ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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久しぶりでラブの裏表の激しさが顔を出します……。


第七十四話   Walküre(戦女神)

 Love Gunを先頭にミニカイルを組んだAP-Girlsが、春の訪れを告げるような潮風の吹き抜ける野比海岸をゆっくりと進んで行く。

 試合中であるにも拘わらず各車の砲塔上には操縦手以外のメンバー達が腰を降ろし、Love Gunに搭載された高音質なスピーカーから流れる新曲を肩を寄せ合いながら歌っている。

 突然の事に後を追う者達は呆然としていたが、無線の共用回線からも歌声が聴こえ始めた頃には、皆揃って無意識のうちに曲に合わせその身を揺らしていた。

 

 

 

 

 

「あっはっはっはっは!さすがはおひいさま(お姫様)、期待を裏切らないわぁ♪」

 

 

 AP-Girlsが新設校リーグ戦を制した記念に開催されたエキシビションマッチ。

 サテライトも含め市内数か所に設けられた観戦エリアは、多くの観戦客で活況を呈している。

 中でもメイン会場となる平成町の海の公園周辺は最も多くの観戦客が集まりごった返し、運営本部を始め関連する各部署は観戦客の誘導から迷子対応まで業務に忙殺されていた。

 だがその運営本部と軒を連ねる警備本部の天幕から突然辺りを一切憚らぬ傍若無人な笑い声が響き、その豪快さはたまたま天幕の前を行き来していた観戦客が思わずビクリとする程のものだった。

 そして驚いた者達の視線が集中するもそれを意に介さず馬鹿笑いを続ける人物こそ誰あろう、警備主任の敷島英子その人であった。

 本来捜査課に所属する英子にとって警備の任は担当外の事であるが、ラブの母であり厳島の頂点に君臨する亜梨亜の信望も厚い彼女は、地元でイベントがある際は警備に関する全てを任される事が増えていたのだ。

 現に今日もこうして警備本部に陣取っては市内各所に配した警備陣の陣頭指揮を取っており、これまでの処彼女の優秀さを示すようにトラブルは一切起こっていなかった。

 しかしそんな彼女もラブが無線の共用回線をジャックし、自分達の歌声の垂れ流しという暴挙に出た途端自分の立場も弁えず大爆笑していたのだった。

 

 

『英子ぉぉぉ……後でぬっころす!』

 

 

 英子が馬鹿笑いする警備本部の直ぐ隣、運営本部の天幕の下ではこの試合の審判長である亜美が仕切りもなくダイレクトに耳を打つ英子の笑い声に、まるでアルミ箔でも噛んでしまったような顔で口元を引き攣らせ肩を震わせていた。

 

 

『それに恋お嬢さんもお願いですからこれ以上はもう……これ練習試合や公式戦だったら私は確実に始末書なんですよ!』

 

 

 無線に設定されている共用回線は通常の場合、審判団からの撃破コールや試合終了を告げる際に使用され、それ以外では非常事態のみ出場選手に使用が許される特別な回線であった。

 最初にカチューシャがやったように挑発行為に使用したり、ラブのように長時間電波を占有し歌を歌うなど言語道断な行為であり、もしこれが公式戦であればそれを許した審判長もタダで済むはずもなく彼女の言うように始末書は確実だっただろう。

 しかしこの試合はお祭り色が強いエキシビションであり、主催する笠女のバックボーンの存在を考えれば何か物申すチャレンジャーなどいるはずもなかった。

 だがそれでも亜美は立場的に気が気ではなく胃が痛くなる思いで中継映像を見ていたが、残念ながら彼女の切実な思いが試合中のラブに届く事はないのだった。

 

 

 

 

 

「Phew……恥ずかしいったらないわ……sorry…so sorry……ホントごめんアンジー、でももう私は大丈夫だから心配しないで」

 

「いやいや、私はおケイが無事戻って来てくれただけで充分だからさ♪」

 

「Wow!アンジーったら……♡」

 

『もげろこのバカップルが……』

 

 

 メイプルにいいようにやられた挙句2両のシャーマン失った上に、頭に血が上ったまま風林火山相手に更なる失態を演じたケイは、杏と合流するまでナオミですら手が付けられない程荒れていた。

 特にカチューシャの後を追って移動を開始した当初の荒れようは凄まじく、放送コードに引っ掛かるFワードを乱発し中継を行う地元ケーブル局が一時的に音声をカットした程だった。

