ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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最近すっかり投稿日が一日ずれたままになってしまってます……。

遂に聖グロ留学編もこれで終わりですが、最後になってあのお方が登場しますw


第四十五話   偽ジリン降臨

「梅こぶ茶!梅こぶ茶!ええい、ラブは何処に行きました!?」

 

 

 夕暮れ時の紅茶の園、優雅さを何よりも重んじるその空間に轟く淑女らしからぬ怒声。

 その声の主であるダージリンは日頃口喧しくローズヒップに廊下は静かに歩くよう言っているにも拘らず、肝心の当人が今その禁を破るかのように肩を怒らせズカズカと足音も荒々しくラブの名を叫びながら廊下を突き進んでいた。

 

 

『全くとんだとばっちりだよ…何で私まであんなに嫌味を言われなければならないんだ……』

 

 

 砕氷艦の如く廊下を突き進むダージリンの後を重い足取りでトボトボと続くルクリリは、すっかりやつれた印象でガックリと肩を落とし疲れ切った様子だった。

 紅白戦形式で行われた聖グロ正規軍対ラブ率いるクルセイダー隊の実弾を使用した練習試合はラブとローズホップという台風コンビが無双した結果、聖グロ戦車隊に致命的なまでの大打撃を与えその損耗率は対AP-Girls戦に匹敵するレベルに達していた。

 更に今回の場合学園艦内の演習場を使用した為に、その修復に掛かる費用と時間は相当なものになる事は誰の目にも明らかだった。

 しかも今回練習試合を行うに当たり主導したのが既に隊長の職を離れたダージリンである事と、その彼女が隊長時代の癖で全てをほぼ独断で決定していた為にさすがに今までのように黙認しては貰えず、彼女とその巻き添えで現隊長あるルクリリは職員室に呼び出され今の今までネチネチと英国面溢れる嫌味交じりのお説教を喰らっていたのだ。

 ラブの留学も含め全ての発端が自分であるにも拘らず、まるでやらかしたローズヒップのような扱いを受けたダージリンはその怒りの矛先をラブに向けていたのだ。

 

 

「だけど結局最後の最後でダメを押したのは他ならぬこの私だしなぁ……」

 

 

 試合の最終盤ルクリリの放った17ポンド砲は、偶然の事とはいえ大学選抜戦に於いてみほが取った捨て身の戦法を遥かに上回る勢いでラブが騎乗するクルセイダーを加速させたが、元々ラブがそれを意図していたとはいえ宙を舞ったクルセイダーは大幅にその飛距離を伸ばしたのだった。

 そしてその結果チャーチルの砲塔にタッチダウンしたクルセイダーは砲身をへし折り、砲塔その物にも多大なる損害を与えていたのだ。

 しかも大学選抜戦でまほが撃った空砲と違いルクリリが使用したのは実弾であり、クルセイダーのお尻にも大穴が空いていた。

 クルセイダーがチャーチルの砲身に着地した段階でクルセイダーの砲塔上には白旗が揚がり試合の勝敗そのものはそこで決していたが、どうもその時のラブの様子からすると彼女の中での勝利条件はフラッグ車を倒す事ではなくダージリンを討ち取る事が目的のようであった。

 しかし学校側はそんな事情などお構いなしに発生した損害しか見ておらず、ダージリンはともかくその事で一緒にネチネチとお説教されたルクリリには少々気の毒な事であった。

 

 

「そんな事は御座いません!ルクリリ様は試合を決める完璧なウィニングショットで見事厳島様を討ち取られたのですから何ら気に病まれる必要はありませんわ!」

 

「うわっ!に、ニルギリいつの間に!?」

 

 

 胸の内のぼやきを自分でも気付かぬうちに声に出していたルクリリは、突如背後から全力で彼女の事を絶賛するニルギリの声に飛び上がる程驚くのだった。

 

 

「どうなされたのですかルクリリ様?」

 

「に、ニルギリ…あ、あまり驚かさないでくれるか……?」

 

 

 どうにかそれだけ言ったルクリリが廊下の先を見れば、怒りに任せ先に行ってしまったダージリンの姿は既に見えなくなっていた。

 

 

「…せっかちな人だなぁ……それよりニルギリ、お前はどうしてこんな所に?」

 

 

 巻き添えにした彼女を顧みる事なく一人先に行ってしまったダージリンに一つ大きな溜息を吐きながら肩を落としたルクリリは、何の前触れもなく現れたニルギリに不思議そうな顔をしている。

 

 

「ルクリリ様があまりにも遅いのでこうしてお迎えに上がりました…ですがそのご様子ですとやはりダージリン様のせいで何か言われたのですね?私、もうこれ以上ダージリン様の思い付きでルクリリ様が振り回されるのは我慢なりません!今日こそは私からダージリン様に意見させて頂きますわ!」

 

「いや!いいから!私なら大丈夫だから!な?」

 

 

 グッと拳を握り締め顎の先を梅干しにして意気込むニルギリを、これ以上事態をややこしくしてくれるなとルクリリは慌てて諫め始めた。

 

 

「ですがこのままという訳には!…そうですか……?それでは今夜はお疲れなルクリリ様をこの私がたっぷりと癒して差し上げますわ♡」

 

