ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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中学編も残す処あと一話まで漕ぎ付けました。

今回はちょっぴりお色気展開が入ります。


第十五話   Party's Over

 やはり賑やかな食卓は楽しい。

 楽しんで食べてもらえるのは料理を作る者の一番の喜びだ。

 英子さんと亜美さん二人はやはり体力仕事だからか本当に気持ちの良い食べっぷりで、これなら私も頑張って作って良かったと思えた。

 

 

「ふぅ、本当に美味しかったわ♪千代美さん私のお嫁さんになってくれない?」

 

「千代美ちゃんは私の嫁だ」

 

「英子あんたやっぱり!」

 

「ホントお二人は仲がいいんですね」

 

『千代美ちゃん止めてよねっ!』

 

 

 またハモった二人に私は再び笑ってしまう、そして二人もまた笑う。

 こんな楽しい時間がいつまでも続けばいいけれどいつかは終わりが来る。

 私は二人にここまでお世話になった事の礼を述べ明日横須賀を離れる事を告げた。

 そして私も自分がやらねばならない事に全力で取り組む事も。

 それに対し二人もここまでに分かった事で話せる範囲の事を教えてくれた。

 更に明日警察からマスコミに正式発表がある事、但し被害者が未成年である事から実名報道は控える事も厳命するとも聞いた。

 そしてそれと同時に問題の砲弾の製造元にも近く捜査が入るという。

 やはり英子さんは事故ではなく事件として最初から動いていた様だ。

 止まっていた時間、止まっていた時計の秒針が少しずつ動き始める。

 そうなればそれぞれが成すべき事を成し、後は恋の回復をひたすら祈るのみ。

 そんな話をして私達は楽しかった食事を終えた。

 

 

「さて英子、私は今夜も泊めてもらうわよ」

 

「そう来ると思ったけどさ、ここで三人で寝るの?」

 

「アンタはベッドで私と千代美さんが一緒の布団で寝るわ♪」

 

「それはダメ!絶対許さん!」

 

「じゃあどうするのよ?」

 

「布団並べて三人で川の字で寝ればいいのよ、勿論真ん中は千代美ちゃんで♪」

 

 

 英子さんがまた変な事を言い出した。

 

 

「えぇ!?嫌な予感しかしない……」

 

『何か問題あるかしら?』

 

「またハモってる……」

 

『な~に?』

 

「やっぱり最初からその気で…いえ…問題無いです……」

 

 

 それから交代でシャワーを浴びるとリビングにはくっつけて布団が敷かれていた。

 更に二人を見ると何故かお揃いの淡いピンクのキャミソール身に付けている。

 そして…。

 

 

「さあ!千代美ちゃんもこれに着替えるのよ!」

 

 

 英子さんが同じ物を手に私に迫って来る。

 ジリジリと壁際まで追い詰められてもう逃げ場は無い。

 

 

「帰って来る途中で買って来たのよ~♪」

 

「わ、私はいいですよ~!」

 

「遠慮は無しよ!さあさあ!」

 

「遠慮じゃないです!あ!そんな!」

 

 

 私は二人の連係プレイにあっと言う間に身包み剥がされ着替えさせられる。

 

「あひゃひゃ!あ!ソコは~!」

 

「うふふ~♪良い反応ね~♪」

 

「やめ!そうじゃ!うひゃ~!お二人はやっぱり~!!」

 

 

 無理矢理着替えさせられたキャミソールはサイズがピッタリだった。

 

 

「ゼェゼェ…サイズぴったり……」

 

「千代美ちゃん私は刑事よ、それ位見れば解るわ」

 

 

 英子さんが指を振りながら答える。

 

 

「そんな能力いらないです……」

 

「さあ!ここからはガールズトークの時間よ!」

 

 

 亜美さんが左手を腰に右手は天を指し高らかに宣言した。

 

 

「千代美ちゃん、着心地はどうかしら?」

 

「良いけど何だかお腹の辺りがす~す~します」

 

「これは私と亜美から頑張った千代美ちゃんへのプレゼントよ♪」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 それから暫く三人で他愛も無い話に花を咲かせた。

 こんな経験は私も初めてだ、この先もあるかどうかは解らないけど。

 

 

「千代美さんは誰か気になる人とか居るのかしら?」

 

「そんな人居ないです…」

 

「戦車道やってると出会いなんてないわよね、私の居た知波単なんか特にww」

 

「あら!?私が千代美さんの頃には撃破率は既に…」

 

「どっちの撃破率だかw」

 

「や、やっぱりお二人って~!」

 

『あははははは~♪』

 

 

 そしてそんな楽しい会話にも疲れ少し眠くなって来た頃、亜美さんがふと思い出した様に私にこんな事を聞いて来た。

 

 

「処で千代美さん明日はどうやって帰るのかしら?」

 

「出て来てそのままなので一度家に帰ってから学園艦へと思ったのですが、それだと更に遅れるので、横須賀からも出ている連絡艇を乗り継いで学園艦と合流しようと思います。幸い学園艦も名古屋から北上中ですから」

 

「そっか…あのね千代美さん、今回横須賀に来るのに私ヘリで来ているのよ。何しろ対応でアチコチ飛び回らくちゃいけなくてね。それでもし千代美さんがよければそのヘリで学園艦まで送れるけどどうかしら?」

 

「それはさすがに申し訳ないです…」

 

「教導任務で全国飛び回るのに殆どプライベートで使ってる様な機体だから、そんな事は全く気にしなくていいわ」

 