 その後も延々とFワード垂れ流しのケイと同列視される事に閉口し、死んだ目のナオミが視線のみで杏に何とかしてくれと泣き付く迄彼女の暴走は止まらなかった。

 だが例の困ったような下がり眉毛の笑い顔の杏が、ヘッツアーをケイの無印シャーマンの隣に進め宥め始めると、立ち所に機嫌が直りデレたケイは周囲を呆れさせていた。

 

 

「う~ん……やっぱラブ姉の友達って変わりモンばっかなんだな~」

 

『……』

 

 

 カチューシャの作戦放棄に端を発した大移動を風林火山を引き連れ追尾していた武田菱の真奈は、何を喚いているかまでは解らぬが荒れていたケイが杏に宥められあっという間にデレた途端、彼女らしくない些か間の抜けた口調でしみじみと呟いたのだった。

 しかし風林火山の隊員達としては中々『ハイそうですね』とは答え辛く、全員微妙な表情で前方でバカップル全開で騒ぐケイの背中を見ていた。

 なし崩しに始まった大移動の隊列は統率が取れておらず、漂う空気はグダグダ感満載で、先頭を行くカチューシャ一層機嫌が悪そうだった。

 だがよくよく見れば忌々し気な様子で腕を組む彼女の右手の人差し指は、無線の共用回線から流れるラブの歌声に合わせトントンとリズムを取っていた。

 そしてそれはカチューシャに限った事ではなく、試合に参加する全ての選手に共通の事であった。

 尚、唯一の例外は不貞腐れた様子で砲塔上に正座し一人無言で紅茶を啜るダージリンだったが、実は慣れぬ正座にすっかり足が痺れにっちもさっちも行かずそれ処ではなかったのだ。

 

 

「え~っと…どうする……?」

 

「どうするって答えは一つしかないじゃない」

 

「聞く迄もないわね……」

 

「だよね~」

 

 

 合流し休憩中だったエニグマとパーペチュアルとクワイエット、更にフサリアの四校の隊長達は無線機から流れるAP-Girlsの新曲に思わず顔を見合わせている。

 一応というか念の為にといったニュアンスの籠った口調の晶が視線を巡らせたが、聞くまでもなく最初から答えは出ていた。

 

 

「今から動けば位置的に私達が一番最初に発電所入り出来るか……」

 

 

 どうすると言いながらもクリップボードに留めた地図に目を落としていた晶は、地図に何やら書き込みながら時計を確認し時間を読んでいた。

 

 

「それじゃそれでいいわね?」

 

 

 それらの作業を全て終えた晶が改めて問えば、皆答えるまでもなくそれぞれ揮下の部隊に指示を出し始め、聞くまでもなかったかと晶はスッと肩を竦めていた。

 かくして生き残っている全ての車両が決戦の舞台となる発電所目指して動き出し、試合はいよいよ最後の激突へ向けて大きく舵を切ったのだった。

 

 

 

 

 

「坂もだけど横須賀は本当にトンネルが多いな~」

 

 

 AP-Girlsの生歌をBGMに野比海岸を通過したアンチョビは、海岸通りの終わりから左に大きく曲がるコーナーを抜けると、上り坂の先で口を開くトンネルに感慨深げな呟きを漏らした。

 手元の地図を確認すればその区間には発砲禁止の赤バツが記されており、それでこのトンネルが崩落防止の為のカーボンコーティングが施されていない事が確認出来た。

 だがこのトンネルを抜けた先の坂を下れば、そこには決戦の地となる久里浜火力発電所の正面ゲートが待ち構えているはずであった。

 

 

「さすがにここまで来て何か仕掛けるとかはないだろうがさて…問題はやっぱ発電所に突入してからだよな……まぁ市街地と違ってラブも敷地内に入った事はないはずだし、その辺の条件は我々と一緒だと考えていいだろう……」

 

 

 アンチョビはクリップボードに束ねた地図を捲ると、事前に配布されていた発電所内の明細地図に目を落とし考え込む表情になった。

 確かにラブも発電所という特殊な場所に立ち入った経験はなかったが、アンチョビはラブが地図を丸暗記出来る事を思い出しそれがどの程度大勢に影響を及ぼすか考えていた。

 そしてアンチョビが思案するうちに坂を上り切ったAP-Girlsトンネルに突入し、まほを先頭とする三年生連合もその後を追った。

 

 

「うわ、うるさっ!」

 

 

 トンネルに入ると当然の事ながらAP-Girlsの歌声とカラオケの音が盛大に反響し、その音の大きさにアンチョビが煩そうに顔を顰めていた。

 だが次の瞬間更に強烈な音がトンネル内に響き渡ると、あまりの煩さにアンチョビはヘッドホンの上から両手で耳を覆い悲鳴にも似た叫びを上げたのだった。

 

