は、昼間凜々子達も使用した炊事場で夕食の準備に取り掛かっていた。

 

 

「こんなに生鮮食料品まで用意していたなんて…ウチなんて殆どレーション(缶詰とレトルト)で済ます予定で準備していたのに……」

 

「まぁ料理っつってもさみぃし手っ取り早いから鍋だけどなぁ~」

 

「そんな簡単に言うけど……」

 

「ホント簡単だって~の、寄せ鍋……ようはちゃんこだよちゃんこ、お~い凜々子!アタイは鱈捌くからそっちのモモ肉任せてい~か?」

 

「解かったやっとく!」

 

 

 冬とはいえがっつり保冷されたコンテナボックスを開き、肉やら魚やらを取り出しながら応じた夏妃に少し料理が苦手な晶は唖然とした顔をしている。

 

 

「私達AP-Girlsってどうしても生活が不規則になるから食事指導…この場合食育かなぁ……?とにかく結構厳しく学校からも言われてるのよね~」

 

『それってあなた達のおっぱい維持の為なんじゃないの……』

 

 

 ラブの補足説明にそんな考えが頭に浮かんだ晶だったが、それは心の中で呟くのみで絶対口にする事は出来ないのであった。

 そうこうするうちに準備はハイペースで進みズラリと並ぶ炊飯器と大鍋からは湯気が立ち上り、それに合わせて何とも云えぬ良い匂いがさして大きくない元役場の建屋全体に漂い始めた。

 

 

「よっしゃ、そんじゃ体育館に全部運ぶぞ。重いし熱いから力を合わせて慎重にな!」

 

 

 夏妃が手際良く仕切ったお陰で効率良く食事の準備は整い、大量の鍋と炊飯器が人海戦術で一階上の体育館に運ばれ冷める間もなく夕食タイムに突入していた。

 体育館のアチコチに両校入り混じった車座が出来、実際その光景は彼女達の旺盛な食欲も相まって夏妃の言うようにちゃんこ場の光景であった。

 

 

「ん~、そろそろいい頃合いかしら……?」

 

「え?何がですか?」

 

 

 食後連携して片付けを終えた後に談笑していたラブ達であったが、チラリと時計に目を走らせた彼女の呟きに晶が不思議そうな顔をした。

 

 

「ん?私達AP-Girlsがいて、小さいとはいえ舞台があるのに何もしないのはおかしいと思わない?」

 

「はい?」

 

 

 直ぐにはラブの言っている事が飲み込めず晶は暫く怪訝な顔をしていたが、ラブが指笛を鳴らし彼女の下にAP-Girlsが集結すると漸く事態が理解出来たようであった。

 

 

「え?本気?でも……?」

 

 

 ラブ達が何をやろうとしているか理解は出来たが、それでも体育館の小さな舞台と音響設備を交互に見比べた後、再びラブに視線を戻した晶は戸惑った表情を浮かべていた。

 

 

「いくらでもやりようはあるの、音源も常に複数種類用意してあるから問題ないわ。もう最近じゃ滅多に見ないけどMDもあるよ」

 

「MD……」

 

 

 呆気に取られる晶に向け、ラブはまるで手品のようにいつの間にか右手の指の間にUSBメモリーを始めMDとCD、更には最近息を吹き返しつつあるカセットテープまでを挟み掲げて見せていた。

 更にそのラブの背後ではこちらもいつの間に用意したのか、凜々子がメーカー不詳なゴツいラジカセを掲げて意味不明な笑みをにへら~っと浮かべ佇んでいた。

 

 

「はぁ……」

 

 

 晶はもうそれ以上は何も言えず、そんな彼女を始めエニグマの隊員達を他所にAP-Girlsメンバー達はパンツァージャケット姿のままストレッチを行なっていた。

 

 

『こ、これは……♡』

 

 

 ステージの準備に集中する彼女達は既にそれ以外の事は一切見えておらず、ミニスカートの中が見えていようがお構いなしな様子でストレッチを続けていた。

 

 

「愛…お願い……」

 

 

 床に座り込み信じられない大胆さと角度で開脚して見せたラブがベッタリと前屈すると、その背後から愛がそのボディサイズに不釣合いなたわわを押し付けラブの背をゆっくりと押し始めた。

