ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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忙し過ぎてこの週末はずっと仕事してました……。

利害関係というか被害関係かなw


第五十一話   利害関係

「こんなとんでもないシロモノが全部で6艇……」

 

 

 おおすみ型輸送艦を原型とする笠女学園艦の艦尾ウェルドックには、桁外れなサイズと積載能力を誇る超弩級上陸用舟艇S-LCACが計6艇収容されている。

 見学の為に専用のリフトでウェルドックに降り立った新設校の隊員達は、同じ新造艦でありながら自分達の学園艦とは別世界である笠女学園艦に終始ポカンと口を開けっ放しだった。

 普通科の存在しない笠女ではラブ達の在籍する芸能科を始めどの学科も専門色が強く、入学の段階からそのハードルの高さもあって全体の生徒数は非常に少ない学校であった。

 故に学園艦の運用に関してもそれを補う為に高度に自動化が進んでおり、新しくはあっても()()()()のない学園艦で暮らす彼女達にとって、この艦は驚きで溢れていた。

 

 

「オスプレイを普段使いしてる段階で充分アレだと思ったけどな……」

 

「充分アレってどういう意味よ……?」

 

 

 あり得ないサイズのエア・クッション型揚陸艇を前に呆然と呟くエニグマの隊長である(あきら)に続き、その常軌を逸した装備に武田菱の隊長の真奈(まな)が何処か呆れたような口調でぼやけば、ラブは面白くなさそうに口を尖らせていた。

 

 

「ラブ姉…普通のLCACですら只事ではないのに、こんなあり得ないサイズでフルオーダーした上にそれが全部で6艇もあれば充分アレよ……」

 

 

 拗ねてみせるラブに力なく首を左右に振り軍帽に付いた羽飾りを揺らしているのはフサリアの隊長のアーニャだった。

 

 

「アーニャまで……」

 

「ダメダメ、ショック受けたふりしたって無駄よ」

 

「そうそう、今更ぶりっ子されたってねぇ?」

 

「えぇ、私達には通用しないわ」

 

「あなた達……」

 

 

 アーニャの後を受けてクワイエットレボリューション(静かなる革命)のメープルとパーペチュアルユニオン(永遠の連合)のカレンがダメを押せば、すっかりいじけた顔のラブは何やらブツクサと愚痴り続けていた。

 

 

「色々と有り得ないって事よ、笠女も()()()もね」

 

 

 だがそれすらも軽く受け流した晶は、皆の意見を取り纏めるようにしっかりとラブに止めを刺す事を忘れなかった。

 連盟本部での初顔合わせに始まりリーグ戦以降すっかりラブに懐いた新設校の選手達は、『ラブ姉』と呼びながらも彼女の事を同じ一年生として接するようになり、たった今繰り広げられたようなやり取りも増えて当初のようなぎこちなさもなくなっていた。

 そしてそんな状況を愛を始めとするAP-Girlsのメンバー達も好ましく思い、穏やかな笑みで彼女達のやり取りを見つめていた。

 何故ならエキシビションマッチが終わればまほ達の卒業までの残り時間はいよいよ秒読みとなり、ラブには自分達()だけではなく一人でも多くの友人が必要であると考えていたからだ。

 

 

「でも本当に良かったのかしら……?」

 

「何がよ……?」

 

 

 同じ一年生同士ぞんざいに扱われるのが嬉しいクセにラブは尚も拗ねた顔で、広大なウェルドック内を見回す晶に言っている意味が解らず胡乱な目を向けた。

 

 

「だってねぇ…私達だけ先に笠女入りして合同で訓練なんかしたりしてさ……」

 

 

 ラブからエキシビションマッチの計画と参加を打診された段階で迷う事なくOKの返答をした5校の隊長達は、即応出来るよう直ちに学園艦を横須賀に向け転進させていたのだった。

 その後試合日程が決定しまほ達が準備の為にそれぞれの母艦に帰投すると、一旦出港した笠女学園艦と入れ替わりに順次横須賀港に入港しては戦車を降ろし、再入港した笠女学園艦に一斉に乗艦してラブ指導の下AP-Girlsと共にエキシビションマッチに向け訓練を行っていたのだ。

 