「う…!え……あ……そ、そうか……?」

 

 

 ぷるんぷるんで程良い天然たわわにそっと両の掌を添え妖艶に微笑んで見せるニルギリの雰囲気に押されたルクリリは、しどろもどろになりながらゴクリと息を飲むのだった。

 練習試合中ラブに怯えた彼女を奮い立たせる為に今夜はニルギリの好きしてよいからと自らを餌にしていたルクリリであったが、彼女の瞳の中に些か危ない光が宿っている事に色々と早まったかもしれぬと後悔し始めていた。

 

 

「…そのなんだ……お手柔らかに頼む……」

 

「あら?遠慮は無用ですわ……全て私にお任せ下さいませ♡」

 

 

 ニッコリと微笑みながらも、彼女の舌がチロリと唇を這うのをルクリリは見逃さなかった。

 

 

『明日の朝起きられるかなぁ…てか寝かせてもらえるのか……?』

 

 

 暗澹たる気持ちで天を仰いだルクリリだったが、同時に下腹部の奥が熱く疼くのも自覚していた。

 

 

 

 

 

「そうそう、こんな話をご存じ?キュウリは世界一栄養が少ない野菜としてギネス認定されているのよ……更にバンコクの正式な名称はクルンテープ・マハーナコーン・アモーン・ラタナコーシン・マヒンタラーユタヤー・マハーディロックポップ・ノッパラッタナ・ラーチャターニー・ブリーロム・ウドム・ラーチャニウェート・マハーサターン・アモーンビーマン・アワターンサティト・サッカタットティヤ・ウィサヌカム・プラシットなの、そして品川駅の直ぐ南にある駅は北品川駅なのよ」

 

『そ…それは只の豆知識ぃぃぃ……!』

 

 

 鼻息荒くダージリンが辿り着いた紅茶の園では、嘗て熊本は西住家でアンチョビの偽ンジペコと共に演じ笑い地獄を生み出したダージリンの物真似、偽ジリンをラブが披露していた。

 だが彼女のポニーに結って尚腰に届く長い髪は()()()()()()()されてはいるものの、編み方は極めて雑であり、そのシルエットは最近ではネタ扱いされがちな某国民的アニメの主人公、サ●エさんのようであった。

 そしてそれを編んだのは頭の後ろで手を組み、わざとらしく口笛を吹いたりしてとぼけている様子からしてもローズヒップであるのは間違いないだろう。

 その悪意満点にダージリンの特徴を見事に捉えた物真似を前に、紅茶の園に集ったティーネームを与えられた者達はいつ現れるか解らぬダージリンを警戒して必死に笑いを堪えていたが、その腹筋はEMSマシンでも使っているかのように激しい痙攣を繰り返していた。

 

 

「くっ…ぷひっ……!」

 

 

 そしてついに現れその物真似を目にし怒りのあまり言葉を失いプルプルするダージリンの姿に、堪え切れなかったオレンジペコが妙な笑い声を漏らせば、全員一斉にダージリンに背を向け肩を震わせ更なる地獄を味わう事になった。

 尚、職員室呼び出しを華麗に躱し一足先に紅茶の園に戻っていたアッサムは、ラブの偽ジリンを前に敢え無く撃沈し床に転がり過呼吸でピクピクしていた。

 

 

「こ…こ……ここここの牛乳女(うしちちおんな)!今日という今日は許しません!成敗してくれます!そこになおりなさい!」

 

「ぶふぉ!」

 

「ルクリリ様!?」

 

 

 怒髪天を突いたダージリンの怒りが爆発した瞬間、その背後で全てを目撃してしまったルクリリの疲れ切った腹筋はそれに耐えきる事が出来なかった。

 

 

「あ…す、すまにゃひ(すまない)にひゅぎひ(ニルギリ)……」

 

 

 その光景に唖然とするニルギリにどうにか絞り出すようにそれだけ言ったルクリリは、泣き笑いのような顔で踵を返すと後ろも見ずに走り去ってしまった。

 

 

「あ…ルクリリ様……!?」

 

 

 後に残されたニルギリが我に返るなり慌ててその後を追えば、それまで耐えていた者達の腹筋も遂に決壊し紅茶の園は狂ったような笑い声に包まれるのであった。

 

 

「も…もうダメ……!」

 

「と、特徴捉え過ぎ!」

 

「そ、その目つきヤメてぇ……」

 

「い…息が出来ない……!」

 

『ぶははははははは!』

 

 

 カオスと化した紅茶の園、歯止めを失い笑い続ける少女達にラブは尚も容赦なく偽ジリンでどうでもいい豆知識を披露し続け彼女達の腹筋に試練を与え続けた。

 

 

「ラブ!いい加減になさい!」

 

「あら!?ダージリン様何をそんなに怒っていらっしゃいますの~?」

 

 

 ブチキレたダージリンがラブに掴みかかったが、日頃から鍛えているダンスステップで胸のたわわを上下左右に盛大にぷるんぷるんさせながらもラブは軽々とそれを躱し続け、その一方で動きに無駄の多いダージリンは徐々に息が上がり始める。

 

 

「お待ちなさいと…ゼェゼェ……言って……ゼェゼェ…いるのです……」

 

