ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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恋愛戦車道もいよいよ本編たる高校編に突入です。
どうかこれからも宜しくお願い致します。

高校編を始めるにあたり後付けになりますが、中学編を第一章としました。
それと自分で見直して気が付いたのですが、
プロローグでチョビ子の髪型をお下げとする処をポニーテールとなっていたので修正致しましたので御了承下さい。

それでは高校編のスタートです。


※御指摘頂いた誤字を修正致しました。



第二章 深紅の旋風
第一話   Love


 長い夏が終わった。

 

 波乱の第63回 戦車道 全国高校生大会。

 更に再び廃校を掛けての大学選抜と大洗連合の壮絶なる闘い。

 熱く長い夏は終わった。

 

 

 それから季節は少し進み心地よい風が吹き抜ける秋の富士の大地。

 ここ富士の裾野の広大な東富士演習場は今戦車で埋め尽くされている。

 国民の祝日である体育の日、この日は高校戦車道に於いて唯一、全戦車道履修校が一堂に集まる最大イベント、日本戦車道連盟主催の高校戦車道観閲式が行われる日なのである。

 まあ実際には全履修校とは言っても予算の問題で隊長車のみの参加校もあれば、黒森峰やサンダースの様な大所帯はある程度台数を絞ったり、大洗の様に元の数が少なければ全車参加する学校もありその参加スタイルはまちまちだ。

 なお、この戦車道観閲式、通常であれば主催の戦車道連盟の他、防衛省並びに文科省も列席するのが通例なのだが今回は文科省のみ出席を辞退というか自粛している。

 大洗を巡る一連の騒動に置いて、学園艦解体業者等との癒着、その他諸々の容疑で収監中の学園艦教育局長である辻廉太を筆頭に文科省内部でも二桁、民間業者を含めれば三桁に及ぶ人間が摘発されていれば当然と言えば当然の事。

 ぶっちゃけて言えば連盟重鎮にして西住流家元、更に言えば西住姉妹の母である西住しほの逆鱗に触れたが為、怖くて出て来れないのが本当の処。

 申し訳程度に祝電を送っているがこれもしほが握り潰している。

 でもこれも怖くて誰も何も言えないのだった。

 

 

「んっふふ~♪んッふふ~♪」

 

 

 大量の戦車が居並ぶ中を姉と仲良く手を繋ぎご機嫌で鼻歌なんか歌いがら歩く西住みほ。

 姉であるまほの表情はどうかと見れば、可愛いみほとこうして手を繋いで歩けるのは私だけだと言わんばかりの少々、いや、かなりウザいドヤ顔で歩みを進めている。 

 戦車道という狭い世界の事、事情を知る者も多く、周辺に居る者達が生温い視線を送っているのも当然と言えば当然の事かもしれない。

 それでも幾多の苦難を乗り越え、こうして再び共に歩む事が出来るようになった二人。

 今日は大学選抜戦に措いて力を貸してくれた者達に、履修全校が集まるこの機会に改めて二人で礼を言う為にこうして歩んでいるのであった。

 

 

「ねえ、お姉ちゃん」

 

「ん?なんだ?みほ」

 

 

 超甘々な優しい視線で応えるまほ。

 

 

「みんなにも改めてお礼も言えたし、私達の出番の午後の段までまだ時間があるじゃない?」

 

 

 何しろ履修全校の戦車による観閲行進ともなれば相応の時間を要する。

 

 

「そうだな、全国大会出場クラスは皆後段に回されているからな」

 

「それでね、せっかくだから普段会えない学校も多いし、珍しい戦車も多いから良かったらこのまま一緒に見て回れないかな?」

 

「そうか、そうだな。みほがそうしたいならそれもいいさ」

 

「えへへぇ♪ありがとうお姉ちゃん♪」

 

 

 嬉しそうにまほの腕に自らの腕を絡めるみほ、エリカ辺りが見たら沸騰しそうな光景だ。

 

 

「この辺りのエリアは新規履修校が集まってるみたいだけどコレって……」

 

「フム、どうも問題ありな戦車が多過ぎだな」

 

「うん、特にカヴェナンターがやたら多い気がする」

 

