ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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今回もモブ子達が活躍するお話です♪


第六十八話   忘れてましたわ

 起点である横須賀市の三春町二丁目交差点から同じ神奈川県内の大磯町の、大磯駅入口交差点に至る総延長60.6㎞の国道134号線。

 その国道134号線の起点近くの大津交差点から久里浜の開国橋までの5.7㎞の区間は、久里浜街道という愛称で呼ばれていた。

 

 

 

 

 

『ホントはかーべーたんの方が足が遅いのは分かってるわよ!』

 

『確かに聖グロの主力は鈍足揃いだけど何もあそこまで言わなくてもいいでしょうに!』

 

 

 KV-2とブラックプリンスの砲塔上で睨み合うカチューシャとダージリン。

 内心ではそんな事を思いつつも互いにそれは口に出来ずにいる。

 

 

『あ~、コイツ等お互いに引くに引けなくなってやがる……』

 

 

 やっと辿り着いた平作川沿いの久里浜街道に重砲部隊を展開させる最中、そこに至るまでの道中ずっと機動力のなさに端を発する言い合いを続けて徐々にエキサイトしていった結果、双方矛を収めるタイミングを完全に逸し牙を剥き若干目尻に涙を浮かべ唸り声を上げながら火花を散らしていたのだ。

 そして周囲はそんな二人をこれ以上はない位面倒そうな目で見ていた。

 

 

「な~ノンナ……」

 

「何ですかナオミ?」

 

 

 睨み合う二人を横目にどうでもよさそうな態度のナオミにその名を呼ばれたノンナだったが、彼女の返す言葉とその声音にはナオミが何を言わんとしているか解っているようだった。

 

 

「もうあのバカ二人はほっといて私らで陣地展開しちまお~ぜ~」

 

「……そうですね、それがいいでしょう」

 

 

 カチューシャをあのバカ呼ばわりされたにも拘わらずノンナが怒った素振りさえ見せないのは、さすがの彼女もいつラブの奇襲があるかも解らぬ状況で言い争う二人に呆れているからだった。

 

 

「川の方に向かって砲を向けて一列縦隊だったな……」

 

「ええ、ダージリンはそのように言ってましたね」

 

「サッサとやっちまおう」

 

 

 ナオミとノンナは二人を放置して、ラブ対策の陣地展開の指示を出し始めた。

 

 

 

 

 

「おのれチョロチョロと!いい加減観念なさい!」

 

 

 カチューシャとダージリンが揉めていたその頃、団地内でフサリアの豆戦車達を相手に単騎で追撃戦を展開する偵察部隊2号車のクルセイダーの車内では、凄まじい勢いで操縦桿を操るリゼが上品な言葉遣いのままキレまくっていた。

 

 

「こんな振り回してたら狙うもんも狙えないわ!」

 

「おいリゼ!もうちょっと大人しく走らせろ!」

 

 

 フサリアの一団と遭遇後は即追撃を開始したリゼだったが、団地内でクルセイダーを高速で振り回すその操縦技術の方は間違いなく確かだった。

 だが確かとは言ってもそれは事故らないだけで暴走である事に変わりはなく、同乗し砲手と装填手を務める黒森峰とプラウダから出向した二人は最早真面な攻撃処ではなかったようだ。

 

 

「何を仰いますの!?チンタラ走っていたらあのチビ助共に逃げられてしまいますわ!」

 

 

 アーニャの10TPを追って団地内を駆け回り、今も小さな交差点を履帯から火花を散らしながらクリアしたクルセイダーを操るリゼは、抗議の声を上げた二人に振り返る事なく獲物から目を逸らさずに叫び返していた。

 

 

「だから!いくら追い掛け回しても当てられなきゃ意味ないでしょ!」

 

 

 車長兼装填手を務める黒森峰の隊員が、狭い砲塔内で6ポンド砲弾を落とさぬよう必死に抱えながら尚も食い下がったが、リゼが速度を落とす気配はまるで感じられなかった。

 

 

「リゼ!あなた本当に10TPを討ち取る気があるの!?単にぶっ飛ばしたいだけじゃないの!?」

 

 

 大きく狙いを外し民家の外壁に大穴を開けた砲手担当のプラウダの隊員も、黒森峰の隊員に続きリゼに対し抗議したが、それでもクルセイダーの暴走は止まらず民家の壁の穴が増えるだけだった。

 

 

 

 