 

「ぬわっ!?何事だぁ!?」

 

 

 耳に突き刺さる電子音に悲鳴を上げ耳を押さえたのはアンチョビだけでなく、前を行くまほや後方のナカジマ達も同様であった。

 トンネル特有のオレンジ色の照明の下、両の耳を押さえるアンチョビが目を凝らすと前を行くラブが何やら構えている姿が見えた。

 

 

「あれは……」

 

 

 トンネル内に響く耳障りな電子音の正体、それは一部ではすっかりお馴染みであるラブ愛用の拡声器のホイッスル音であった。

 学校行事等で教職員が生徒を注目させたり注意する際に使う事がある機能だが、ラブはそれをあろう事かトンネル内で使用しアンチョビ達を悶絶させていたのだった。

 

 

「このどアホゥが!一体何考えて──」

 

「千代美~♪」

 

 

 質の悪い嫌がらせにキレたアンチョビが罵声を浴びせかけたが、ラブはその出端を挫くように拡声器で彼女の名を呼びそれ以上言わせようとはしなかった。

 

 

「悪いけど()()()があるから私達先に行くね~」

 

「え…?あ……ちょっと待て、オイ!」

 

 

 一足先にトンネルから出ていたラブはアンチョビが何か言うより早くヒラヒラと手を振ると、オマケのように投げキスを一つ決めてティーガーでは追い付けぬ高加速で走り去って行った。

 

 

「あのヤロウ…ふざけたまねしやがって……ん?」

 

 

 置き去りにされたアンチョビが忌々し気に姿を消したラブに悪態を吐く。

 だが意外にも一番怒りそうなまほが静かな事にアンチョビが気付くと、まるでそれを待っていたかのように前を行くまほは振り向き真顔で恐ろしくピントのずれた事を言いだした。

 

 

「なぁ安斎……」

 

「な、なんだどうした?」

 

「やっぱりAP-Girlsって凄いんだな、あの急加速でも微動だにせず砲塔に座ってたぞ…あ、でも胸のアハトアハトだけは元気にプルプル揺れてたなぁ……♡」

 

「あのな……」

 

 

 いつもなら何処見てんだこのボケとツッコミを入れる処だが、この日最大の疲労感に見舞われたアンチョビはそのまま帰りたくなっていたのだった。

 

 

 

 

 

「先に行くのはいいとして仕込みって一体ナニよ?」

 

 

 ダッシュでまほ達を一旦引き離し発電所に向かう坂を下る途中、いつの間にそんな物を用意していたのかラブが拡声器を使う前に耳に入れていたイヤープラグを引き抜いた凛々子は、些か険ある声と共に胡散臭げな視線をラブに向けていた。

 

 

「え?何もしないわよ、けどああ言っておけばまた勝手に踊ってくれるから面白いでしょ?」

 

「この腹黒女の腹ン中はタールでも詰まってんじゃねーのか?」

 

 

 凛々子と同様に引き抜いたイヤープラグを無造作にパンツァージャケットの胸ポケットに突っ込んだ夏妃は、容赦なく辛辣な評価と共に人間の屑を見る目をラブに突き付けた。

 

 

「酷っ!何で夏妃はそんな酷い事言うのよ!?」

 

「どっちがヒデぇんだよ……?」

 

 

 まほ可愛いを完全に拗らせ自分がどれだけエグい事をやっているか自覚のないラブは、振り向きざま強い口調で夏妃に抗議する。

 だが誰一人ラブを擁護する者はおらず、愛ですらそっぽを向いてラブの涙目をスルーしていた。

 

 

「ハイハイ、馬鹿はそれ位にしてサッサと指示出しなさいよ」

 

「鈴鹿!?」

 

「発電所のゲート見えたわよ?」

 

 

 チーム一の冷静女とも言われる鈴鹿が眉一つ動かさずに顎で示す先には、既に操業を停止して久しい久里浜火力発電所のメインゲートが門扉を開いた状態で待ち構えているのが見えた。

 門扉の脇には常に警備員が常駐していたであろう詰め所があったが、今は人影もなく敷地に立ち入る者を阻む者はいなかった。

 

 

「ん~、さしずめ地獄の門ってトコかしらね~?」

 

『その地獄を作るのはアンタでしょうが……』

 

 