 

 そして遂には大振りな動きでラブを捕まえ損なったダージリンは、勢い余ってそのままガックリと床に膝を突いてしまうのだった。

 

 

「あらあら?ダージリン様も存外体力がなくていらっしゃるのね…それとも現役を引退してすっかり身体が鈍っているのかしら……?」

 

「……!」

 

 

 この程度では息も上がらず汗ひとつ掻かないラブは余裕の笑みでへたり込んだダージリンの顔を挑発するようなセリフと共に覗き込むが、彼女はもう何も言い返す事が出来なかった。

 

 

「ねぇ、ダージリン……」

 

「…なんです……?」

 

紅茶の園(ここ)に来た時から気になってたんだけどアレって使えないの?」

 

「……?」

 

 

 怒りに任せた動きで無駄に消耗しへたり込んだダージリンに満足したのか、はたまた単におちょくるのに飽きたのか、唐突な質問をダージリンに浴びせた。

 だが肩で息をするダージリンはラブの言っている事が直ぐに理解する事が出来ず、胡乱な目で自分を覗き込んでいたラブを見上げれば既に彼女はダージリンを見てはおらず、代わりに紅茶の園の片隅へとその視線を向けていた。

 

 

「一体何を言っていますの……?」

 

 

 散々振り回された挙句興味を失ったようにその視線を他所へと向けるラブにイラっとしながらも、ダージリンも彼女の視線を追ってその方向へと目を向けた。

 

 

「アレって……」

 

 

 その彼女の視線の先にあったのは埃を払う程度の掃除はされているが今では誰一人弾く者なく、単なるインテリアという名のお飾りになっているグランドピアノがあった。

 

 

「ねぇ、あのピアノって弾けるの?それとも弾けないの?ねぇどっち?」

 

「そんな事急に聞かれても……」

 

 

 彼女が聖グロに入学しダージリンの名を冠され紅茶の園に足を踏み入れてから今日まで、そのピアノを誰かが弾く姿を一度も見た事がなく、過去に誰か弾く者がいたかすらも知らなかった。

 

 

「…誰も弾いているのを見た事がないから解りませんわ……」

 

「なら弾いてみてもいい?」

 

「それは構いませんけど……」

 

 

 すっかり毒気を抜かれたダージリンがどうにかそれだけ答えると、もう彼女の事など眼中にないかのようにラブは軽い足取りでピアノの方へと向かっていた。

 

 

「もう…何なんですの……?」

 

 

 訳が解らずムッとするダージリンを他所にピアノに歩み寄ったラブはまずは専用の椅子に座りその高さを確かめたが、ノンナより軽く10㎝は上回る高身長の彼女にはおそらく一般的な身長の女子高生に合わせた高さの椅子は少々低過ぎたようだ。

 

 

「か…硬い……」

 

 

 一体最後に使われたのは何時の事なのか、長年放置されたままであったらしいピアノ専用の椅子はその高さ調節機構もすっかり固着し、ラブは暫くその椅子と格闘する事になった。

 

 

「よし…出来た……全くいつからほったらかしだったのよ?さて、後は肝心のピアノだけど……」

 

 

 椅子に腰を下ろしたラブはその高さを確認すると、立ち上がって今度はグランドピアノの蓋にあたる前屋根と大屋根開いた後に再び椅子に腰を下ろした。

 

 

「ん~、後は肝心の鍵盤とペダルだけど……」

 

 

 鍵盤蓋を開き鍵盤に軽く指を乗せたラブはやや不安げな面持ちで軽く一つ深呼吸をすると、滑らかな動きで鍵盤に乗せた指を滑らせ始めるのだった。

 

 

「少し鍵盤が重いけど、どうにかギリギリ調律の方は大丈夫か……ペダルの方も問題ないようね」

 

 

 この頃になると偽ジリンに死ぬ程笑わされのたうち回っていた者達も復活し、何が起き始めたのかと固唾を飲んでラブの様子に注目し始めていた。

 

 

「うん、どうにか行けそうだわ♪」

 

 

 暫くの間特に何か曲を弾くでもなく鍵盤の感触とその音色を確かめていたラブは、漸く納得したようにその指の動きを止めるとダージリン達の方へと向き直った。

 

 

「フム…このままじゃちょっとアレね……ねぇロージーちょっといい?」

 

「何ですの梅こぶ茶?」

 

 

 ラブにその愛称で呼ばれたローズヒップは、まるで子犬のようにラブの下へと駆け寄って行く。

 

 

「折角編んで貰ったのに悪いんだけど、この髪解いてくれる?」

 

「それ位お安い御用ですわ!」

 

 

 椅子に座ったラブの背後に回ったローズヒップが自らが雑に編み込んだラブの深紅の髪を解き解せば、解放された長く緩やかに波打った髪が滝のように床に届いた。

 窓から差し込む夕日に照らされた彼女の深紅の髪はまるで燃えるかのような眩い光を放ち、その美しい輝きにそこに集う少女達の唇から一斉に溜息が漏れた。

 

 

「それじゃ後はこれで纏めて貰える?」

 

「ハイですの♪」

 

 