 

 

「ん……」

 

『ぐはぁ……♡』

 

 

 床に押し付けられムニュっと潰れるラブの規格外に過ぎる特大のたわわと、ラブの背中に密着し彼女の背を押す度にぷにぷにする愛のたわわに晶達は揃って頭上に見えない白旗を掲げていた。

 

 

「さ、それじゃやるわよ~♪」

 

 

 ウォーミングアップを終えたラブが呑気な声でそう宣言すると、AP-Girlsのメンバー達全員が舞台に駆け上がって行く。

 

 

「でも…本当にいいの……?」

 

 

 まだ戸惑った様子の晶がラブに声を掛ければ、舞台に向かい掛けたラブが脚を止め振り向いた。

 

 

「いいのよ…当初の予定では試合後の無償ライブ他各種イベントをいつも通りやるつもりだったけど公式戦では自粛するよう連盟から要請が来ちゃったから…まぁその穴埋めというにはあまりにショボいけどせめてコレぐらいはさせて欲しくて……」

 

 

 ラブ達としてはこれまでの練習試合の時と同様に試合終了後に無償のミニライブを行い、翌日の有償ライブに向け各種イベントを用意していたが、連盟はそれを目当てとした観客により対戦校がアウェイ化する事を危惧し、笠女に対し無償イベントの自粛をかなり下手に要請していた。

 それを受けたラブ達も連盟の意向を尊重し了承していたのだった。

 

 

「そんな気にする事じゃないのに……」

 

 

 それが成績に反映するラブ達にとって痛手でもあったが連盟の言う処も一理あり、それは今後の課題として話し合いの場を設けなければならないが、今回はそれを受け入れ無用の混乱を起さぬよう早めにその旨を発表していたのだ。

 そしてそれは真っ先に晶達に知らされラブが悪い訳ではないのに平謝りしており、更にこうして気遣いを見せる彼女の人柄とプロとしての意識の高さに晶は尊敬の念を新たにしていた。

 

 

「うふふ♪いつまでもそんな風に座らせてはおかないぞぉ~」

 

 

 舞台に上がった総勢25名のAP-Girlsのセンターに立つラブは、眼下の体育館の床に膝を抱え畏まった表情で体育座りをする晶達の姿に楽しげに微笑み、どうにか繋いで使う事が出来たノートパソコンを放送機器から長々とケーブルを這わせステージの袖に鈴鹿がセットすると、ラブとアイコンタクトで曲をスタートさせ晶達だけの為のミニライブが幕を開けた。

 それは狭い体育館のステージ故いつものようにとは行かないが、それでもAP-Girlsは圧巻のダンスパフォーマンスとその美声で晶達を引き付けると、あっという間に全員を立ち上がらせ熱狂の縦乗りの世界へと誘っていた。

 そしてラブ達はそのパフォーマンスを以って一時間がほんの数分に感じる程のステージを歌い上げると、額に汗を輝かせながら舞台を降りるのだった。

 

 

「凄い…凄過ぎるわ……♡」

 

 

 熱病患者のよな瞳でラブを出迎えた晶達にラブ達もまた満足気に笑みを浮かべれば、メンバー全員がラブと同様の表情で頷き合っていた。

 

 

「どうにか満足して頂けたかしら?でもいつか必ずフルに楽しんで貰うから覚悟しててね♪」

 

『はい♡』

 

 

 ラブの魅力的な笑みと挑発的な台詞にエニグマの隊員全員が瞳にハートを浮かべ応じ、その様子にラブは一層満足気な笑みを浮かべると、AP-Girlsのメンバー達にウィンクでステージの成功を改めて伝えるのであった。

 そんな一団の中にあって愛の表情に以前のような硬さがない事がラブにとっては喜ばしく、その愛と目が合ったラブは途端にその視線を熱く絡ませてしまい、AP-Girlsのメンバー達はそれで全てが台無しといった風に死んだ視線を二人に浴びせていた。

 

 

『やっぱりこの二人は……♡』

 

 