 日頃から訓練などの場においても手加減など一切しないくせに、自分は優しいと本気で思っているラブに白い目の集中砲火が浴びせられたが、面の皮の厚さがかーべーたん並な彼女はそれに全く気付く事なく額に小手をかざしメインゲート周辺の様子を窺っていた。

 

 

 

 

 

「こうも大きいと遠近感狂うわよね……目測誤りそうで怖いわ~」

 

「確かに…でも学園艦暮らしの私達が言えた義理じゃないと思う……」

 

「まぁそれはそうだけどさ~」

 

 

 発電所に真っ先に突入した晶達は、敷地の一番奥の嘗ては燃料を備蓄していた巨大なタンクが立ち並ぶ区画に辿り着いていた。

 晶がぐるりと周囲を見回せば目に入る構造物は全てが巨大な為に、彼女が言うように距離感が掴み難く試合中に苦労しそうだと顔をしかめた。

 しかし晶が建物のサイズが常識からかけ離れている事に言及すると、アーニャが自分達もこの世で最も非常識な学園艦で暮らしている事を指摘し、晶は肩を竦めながらもう一度周囲を見回していた。

 

 

「でもここなら市街地より作戦の自由度が高そうだから、何とかやり残した事も試せそうね」

 

「カレンってホント真面目よね、私には真似出来ないわ~」

 

 

 このエキシビションマッチを恰好の実験の場と捉えるカレンに対し、何処までも軽い口調とふわふわした態度で混ぜ返すメイプルだが、皆彼女の狡猾さをよく知っているので誰一人その言葉を額面通りに受け取る者はいなかった。

 それが証拠に揃って表情一つ変えずメイプルの話を聞き流しているように見えるが、内心ではどうせまだエグい手札を残しているに決まっていると決め付けていたのだから。

 

 

「とにかくあれよ、何やるにしてもラブ姉次第って事…ん?言ってる傍から来たみたいよ……」

 

 

 緊張感の欠片もない会話が続き晶がそれを纏めかけた時、質の高いチューンを施されたエンジン音と履帯がアスファルトに爪を立てる音が聴こえ、それに気付いた晶が音のする方を見ればそこにはミニカイルを組み高速で接近するAP-Girlsの姿があった。

 

 

「ハ~イお待たせ~♪ここまでは首尾も上々、私も何も言う事がないわ」

 

 

 合流したラブは開口一番満足げな様子で晶達を賞賛し、極上の笑みで彼女達を骨抜きにする。

 

 

「さっき無線で真奈にも追撃は中止して速度最優先で合流するよう指示は出した……いよいよここからが本番、相手が強豪の三年生だろうが関係ない、勝ちに行くから付いて来るのよ?」

 

 

 普通に考えればとんでもない話だが、既に新設校連合の盟主として認識されているラブの言う事に、この場面で異を唱える者などいなかった。

 

 

「って~訳で早速アレやるから晶ちゃんは準備しててね~♪」

 

「ハイ…え……?ちょっと待ってラブ姉!初っ端からやるの!?」

 

「そうよ~♪こういうのはねぇ、いきなりやるから効果があるのよ?時間が経てば経つ程目が慣れて来るから早い方がいいの……さ、連中が来る前に変身して隠れてて頂戴♪」

 

「了解…けどホントいいのかなぁ……?」

 

「いいのいいの♪それじゃみんなも準備初めてね~♪」

 

 

 事前にそれをやる事は聞かされていたし誰も反対はしなかったが、いざそれを実行するとなると皆マジでやるのかと揃って引き攣り笑いを浮かべている。

 

 

「マジかぁ…マジでやるのかぁ……」

 

「あれぇ?晶ちゃんは私と()()たくないのかなぁ?」

 

 

 何とも含みたっぷりなもの言いと共に意味深な視線を向けられた晶は、瞬間的に耳まで真っ赤にするとワタワタと手を振りそれ以上何も言わせまいと叫んでいた。

 

 

「解った!解ったからそういうの止めて!」

 

 

 これから起こる事を想像し周囲がニヤニヤする中、晶は操縦手に指示を出すとその場を離れ一番近くにある燃料タンクの陰に姿を消した。

 そして晶のパンターが姿を消すのと入れ替わりに、今度は真奈率いる風林火山が二列縦隊でその快速ぶりを発揮しラブの下へと帰参し、異様な盛り上がりを見せるラブ達に妙な顔をしていた。

 

 

「なんでぇ?えらく盛り上がってるじゃねぇか?」

 

「早かったわね~♪さすが風林火山、でも一体どんなルート使ったのかしら?」

 