 ラブが手渡した愛用の七宝のリング状の髪留めを受け取ったローズヒップが、その指通りの感触にうっとりとしながら髪を纏めて行く。

 

 

「さぁ出来ましたわ♪」

 

「ありがとロージー♪」

 

 

 ラブが振り向きニッコリと微笑みながら礼を言えば、ローズヒップも笑顔でそれに答えた。

 そしてラブがピアノに向き直ればローズヒップもそのままその場を離れる事なく、椅子の背もたれに手をかけ何が始まるのかと興味深げな顔でラブの手元を覗き込んでいた。

 

 

「今回は短期過ぎて忙しかったから中々こんな機会もなかったしね……まぁでもなんだかんだで結構楽しませて貰ったから、これはちょっとしたお礼とでも思ってくれればいいわ」

 

 

 そこで少し考え込んだラブは直ぐに何か思い付いたらしく軽く振り向くと、椅子の背もたれにかけられたローズヒップの手に自らの手を重ね優しく微笑んで見せた。

 

 

「うん、この曲はこの三日間私をちゃんと同級生として扱ってくれたロージーに捧げるわ♪」

 

「まぁ♪マジですの?」

 

「えぇ♪マジですわ」

 

 

 思わぬサプライズに目を輝かせるローズヒップに、すっかりローズヒップ語をマスターしたラブが答えピアノに向き直った。

 

 

「よし…それじゃ始めるわね……」

 

 

 ゆっくりと大きく息を吸い込んだラブの指が軽やかなタッチで鍵盤を弾き彼女がローズヒップの為に選曲したバラードのイントロを奏で始めた。

 

 

 

 

 

「ん…なんだ?ラブ先輩……?あれ…?あのピアノ弾けたんだ……」

 

「ルクリリ様……」

 

 

 偽ジリンがもたらす破壊力に耐えられず紅茶の園から逃亡したルクリリとそれを追ったニルギリが、漸く呼吸も落ち着きほとぼりも冷めた頃かと恐る恐る戻ってみれば、丁度そのタイミングでラブがピアノを弾き始めた処であった。

 

 

「Some say love, it is a river──」

 

 

 多くのミュージシャンにカヴァーされ、愛は河だと言う人がいるなど様々な和訳もなされたバラード曲、そのタイトルからローズヒップのティーネームに掛けて選んだであろう名曲をラブの特徴的なハスキーボイスが朗々と歌い上げる。

 最初こそ興味津々にラブが何を始めたのかと好奇心丸出しでその様子を見守っていた者達も、練習試合と偽ジリンの破壊力に疲れ切った身体にその声が沁み込むと、皆一様にうっとりとした表情でその心地良さにその身を預け始めていた。

 

 

「In the spring becomes the rose……」

 

 

 曲の最後のフレーズをラブがしめやかに歌い終えそれと共にピアノの音も消え行くと、紅茶の園にはほんの一時静寂の時間が訪れた。

 しかし暫くするとラブの背後に佇んでいたローズヒップが、少し不思議そうに声を漏らした。

 

 

「あら?あらら?おかしいですわ!何で涙が零れるんですの!?」

 

 

 びっくりしたような表情のローズヒップの頬を一筋の涙が伝い落ちる。

 しかしそれを合図に其処此処ですすり泣きのような声が漏れ聞こえ、それを皮切りに感極まった少女達の嗚咽の声が紅茶の園に溢れるのであった。

 

 

「あなたズルいですわ…こんな事をされたらもう怒れないじゃない……」

 

 

 その青い瞳一杯に涙を溜めたダージリンがそれをそっとハンカチで拭った後、無理して作った咎めるような表情でラブに異議を申し立てた。

 だがそんなダージリンの様子に苦笑しながら椅子から立ち上がったラブは、そっとローズヒップの肩に手を回すとそのままアッサムの下へと彼女を誘いその身を預けるのだった。

 

 

「今回クルセイダー隊を預けて貰った事で指導者としての私自身、新たな発見もあったし勉強にもなったわ……まぁだからこれはその事に対する私からの細やかなお礼よ」

 

 

 ダージリンに向き直ったラブは軽く肩を竦めながら今度は寄り添うルクリリとニルギリに向かって微笑んで見せ、不意打ちを喰らった二人は頬を赤らめ俯いていた。

 

 

「あの…ルクリリ様……」

 

「全くあの(ひと)には敵わないや……」

 

 良い雰囲気の二人にラブが微笑みを向ければ、ニルギリは熱っぽく潤んだ瞳でルクリリを見上げ、全てを見透かされたような気になったルクリリは苦笑するしかなかった。

 笑って怒って泣いて、絵に描いたような悲喜交々と共に窓の外の日は没し、ラブは聖グロ短期留学最後の夜を迎えるのだった。

 

 

 

 

 

「ま…期待はしてなかったけどね……」

 

 

 聖グロ短期留学最終日も当然のように英国面全開な晩餐が供された結果、食堂に集った戦車道チームの隊員達の間に漂う空気は何とも微妙になったが、そこはラブが機転を利かせローズヒップと共に場を賑やかせた事で危機は回避していたのだ。

 しかし最後の最後までやらかしてくれた寮の食堂に、ダージリンは絶望的な表情で項垂れマジでヘコんでいた。

 

 

