ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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今回は中休み的な一話完結のお話です。

因みに最後の方で久しぶりにあの二人がチョコっと登場しますw


第四十六話   チョコレート・ウォー

「三年ぶりか…それはまぁおいといて……さてどうしたものかしら……」

 

 

 

 

 

 それは2月中旬のとある日の事。

 日本近海を航行中の学園艦で暮らす一部の少女達は、朝から頻繁に時計やカレンダーを見てはソワソワと落ち着きなく過ごしていた。

 

 

「な、なぁエリカ、宅配の定期便か特別便はまだ来ていないか?」

 

「まほ姉、さっきからずっと何なんですか…こんな朝練やってるような時間に来る訳ないでしょう、宅配の定期便なんて早くても昼頃だって何回言わせるんですか……」

 

「そ、そうだったか……?」

 

 

 現役を引退した現在も新隊長であるエリカの補佐と称し訓練に参加し続けるまほであったが、実際の処は長年の習い性である極端な早起きの習慣と戦車道一本鎗で無趣味に近い彼女は時間を持て余し、こうして引退後も毎日現役時代と変わらぬ生活を送っていたのだった。

 だがそんな彼女にしては珍しくその日は終始心此処にあらずな状態で、朝練を終えると隊長室に戻り、その日の朝練の日報を作成するエリカに同じ質問を数分おきに繰り返していたのだ。

 

 

『全くしょうがないわねぇ…まぁ気持ちは分からないでもないけどさ……』

 

 

 3年の空白を経て迎えた2月14日、まほを始めラブと縁の深い者達はこの日彼女から送られて来るであろうはずの小包を皆こんな感じで待っていたのだった。

 

 

『一応私が見繕ってまほ姉名義でラブ姉にチョコとプレゼント送っておいたけど多分バレバレよね…何しろまほ姉その辺のセンスが皆無だから……』

 

 

 内心そんな事を呟くエリカであったが、彼女もまた自身の手作りチョコを別便で贈っており、3年ぶりの事なのでその味を気に入って貰えるか気になっていた。

 

 

『でもまさかみほに贈るよりラブ姉に贈る方が、こんなにも緊張するとは思わなかったわね……』

 

 

 中学時代は純粋にお世話になった憧れの先輩に対する日頃の感謝の気持ちとして贈っていたバレンタインのチョコレートであったが、今年はそのやり方はかなりアレであったもののずっと微妙な状態が続いていたみほとの関係がラブの取りなしで一気に進展した事もあり、エリカとしてもその恩返しという気持ちが強く相当に気合が入っていたようだ。

 尚、みほに関してはエリカが事前にボコ禁止を通達し、もし破った場合は自分からの手作りチョコはなしと釘を刺していたので無難な物を用意したようだった。

 

 

「なぁエリカ、宅配の定期便か特別便はまだ来ていないか?」

 

「……」

 

 

 ラブの手作りチョコレートの事で頭が一杯なまほのポンコツな耳には、残念ながらエリカの言葉は全く届いていないようであった。

 

 

 

 

 

『フ~ム…忙しいのだからあまり凝った事はするなよとは言っておいたがアイツの事だからなぁ……そもそも基本凝り性なヤツにそういう事言っても無駄なんだよな……』

 

 

 ペパロニとカルパッチョの二人体制に移行した後あまり訓練に口出しはしなくなったが、それでもまほと同様に習い性で朝練の様子を監修していたアンチョビは、訓練終了後寮に戻り、朝食を取りながらそんな事を考えていた。

 

 

『だがそれ以前に私も含めてアンツィオ(ウチ)にはその事で人様にどうこう言えるヤツは一人もおらんか…何しろ我が校は困った事に手作り率100%だしなぁ……』

 

 

 朝食を食べる手を止めたアンチョビは周囲を見回したのちに思わず腕を組み、首を横の方に傾け下がり眉毛の困り顔で苦笑していた。

 食へのこだわりの強さでは並ぶ者のないアンツィオにおいてバレンタインに出来合いチョコレートを買う生徒は一人もおらず、毎年この季節は校内中にチョコレートの香りが漂うのが伝統であった。

 特にここ数年戦車道を履修する生徒達は、予算不足を補う為に手作りチョコレートを他校の生徒にネットを通じて販売し外貨の獲得に精を出す始末で、アンチョビとしてもその事に関しあまり強くは言う事が出来なかった。