 

「見付けた…は、いいが一体ありゃあ何だ…あんな所で何やってやがる……?」

 

 

 最初の奇襲でどうする事も出来なかったKV-2の攻略を目論む武田菱の隊長國守真奈(くにもりまな)は、配下の風林火山を引き連れ索敵行動に出ていた。

 彼女達風林火山が使用する8両のクロムウェルMk.Ⅷは快速ぶりを誇るが、武装の方は75mmQF砲を搭載するもKV-2を相手にするには力不足の感が否めなかった。

 しかしそれでも真奈を始め風林火山の隊員達は、街道上の怪物の首を上げんと鼻息も荒く索敵に精を出していたのだ。

 そして2両づつ風林火山がそれぞれ別行動で索敵していた中、隊長である真奈が真っ先に川沿いの対岸から陣地展開中のKV-2の姿を発見していた。

 これがもしごく普通の戦車らしい姿をした戦車であれば堤防に視界を遮られ、彼女も重砲部隊が展開中である事に気付かずにその場を通過していたかもしれない。

 だが頭でっかちなKV-2は他の車両に比べ頭一つ処か二つ分以上に飛び出していたので、いともあっさりとその存在に気付かれてしまったのであった。

 

 

「ふ~む、川沿いに一列縦隊で砲をこっちに向けてやがる…にしてもエライ仰角取ってやがるな……はて、何が狙いなんだかさっぱりだ……」

 

 

 堤防越しに顔の上半分だけ覗かせ様子を窺っていた真奈だったが、その陣形の意図を掴み兼ね妙な顔をして首を捻っていた。

 

 

「ダメだ、こんな所でアレコレ考え込んでても時間のムダだ……ああやって居座ってるなら好都合、回り込んで仕掛けるとしよう」

 

 

 夏妃と気が合うだけあって細かい事は気にしない真奈は振り返りもせずにその場を離れると、隊長車の砲塔に駆け上り索敵に分散している風林火山に無線で指示を出し始めた。

 

 

「こちら風の壱番、索敵中の全車に通達、我獲物を発見せり。敵重砲部隊は平作川沿いの大型ホームセンター前に陣地展開中、各車索敵を中止し森崎大橋信号前のコンビニ駐車場に集結せよ!」

 

「なぁ、片側一方からの攻撃でいいのか?街道の両側からの挟撃って手もあるぜ?」

 

 

 地図を片手に淀みなく指示を出した真奈が無線のトークボタンから指を離すと、それを待っていたらしい隊長車付きの砲手が砲塔内から顔を出し地図のバツ印の書き込みを指差しながら指摘した。

 

 

「確かにそれも手だ……だが最終的に久里浜港近くの発電所跡地に引き摺り込むんだからな、河上から攻めて河口の方向に追い落とした方が効率的だろ?」

 

「成程ね……結構考えてんだ」

 

「どういう意味だコラ?」

 

「別に深い意味はないって」

 

 

 真奈のネコ科を思わせる強い光を放つ瞳に睨み付けられた砲手は、それでビビったという様子でもなくヒラヒラと手を振り砲塔内に引っ込むと自らの定位置である砲手席に収まっていた。

 面白くなさそうに鼻を鳴らす真奈だったが彼女に限らず武田菱の隊員達は揃って眼光が鋭く、掲げる旗印のせいもあってか全員が戦国武将を思わせる胆の据わり方をしていた。

 

 

「ったくどいつもこいつも……オラ出せ!集結ポイントに急げよ!向こうが何かおっぱじめる前に仕掛けるぞ!」

 

 

 アンツィオのペパロニ辺りが聞いたら喜びそうなカチコミにでも行くが如き進発命令を受け、2両のクロムウェルはミーティアエンジンを唸らせ集結ポイントへ向け走り出した。

 そしてカチューシャとダージリンを始めとする重砲部隊は、自分達が風林火山にターゲット認定されている事にまだ気付いていなかった。

 

 

 

 

 

「本気かダージリン……?果たしてそんな手がラブのヤツに通用するかどうか……」

 

 

 言い争いを続ける二人を無視してナオミとノンナが指揮を執り作業を続けた結果、重砲部隊は風林火山の襲撃前に陣地展開を終えていた。

 そして作業終了後ノンナに諫められ漸く矛を収めた二人は作戦の実行に備え始め、言い出しっぺであるダージリンは隊長であるまほに向け無線で作戦の概要を説明していた。

 だが説明を受けたまほと一緒に聞き耳を立てていたアンチョビは、その作戦の内容に揃って難しい表情を浮かべ互いの顔を見合っている。

 