「こ、今回私は何も口出ししていないわ…それともう固焼きはありませんからね……」

 

「大丈夫よダージリン、これも含めてまぁいい思い出になったわ……」

 

 

 どうにか吹き出しそうになるのを堪えながら何とかラブが軽く笑いながらそう答えれば、それは却って逆効果だったらしくダージリンは更に項垂れるのだった。

 眉尻をへにょっと下げ困った顔でラブがアッサムへと目をやれば、彼女もまた無言でスッと肩を竦めるだけで何も言わなかった。

 

 

「冗談はさて置いてさ…これはルクリリさんにとっての課題になるかな……?これからはロージー達を上手く使ってね、まだ粗削りだけど彼女達の存在は新生聖グロ戦車隊にとって欠かせない戦力になるようお膳立てしたつもりだから」

 

 

 あまり堅苦しくならないよう意識しながらも、ラブは世代交代と共に古い慣習からチームを脱却させるべく奔走して来たダージリンに自分の思いを伝えるのだった。

 

 

「えぇ…私の卒業前に厳島流家元を本校に招く事が出来た事は僥倖と言う他はないわ……」

 

 

 それまでと態度を一変させたダージリンがラブに向かい頭を垂れた。

 その厳粛な表情と態度は幼馴染で親友であるラブに対してのものではなく、厳島流家元の厳島恋に対してのものであった。

 だが最初こそそんなダージリンの態度をラブも姿勢を正し受け入れていたが、それも長くは続かず直ぐに砕けた調子で苦笑し始めていた。

 

 

「そんな風に言われるとこそばゆいわぁ……何しろロージー達はああいう子達だからさ、ダージリンにしてもルクリリさんにしてもクルセイダー隊に対しては寛容を以って応じて欲しいワケよ」

 

「ハイハイ解りました…あのローズヒップのやる事にに一々目くじら立ててたら身が持たぬという事でしょ?肝に銘じて置きますわ……でもそれって結局は今までと何も変わらないって事かしら?」

 

 

 ラブの少しおちゃらけた物言いにダージリンもいつもの調子で応じれば、二人揃って目が合った途端にクスクスと笑い始めていた。

 

 

「さぁ二人とも話が済んだのならこっちにいらっしゃいな、お茶が入りましたよ?今夜は取って置きの栗羊羹を切りましたわ」

 

 

 二人が落ち着くのを見計らっていたかのように、絶妙のタイミングでアッサムがままごとサイズの小さな卓袱台の向こうで手招きしている。

 それに応じ頷きあった二人が卓袱台の前に腰を下ろせば、その後は就寝までのひと時を三人は懐かしい小学時代の思い出話なども交え和やかに過ごしたのであった。

 

 

 

 

 

「ルクリリ様……♡」

 

「あ…ニルギリそこは……♡」

 

 

 ドタバタの三日間であったが最後の夜をラブ達が談笑に興じる一方で、一部には朝まで熱く激しい近接戦闘を繰り広げる者達もいたようだ。

 そして話し疲れた彼女達が三人揃って床に就いた深夜、ふと目を覚まし身を起こしたダージリンが隣で穏やかな寝息を立てるラブに目をやれば、カーテンの隙間から差し込む月明かりがその美しく整った顔を照らしていた。

 だがいつもは長く落とし顔の右半分を覆い隠す前髪が流されて、彼女の顔に深く刻み付けられた傷を目にした途端、薄闇の中ダージリンの瞳から零れ落ちた一筋の涙が月明かりを受けて光りながら頬を伝い落ちて行った。

 

 

「どうしたのですダージリン……?」

 

「アッサム……」

 

 

 ダージリンが身を起こした際の衣擦れの音で目を覚ましたらしいアッサムが、ラブを起こさぬよう配慮して小声でダージリンの名を呼んだ。

 

 

「何故…何故ラブだったのでしょう……何故時間は巻き戻せないのでしょう……」

 

「ダージリン……」

 

 

 囁くように呟きながらラブの右頬に奔る凄惨な傷跡を、ダージリンが労わるようにそっと撫でれば、それだけで彼女の想いが痛い程解ってしまうアッサムの頬にも一筋の涙が伝い落ちた。

 二人の彼女への想いに包まれて、ラブは一人穏やかに寝息を立て続けていた。

 

 

 

 

 

「それじゃあまたね♪」

 

 

 この三日間身に着けていた聖グロの制服から着慣れた笠女の制服に戻ったラブが、勢揃いで見送りに出て来たダージリン達と別れの挨拶を交わしている。

 その背後では既に到着していたItsukushima Oneがラブが搭乗するのを待っており、それが別れの時間が近い事をその場に集った者達に知らせていた。

 

 

「本当に残念ですわ!いっその事ラブは笠女に帰らずにこのまま聖グロに残って、梅こぶ茶のまま私と一緒にクルセイダーに乗り続ければいいのに」

 

『オイオイ……』

 

 

 ラブの帰り際になってもアホな事を宣うローズヒップに呆れたダージリン達がすかさず突っ込みを入れるが、彼女の誘いにラブも満更でもなさそうな顔をしている。

 

 

「そうねぇ…それも魅力的なお誘いねぇ……♪」

 