 

 

「どうしたんですかドゥーチェ?」

 

「ん?あぁカルパッチョか…別に大した事じゃない……アレ?お前確か今日は……?」

 

「はい、水上偵察機を借りてあるので午後の授業が終わったら大洗に行かせて貰います」

 

「そうか、そうだったな…カエサルの所に行くんだったな……」

 

「えぇ、その為に()()のチョコを作りましたから……うふふ♪待っててねたかちゃん♡」

 

『コイツも最近カエサルが絡むといい感じにヤバくなって来たな……』

 

 

 カエサルの名が出た途端その目に危ない光が宿ったカルパッチョに眉を顰めつつ、もしやこいつチョコレートの中に何か仕込んだのではなどと考えていた。

 

 

「あ、後ラブ先輩にも宅配の特別便で贈らせて頂きました……でも宜しかったんですか?」

 

「ん?何がだ?」

 

 

 さり気なくラブにもチョコレートを贈った事をアピールした後に不意に話しを振られたアンチョビは、直ぐには彼女が何を言っているのか理解出来なかった。

 

 

「折角のバレンタインデーですし進路も決まっているんですから時間に余裕もありますよね?ならドゥーチェも西住先輩の所に行かれれば良かったのでは?ドゥーチェだって手作りされたんでしょ?」

 

「あぁ、何だその事か……」

 

 

 漸く彼女の言わんとする事を理解したアンチョビは、彼女が自分達の為に時間を割いているのではと気にしている事にも気が付いた。

 

 

「別にお前達のせいじゃないさ、西住も私もまだ色々とやらにゃならん事も多いしな……それにこれから先嫌でも一緒にいる時間の方が長いんだから今焦る必要はないって事だ」

 

「はぁ……」

 

「それより今年のチョコの売り上げはどういう事だ?あの数字はただ事じゃないぞ?」

 

「あ、それなら話は簡単です。ホラ、大学選抜戦以降各校の交流が密になっていた処にラブ先輩が戻られて観閲式の後笠女学園艦にお世話になったでしょう?それで一層各校互いの特色を活かして色々と融通しあうようになりましたから」

 

「それにしたってなぁ……」

 

 

 実際手作りチョコとしての販売価格は実費に近い破格の安さだったが、それでも大幅な利益を出しているのはそれだけ購入者が多かった事を示していた。

 

 

「良かったですねドゥーチェ、これでタンケッテの全車対戦車ライフル化の目途も立ちましたよ」

 

「う~ん…これでいいのかなぁ……」

 

 

 いくら超良心的な価格設定とはいえ一年に一度の特別な日に、云わば仲間内から荒稼ぎした事に何処か心の中で後ろめたさを感じたアンチョビは何とも微妙な顔をしていた。

 因みにカルパッチョ宛のラブの手作りチョコレートは彼女の行動を見越してカエサルの分と共に大洗に届けられており、行動がバレバレな事に二人揃って真っ赤になっていたという。

 

 

 

 

 

「おいケイ、お前まさかPX(購買部)で売ってるアメリカンなチョコ送ったりしてないだろうな?」

 

「ナオミじゃあるまいしそんな事しないわよ!母港の人気店にネット注文したわ!」

 

「まぁそれは冗談だけどサンダース(ウチ)のスイーツ類だけは何とかして欲しいよな……」

 

「青いケーキの洗礼とか何の罰ゲームよ……?」

 

「そこまでアメリカを再現しなくていいってのにな……」

 

 

 いくらアメリカナイズした校風が特徴のサンダースとはいえそこで暮らすのは大半が日本人の少女達であり、その味覚もまた日本人である以上、破壊的な甘さのアメリカンなスイーツだけは強烈なビジュアルも含めて中々受け入れ難いものがあった。

 

 

「アメリカ暮らしの長かったラブもあれだけは最後まで慣れなかった言ってたもんね……」

 

「サンダース唯一の救いは母港長崎がチョコレート伝来の地って事位かもな……」

 

「なんか言ってて段々情けなくなって来たわ…今度アンチョビにお菓子作り教わろうかしら……?」

 

「それもどうなんだ?」

 

 

 ダージリンなどには日頃から事ある毎にがさつコンビなどと揶揄される二人は、アンチョビにとっては迷惑極まりない事を言いつつ宅配業者の専用機の到着を待っていた。

 