「あれは無駄に生産数が多いからなぁ」

 

「うぅ…この学校、八九式を三両も…う、うちのせいかなぁ?」

 

「気にするなみほ、きちんと調べないで飛び付くのが悪いんだからな」

 

「うん……」

 

 

 大洗の快進撃が始まって以降二匹目の泥鰌狙いで戦車道に力を入れる学校は多かった。

 結果として使用する戦車の需要と供給バランスが崩れ、市場は空前の戦車不足、更には便乗値上げにより購入価格の高騰も招いている。

 故に安物買いの銭失いな学校もかなりの数存在する様だ。

 

 

「うぇ?コンクリート戦車!?あれ?これっていいの!?」

 

「コッチの学校はゴリアテなんかどうする気だ?タンカスロンならともかく戦車道ではまず使用許可が下りないだろうに」

 

「うちも他所の事言えないけどコレはさすがに……」

 

「ああ、言っちゃ悪いがダメ戦車の見本市の様だ」

 

 

 半ば呆れつつ進む二人。

 

 

「あれ?この辺りは新設校なのかなぁ?」

 

「うん、そうだな、この私立三笠女子学園というのは聞いた事の無い名だな」

 

 

 二人はそれが校章旗なのか信号旗のZ旗を掲げた学校のパドック前で立ち止まる。

 

 

「ここはⅢ号で統一してるんだね、長砲身の後期のJ型かぁ」

 

「うちでも使っているし良い戦車だが、それでもⅢ号が5両だけだとさすがに辛いだろう」

 

「うん、でもパッと見でも相当状態の良い車輛だと思う、整備も行き届いてるみたい」

 

「それに相当練度も高い様だな、この並べ方を見れば解る」

 

 

 そんな会話をしつつ今度は側面が見える位置に二人が移動したその時。

 

 

「お姉ちゃん!あれ!真ん中のⅢ号!」

 

「どうした?」

 

「よく見て!砲塔のパーソナルマーク!」

 

 

 みほが指差す先、Ⅲ号の砲塔側面に描かれた白縁取りに深紅のハートマーク、そしてその中心を貫く徹甲弾がまほの瞳に飛び込んで来た。

 

 

「そんな馬鹿な!?だってあれは…」

 

「もっとよく見て!」

 

 

 ハートマークの下部に掛かる弧を描くグリーンのリボンバナーに書かれたそのパーソナルネーム。

 

 

「Love Gun……」

 

 

 二人の脳裏に鮮烈な深紅のロングヘアの美少女の姿が蘇る。

 厳島恋(いつくしまれん)、嘗て不幸な事故の後忽然と姿を消した天才戦車乗り。

 仲間から親しみを込めラブと呼ばれ、その彼女に皆で考え送った友情の印。

 そしてそのラブの愛馬の呼称であるLove Gun。

 それが今、三年の時を経て二人の眼前に再び現れた。

 その時呆然とそのパーソナルマークを見つめる二人の頭上でⅢ号のコマンダーキューポラが開き、ひょこっと深紅の髪が顔を出し二人に上から声を掛ける。

 

 

「今日会えるとは思ってたけど、こんなに早く会えるとは思わなかったよ」

 

 

 ハッと声のする方を見る二人。

 

 

「元気だった?まほ!みほ!」

 

「ラ、ラブ!?」

 

「ラブお姉ちゃん…ほ、本当に!?」

 

「うん♪」

 

 

 その返事に何か言おうとするが硬直した二人は言葉が出ない。

 しかし目を猫の様に細めた美少女の微笑みに、みほが我に返ると叫ぶ様に言った。

 

 

「お、お姉ちゃんはここに居て!私みんなを呼んで来るから!」

 

「おい!み、みほ!」

 

 

 言うが早いかみほは全速力で走り去って行った。

 まほは再びラブに何か言おうとするがやはり言葉にならない。

 そんなまほの様子にラブも何も言わず小首を傾げ微笑んだまま見つめている。

 そしてそんな見つめ合いが続いていたその頃、みほは嘗ての仲間に声を掛ける為大汗を掻きながらパドックを駆けずり回りっていた。

 