 

「何だそんな事…いいのいいの、あいつ等(まほ達)何だかんだで付き合いが長いから即興でも阿吽で連携して動く位は造作もなくやってのけるわ……あなた達だって大学選抜戦は見たでしょ?あんな連中を相手にするんだもの、この程度の事はどうって事ないわ」

 

 

 ラブは何も問題ないとばかりにヒラヒラと手を振ってみせるが、ターゲットドローンを始め笠女独自の最新鋭設備を使用しての訓練はどれも初体験のものばかりで、ラブの指導と相まって彼女達は短期間でその技量を大幅に向上させており、問題なしとは言われてもやはり気になるようだった。

 

 

「厳島流家元の私がいいって言うんだからい~の!」

 

「い~のって子供じゃあるまいし…え……?」

 

 

 家元とか言いながら頬を膨らますラブに呆れた晶が改めてウェルドック内に視線を巡らせると、作業用のツナギ姿でS-LCACのメンテナンスを行っていた少女達の中から一人の少女が手を挙げながらこちらに近付いて来たが、その顔を見た途端晶は言葉を失い固まってしまった。

 

 

「やぁ厳島隊長、こちらの方達が新設校の──」

 

『え?え……?え──────っ!?』

 

 

 現れた少女、S-LCAC1号艇の艇長宮乃杜櫻(みやのもりさくら)の声に反応して彼女の顔を見た新設校の隊員達も一斉に驚きの声を上げ、目をゴシゴシ擦っては二度見三度見処かガン見で口をパクパクさせていた。

 

 

「えぇと……」

 

 

 まほとは髪と瞳の色が違い身長も10㎝程低いがたわわのサイズだけは彼女より大幅に大きい櫻だったが、その顔立ちは生き写しと言っていい程にまほと瓜二つであった。

 当の本人を驚愕させあのエリカをしてこんな西住隊長もいいかもと言わしめた櫻ではあったが、久しぶりに大人数に驚かれ少々ばつが悪そうだった。

 

 

「ふふっ♪久しぶりね~この反応も……彼女はS-LCAC1号艇の艇長よ」

 

「申し遅れました、LCAC1号艇艇長……一応部隊の隊長も務めさせて頂いている宮乃杜櫻です」

 

 

 櫻が名乗りを上げた事で固まっていた者達もやっと我に返ったが、それでも尚中々ざわつく声は収まらなかった。

 

 

「あぁ驚いた…でも本当にそっくり……」

 

 

 そう言いながらもやっと少し落ち着いた晶の視線は、櫻のまほそっくりな顔からその下で作業用ツナギを突き上げる存在感抜群なたわわへと移っていた。

 

 

「晶ちゃん何処見てるのかな~?」

 

「あ!いやそのゴメンなさい!」

 

 

 ニヤニヤしながら晶の傍らに立ち肩を組んだラブがその耳元で囁いた声は実に楽しげで、ハッとした晶は耳まで真っ赤にしながら慌てて櫻の良く実ったたわわなエア・クッションから目を反らした。

 そしてややフェイント気味にラブが視線を周囲へと巡らせれば、他の者達も晶と同様に凝視していた櫻のたわわから目を反らしていた。

 

 

「みんな正直ね~♪確かに櫻ちゃんはまほにそっくりだけど装甲の厚さじゃまほの惨敗ね、櫻ちゃんと比べたらまほの装甲なんて八九式中戦車並みの紙装甲よ」

 

「あはははは……」

 

 

 鍛えられ充分にスタイルの良いまほを捕まえて容赦ない事言うラブに、櫻は困ったように笑いながら頬をポリポリしていた。

 

 

『それにしてもこの学校は一体どうなっているの?これまでに会った生徒は漏れなく胸のサイズが桁外れな大きさだし……』

 

 

 櫻が困ったように笑う一方で新設校の隊員達は、我が胸と彼女の胸を交互に見比べては口には出さぬもののぼんやりとそんな事を考えていた。

 尚丁度その頃黒森峰では、準備に追われるまほが突然くしゃみを連発していたという。

 

 

「ま、とにかく試合当日は櫻ちゃん達がこのS-LCACで試合会場まで送り届けてくれるからさ、言葉通り大船に乗ったつもりいてくれればいいわよ~♪」

 