 

 

 

 

『それであなた達は結局何贈ったのよ!?』

 

「私達の母港横浜ならチョコレートで店選びに困る事はありませんからね……それぞれお気に入りの店の物を選んで贈りましたわ」

 

「プラス本国(英国)から取り寄せたデザイン違いのテディも添えましたわよ」

 

『そちらに伺った時は私達もあれこれ買い込みますがやはりちょと羨ましいですね……』

 

 

 ハンズフリーで通話するダージリンとカチューシャだが、双方共にアッサムとノンナも加わりラブからのチョコレートが届くのを待つ間それぞれラブに何を贈ったか報告しあっていた。

 

 

「でもそちらの本国(旧ソ連)もチョコレート大国でしたわよね?」

 

『う…!そ、それは……』

 

 

 特に揶揄う訳ではなく極自然に自らの知りえる情報の一つとして確認するようにアッサムが問えば、何故かカチューシャは返答に詰まった。

 

 

『確かに本国はチョコレートの消費量が多い国ですが、正直その味の方は……ですから私達も母港青森で近年人気のお店からお取り寄せした物を贈りました』

 

『それに私達もプラスして本国から取り寄せた物を贈ったけど……』

 

「けど……?」

 

 

 ノンナに続きカチューシャが得意げに続いたが最後になって話に詰まってしまい、そこはダージリンがさり気ない口調で先を促した。

 

 

『はい、こちらも本国で近年人気のハンドメイドの猫の縫い包みを取り寄せました』

 

「あ、それ知っていますわ…ちょっとブサカワなロシアンブルーの縫い包みではなくて……?」

 

『えぇ、それです』

 

 

 ノンナのフォローの説明を受けてアッサムが問えば、彼女は即その問を肯定した。

 

 

「あぁ、カチューシャはもしかして縫い包みが被った事を心配しているの?それなら大丈夫、何も問題ありませんわ。ホラ、あの子は昔から小さくて可愛いものが大好きですから、縫い包みはいくらでも喜んで受け取ると思いますわ」

 

『…そうだったわね……』

 

 

 ダージリンの指摘に納得したカチューシャであったが、同時にその小さくて可愛いものに自分も含まれている事を思い出したらしく、その答えは何処か歯切れが悪かった。

 手作り組もお取り寄せ組も思いはそれぞれだが、共通しているのは皆一様にラブから手作りチョコが届く事を信じ落ち着きなく過ごしている事だろう。

 

 

 

 

 

「何よこれ……」

 

 

 まほ達が朝からちょっとしたドタバタを演じていた丁度その頃、ここ数日の間に全国のAP-Girlsのファンから届き始め、ミーティングルームに高々と積み上げられているバレンタインのプレゼントの山を前にラブは呆気に取られた顔をしていた。

 

 

「いや、何ってファンから届いたバレンタインプレゼントに決まってるだろ?」

 

「これ全部?」

 

 

 夏妃の呆れたような声に改めて目の前の小山を見上げるラブであったが、そんな彼女に背後から凛々子がすかさず追い打ちをかけた。

 

 

「何言ってんのよ、こんなの氷山の一角に決まってるじゃない」

 

「え?」

 

「全くこのおっぱいは本当に無自覚ね……ここにあるのはラブ姉の分だけ、それも早めに届いた物だけだからね?何と言っても今日が本番、届く量も今日が一番のピークになるはずよ」

 

「マジ……?」

 

 

 畳みかけるように指摘する凛々子を前にラブは言葉を失うが、改めてミーティングルームを見回せばいくつも似たような小山があり、AP-Girlsのメンバー達は黙々とそれらを仕分けては開封しメンバー毎のネームプレートの前へと積み上げていた。

 

 

「ハイそこ、無駄口叩いてないでサッサと手伝いなさい」

 

 

 それまで無言で手際よく荷捌きしていた鈴鹿がラブ達の事を振り向きもせずにハッパをかければ、夏妃と凛々子も思い出したように慌てて作業に戻って行った。

 何しろそうしている間にも別室に積み上げられていたプレゼントが続々とミーティングルームに運び込まれており、よく見れば運び込んでいるのは臨時で派遣されている宅配業者の配送員であった。

 

 

「マジ……?」

 

「ほら!ラブ姉もボサっとしてないで手伝う!」

 