 

『私だってこれでラブを仕留められるとは思っていませんわ。けれど足止めなり陽動なりの役目は果たせるはずですから、そこでまほさんが戦力を削ぐなり止めを刺すなりする事も出来るでしょ?』

 

「いや、それこそイチかバチかの博打じゃないか!大体そう簡単にラブのヤツと遭遇出来るとは限らんだろうに!?」

 

『だからその為にクルセイダー(猟犬)も放ったと言ったでしょう?そういう訳ですからそちらも無線連絡を聞き逃さぬように頼みましたよ?報告は以上ですわ』

 

「あ、オイちょっと待てダージリン!」

 

 

 ダージリンは言うだけ言うと無線交信を終え、その後はまほが何を言っても応えなかった。

 

 

「…しょうがないヤツだなぁ……」

 

 

 口をへの字にしたまほが諦めたように押さえていた咽頭マイクから手を離して周囲を見回せば、身に着けるパンツァージャケットの違いに関係なく全員が揃って肩を竦めていた。

 

 

「最後の最後までアイツは…ホント迷惑な性格してやがる……」

 

 

 展開中の他の部隊の都合などお構いなしに自らが立案した作戦を実行に移してしまったダージリンに、アンチョビも一層渋い顔で天を仰ぐ。

 されど、彼女もそれで事態が変わらない事は重々承知しているので、高校最後の試合がコレかと思いつつもまほと目配せを交わし行動を起こすのだった。

 

 

 

 

 

「ヒマね~」

 

 

 新設校リーグ戦優勝記念エキシビションマッチの主役であるにも拘らず、敵影も確認出来ずやる事のないラブはAP-Girlsを引き連れ当てもなく交戦エリア内をウロウロしていた。

 各校が独自の作戦行動に移り状況に応じてその援護に向かうつもりのラブであったが、どの学校も援護など必要とせず彼女の思惑は大きく外れてしまったのだ。

 

 

「ヒマね~じゃないわよ!考えなしにあの子達放流するから好き放題するんでしょ!」

 

 

 彼女もこのエキシビションマッチの趣旨は理解してはいるが、それでもやはりいつも通り凛々子のラブへの当たり方は一切容赦がなくきつかった。

 

 

「別に好き放題させてなんかないわよ!あの子達がフリーダムなだけじゃない!」

 

 

 隊列の先頭を走るLove Gunの砲塔上で振り返りラブは即座に凛々子に言い返すが、鼻を鳴らしてそっぽをむいた凛々子は一切その子供じみた反論に取り合わなかった。

 

 

「二人共子供じゃないんだから…あ、お頭の中は子供か……」

 

『鈴鹿!』

 

 

 小言を言いかけた鈴鹿が途中で面倒になったのか二人を見比べそこで話を中断して黙り込むと、キッとなったラブと凛々子が同時に鈴鹿の名を叫んでいた。

 

 

「バカかコイツ等……」

 

「……」

 

 

 呆れる夏妃といつも通り表情一つ変えず無言を貫く愛、AP-Girlsに出番が回って来るのはまだもう少し先のようだ。

 

 

 

 

 

「本当にしつこい…そろそろ諦めてくれないかしら……」

 

 

 フサリアの隊長車10TPの操縦手は諦める事なく自分達を追い回すクルセイダーの執念深さに、いい加減面倒だといった感じで呟きを漏らしていた。

 

 

「でもあの操縦技術は相当よ…命中率が悪いのは行進間射撃である事を差し引いても急造チームだからでしょう……でも大分慣れて来てるから気を付けないといけないわ」

 

 

 アーニャは後方を確認しながら回避機動の指示を出すが、徐々に車体を掠める弾も増え始め彼女の警戒心も高まっていた。

 クルセイダーMk.Ⅲが搭載する43口径6ポンド砲は戦車砲としては非力だが、10TPのような装甲がないに等しい豆戦車から見れば充分に脅威であり、万が一直撃を喰らえば一発で白旗は必至だった。

 

 

「それは解ってるけど言う程楽じゃないわ……っと!」

 

 

 アーニャの警告に答えた操縦手は言う傍から直撃コースで飛来した弾をギリギリで躱し、冷や汗を拭いながらエンジンに更に鞭を入れクルセイダーを振り切ろうとしていた。

 