 

「ケイさん!ナオミさん!」

 

「Wow!凄い汗!どうしたのみほ?」

 

「そんな事いいから!大変!」

 

 

 

「みほさん、そんなに慌ててどうしましたの?」

 

「ダージリンさん!呑気に紅茶を飲んでる場合じゃないです!アッサムさんも早く!」

 

 

 

「何よミホーシャ!そんなに引っ張らないで!」

 

「んも~!ノンナさん!カチューシャさんを担いででもいいから急いで!」

 

 

 

「アンチョビさん!アンチョビさんは何処!?」

 

「あ~?姐さんなら出店してる屋台の様子見に行ってるッスよ~、どうしたんスか~?」

 

「はぅぅ!こんな時にぃぃ!急いで新設校エリアに来るように言って下さい!」

 

「はぁ~?」

 

「とにかく急いで!Love Gunが!ラブお姉ちゃんが居るって言えば分かりますから!!」

 

 

 コック姿のままCV33から顔を出していたぺパロニにそう告げると、みほは再び全力疾走を始め、後から追いかけてきた面々もその二つの名に反応する。

 

 

「ちょっと!みほさん!今言った事はどういう事ですの!」

 

「言った通りです!だから急いで!」

 

 

 更に加速するみほを全力で追いかける一同、ノンナに抱えられているカチューシャは激しい上下動で既に目がぐるぐるの渦巻き状態になっている。

 そして再びみほが皆を引き連れ戻って来た時、混乱するまほは未だ言葉が出せずにいた。

 

 

「お姉ちゃん!みんなを連れて来たよ!!」

 

「あ、お…おぉ……」

 

 

 口をパクパクさせまほが指で指し示す先を見て硬直する一同。

 その姿にコマンダーキューポラから顔だけ出していたラブが声を掛ける。

 

 

「みんな来てくれたんだ~…ってな~に?幽霊でも見た様な顔して~」

 

 

 その懐かしいハスキーボイスと独特のしゃべり口調に一斉に目を見開く。

 

 

「ちゃんと脚もあるわよ~、待ってて、今そっちに行くわ~」

 

 

 そう言うとラブはコマンダーキューポラの縁に手を掛け身を乗り出そうとするが──。

 

 

「ぐっ…!」

 

 

 

 

 

 ボヨン!

 

 

 

 

 

 

 つっかえていたおっぱいが飛び出し盛大に揺れる。

 それを見た一同の胸中はといえば──。

 

 

『重力に負けてない…だと!?』

 

『ふぇぇぇ!?小山先輩やあけびちゃんが普通に見えるようぅ!』

 

 

『What the fu●k!これじゃもう勝てないじゃない!』

 

『17ポンド!』

 

 

『お、大きさじゃありませんわ!大事なのは形ですわ!』

 

『早々にGI6のデータを更新しないと!』

 

 

『こ、これは視覚的大粛清よ!』

 

『このサイズはカチューシャ様には不要!』

 

 

「えへへ、無駄に成長しちゃって」

 

 

 指先でぽりぽりと頬をかき照れるラブ。

 

 

「さて、ヨイショっと」

 

 

 改めてコマンダーキューポラから身を乗り出しラブが地面に降り立つ。

 

 

「なっ!?」

 

 

 更に言葉を失う一同だがそれも無理は無いかもしれない。

 元々背の高かったラブの身長は胸の成長同様更に伸びていて、仲間内で最も背の高いノンナを軽く上回る背丈となっていたのだ。

 

 

「いやあ、無駄に成長しちゃって」

 

 

 再び同じ様な事を言いつつ頬をぽりぽりするラブ。

 と、そこへ軽快なエンジン音を轟かせ一台の豆戦車が凄い勢いで突進して来る。

 

 

「うひゃあぁぁぁ!ど、どいてくれ!ソコを通してくれぇ~!」

 

 

 ぺパロニ操るCV33に箱乗りのアンチョビが絶叫しながら突っ込んで来る。

 

 

「あ!ソコだ!ソコで止めろぺパロニ!」

 

 