『オイオイ……』

 

 

 ローズヒップのアホな提案に嬉しそうに乗っかろうとするラブに、呆れた一同が速攻で突っ込むがさすがにラブも即冗談よと返していた。

 

 

「でもまぁ愛達も待ってるし今日の処はこれで帰るわ……でもロージーとクルセイダーに乗れて本当に楽しかったわ♪」

 

『うわぁ……』

 

 

 自分では気付いていないようだが、AP-Girlsではなく愛達と口にしたラブの一瞬の表情の変化をダージリン達は見逃しておらず、彼女が見せた危ない表情に皆一斉にドン引きするのだった。

 そして軽いステップで手を振りながらラブが搭乗したItsukushima Oneが冬空に舞い上がりその姿が見えなくなり隊員達が散り始めた頃、それまで平静を装った表情でそれを見送っていたルクリリがこの三日間で最大の溜息を洩らしそれに合わせガックリと肩を落としていた。

 

 

「どうしたのですルクリリ?」

 

 

 それまで空に溶け込むまでItsukushima Oneを見送っていたダージリンが、ルクリリの溜息を聞きつけ振り向きざまに妙な顔をしていた。

 

 

「…昨日の練習試合の被害総額、一体いくら位になると思います?多分AP-Girls戦と大して変わらない額になると思いますよ……それどころか、今回は設備面の修復整備もある分もっと行くでしょうね……私授業が始まる前にそれらの申請書類を提出に行かねばならないのですが、その事情説明にはダージリン様も同行して頂きますからね」

 

「がっ!」

 

 

 昨日の試合終了後散々お小言と嫌味を頂戴してしているのに、今日もまた朝からそれを聞かねばならぬ事にダージリンは妙な声を上げ絶句するのだった。

 そして改めてラブがもたらした大破壊の結果に、思わず愚痴を漏らすダージリンであった。

 

 

「ものには限度というものがあるでしょうに……」

 

 

 

 

 

「今日は朝から疲れましたわ……」

 

 

 ルクリリによって半ば強制的に職員室に連行されたダージリンは、現隊長であるルクリリと共に昨日の練習試合で発生した損害の特別予算の申請書類の提出と事情説明に時間を費やし、その間延々と事務方の職員から嫌味を聞かされ続けた結果すっかりやさぐれ疲弊していた。

 

 

「ダージリン様!」

 

「どうしました……?」

 

 

 紅茶の園へと向かう途中ダージリンに駆け寄り声をかけて来たのは整備班の班長であったが、日頃は職人気質で落ち着いた印象のある班長が今日は何処か慌てた様子であった。

 

 

「先程我が校に戦車を納める代理店の輸送機が来ましてね…それで昨日の試合で損害の出た車両を回収して行ったのですがダージリン様は何か聞いておられますか……?」

 

「何ですって……?」

 

 

 寝耳に水といった顔でダージリンが聞き返せば、班長はやっぱりといった感じで溜息を吐いた。

 

 

「代理店の担当営業曰く今回の依頼は厳島の代表の名で回って来たそうで、その支払いも全て厳島持ちだと言ってましたが…ダージリン様は本当に何も聞いておられなかったのですね……?」

 

「も、ものには限度というものがあるでしょうに……」

 

 

 金にモノを言わせるとはこの事かという事態を前に、ダージリンは青い顔で絞り出すような声でそれだけ言うのがやっとであった。

 

 

「あぁそうそう、代理店の営業の方がダージリン様宛の預かり物をして来たそうで、先程その荷物は寮の部屋の方へと運んでおきましたので」

 

「……?」

 

 

 何の事か解らぬダージリンが怪訝な顔をする中、整備班の班長はそれだけ言うと挨拶もそこそこに軽く手を上げ立ち去って行くのだった。

 

 

 

 

 

「全くこれだから金持ちは……」

 

 

 一体どれ程の金を積めばそんな事が可能なのか、実質全車メーカー回収に等しいやりように改めてラブの家が桁外れな金持ちである事を実感させられたダージリンは、据わった目でぶつくさ言いながら寮に戻ると自室へと続く階段を登っていた。

 

 

「もういい加減になさい…感謝こそすれ文句を言う筋合いはないでしょうに……」

 

 

 学校から寮へと戻る道すがら、終始ブツブツと言っていたダージリンにすっかり呆れたアッサムはいくら言っても聞かぬダージリンを投げやり気味に諫めていた。

 

 

「だってここまでされたら今後何かとやり難くなるでしょう…きゃっ!?って、え……?な、何コレ……コレは一体なんですの……!?」

 

 

 部屋の扉を開け中に入ろうとしたダージリンは、いきなり何か壁のような物にぶち当たり部屋の外へと弾き飛ばされていた。

 

 

「段ボール…ですわね……」

 

 

 ダージリンの後に続いていたアッサムは、彼女が弾き飛ばされ自分の方へと倒れ込んで来たのを華麗に躱すと部屋の入り口を塞ぐ物体の検分をしていた。

 

 

「いたた…もう……あなたって本当に薄情ですわね」

 

 

 アッサムに躱され尻餅を突いたダージリンはお尻をさすりながら立ち上がると、アッサムの後ろから部屋の中を覗き込んだ。

 