 

 作業に戻った凛々子にどやされたラブも、ハッとしてプレゼントの山に取り付き仕分けを始めた。

 しかし次々と届く荷物はキリがなく仕分けても仕分けても果てがないように感じられたが、実は彼女達の手元に届く前に危険物がないか厳島のセキュリティー部門で届いた荷物は全てスキャンされており、一種のストーカー要素のあるファンから送られたと思わしき物は事前に排除されているのだが、それだけでも軽くミーティングルームを埋める程の量があったのだ。

 

 

「う…何よコレ……紐パン……コレを私に穿けと……?」

 

「そこまで行くと紐っつ~か糸だな……」

 

 

 プレゼントの一つを開封したラブが広げて見せたのは最早紐とすら呼べぬ程際どいデザインのTバックであり、衣装の都合上Cストリングなども着用する機会のあるラブもそのあまりにもなデザインの紐を前に絶句していた。

 

 

「このマイクロなんてもう先っちょも隠せねぇんじゃね~か?」

 

 

 絶句するラブに向け別の包みを開けた夏妃が、これもまた先のTバックに負けず劣らずなデザインの蛍光ピンクも目に痛いマイクロビキニをヒラヒラと振って見せた。

 

 

「よく見なさいよ夏妃、ソレあんた宛てじゃないのよ」

 

「あぁん?ゲ……こ、これをアタイに着ろってかぁ!?」

 

『う゛……!』

 

 

 究極のロリフェイスとそれに相反するたわわを有する夏妃が、手にしている隠す処か喰い込むだけなデザインの蛍光ピンクのマイクロビキニを身に着けた姿を想像したAP-Girlsのメンバー達が、一斉に鼻を押さえながら首の後ろをトントンし始める。

 

 

「ね、ねぇ夏妃……」

 

「ぜってぇ着ねぇからな!」

 

 

 ハァハァと荒い息で何かを言いかけたラブに、夏妃は皆まで言わせず即座に怒鳴り付けた。

 

 

「……ったく!オラ凛々子!これはオメェ宛だ!」

 

 

 夏妃が怒りに任せて手にした箱を凛々子の背中に投げ付けたが、凛々子は振り返る事なく飛んで来た箱を何事もないように後ろ手に軽々とキャッチしていた。

 

 

「夏妃は本当にガサツなんだから……ぐっ!」

 

 

 だが今度はキャッチした箱を開けた凛々子が中身を見た瞬間、呻き声と共に固まっていた。

 

 

「なんだ凛々子、どうした?……ぶふぉ!」

 

 

 そんな凛々子の手元を彼女の肩越しに覗き込んだ夏妃は、その箱の中身が何であるか理解した途端に吹き出した。

 

 

「ぶははははははは!良かったな凛々子!オメェそれ絶対似合うぞ!」

 

「な……夏妃あんたねぇ!」

 

 

 プルプルと震える凛々子の手の中にあるのは薄布と僅かばかりのプレートで構成されたいかにもなデザインの女騎士のコスチュームであり、最近ではすっかりくっころの女王の地位を確立しつつある凛々子には確かにピッタリかもしれなかった。

 

 

「しょうがないわねぇ…ってあら?鈴鹿どうしたのよ……?」

 

 

 またしても始まった夏妃と凛々子の夫婦漫才にラブも苦笑していたが、ふと気が付けば開いたプレゼントの包みを前に鈴鹿が独り頭を抱えていた。

 

 

「……」

 

「何コレ…え?こ、これはぼでぃすとっきんぐぅ……!?」

 

 

 何とも言えぬ表情で振り向いた鈴鹿が摘み上げた物体はレース柄こそ凝ってはいるが、もし身に着ければ全身スケスケな黒のボディストッキングであった。

 

 

「鈴鹿宛て…よね……?」

 

 

 ラブの問いに鈴鹿が深い溜息を吐けば、その場にいた全員が脳内に鈴鹿がそのボディストッキングを身に着けた姿を思い浮かべたらしく、今度こそ一斉に鼻から鮮血を迸らせていた。

 

 

「私達一体何だと思われてるのかしら……?」

 

 

 血の海の始末をしつつブツクサ呟いたラブであったが、その後もメンバー全員宛てにとんでもないプレゼントが次々と顔を出し、セキュリティーチェックの課題が露呈する結果となったのであった。

