これでやっとタイトルになる名前が揃ったけどやっぱ安易なタイトルだったかな?
それとダージリンの本名ネタをほんのちょっぴりだけ入れてます。
例によっていい加減な英語にいい加減な訳を付けてますが、
雰囲気で読んで頂けると助かります。
「も~、整備用のゴムシート敷いてなかったら泥だらけになってたよ~」
折り重なる嘗ての仲間達の下からやっと這い出し立ち上がったラブが頬を膨らませ文句を言う。
パタパタと身に付いた埃を掃う姿を見上げる一同。
改めて見るラブの身に付けるパンツァージャケットは、背中には風に靡くZ旗、左腕には皆が贈ったパーソナルマークの入った、光沢のある桜色で、着丈は短くウエスト辺り。
袖の反しの裏地は白で長めになっており、書類挟みに使える仕様で全体の雰囲気としてはライダースジャケットに近い印象のもの、手には白のオープンフィンガーグローブで肩のエポレットには黒森峰と同じ様なジャケットと同色の将校略帽を挟んでおりこれにもZ旗が小さく入っていた。
その下に着ている白のブラウスはシルクなのか独特の光沢を放ち濃紺のネクタイとも良く合う。
そしてミニスカートとその裾まで達する長めの二―ハイブーツも輝く白で、そのブーツの反しに付いている留め金の右足側にはホルスターが付いているがラブはそこに携帯を入れている。
暫しそんなラブの姿を眺めていた一同だが、やはり埋もれていたカチューシャを掘り出したノンナが最初に口を開いた。
「ラブ、あなたは今までどこに居たのですか?私もカチューシャ様もずっとあなたの事を探し続けて胸を痛めていたのですよ?」
「ええ、私も聖グロリアーナ進学後に情報処理学部第6課を使い調査を続けていましたが一切行方を掴めませんでした」
ノンナに続きアッサムもラブに向かって問い質すも、当のラブはと云うと少し困った様にまたも頬をポリポリしつつはぐらかすかの様な返答をする。
「ええとね、そのね、話すと長くなるからそれはまた追々という事でさぁ…」
「それより!この三笠女子学園とは一体?私も今まで聞いた事がありませんわ!」
ラブの恍けた答弁に被せる様に今度はダージリンが自分も埃を掃いつつ立ち上がりながら言う。
「あ~、り…今はダージリンだったね、それはね~、今年の春に横須賀に開校したんだよ。創ったのは他でもない亜梨亜ママなんだけどね~」
『はぁ!?』
思わず一同揃って驚きの声を上げるがラブは変わらず飄々としたまま続ける。
「まあそれも詳しくは追々という事で~」
またしても恍けた発言をするラブに、やっとノンナに掘り出して貰ったカチューシャが遂に切れて顔を真っ赤にしてどやしつけた。
「私達が今までどれだけ心配したと思っているのよ!なのにアンタと来たら何事も無かった様に昔のまんまその間延びしたしゃべり方でフツ~に会話して!どれだけ!どれだけ…ウぇぇぇ~!!」
そして怒鳴った勢いそのままに今度は号泣するカチューシャ、それを見て盛大に溜め息を吐きつつヤレヤレのポーズをした後にケイがラブを指さし宣言する様に言い放つ。
「OK!忘れるんじゃないわよ!ラブ!」
気が付けばいつの間にか横に来ていたナオミが無言でラブの肩をポンポンと叩く、しかしよく見れば薄っすら不敵に笑っているその顔のこめかみには青筋が浮かんでいたりする。
「も~、みんなそんなに怒んないでよ~」
「ふざけるな、お母様も亜梨亜おば様に連絡が着かずどれ程気落ちしていたと思っている?」
「私も一度お母さんが二人の名前を言いながら泣いてるの見た……」
まほはいつもの怖い顔、みほまでもが上目使いでラブを睨んでいる。
「だから本当にゴメンってば~、一度ちゃんと謝りに行くから許してよ~」
「ところでだなラブ、さっきからお前の後ろにいる子は一体…?」
涙を袖でグシグシ拭いた後アンチョビがラブの背後を指さしつつ聞いて来る。
皆がそれに気付きふと背後を見ればいつの間にか確かにひとりの少女が佇んでいた。
背丈は大洗の会長より少し高い位だろうか?小柄な少女ではあるが大洗の会長に比べると発育がかなり良い、端的に言えば身長に比して胸の発育が素晴らしく良い。
少し強めのウェーブの掛かったセミロングの淡いピンク髪をルーズポニーで纏め、表情が若干乏しいというか眠たげな眼をしているが顔立ちも相当に良い美少女だ。
身に纏っているものはラブとほぼ一緒だが、左腕のパーソナルマークがピンクのハートのみでブーツは半長靴だった。
「あ、愛♪みんな、紹介するね~、ウチの戦車隊の副長でピンク・ハーツ車長の
ラブが屈んで両肩に手を置き紹介するも無表情な愛と呼ばれた少女、しかしラブもそれを全く気にも留めず今度は愛に対して皆を紹介しようとする。
「愛、みんなを紹介するね~、えっとまずね──」
「知ってる…」
紹介しかけたラブを遮りぶっきらぼうに答える愛。
「さすが愛、私の頼もしい相棒だねぇ♪」
ラブはご機嫌で愛に頬擦りしたりするがやはり無表情なままの愛という名の少女。
皆もこれを些か困惑気味に見ていると更に背後から声が掛かる。
再び一斉に視線が向くと今度は二十数名の少女達が其処には並んでいた。
全員が同じ出で立ちな処を見ると彼女達が隊員らしい。