 

「これって……」

 

「えぇ、あなたがお取り寄せした固焼き煎餅の大箱ですわね……」

 

 

 部屋の入り口を塞ぐ物、いや入り口処か部屋一杯に詰め込まれたその箱は全てラブが滞在中に食べ尽くしたダージリン取って置きのちょっとお高い固焼き煎餅の箱であった。

 

 

「は…これ全部あの固焼きですの……?」

 

 

 呆気に取られるアッサムを他所にプルプルと肩を震わせ始めたダージリンは、堪り兼ねた様子で拳を握り締め遂に爆発した。

 

 

「ものには限度というものがあるでしょうに!」

 

 

 その後二人が部屋を埋め尽くした段ボールを取り敢えずは廊下に運び出し、生活空間を確保するまでに約1時間を要したという。

 

 

 

 

 

「ダージリン!ダージリンは何処!?」

 

 

 ラブが短期留学を終え笠女学園艦に帰艦した数日後、紅茶の園へと続く廊下を怒声と共に憤怒の形相で突き進む一人の人物の姿があった。

 

 

「お待ち下さい!お待ち下さい()()()()()()様!」

 

 

 後を追う現隊長であるルクリリを置き去りにする勢いで突き進む女性、ダージリンが引退した今先々代隊長となったアールグレイは、ただ事ではない怒りようでダージリンを探していた。

 

 

「げ…しまった……こ、これはアールグレイ様御機嫌よ──」

 

「私相手にすかした口利くなって言ったろうが!」

 

「ひっ!」

 

 

 突如現れたアールグレイの声を聴いた瞬間、全てを察したダージリンが慌てて取り繕うと口を開きかけたが、アールグレイは彼女にそれ以上何かを言わせる暇を与えなかった。

 ラブのデビュー後彼女にどハマりしていたアールグレイは、聖グロ戦の際のライブチケットを手にいれる事が出来ずラブに会う事が叶わなかった。

 更に後になってダージリンとアッサムがラブと幼馴染である事を知り、そんな彼女達が自分とラブを引き合わせなかった事に理不尽な怒りを炸裂させたのだった。

 そんな彼女は今回のラブの聖グロへの短期留学の顛末をAP-Girlsの公式ページとオンエアされたばかりのAP-Girls TVで知り、今回もその件をダージリンが自分に知らせなかった事で激怒しこうして乗り込んで来たのだ。

 

 

「アンタ…またやってくれたわね……何で私とラブお姉様の出会いのチャンスを潰すのよ!?」

 

「で…ですからラブはアールグレイ様より年下で……」

 

 

 どうにかそこまで言いかけたダージリンであったが、何処か箍が外れかけた様子のアールグレイに睨まれ再び黙り込むのだった。

 

 

『マズい、非常にマズいわ…それにしてもアッサムは何処?ついさっきまでここにいたのに……』

 

 

 実はダージリンより先にアールグレイの来襲に気付いたアッサムは、状況的に確実に足手まといとなるダージリンを置き去りに単身紅茶の園からフェイドアウトしていたのであった。

 更に時を同じくオレンジペコもまた紅茶の園から逐電すると、着の身着のまま高速連絡艇に飛び乗るって大洗の学園艦目指し逃走を果たしていた。

 

 

「あら!?そこにいらっしゃるのはアールグレイ様ではありませんこと!?今日は一体どんな御用でお越しになられましたのでございますの!?」

 

 

 相変わらず廊下を走るなという言いつけを守る事なくハイテンションで紅茶の園に駈け込んで来たローズヒップは、頭のてっぺんから突き抜けるような声と共にアールグレイの前に現れたのだった。

 

 

「ろ、ローズヒップ!あ、あなた……!」

 

 

 ローズヒップの登場でこれ以上傷口が広がっては堪らぬとダージリンは彼女の暴走を止めようとしたが、その程度で止められれば日頃からダージリンも苦労しなかったはずだった。

 

 

「ローズヒップ…あなたラブお姉様の留学中ずっと一緒にクルセイダーに乗っていたそうね……それ以前に笠女に短期留学してAP-Girlsと同じステージに立って……そうよ!オレンジペコも留学してラブお姉様とあんなに楽しそうにAP-Girls TVに出て!」

 

 

 自分が未だにラブと出会う事が出来ぬのに後輩であるローズヒップがラブと一緒にステージに立った姿を思い出したアールグレイは、更にオレンジペコの事も思い出しその言いようのない悔しさに目尻に浮かんだ涙をそっと拭うと新たな怒りの視線をダージリンに突き付けるのだった。

 

 

「ラブお姉様……?あぁ梅こぶ茶の事ですわね♪」

 

「ローズヒップ!」

 

「梅こぶ茶?ダージリン……?」

 

 

 空気読めないアホの子モード全開なローズヒップの暴露攻撃にアールグレイは妙な顔をしながらもダージリン睨み付け、ダージリンは真っ青な顔で目を泳がせていた。

 

 

「ねぇダージリン…どういう事か当然説明してくれるわよね……?」

 

 

 背筋の凍るような猫撫で声と共にダージリンの背後に回ったアールグレイがそっと彼女の肩に手をかけたが、その手は徐々に移動しいつの間にか首に回されていた。

 