「ん?単にトップスピードで敵さんの重砲部隊ぶち抜いて来ただけだぜ?」

 

「そりゃまたカチューシャの怒りが倍増してそうねぇ……」

 

「あ~、そういや何か喚いてたような……それよりさっきから何笑ってたんだよ?」

 

 

 尚も含み笑いを見せるラブに益々妙な顔をする真奈であったが、夏妃が種明かしをしてやれば直ぐに彼女もラブ達と同様の笑みを浮かべ晶が戻るのを待っていた。

 

 

「成程そういう事か…お、噂をすれば……いいじゃねぇか、似合うぞ晶♪」

 

「真奈うるさい…えっと、変じゃない……?」

 

 

 戻って来た晶の姿に目を丸くしたラブであったが、直ぐに頬を上気させた彼女は興奮した様子で一気に賞賛の言葉を捲し立てていた。

 

 

「いい!凄くいいわ晶ちゃん!最高だわ!これなら行けるわよ!うん!実に素晴らしいわ!」

 

「そ、そう……?」

 

 

 テンション爆上げなラブに晶は引き気味だが、胸のたわわをギュッと抱き締めた彼女は興奮を隠そうともせずその身をクネクネさせている。

 

 

『なぁ、あれって遠回しに自画自賛してねぇか……?』

 

『シッ!ややこしい事になるから見るんじゃない!』

 

 

 夏妃と凛々子がヒソヒソするが、ハァハァするラブはそれすら気付く様子がない。

 

 

「あ~ラブ姉、お楽しみの処悪いけど()()()来たぜぇ?」

 

「あらやっと?どんくさいのは相変わらずねぇ」

 

 

 だがそんな彼女に真奈が妹という部分を強調して声を掛けると、都合のいい耳は妹の部分だけは聞き逃さなかったらしく真奈が指差す方に目を向けていた。

 

 

「あ~成程、カチューシャ達が来るの待ってた訳ね……まぁいいわ、そっちがその気なら私も全開で容赦なく相手をしてあ・げ・る♡」

 

 

 キュっと口角を吊り上げたラブが色気たっぷりな芝居がかった口調で物騒なセリフを口にすると、その場に居合せた者達はゾッとした表情で凍り付いていた。

 

 

「さあそれじゃあやるわよ!一番槍は誰!?あなた達の本気を私に見せて頂戴!」

 

 

 しかしラブは彼女達の様子などお構いなしに声音を一変させると、今度は侍大将宜しく大音声で檄を飛ばし新設校の若虎達の闘争心に火を付けていた。

 

 

「各車配置に着け!突撃隊は密集隊形で我に続け!敵前衛に楔を撃ち込み出端を挫く!重砲隊は斬り込むギリギリまで高火力で相手の動きを封じろ!最初が肝心だ、一気に畳み込むぞ!腑抜けた連中の尻を全力で蹴飛ばしてやれ!」

 

 

 日頃の間延びした口調や甘い囁きなどからは想像も付かぬ猛々しい叫び。

 だが、だからこそここ一番という場面において効果覿面なラブのアジテーション。

 硬軟自在、この飴と鞭の使い分けの巧さも彼女が有能な指揮官である証と言えよう。

 

 

「重砲隊徹甲弾装填!敵フラッグ車の鼻先にぶち込むぞ!」

 

 

 皆ラブの指示に付いて行くのに必死だが気負いや焦りは感じられず、一種のトランス状態にでも入っているかのようにその動きに無駄は見受けられなかった。

 

 

「ふふっ♪…いい緊張感ね……さぁまほ、今からお姉ちゃんがたっぷり遊んであげるからね……♡」

 

 

 ラブの瞳に狂喜と狂気をはらんだ光が宿ったその時、まほはこれまでに経験した事のない背筋が凍るようなプレッシャーを感じていた。

 

 

「よぅし撃てぇ!突撃隊我に続けぇ!」

 

 

 エニグマのヤークトパンターを始めパーペチュアルのファイアフライなど新設校連合の重砲が一斉に火を噴き、その直後にLove Gunを先頭にAP-Girlsと風林火山が怒涛の突撃を開始する。

 壮絶な全面衝突の幕開けに観戦エリアではこの日一番の歓声が巻き起こり、それを見守る後輩達は思わず息を呑み身を乗り出すのだった。

 

 

 




ラブは一体晶に何をやらせるんでしょうねぇw

久しぶりにご登場の英子さん……うん、やっぱり彼女はこうじゃなきゃww
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