 そしてその後ラブ達が続々と届き続けたプレゼントを捌き終わったのは、結局最終便が届いた後すっかり日も暮れてからの事だった。

 

 

「あれ?ラブ姉そっちのは中身確認しなくていいのか?」

 

「うふふ♪これはいいの、部屋に帰ってから開けるから」

 

「バカねぇ、送り主の名前をよく見なさいよ」

 

「え?あぁ…そういう事か……」

 

 

 不思議そうな顔をした夏妃が凛々子が指差した荷物の送り状に目をやれば、そこには見慣れた名前が並んでおりそれで即彼女も納得した顔になった。

 

 

「ん~、って事は連中の所にも届いた頃よね…さてアレに気付くのはいつ頃かしら……?」

 

 

 何やら含む処があるような笑みを浮かべたラブがまほ達から届いたプレゼントを纏めた箱を抱えながら壁の時計に目をやれば、時間は既に学食が夕食の提供を始める時間になっていた。

 

 

「さすがにお腹空いたわね、学食行って晩ご飯たべよ♪」

 

 

 ラブが音頭を取るように声をかければ、仕分けを終えたAP-Girlsのメンバー達もそれに続いて一斉にミーティングルームを後にするのだった。

 

 

「今日はバレンタインの特別メニューだから給養員学科の子達相当気合入ってるらしいわよ~♪」

 

 

 先頭を行くラブがご機嫌なのは別にそれが理由でない事は後に続く者達も皆解っており、箱を手放す事なく歩くラブの後ろ姿に全員が穏やかな笑みを浮かべていた。

 おそらくはこのバレンタインデーがまほ達の卒業前の最後の日常のイベントであり、感傷的にならずにそれを楽しむラブの姿に皆安堵の表情を浮かべていたのだ。

 その後学食に辿り着いたラブ達は予想以上に気合の入った夕食を堪能し、ある意味ステージに立ったり戦車に乗る以上に消耗した心と体に栄養を行きわたらせ寮へと戻るのだった。

 

 

「それじゃあみんなまた明日ね~♪」

 

 

 いつもなら夕食後もやれカラオケやらなんやらとAP-Girlsメンバー全員と精力的に行動を共にするラブであったが、その日は寮に戻ると早々に愛と二人自室へと引き上げ、あまりにも解り易過ぎる行動にメンバー達はニヤニヤが止まらなかった。

 

 

「あれでバレてないと思ってるのがスゲェよな……」

 

「殆ど毎晩なクセにね……」

 

「まぁ今日はそういう日だしいいんじゃない?」

 

 

 二人の背中を見送った者達は呆れた風を装うが、そこにはゲス極まりない表情が並んでいる。

 そして自室に戻った二人は扉も閉まり切らぬうちに熱い視線を交わしながら唇を重ね、そのまま着衣を点々と脱ぎ散らかしながらベッドルームへと消えて行くのであった。

 

 

「愛……♡」

 

「恋……♡」

 

 

 バレンタインデーの夜、それだけでその夜二人の間に何があったかはお察しな事だろう。

 

 

 

 

 

「ん?何だこれは……?」

 

 

 ラブと愛が自室へと姿を消す少し前、全国に散らばる仲間達の下へも待ち侘びたラブの手作りチョコレートが届き始めていた。

 それを受け取った者達は一様に暫くその包みを眺めた後、涙ぐんだり小躍りしたりと傍から見ればちょっと怪しい儀式を行いその感動に浸るのだった。

 だがその後満を持してそのチョコレートを口にしたまほとアンチョビ、ダージリンとアッサムにケイとナオミ、更にカチューシャとノンナの8名はその下に仕込まれたメッセージカードを目にしそこに書かれたメッセージに首を捻っていた。

 

 

 

 

 

『新設校なめんな』

 

 

 

 

 

「う~む…ラブのヤツめ今度は何始める気だ……?」

 

 

「何ですのコレは……?」

 

「さぁ……?」

 

 

「コレは何かの暗号か何かか?」

 

「what!?私が知る訳ないでしょ!?」

 

 

「何よコレ!?訳解んないわ!」

 

「えぇ…ですが……」

 

 

 

 

 

『何か無性に腹が立つのは何故?』

 

 

 ラブの手作りチョコレートの味の余韻に浸りながらも、仕込まれていたメッセージカードに言いようのない腹立たしさと嫌な予感しかしない一同であった。

 