 

「ぐ…あ゛ーる゛ぐれ゛い゛ざま゛……ぐる゛ぢぃ゛……」

 

 

 遠のく意識の中何とか難を逃れようとするダージリンであったが、そんな彼女の傷口に塩を塗り込むように助け舟を装った超天然魚雷が絶妙なタイミングで発射された。

 

 

「あら!?アールグレイ様、それならこの私が教えて差し上げますわ!梅こぶ茶はそこにいらっしゃるダージリン様がラブの為に特別に用意したティーネームでございますのよ!」

 

「ろ゛~ずひ゛っ゛ぶ……」

 

 

 悪意なき暴露をかますローズヒップにこれ以上余計な事を言われては堪らぬとばかりに、青い顔のダージリンはウィンクやゼスチャーで必死にサインを送っていた。

 

 

『…ダージリン様、ローズヒップにそんな腹芸が通じる訳ないでしょうに……』

 

 

 アールグレイを追って紅茶の園に飛び込んでしまったルクリリは、ここまで自分に飛び火せぬ事を祈りながら直立不動で事態の静観を決め込んでいたが、最早そんな当たり前の事も判断出来なくなっているダージリンにそっと心の中で突っ込みを入れていた。

 

 

「梅こぶ茶…ラブ……ダージリン……?」

 

 

 未だ会えぬ『ラブお姉様』を呼び捨てにするローズヒップに嫉妬心を抱くアールグレイの両手は更に力がこもり、ダージリンの視界は徐々にぼやけ始める。

 

 

「アールグレイ様!私ラブとはニックネームで呼び合うマブダチですのよ!」

 

「ダージリン……」

 

 

 ローズヒップの口が滑る度にアールグレイの声のトーンも下がって行く。

 そして怒りの矛先がダージリンだけではなくローズヒップに向きかけたその時、まるで図ったようなタイミングで校内放送がローズヒップに職員室への呼び出しがかかった。

 

 

「あら!なんですの急に?ええとアールグレイ様……?」

 

 

 小首を傾げたローズヒップがアールグレイに向き直れば、水を差される形になった彼女は急速にローズヒップへの興味を失ったように何処へでも行けといった風にヒラヒラと手を振った。

 

 

「それではアールグレイ様、失礼致しますわ!でも急に職員室に呼び出しなんて今週はまだ何も学校の備品を壊していないのになんでしょう……?もしかしてレストアしたモデルH(トライアンフ)で学院長の花壇に突っ込んだのがバレたんですの?」

 

 

『オイ……』

 

 

 立ち去り際ポロリととんでもない事をゲロったローズヒップにルクリリは再び心の中で突っ込みを入れたが、彼女はそれ以前に突っ込みを入れたい人物がいた。

 

 

『今の校内放送声を作っちゃいるが絶対アッサム様の声だったよな…って事はアッサム様は何処かで様子を窺っていた事か……だけどそれに気付かぬお二人もなぁ……』

 

 

 ローズヒップが姿を消した結果、アッサムの怒りはダージリン一人に集中する事になった。

 

 

「ねぇ!早く私をラブお姉様に会わせなさいよ!聞いているのダージリン!?決めた!私ラブお姉様に会えるまで帰らないわよ!」

 

「ひぃぃぃ……」

 

 

 アールグレイはギリギリとダージリンの首を締め上げながらガクガクと前後に揺さぶっている。

 

 

「子供ですか…あ…終わった(落ちた)……」

 

 

 思わずルクリリがそう呟いた瞬間、白目を剥いたダージリンの首はガクリと傾いていた。

 しかしアールグレイはそれに気付く事なく、いつまでもダージリンを揺さぶり続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 っと、まぁこれが梅こぶ茶留学事件の顛末な訳なんですがね…最初に申しましたようにダージリン様は今も居座るアールグレイ様のせいでポンコツなままだし、まんまとローズヒップだけ助け出したアッサム様も行方知れず……ペコのヤツはまず間違いなく大洗の梓の所にいるはずなんですがね……全くどいつもこいつも厄介事全部私に押し付けてトンズラしやがって……いっそ全部ラブ先輩にチクってやろうかなぁ……え?そんな事したらもっと事態がややこしくなるだろうって?別に構いませんよ…ここまで来るともうどうなろうと大して変わりませんって……あぁ、ニルギリが呼んでいますので私もこの辺で失礼致します……ハイ?何だかんだでお前も楽しんでいるだろうって?ほっといて下さいよ…最近のニルギリは積極的過ぎて私も何かと大変なんですから……。

 

 

 

 

 その後チーム運営に影響が出始めさすがに業を煮やしたルクリリが、()()を頼って大学選抜のメグミからまだ一年の平隊員でしかないアールグレイに出頭命令を出して貰うまでに、三日程の時間を要したという。

 

 

 




果たしてアールグレイ様がラブに会える日はやって来るのでしょうかw
個人的にこのシリーズは書きたいネタが一杯詰まったエピソードなので、
やっと投稿出来て満足しています♪

満足と言えば某アズールも私の好きな愛宕のおね~さんが登場しましたね♪
しかし私もホントたわわなあぶないおね~さんが好きですねww
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