 アンチョビの叫びにCV33は皆の前でつんのめる様に急停車、付いた勢いそのままに堪らずアンチョビはCV33のハッチからでんぐり返しの様に転がり落ちた。

 

 

「ちょっとアンタ何考えてんのよ!危ないじゃない!」

 

 

 堪り兼ねたカチューシャが噛み付くが、聞こえてないのかアンチョビは転がり落ちて胡坐を掻いた姿そのままでぺパロニに怒鳴る。

 

 

「アイタタタ…コラ!馬鹿者!いきなり止めるヤツがあるかぺパロニ!」

 

「え~!?いきなり止めろと言ったのは姐さんじゃないスか~」

 

「お、おい大丈夫か?」

 

 

 まほに掛けられた声で我に返ったアンチョビはぺパロニに向かい指示を出す。

 

 

「と、とにかくお前は先に戻っていろ!」

 

「へ~い!」

 

 

 言われたぺパロニも渋々元来た方へCV33で戻って行く。

 そして呆気に取られる一同の前で再びアンチョビは声を上げた。

 

 

「ってそれよりLove Gunが!ラブがいるってホントなのか!?」

 

「ここだよ千代美♪」

 

 

 その声のした方へと首を巡らせアンチョビもまた硬直する。

 そんな姿にラブは視線を合わせるよう膝を突き両の腕を広げると嬉しそうにその名を呼ぶ。

 

 

「千代美!」

 

「あ、あ、あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~!」

 

 

 胡坐を掻いたの状態から四つん這いになり、わたわたとラブに這い寄るアンチョビをラブも更に両腕を広げ待ち受けている。

 そして自分の元に辿り着いたアンチョビを優しく抱き留めこう告げる。

 

 

「やっと会えた、ずっと会いたかったんだよ、千代美」

 

「アンチョ…いや!おまえ…い、今までぇぇ!」

 

「ごめんよ、今は千代美って呼ばせてよ…色々、そう私も色々あったんだよ」

 

 

 そう言いながら改めてアンチョビを抱きしめるラブ。

 

 

「でもね、あの時千代美が必死に頑張ってくれたからこうして帰ってこられたよ」

 

「ラブ…」

 

「だからね千代美、本当にありがとうね…あぁ!やっとお礼が言えたよ~♪」

 

「ば、ばかやろぉぉぉ…そんな事、そんな事……!」

 

「ごめん、本当にごめんよ千代美」

 

「本当に、本当にラブなんだな!?あぁ!その顔をもっとよく見せてくれ!」

 

 

 ラブの両の頬に掌を当て正面から見つめるアンチョビ。

 そして以前と違い右目のみ隠す様に長く落とした前髪を掻き上げたその瞬間、アンチョビの瞳は大きく見開かれその表情は凍り付き言葉を失った。

 以前にも増して美しく成長したラブのその顔、しかし長く落としていた前髪の下に隠れていた頬の上辺りから眉の辺りにまで達する深い傷痕。

 そう、あの欠陥砲弾がラブに刻み付けた無情の爪痕……。

 

 

「あ…あの時…やっぱりぃ…!」

 

「えへへ…こんなんなっちゃった。でもね、私こうして生きてるんだよ。だから帰って来られたんだよ、こうしてみんなの前に帰って来られたんだよ~♪」

 

 

 その言葉にとうとう堪え切れなくなったみほが声を上げ駆け寄り飛び付いて来る。

 

 

「ラブお姉ちゃん!」

 

「あはは♪ただいまみほ」

 

「おまえ!おまえぇぇ!」

 

「もう♪まほまで~?」

 

 

 みほに続きまほも飛び付いて来る、もうそうなると誰も皆堪え切れずにラブに向かって飛び付き、ラブも堪らずそのまま皆に押し潰される。

 

 

「んも~!みんな重いってば~♪」

 

 

 これまでにあまりにも多くの悲しみの涙を流して来た彼女達。

 あの悪夢の日から三年、それに耐え続けた彼女達の瞳からこの日ついに歓喜の涙が零れ落ちた。

 

 

 

 




ここまでが長かったけどやっとラブを活躍させられる。
けどこの先どんな風に転がるか自分でもまだ解りません。
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