そしてそのうちの一人が再びラブに呼び掛けて来た。
「ね~、恋
「あ、しまった~!」
その反応を見た瞬間少女達の瞳が悪戯っぽく輝き示し合わせた様に唱和する。
『ラブ
「あちゃ~っ!!」
思わず右の掌で顔を覆うラブ、そしてその隣でやはり無表情なままの愛。
最早その展開に付いて行けない一同は目が点になったまま立ちすくむ。
しかしその中でどうにか持ち直したアンチョビが口を開く。
「ラブ…お前たちは一体……?」
「ん?あぁ、私達…?そっか改めて自己紹介するね~」
そう言うとラブは過去にも滅多に見せなかった引き締まった表情になり号令を発した。
「Attention!」
その号令を聞くやそれまで緊張感の欠片も無かった集団が一斉に気を付けの姿勢を取る。
「私は私立三笠女子学園芸能科歌唱部の生徒で戦車隊隊長の厳島恋!そしてここに居るのがそのメンバー、全員一年生のルーキーチームよ!」
ラブがそう言い放つと全員が直立不動の姿勢から鮮やかな敬礼を決める。
もう訳が解らなくなったアンチョビは頭を掻き毟りながら声を上げる。
「はあっ!?芸能科?歌唱部?一年生てお前何言って!?」
「だって…私あれからずっと学校行けなかったんだもん……」
ラブはまた元の調子に戻り口を尖らせ拗ねた様にアンチョビに反論する。
その言葉にアンチョビが次の言葉を言い淀んだ時、愛がラブの袖を引き短く一言言う。
「恋、時間」
「あ、そっか、ゴメンみんな。私達ね、お昼の新設校紹介が出番だから準備中なの、だからちょっとだけ待っててくれる~?」
そう言うとラブは仮設テントパドックの外に向かい声を上げた。
「お~い!メイク班おねが~い!」
その声に反応しテントの中に鮮やかなマリンブルーを基調としたミニと、白地の背中に風に靡くZ旗とMIKASAの文字が入ったパーカーを着た一団が、大型のミラーやメイクボックスやパイプ椅子を並べあっと言う間に仮設メイクルームを構築して行った。
最早完全に地蔵と化してその光景を見ている面々を余所に、戦車隊隊員達に派手なステージメイクとヘアセットを次々と施して行く。
そして我に返った時には全員がメイクを終え一同の前に整列していた。
「は~い、お待たせ~♪」
「お、おいラブお前たちは一体…」
狐につままれた様な顔のまほがどうにか問い掛ける。
「んふふ~♪まほ、さっき言ったでしょ?私達はね~、笠女芸能科所属のボーカルユニットなの。今日がね、戦車隊としてもユニットとしても公式デビューなんだよ、宜しくね~♪」
「もう何が何だかさっぱりだ……」
「まあ見てて貰えば分かるって」
そう言うとラブは戦車隊メンバーに声を掛ける。
「さあみんな準備はいいよね?」
ラブの声に応じてメンバー全員が大きな円陣を組み腰を屈め顔を上げると互いを見つめ合う。
その顔は頬が上気してほんのり赤く、瞳は獲物を見付けたネコ科動物の様な輝きを放つ。
それを確認したラブがひとつ息を吸った後声を上げる。
「みんな!緊張してるよね?でも当然だよね、今日が待ちに待った私達
ラブの檄に呼応して更にグッと身を屈めるメンバー達。
「AP-Girls!Get ready! Get set!」
『
メンバー全員でラブに続き
ラブもまたその身をコマンダーキューポラに滑り込ませると一度左右に並ぶ僚車を見渡す。
瞳を閉じたラブは右手を高く掲げ親指を立てる。
そしてほんの一瞬訪れる静寂。
「ready…
『Yeaaaah!』
ラブの掛けた号令にメンバー全員の雄叫びが重なると同時に、居並ぶⅢ号J型戦車のエンジンが一斉に鋭い唸り声を轟かせその身を震わせる。
それを聴いた瞬間それまで呆然と事の成り行きを見守っていた一同の背筋に電流が奔り、そして即座に彼女達が、そのⅢ号J型戦車達が只者ではない事を理解した。
しかしたったそれだけでそれを見抜く彼女等もまた普通ではない事も事実だが。
そして彼女達が見守る中、ラブの瞳が開かれた。
開かれたラブのその瞳には強く激しい光が宿っている。
その輝きを彼女達は知っている、嘗て幾度と無く砲火を交えて来た時目にした光。
激しく燃え盛るが如きその輝きを目にした時、やっと彼女達は実感する事が出来た。
ラブが自分達の元へと帰って来た事を。
「私立三笠女子学園!観閲スタート地点に移動願います!」
ラブ達がエンジンを始動するのを待ち構えていたかの如く、観閲式運営委員より指示が出る。
それに対しラブは指二本の敬礼を投げて応えると見上げている一同に、唸りを上げるエンジン音に負けぬよう大きな声で話し掛けた。
「みんな!私達がトップバッターだから絶対見逃さないでよね!お願いよ♪」
そう言うとウィンクしながら投げキスをするラブにアンチョビが代表して答える。
「わ、解った!絶対見る!頑張るんだぞ!」
「うん!」
「それじゃあ私達は隊長席のあるスタンドに行くとしよう、じゃあな、ラブ!」
アンチョビの言葉と共に皆が手を上げると踵を返し客席エリアに向かい遠ざかって行く。
しかしそれを見送るラブの瞳に微かながら暗い影が過る。
ワタシヲオイテイカナイデ
作者本人が考えてる以上にラブの抱えた闇は深いのかも…。