 だがそれとは対照的にエニグマの隊員達にとってはトップアイドルのユリユリな色恋沙汰というまたとないご馳走を前に、その内なるケダモノの血を滾らせ熱い視線を送るのであった。

 

 

「ったくこのバカップルは……」

 

 

 例によって凜々子がそうぼやいたタイミングで、ラブのほぼ女王様なロングブーツに着けられた携帯ホルダーの中から着メロのパンツァー・リートが鳴り響いた。

 

 

「っと……はい、えぇ…あ、了解です……本当にありがとう、ご苦労様……えぇそれじゃあね」

 

 

 集中していた視線に気付く事なくそのまま電話に出たラブは通話を終えた処でやっと自分に注目が集まっていた事に気付いたが、それは電話のせいだと思っている辺りとことんバカップルに付ける薬はないと痛感するAP-Girlsであった。

 

 

「あ……えっとねウチの施設科の子から連絡だったのよ」

 

「施設科……ですか?」

 

「えぇそうなのよ」

 

 

 何故ここで笠女の施設科からラブに電話が掛かって来るのか不思議に思った晶だが、それを見越したようにラブはその場にいるエニグマの隊員達に向けて説明を始めた。

 

 

「あのね、この街が破綻する前に温泉が見付かってたのはみんな知ってるわよね?」

 

 

 ラブが確認するように問えば、彼女達もその問いに全員が黙って頷いていた。

 

 

「それがこの街の再開発の理由の一つになってるのも解かってると思うけど、その源泉の付近は今回最初から交戦エリアから外されてるでしょ?」

 

「あ、えぇ…確か定期的にメンテがされていて、配管だけ繋げばいつでも温泉が供給出来る状態だとかなんとか……でもそれが何か?」

 

 

 まだ話が見えぬ晶達は、互いに不思議そうに顔を見合わせ何やら会話をしていた。

 

 

「そう、そうなのよ……もうバルブ開くだけで温泉に入れる状態なのよ♪」

 

「あ…施設科って事はまさか……」

 

 

 やっとラブの云わんとする事に気付くと、ラブがにっこりと微笑んで見せた。

 

 

「えぇそうよ♪ウチの施設科の子達が源泉に仮設の入浴施設を構築してくれたから、これからみんなで入りに行くのはどうかしら……その…私と一緒でよければの話なんだけれど……」

 

 

 ラブは新設校の隊長が集まった時と今回両校が合流した後も含め、彼女達に榴弾の暴発事故で自分に何が起きどんな状態になったかの説明は事前にしていたのだが、実際それを皆の目に晒す事になると果たしてそれが受け入れられるかどうか不安でその言葉の歯切れが悪くなるのだった。

 

 

「厳島さん……私達は並の人間であれば心折れてしまうであろう困難を克服したあなたの事を、同じ道を志す者として心の底から尊敬しています」

 

 

 姿勢を正した晶はラブ姉ではなく敢えて苗字で彼女に呼びかけたが、その後に続く言葉は一切淀みがなくその中身に嘘偽りがない事を明確に現していた。

 

 

「晶ちゃん……」

 

 

 少し涙ぐんだようなラブの声にAP-Girlsの少女達も少し俯き加減で何も言わずにたが、皆が晶の言葉に打たれた胸に感謝の気持ちを抱いていた。

 

 

「だからラブ姉と一緒に温泉に入れるなんて感激してるわ♪」

 

 

 それまでと口調を一変し打って変わって茶目っ気たっぷりに晶が言えば、それでラブもクスッと笑いそれを合図に皆こぞって温泉に向かうべく準備を始めるのだった。

 

 

「あ、あそこですね…って凄い照明の数……」

 

 

 晶が自らステアリングを握るキューベルワーゲンにラブを乗せ、無理矢理括り付けた感が隠せないナビを頼りに兵員輸送車を引き連れ灯りの一切ない夜道を行けば、やがて闇の中に煌々と灯りを燈すまるで何かのプラントのような光景が見えて来た。

 

 

「あ~、設備動かすのと夜間作業するのに発電機も持ち込んでるからね~」

 

「さすが最強のお金持ち学校……」

 

 