『はぁ……』

 

 

 至ってお気楽に言うラブであったが眼前に居並ぶS-LCACなどという非常識極まりない存在と、ラブを筆頭とする爆乳美少女の集団に困惑の色は隠せなかった。

 

 

『何だろう…大船って言ったんだろうけど大胸に聞こえたのは気のせいかなぁ……?』

 

 

 櫻と何やら打ち合わせをするラブを他所に一同は空耳だとは解っていても、ある種の被害妄想的な思いに駆られ自分達を取り囲むたわわに視線を巡らせるのだった。

 

 

 

 

 

「見えたわ……」

 

 

 横須賀に停泊したままではサンダースが運用する巨人機C-5Mスーパーギャラクシーを受け入れが不可能な為、再び出港した笠女学園艦は相模灘に進み、集結していた新設校の学園艦達と合流して共に轡を並べ錨を下ろしていた。

 早朝からウェルドックでS-LCACを見学した後、新設校連合の連携訓練と昼食を済ませたラブ達は、揃って空港区画の管制塔併設の展望デッキに来ていた。

 この日は朝から天候も安定し相模灘から見る雪を被った富士の山も美しく輝きを放っているが、ラブの覗く()()()のレンズはその富士山とは反対方向へと向けられていた。

 暫くピントリングと格闘を続けていたラブであったが、どうにか妥協点を見出した彼女は時計に目を落とし時間を確認した後再び双眼鏡を覗き込み、やがて雲一つない青空の中にお目当ての存在を見付けると誰に言うともなしに呟きを漏らしていた。

 

 

「やっぱデカいわね~、しかもそれが2機編隊とか有り得ないわ~」

 

 

 アリサのお手柄で付属だけではなく大学で運用する機体も借り受けたケイは、母艦を離れるに当たり効率を考え、まず最初にサンダースの参加車両を搭載してこうして2機編隊で飛来したのだった。

 

 

「でも戦車を空輸出来るのってやっぱ便利よね~、うちでも導入出来ないかしら……?」

 

 

 スーパーギャラクシーなどという高価な機体の導入をまるで買い物用のママチャリを買うかどうか検討するような口ぶりで話すラブに、彼女に同行し空港区画を訪れていた新設校の隊員達は宇宙人でも見るような目で見ていた。

 

 

『普通高校生が買うかどうか考えるシロモノか……?』

 

『それはホラ、ラブ姉ってやっぱ厳島のお姫様だから……』

 

『買うとなったら当然フルオーダーよね?』

 

『サイズも倍ぐらい……?』

 

 

 またしても始まったヒソヒソにならないヒソヒソ話に片方の眉をピクリと吊り上げたラブは、やや険のある声でぼそりと言うのだった。

 

 

「聞こえてるわよ……あんなデカい機体更に大きくしてどうすんのよ?大体そんなのが本気で飛べると思ってんの?」

 

『だってラブ姉だもん……』

 

「アンタ達ね……」

 

 

 交流が深まる程に晶達のラブに対する接し方は彼女の望み通り砕けたものになって来たが、こうしてぞんざいに扱われ眉間に縦皺を入れる辺りは彼女もまだ子供と云える一面だろう。

 だがそんな事をやっているうちにみるみる高度を下げて来た2機のスーパーギャラクシーのうち、付属が運用しケイ達が搭乗する機体が着艦態勢に入っていた。

 TF39からCF6-80C2に換装され劇的に静かになったと言われるゼネラル・エレクトリック社製のターボファンエンジンだが、それでも尚後退翼下に4機吊るされたエンジンは耳を弄する轟音で大気を震わせながら降下を続けていた。

 

 

「なんて音なのよ……」

 

「本気でデカいわ……」

 

「日本円で180億超えるくらいだっけ……?」

 

「やっぱサンダースって金持ち学校よね……」

 

 

 あれこれ言ううちに降下して来た付属のスーパーギャラクシーがタッチダウンし激しくタイヤスモークを上げると、ほぼ同時にスラストリバーサーが作動しエンジンがひと際甲高い排気音を轟かせると機体は一気に速度を落として行った。

 

 