 

 

 

 

「うふふ♪楽しくなるわよ……あ、愛…そこは……♡」

 

 

 濃厚なチョコレートの香りと荒い吐息に満たされたベッドルーム、何やら意味不明なことを呟いたラブは押し寄せる快感に身を任せその身を大きく弓なりに仰け反らせるのだった。

 

 

 

 

 

「うぅ…結依(ゆい)ちゃん……愛が重いわ……」

 

「うふふ♪」

 

 

 大学の近くに借りているメグミのマンションにバレンタイン当日に手作りチョコレートケーキを携え現れた笠女生徒会長である木幡結依(こはたゆい)は、切り分けたケーキをフォークですくっては延々と『はい、あ~ん♡』を繰り返し、その愛情(怨念)の深さにメグミは圧倒され結依にされるがままチョコレートケーキを消費し続けていた。

 サンダース戦の際メグミのエスコート役を務めて以降、割とマメに彼女の行く先々に姿を見せていた結依であった。

 そんな彼女がバレンタインのような重要な日にメグミの下へとやって来ないはずがなく、大学のヘリポートに笠女のスーパースタリオンが降下するのを見た時からメグミも覚悟はしていた。

 だが覚悟していたとはいえ帰宅したマンションのエントランスに、目一杯お洒落したたわわな美少女が待っていたのを目にしたメグミは、その脳内に様々な打算やら何やらが駆け巡ったのであった。

 

 

「メグミさん美味しいですか?」

 

「え?えぇ、勿論とっても美味しいわ」

 

 

 蕩けそうになる極上の笑みで問われたメグミはハッとして慌ててそう答えたが、実際結依の手作りケーキの味は素晴らしくそれは彼女の偽らざる感想であった。

 

 

「ふふっ♪ケーキだけじゃなくて私も美味しいですよ♡」

 

「ぐふっ!?…ゆ、結依ちゃん……」

 

 

 突然放り投げられた爆弾に、メグミは咽ながら目を白黒させる。

 

 

「うふふ♪メグミさん可愛い♡」

 

「あ゛う゛ぅ゛……」

 

 

 たわわな美少女生徒会長に翻弄される女子大生は、その瞬間退路の鋼鉄の扉が重々しい音と共に閉ざされたような錯覚に捕らわれたのだった。

 悲喜交々、様々な思いと共にバレンタインの夜は更けて行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「臭うわ……朝っぱらから二人してチョコレートと雌の臭いプンプンとさせてんじゃないわよ」

 

 

 バレンタインから一夜明けた翌朝、寮であるマンションのエントランスに姿を現したラブと愛に向け、凛々子はいきなり容赦なく痛烈な一撃を浴びせるのであった。

 

 

「な…!り、凛々子ぉ!?」

 

「アンタ等一晩中チョコレート使って一体()()やってたのよ?」

 

「ちょ…そ……なんで……!?」

 

「図星かぁ!」

 

 

 真っ赤な顔で口をパクパクさせるラブに向かい凛々子が追い撃ちをかければラブは完全にテンパってしまったが、そこに夏妃が止めの一撃を放ったのであった。

 

 

「い、イヤ────っ!」

 

 

 だがその直後ラブは火を噴きそうな程真っ赤な顔で愛の手を取ると、絶叫しながら一切後ろを振り返る事なくもの凄い勢いでマンションのエントランスから飛び出して行ってしまうのだった。

 

 

「お前等オニか……」

 

 

 容赦ない凛々子と夏妃を始め走り去る二人の姿に爆笑するAP-Girlsに、呆れ顔の鈴鹿だが彼女のその目もよく見れば笑っていた。

 だが彼女達は走り去る二人の後ろ姿に笑いながらも、愛がラブを受け入れて以降彼女の心のマイナス方向への振れ幅が小さくなっている事に胸を撫で下ろしているのだった。

 そんな彼女達の笑い声に合わせ、笠女学園艦の汽笛が一つ大きく轟いた。

 威風堂々と浦賀水道に進入した笠女学園艦であったが、その巨体故に母港横須賀に入港するまでまだ今少しの時間を必要としていた。

 

 

 




中休みと言いながらも、ラブがまた何やら企てているようなのが気になりますね。
それにしてもラブと愛はチョコレートを一体ナニに使ったのやらw
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