 晶の素直過ぎる感想にラブの眉もへにょりと下がるが、現地に到着してみればそこには晶でなくとも呆れるような光景が展開しているのであった。

 

 

「なにコレ……」

 

 

 ポカンとするラブの目の前には自衛隊が使用し、災害時に活躍した事で世間的にも知られるようになった仮設入浴施設のテントが4梁連結して張られ、全員が同時に入浴出来る程の巨大浴場が構築され彼女達の到着を待ち受けていたのだ。

 

 

「厳島隊長お待ちしていました♪」

 

 

 そう声を掛けて来たのは施設科の生徒の一人でありどうやら今回の作戦の指揮官役らしかったが、その少女はどう見ても湯上りであり血色の良い顔でフルーツ牛乳片手に歩み寄って来た。

 

 

「設備の確認の為に一足先にお湯を頂戴しました、結果はご覧の通りですよ~♪」

 

 

 快活に笑う少女に苦笑したラブと晶は揃って頷くとお風呂セットを手にキューベルワーゲンを降り、両校の隊員達をゾロゾロと引き連れテントに入って行くのだった。

 

 

「しかしあのテントは一体……?」

 

 

 仮設入浴施設の入り口に掲げられた銭湯などでお馴染みの暖簾を潜る直前、その周囲に張られた大量のテントに目を留めた晶が不思議そうに首を捻った。

 

 

「あぁアレ…施設科の子達が作業実習で泊り込む為のキャンプ地みたいね……あの子達も逞しいからねぇ…今回も実習と称して温泉三昧するのが見え見えだわ……」

 

「あぁ……」

 

 

 ラブの説明とここまでにすれ違った施設科の生徒達が全員洩れなくテカテカだった事で、全てを悟ったらしい晶もそれ以上は何も聞かなかった。

 

 

「確かにコレはいい湯ですねぇ……」

 

「本当ねぇ……」

 

 

 濛々と湯気が立ち込めるテントの中湯に浸かる晶がすっかり弛緩し切った声で呟けば、それに応えたラブの声もまた同様に緩み切っていた。

 そしてそれは彼女達だけではなく湯に浸かる両校の隊員達全員が同じであり、昼間の疲れと冷えも手伝い皆が温泉のありがたみを噛みしめているのであった。

 

 

「だけどラブ姉、全員分のシャンプーセットが用意してあったけど本当に頂いちゃっていいの?」

 

「あ~いいのいいの、温泉ホテルなんかで無料のアメニティセットが置いてあったりするじゃない?あれと一緒だから気にせず使って頂戴……」

 

「はぁ…でもあれってすっごい高いはずだけどいいのかしら……?」

 

 

 どこか納得が行かない晶がブツブツと呟くが、蕩けたラブの耳にその声は届いていなかった。

 

 

「恋…髪……」

 

「ん…お願~い……」

 

 

 気だるげな表情で湯の中を流れるように傍にやって来た愛が言葉少なに呼び掛ければ、ラブもまた同様に気だるく答え立ち上がった。

 それまで気にするなという方が無理のあるラブの得盛りなたわわをチラチラ盗み見ていた晶達であったが、彼女が立ち上がると盛大にぷるんぷるんと揺れるたわわに目が釘付けになっていた。

 

 

「うっ…一体どうやったらあんなサイズに……」

 

 

 思わず首の後ろをトントンしながら呟いた晶だったが、その後展開された泡々で艶かしい光景にエニグマの隊員全員が鼻血を噴出しそうになり慌てて湯から上がり冷水を浴びていた。

 

 

「うぅ…さっきはヤバかったわ……」

 

「マジあのサイズは有り得ない……」

 

「でも重力にも負けてないし形も理想的よ……」

 

「先っちょ素敵な桜色よね……」

 

 

 ラブ初体験にしていきなり入浴はハードルが高かったらしく、既にエニグマの隊員たちのリミッターは限界に達しつつありオーバーレブするのも時間の問題であったようだ。

 

 

「ねぇ愛ちゃん…どうやったらそのロリボディでそんなにおっぱい大きく出来るの……?」

 

「え……?」

 

 