「うは~、豪快よね~♪管制の方で録画してあるから後でもう一回見よっと…あ、2機目ももう着艦コースに入ってるわ……コレ動画投稿サイトに投稿したら結構な再生回数にならない?」

 

 

 ラブがアホな事を言っているうちに2機目のスーパーギャラクシーも着艦し、タクシー・ウェイを駐機スポットへ向けて移動していた。

 

 

「恋…早く駐機スポットへ行かないとケイさんをお待たせする事になるわ……」

 

「ん~、解ってる……サンダースの車両下ろす間にね、スーパーギャラクシーのコックピットを見学させてもらえるようケイにお願いしてあるからみんなで行きましょ♪」

 

 

 楽し気にそんな事を言いながら歩き始めたラブの手は極自然な動きで寄り添う愛の腰というかお尻の辺りに回され、愛もまたそれを拒む事はしなかった。

 

 

『この二人は……』

 

 

 あまりの事に呆気に取られる新設校の隊員達であったが、一緒にいるAP-Girlsのメンバー達は慣れているのか平然としていた。

 

 

『ねぇちょっと夏っちゃん!あの二人って普段からああなの……?』

 

 

 まるでその手のホテルにでも向かうような二人の後ろ姿に耳まで真っ赤にした晶が傍にいた夏妃に耳打ちすれば、それまで何も気にしていないような顔をしていた夏妃の表情が途端に面倒そうなものへと変わっていた。

 

 

『あのバカップル時々マジで周りに人がいるの忘れてボロを出しやがるからな…最近じゃもう面倒くさくて誰も突っ込まねぇんだよ……』

 

『あぁ……』

 

 

 死んだような目の夏妃のぼやきを聞いた晶を始めとする新設校の隊員達の目は、何とも生温いものに変わっていた。

 

 

 

 

 

「メグミさん♪私の為に来て下さったんですね♡」

 

『あちゃ~』

 

 

 ラブ達がぞろぞろと移動して辿り着いた駐機スポットには2機のスーパーギャラクシーが揃って翼を休めそれは滅多に見られぬ壮観な眺めであったが、彼女達を出迎えたのはそれ以上にインパクトのある光景であった。

 

 

「あれって確か大学選抜のメグミ選手よね……?」

 

「抱っこされてるのは笠女の生徒会長じゃ……」

 

 

 事情を知らぬ晶達は困惑していたがラブやAP-Girlsメンバー達は、最早歯止めが利かなくなっている笠女の生徒会長木幡結依(こはたゆい)の大胆な行動に片手で顔を覆っていた。

 サンダース大の機体も借り出したのは知っていたがまさかメグミまで来る事を知らなかったラブはその事にも驚いたが、それ以上に結依の行動の速さと大胆さに驚いていた。

 そもそもメグミが同行していたのはアリサから打診があった段階で、各校の元隊長達と面識のある自分がいた方が何かと円滑に進むだろうと配慮しての行動であった。

 だがそれを知ったケイがいらぬおせっかいという名の好奇心でその情報を結依にリークしたが為に、スーパーギャラクシーが着艦すると早々にすっ飛んで来た彼女がジャンピングお姫様抱っこなどという超荒業を使う事態を招いていたのだった。

 本人としてはちょっとした悪戯心でスーパーギャラクシーにメグミが搭乗している事を結依にメールでその旨伝えたケイであったが、結依のメグミに対する最近の熱の上げようが只事でない処までは予想出来てはおらず、いきなり結依が繰り出した大技に腹筋が崩壊した彼女は膝を突き地面をバシバシと叩きながら過呼吸寸前でヒィヒィ言いながら笑っていた。

 そしてその傍ではナオミがそんなケイの事を呆れた様子で見降ろしていたが、彼女もまたAP-Girls戦の際突然転がり込んで来たメグミに振り回された経緯があるので、その顔には人の悪いニヤニヤ笑いを貼り付けているのだった。

 だがそんな二人に何か言おうにもそれ処ではないメグミは、結依を抱いたまま絶望的な表情で何やら呟き続けていた。

 

 

「終わった…完璧に終わった……何もかも終わったわ……」

 

 