「それがいいわ。亜美お願い出来る?」

 

「勿論、それでいいわね千代美さん?」

 

「それではお言葉に甘えさせて頂きます」

 

「ヨシ決定!ただね、降りたのが武山駐屯地でここから少し離れてるのよ」

 

「それは私の車で送るから問題ないわよ亜美」

 

「助かるわ英子」

 

「何から何まですみません」

 

「気にしないで千代美さん、今回あなたの働きは本当に大きかったの。もしあの時のあなたの行動力が無かったら恋さんだけでなく更に被害が出ていたのは確実よ」

 

「亜美の言う通りよ、私達も千代美ちゃんの働きを無にしない為全力で事に当たらせてもらうわよ。だから何も気にしないで頂戴」

 

「解りました、それで甘えさせてもらうついでにもう一つだけお願いがあるんですが」

 

「何かしら千代美ちゃん?」

 

「横須賀を離れる前にもう一度だけラブの居る病院に寄りたいんです。勿論面会出来ないのは解っています。でも、せめてラブに私達の想いを託したメッセージカードを残して行きたいんです。ラブが目覚めた時独りでない事が伝わるように」

 

「それ位の事お願いのウチには入らないわ、解った、病院を回って行きましょう」

 

「ありがとうございます」

 

 

 それから暫くして私達は眠りに落ちた。

 横須賀最後の夜、その夜が明ければ私も日常に戻る。

 本当に色々な事があった。

 ラブ、亜梨亜さんにまほ、そしてみんなが辛い思いをした。

 これが夢なら早く醒めてくれと何度も思った。

 夢……夢…夢…その夜私はまた夢を見た。

 戦車でみんなと闘った夢、みんなと一緒に遊んだ夢。

 そしてあの瞬間の夢、最後に聞いたラブの声……。

 苦しい……苦しい……本当に苦しい!!

 気が付くと既に夜は明けていて目が覚めたのになお苦しい!

 それも当然で私は亜美さんの大きな胸に顔を埋める様に抱きしめられていた。

 更に背中側から英子さんも自分の大きな胸を押し付ける様に抱きしめている。

 つまり私は大きな胸のサンドイッチの具にされていたのだ。

 

 

「★゜※▼○!ÅΩЖ∞!!ぶはっ!」

 

「あら…?おハヨ、千代美さん」

 

 

 亜美さんがとろんとした寝惚けた表情で言う。

 

 

「し、死ぬかと思った~っ!!」

 

「ん~、もうちょっとぉ…」

 

「英子さんも寝惚けないで下さい!」

 

 

 私は二人を振り解いて立ち上がって思わず絶叫した。

 

 

「やっぱり二人ともこれを狙ってたんですね~!?」

 

 

 その後私は朝食の用意をした。

 二人の脅す様なお願いにパジャマ代わりのキャミソールのまま。

 多分朝食を食べる間も私の顔は赤いままだったと思う。

 そして朝食後身支度を整えるといよいよ出発の時間になった。

 

「英子さん泊めて頂いて本当にありがとうございました」

 

「お礼なんていらないわ、私も千代美ちゃんと過せた時間は楽しかったから」

 

「私もです」

 

 

 私達を乗せたチンクエチェントはまずラブの居る病院を目指す。

 病院ではやはりまだラブは目覚めていなかった。

 それでもICUのある病棟のナースステーションで、ラブへの私達の想いを記したメッセージカードを看護師さんに託した。

 ラブが目覚めた時この想いが届く様にと。

 そしていよいよ私達はヘリの待つ武山駐屯地を目指す。

 道中短い間ではあったが思い出話は尽きなかった。

 駐屯地に辿り着くと亜美さんのお蔭でそのままヘリポートまでチンクエチェントで入らせて貰えた、それなりの広さがあるのでそうでなければ大変だったろう。

 ヘリポートに待っていたのはフライングエッグこと観測ヘリコプターOH-6D。

 亜美さんはチンクエチェントを降りると早々に飛行前点検を始めた。

 暫くするとそれも終えエンジン始動、ローターがゆるゆると回り始める。

 遂に英子さんとのお別れの時が来た、私はヘリの音に負けぬ様に声を上げる。

 

 

「英子さん本当にお世話になりました、英子さんの事はずっと忘れません!」

 

「私もよ!千代美ちゃん、あなたに出会えて本当に良かった!」

 

「私もです!」

 

「また何時か、また何時の日にか会いましょう!」

 

「ハイ!必ず!」

 

 

 そう言うと英子さんは私を強く抱きしめてくれる。

 私もまた英子さんを強く抱きしめ返す。

 

 

「さあ、千代美さん行きましょう!」

 

 

 亜美さんが私を呼ぶ、名残惜しいがお別れだ。

 

 

「亜美!頼むわね!」

 

 

 英子さんの声に亜美さんが親指を立て応える。

 私が搭乗してベルトとヘッドセットを装着すると亜美さんの操縦でOH-6Dが浮かび上がる。

 機窓越しに見える英子さんに手を振ると英子さんも大きく手を振り返して来る。

 それが終わるのを待っていたかの様に空飛ぶ卵が横須賀の空に舞い上がって行った。

 さようなら横須賀、次に来る時はみんなが笑顔になれる様に。

 

 

 

 もう一度見やった眼下には美しく輝く横須賀の蒼い海が広がっていた。

 

 

 

 




高校編ではタグにある通りポンコツ展開がが出来ると思います。

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