 

「それで他の車両は退避済みなのね?」

 

「ええ、クルセイダーが私達を追い掛け回してるうちに全車この団地から抜け出したわ」

 

「そう、ならそろそろ頃合いね……」

 

 

 アーニャは返って来た答えに一つ頷いたが、執拗に喰らい付いて離れないクルセイダーを如何にして振り切るかが彼女にとって一番の問題であった。

 だがその一方で追う側のクルセイダーの車内でも、中々10TPを捉えられぬ事に操縦手のリゼが増々苛立ちを隠せなくなっていた。

 

 

「一体何なんですのあの豆戦車は!?ゴキブリじゃあるまいし落ち着きのない走りで!」

 

『オマエが言うな…ってかオマエにだけは言われたくないだろ……』

 

 

 出向組の二人は狭い団地内でも平気でクルセイダーを振り回すリゼの操縦技術に一目置きながらも、その落ち着きのなさに内心そうツッコまずにはいられなかった。

 

 

「けどあの10TPの操縦手、一年であの腕前は相当だぞ?」

 

「そうね……さっきの一撃も私自信あったのに躱されたもの、その実力は認めるべきね」

 

 

 二人は表向き冷静に逃げ回る10TPの操縦手の技量を評価していたが、同時にここまで長引くと思ってもいなかったので焦りも感じ始めていたのだった。

 比較的砲弾の搭載数が多いクルセイダーであったが、10TP相手に追撃戦を始めてから既に10発程の弾を消費しているとあればそれも当然の事だろう。

 

 

「お二人共感心している場合ですの!?このまま逃がしたら三年生の面目丸つぶれですわよ!」

 

 

 長引く追撃戦にリバティエンジンに相当負荷が掛かっている事が気になるリゼは、討ち取れない事に対する苛立ちも合わさりかなりカリカリしている。

 

 

「面目はともかくあの子等の実力は確かだよ…それは認めてやらないとね……頼るべき先輩もいない上に与えられた戦力は非力な豆戦車、それであれだけの立ち回りを演じて見せるんだからさ」

 

「わ、私だって解ってますわそれくらい!だからこそこちらも全力で相手をするのが礼儀というものでしょう!」

 

 

 キレるリゼに車長を務める黒森峰の隊員がふと真顔に戻りそんな事を言えば、微かに頬を赤らめたリゼが虚勢を張るように言い返していた。

 

 

「まあリゼの言う事も解ります、私としてもこれ以上無駄弾を撃つ気はありませんよ」

 

 

 そんなリゼの様子に砲手役のプラウダの選手が、穏やかに微笑みながらフォローを入れる。

 

 

「照準越しに10TPの動きを見ていて少しクセのようなものが見えて来ました……次で仕留めに行きますからリゼは私の言うように走らせてくれますか?」

 

 

 更に彼女が続けて言ったセリフにリゼも一瞬驚いた表情を浮かべたが、次の瞬間には口角を吊り上げ聖グロらしからぬ凶悪な笑みを浮かべていた。

 

 

「まっかせろですわ!このリゼに走りで勝てない事を思い知らせてやりますわよ!」

 

 

 声高に叫んだリゼは限界まで速度を上げると、追走する10TPとの距離を更に詰め始める。

 

 

「いいですか?10TPの操縦手は右コーナーに進入する時は左に比べ若干ドリフトアングルが大きくなります、なのでこちらは進入をワンテンポ遅らせ側面に一撃見舞ってやりましょう」

 

「って事は右折するよう直前に牽制の砲撃が必要になるか……」

 

「そうですね、ですからあなたには連続装填をお願いする事になりますが行けますか?」

 

 

 高速走行中にかなりのハードワークを強いる事を少し心配するプラウダの隊員だが、車長兼装填手を務める黒森峰の隊員は軽く二の腕を叩きながら涼し気に笑ってみせるのだった。

 

 

「大丈夫、私が一年の時ヤク虎で装填手やってたのを忘れたの?この程度どうって事ないわ、最短時間で連続装填してみせるからあなたこそ確実に仕留めなさいよね」

 

 

 返って来た答えに少し驚いた表情を見せたが、直ぐに彼女も不敵な笑みを浮かべ照準を覗き込みながら短く答えるのだった。

 

 

「ええ、任せなさい……」

 