 しかし今回最初に均衡を破ったのはラブではなく、そのパートナーである愛であった。

 彼女の隣で湯に浸かっていたエニグマの副隊長である原沢紗江子(はらさわさえこ)は、同じ副隊長同士何かと愛と共に作業などしていたが、今は完全にのぼせた危ない目を愛に向けていた。

 

 

「ホント反則よねぇ…でも愛ちゃんは存在自体が奇跡だわ……♡」

 

「ちょっと…紗江子……一体何を……あ……」

 

 

 長く艶やかな黒髪を丁寧に編み込み、深い黒い瞳でどちらかというと優等生タイプなエニグマの副隊長は、戸惑う愛が気付いた時には既に彼女の隣に密着しその小柄な身体にそっと手を回していた。

 

 

「え…?えぇっ……!?」

 

「あ~、紗江子が本性現したわぁ……」

 

「あ、晶ちゃん……?」

 

 

 呆然とするラブの目の前で紗江子の繊細な精密機械のようなボディタッチに、ラブがそれだけでどんぶり三杯は行けそうな喘ぎ声を愛が漏らし始めていた。

 

 

「ああ見えて紗江子のヤツはガチでロリ好きだからな~」

 

「ちょ──っ!?」

 

『なんだラブ姉と一緒じゃん……』

 

 

 ラブが妙な悲鳴を上げる中AP-Girlsの残りのメンバー達が容赦ない感想をその胸に抱いていたが、状況がいつもと違う事に彼女達もまだ気付いていなかった。

 

 

「私はやっぱりラブ姉みたいな素敵なお姉様が好きですけどねぇ……♡」

 

「あ…しまった……」

 

 

 ラブもまた気が付けば晶に密着されジワジワとその感度の良い肢体を責められ始め、その快感に力が抜けた彼女はあっさりと陥落させられてしまっていた。

 

 

「ちょ…あ、晶ちゃんそこは……あ、なんて新鮮な責め……あん♡」

 

 

 両校の隊長とその副官が絡むという新しい展開を興味深げに観察していたAP-Girlsのメンバー達であったが、ふとしたタイミングで彼女達が周りを見回せばいつの間にか彼女達もエニグマの隊員達に包囲され、その両脇をがっちりと固められ意味ありげな熱い目で見つめられていた。

 

 

『あれ……』

 

 

 そしてそれに彼女達が気付いた時、それは既に完全に手遅れだった。

 

 

「や、ちょっと待って…あん♡そ、そこは……」

 

「こ、こら!止めやがれ…ん……ら、らめぇ……♡」

 

「そ、その程度で私が…そ、そんな……ウソ……♡」

 

 

 ラブを筆頭にAP-Girlsの総勢25名、戦車戦であれば例え相手が黒森峰であろうと臆する事なく平気で戦う彼女達であったが、こればかりは多勢に無勢な状況を覆す事が出来ずいいように責められあっという間に蹂躙されて行くのであった。

 

 

「そ、そんな…入れ替わり立ち代り先っちょを……」

 

「そ、そこはちが…お、お願い……目覚めちゃうから止めてぇ……♡」

 

「ま、また逝っちゃ……だ、だめもうげんか……」

 

「マジでもう……あぁん♡」

 

「や…もうゆるしてぇ……♡」

 

 

 いつ果てるとも知れぬエニグマの飽和攻撃を前にAP-Girlsは何度も白旗を揚げ続け、戦車戦の前哨戦に関しては彼女達の惨敗であった。

 こうして湯煙をピンク色に染め一日目は幕を閉じたが、調査日はもう一日残されていた。

 そして結果から言えば調査終了後は一日目をなぞるように湯煙がピンク色に染まり、AP-Girlsは前日同様白旗を揚げまくり前哨戦は彼女達の惨敗という結果に終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少しは私の大変さが解かったか……」

 

 

 




タイトルが見た人しか解からないどうでしょうネタってw

やっぱあれですかね?恋愛戦車道はお風呂回がないとダメですかねww

今回は新たに2校新設校の名が登場しましたが、
この新設校の設定を考えるのは結構楽しい作業でした。

相変わらず忙し過ぎて投稿ペースが元に戻せません。
でも最低限週に一本だけでも投稿は続けたいです……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。