 今までも特定の相手がいる程度には周囲にも薄々気付かれてはいた。

 しかし今回スーパーギャラクシーを動かすに当たり協力してくれたチームメイトにこの誤魔化しようのない決定的な場面を見られた以上、チーム全体はおろか選抜チームの方にもバレるのは時間の問題であり、ねちっこくルミとアズミに絡まれたりすっかりラブに入れ込んでいる愛里寿に睨まれる処を想像したメグミは恐ろしくてどんどん鬱になって行くのだった。

 現に今も彼女の背後では付き合ってくれたチームメイトが好奇心に瞳をネコ科動物のように輝かせており、刺さる視線を背中で感じたメグミはいっそこのまま結依を抱えて何処かに消えてしまいたいとすら考えていた。

 

 

『あ~あ…さすがにこれはちょっと気の毒ねぇ……それにしても結依ちゃんって元々積極的な子だったけど増々大胆になって来たみたい……』

 

 

 その容姿や性格からすると意外に思われがちだが、恋愛に関してはかなり奥手なラブは中学時代からアンチョビに対する想いは徹底して隠し通し、愛と出会ってからも想いを伝え結ばれるまでは周囲がイライラする程消極的であった。

 そんなラブは結依の積極性を羨ましく思いながらも、このままではメグミがプレッシャーで倒れそうな気がして助け舟を出すのだった。

 

 

「はいは~い♪結依ちゃん今はそれぐらいにしておこうね~、メグミさんもお仕事が出来なくて困ってるわよ~?ホラ、試合が終わったら二人でライブも楽しめるよう席も用意してあげるしその後も……だから、ね?」

 

 

 まるで子供に言い聞かせるような口調のラブが彼女の耳元でそっと囁けば、それまでメグミに抱っこされ細めていた目を大きく見開いた結依はにっこりと微笑むのだった。

 

 

「あらいけない、私とした事が少々メグミお姉様に甘え過ぎてしまいましたわ♪」

 

『あれが少々……』

 

 

 これにはさすがにその場にいる者全員が呆れていたが、そんな事など気にも留めぬ結依をラブは子猫で引き取るようにメグミから受け取るとそっとその場に降ろしていた。

 一方のメグミも漸く結依から解放され多少ホッとした表情でラブに頭を下げていたが、取り敢えず彼女を解放する為とはいえエキシビションマッチ後の予定を勝手に決められてしまった事にはまだ気が付いてはいないようだった。

 

 

「私まだ生徒会の校務がいくつか残っておりますので、会長室の方に戻らせて頂きますね……それでは皆さん失礼致します」

 

 

 所作の随所に育ちの良さを感じさせる結依は深々と一礼した後メグミにだけ情熱的なウィンクを決めて見せると、踵を返し軽やかな足取りで立ち去って行くのであった。

 

 

「うふふ♪結依ちゃんってホントただ可愛いだけじゃなくて頭も気立ても良くてお得な子ね~♪」

 

「……」

 

 

 ラブの言葉が聞こえているのかいないのか、メグミは疲れた様子でふらふらとおぼ付かぬ足取りで積み荷であるシャーマンを降ろし終えたばかりのスーパーギャラクシーへと向かったと思うと、そのまま何も言わずに乗り込んでしまうのだった。

 

 

「…ま、いっか……それよりケイ、例の件頼んだわよ……?」

 

 

 若干口元が引き攣った笑顔でメグミの背中を見送ったラブが気を取り直したように振り返ると、今度はケイに向かって何やら含みのある口調で確認するように問いかけていた。

 

 

「え……?あぁ、それなら大丈夫、のーぷろぶれむよ!」

 

 

 笑い過ぎて肩で息をしていたケイだったがラブの意味深な問いに俄かに表情を引き締めると、ラブに向かって右の拳を突き出すとグイっと親指を立てて見せるのだった。

 

 

「今のは一体ナニ……?」

 

「また何かしょうもない仕込みしてんだろ?」

 

「そうそう、どうせ大した事じゃないから気にする必要はないわ」

 

「大体聞いたって素直に答えないに決まってるから、あれこれ詮索したって時間の無駄よ」

 

 