 

 それを合図にリゼは勝負に出るべく10TPとの間合いを測り、仕掛けるタイミングを窺い始めた。

 

 

「二人共宜しくて?二つ先の交差点で仕掛けますわよ?」

 

「ああ問題ない」

 

「いつでもどうぞ」

 

 

 リゼの問いに打てば響くで二人が応え、一つ頷いた彼女はここぞというタイミングでひと際高い声でGOサインを出すのだった。

 

 

「行きますわよ!」

 

 

 その号令に合わせ初弾が装填されると即座に主砲が火を噴き、交差点に進入する直前の10TPの左側面のアスファルトを深く抉った。

 そして弾けたアスファルトが10TPの側面装甲を叩くより早く反応した操縦手が、右折で次の攻撃を回避しようとドリフトに移行すべくカウンターを一つ入れる。

 

 

「今ですわ!」

 

 

 プラウダの隊員の言った通りの挙動を見せた10TPにリゼが興奮気味に叫んだが、その時にはもう次弾が装填され砲手が必殺の一撃を放っていた。

 マズルフラッシュと乾いた砲声、それは完璧なタイミングで放たれた一撃だった。

 それは観戦エリアで中継映像を固唾を飲んで見守っていた者達も、次の瞬間側面装甲を撃ち抜かれ横転する10TPの姿を想像する程であった。

 だが緊急避難的に右折しようとした10TPが大きく姿勢を乱しアウト側に大きく膨らんだ結果、側面に直撃するはずの砲弾は足元ギリギリのアスファルトに突き刺さっていた。

 

 

「チッ!」

 

 

 砲手であるプラウダの隊員の腕は相当高いレベルらしく、直感で外した事を悟り思わず眉を顰め舌打ちをしていた。

 しかし至近弾が足元で炸裂した結果軽量な10TPは片輪走行状態に陥り、宙に浮いた履帯は衝撃で砕けピースとリンクを撒き散らす事になった。

 更に着地後もバウンドした10TPは勢いが止まらず、スピンも喫した上に反対側の履帯まで脱落し民家の植え込みに突き刺さり漸くその動きを止めたのだった。

 

 

「やりました──」

 

「まだだ!」

 

「えっ!?」

 

 

 想定とは違ったが10TPを仕留めたとリゼが歓喜の叫びを上げかけたが、それを遮るように車長を務める黒森峰の隊員が注意喚起の声を上げていた。

 

 

「な、なんですの!?」

 

「忘れたのか!?10TPは──」

 

 

 そこまで黒森峰の隊員が言い掛けた処で植え込みに刺さり息の根を止めたはずの10TPが、エンストしていたエンジンを再起動すると車体に絡んだ木の枝を引き摺りながら猛然と走り出していた。

 

 

「え!?」

 

 

 リゼが驚く感に10TPはこの日一番の加速力を見せ、ダメ押しのようにスモークまで焚きあっという間に彼女達の前から姿を消したのだった。

 

 

「リゼ…あなた10TPがクリスティー式なのを忘れていましたね……?」

 

「…忘れてましたわ……」

 

『あ…素直に認めた……』

 

 

 アーニャが隊長車として使用する10TPは継続のBT-42と同様にクリスティー式を採用し、例え履帯が切れても装輪での走行が可能であった。

 更に10TPの装輪時のトップスピードは僅かながらもBT-42を上回る75km/hを誇り、例えクルセイダーがリミッターを解除したとしても追い付けぬ速度で走り去っていたのだ。

 予想外にリゼがそれを失念していた事を認め、呆気に取られていた二人が我に返った頃には10TPが撒き散らしたスモークも晴れ、姿処かそのエンジン音も聴こえなくなっていた。

 

 

「ええと……そう!こちらは片方の履帯を切られただけですが、あちらの履帯は両方とも毟り取ってやりました!ですからこの勝負の勝者は私達ですわ!」

 

『あ~ハイハイ♪』

 

 

 言っていて自分でも恥ずかしかったのだろう、肩越しにリゼの頬が赤い事に気付いた二人は顔を見合わせ噴き出した後に歌うようにハモっていた。

 

 

 




クリスティー式がアレなのは重々承知ですが、
そこはそれガルパンワールドなので10TPも大活躍ですw

先週と変わらず厳しい状況が続きますが、
恋愛戦車道が気晴らしになる事を祈りつつ投稿させて頂きます。
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