 ラブとケイの意味不明なやり取りに何やら不穏なものを感じたらしい晶が首を傾げると、即座に夏妃と凛々子に鈴鹿までもが晶の疑問を一笑に付していた。

 これまで散々ラブの下らないイタズラの数々を見て来た彼女達の予想は実に的確であり、数日後には晶もラブが何を企んでいたかを知り激しく脱力するのだった。

 

 

「あなた達ってそういうトコは徹底してシビアよね……?」

 

「そうかぁ?」

 

「この程度いつもの事よ?」

 

「そうね、この程度でおたついてたらAP-Girlsなんてやってらんないもの」

 

 

 三人が好き放題言ううちに発艦準備を整えた2機のスーパーギャラクシーは、爆音だけを残し次々飛び立つと瞬く間に蒼穹の中に溶け込んで行った。

 

 

 

 

 

()()()()()()!何で私らまで参加させられるかな~!?」

 

 

 飛来する度抱えて来た戦車を吐き出す作業を繰り返していた2機の巨人機であったが、最も参加車両数の多い黒森峰からの最終便を以ってその任務は終了するはずであった。

 だがケイが搭乗する付属の機体だけは積み荷を降ろすなり再び発艦すると、数時間後には下がり眉毛で困った顔で笑う杏を乗せて帰って来たのだった。

 厳密に言うならば杏だけではなくカメさんチームの桃と柚子とヘッツァー、更にはレオポンさんチームのナカジマとホシノにスズキの三名とポルシェティーガーとオマケのようにそど子がほぼ強制的に連行されていたのだ。

『またアンジーと一緒に戦うチャンスよ~♪』などとケイの耳元で囁き彼女を唆したラブは、まんまと大洗の三年生もエキシビションマッチに参加させる事に成功していた。

 尚、この場に唯一姿の見えないアリクイさんチームのぴよたんだが、彼女は再びAP-Girlsと戦う事になると知った途端真っ青になって気を失ってしまい、時間に追われていたケイは彼女が息を吹き返す前に杏をお姫様抱っこで拉致するとさっさと大洗を後にしていた。

 そして笠女学園艦に降り立った杏は、敢えて出会った当時の『厳島ちゃん』でラブに向かってストレートに疑問をぶつけていた。

 

 

「え~?だってアンジーは三年生じゃない、このエキシビションは私達新設校の一年生と三年生の戦いよ?理由はそれで充分でしょ~?」

 

「こりゃダメだ……」

 

 

 付き合いは浅いがラブの思考がある程度把握出来ている杏は、それ以上の答えは望めず彼女が本気でそう考えている事を知り更に眉尻を下げるのだった。

 

 

「なんだ角谷、巻き添えを喰らったかぁ♪」

 

 

 アンツィオからはたった一人の参戦者であるアンチョビは、杏の予想外の登場に最初こそは驚いていたが大方の事情を察して面白そうな顔をしていた。

 

 

「やぁドゥーチェ、()()()宜しくね~」

 

「あれ?オマエさん達も一緒だったか……こちらこそ宜しくな~」

 

『ん?今のはどういう事……?』

 

 

 年中チョビ子呼ばわりして来る杏をここぞとばかりにからかっていたアンチョビが、レオポンのナカジマから挨拶され気さくにそれに返していた事に違和感を覚えたラブは、スッと目を細め世間話に興じるアンチョビとレオポンさんチームの面々をそれとなく観察していた。

 中学時代互いに策の限りを尽くしやり合って来た相手だけに、その一見何でもない会話の中にラブはアンチョビの策の臭いを嗅ぎ取ったようだ。

 

 

『随分と親しげだけどいつの間にあんなに仲良くなったのかしら?』

 

 

 周囲にはそのやり取りを不審に思うものは誰もいなかったが、只一人ラブだけはアンチョビの背中を獲物の臭いを嗅ぎ分ける九尾の女狐の目で見つめていた。

 

 

 




年内は後一回投稿出来るかどうか……。
結局大晦日までフルに仕事だもんなぁ……。

今回最後の伏線はこのエキシビションには関係なく、
チョビ子達の卒業後に關係して来ますが果たして何が起きるんでしょうねぇ?
そして試合ではいよいよアレが登場します。
それぞれのリアクションをお楽しみに♪
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