ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊
<< 前の話 次の話 >>

22 / 107
高校戦車道観閲式もいよいよその幕を閉じますが、
今回もラブが大暴れします…違った意味で。
まあやりたかったネタ目一杯詰め込んでお送りします。

それと今回はさおりんとゆかりん、梓ちゃんと絹代さんが遂に登場です。
しかしドイツ語と熊本弁は難しい…例によって適当です、ハイ。


それでは皆さんご一緒に。

ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!




第五話   富士に咲く華

 高校戦車道観閲式も午後になり全国大会出場クラスが登場する後段の観閲行進が始まった。

 全国大会クラスの履修校から選抜された、大編成のブラスバンドによりエンドレスで演奏される陸軍分列行進曲に乗り粛々と戦車隊が隊列を組み場内に入場して来る。

 やはり全国クラスの有名校ともなると沸き起こる拍手も俄然大きくなっていた。

 そんな中でも最初に格段に大きな拍手で迎えられたのは、意外にというか知波単学園戦車隊が入場して来た時であった。

 その知波単の隊長である西絹代は、大学選抜戦以降その麗しい容姿と快活な人柄、名家西家の御令嬢である事も世間の知る処となり一気に耳目を集め目下人気急上昇中であった。

 更に月刊戦車道のグラビアページに掲載された、愛馬ウラヌスことゴディエ・ジュヌー1135Rに跨る凛々しくも勇ましい姿に若い女性ファンが激増、今も観客席からは『絹代様』なる黄色い嬌声が飛び交っていたりする。

 その黄色い声が飛び交う中、当の絹代本人は実に涼しい笑顔で美しく長い黒髪を靡かせ、敬礼を決めながら知波単戦車隊を先導し進んで行く。

 しかし隊長席の辺りに差し掛かった辺りで、絹代がほんの一瞬ではあるがニコリと微笑み、一点に向かい敬礼を送っていた。

 そしてその敬礼が贈られた先、隊長席でも一人の人物が小さく両手を振り返している。

 会場内でその小さなやり取りを誰も気にするものは居なかったが只一人気が付いた者が居た。

 それは地区毎に振り分けての入場の為、知波単に続き入場して来た聖グロリアーナ戦車隊の隊長であるダージリンその人である。

自身も大きな歓声を受けつつ取り澄ました笑顔で敬礼をしながらも、その一瞬の出来事に目ざとく気付いてほんの一瞬その青い瞳を細めていた。

 

 

『どういう事ですの?今の絹代さんの笑顔と敬礼は?明らかに特定の一人に送られていましたわ。そしてその送られた相手は間違い無くラブ!そしてあの子も手を振り返して!二人は一体どういう関係でいらっしゃるの!?そもそもその関係は何時から!?』

 

 

 胸中そんな事を考えつつ表情は変わらず笑顔のまま敬礼をしている。

 だがその瞳の奥には何やら仄暗い炎(ジェラシー)が宿りラブを見据えていた。

 昨今絹代と良い仲と噂されるだけに心中穏やかでは居られないといった処であろう。

 しかし一方のラブはといえば胸の前で手を組み『ダージリンさま~♪アッサムさま~♪』などと嬌声を上げ、周囲に座る前段で観閲を終え同席していた他校の隊長達をドン引きさせている。

 因みに全国大会優勝校である大洗がトリを務める以外北から南の順で行進している為、先に登場していたプラウダに対してもラブは『カチューシャさま~♪』と『ノンナさま~♪』をやっており、コマンダーキューポラ上のカチューシャは怒りでプルプルしながら敬礼していたりした。

 そして観閲行進は更に進みアンツィオ高校が登場した際それは起こった。

 アンチョビが搭乗したP40がぺパロニのカルロ・ヴェローチェCV33やカルパッチョのセモヴェンテM41などを従え行進して来るや、突如として全観客席から怒涛の『ドゥーチェコール』が巻き起こったのである。

 満場に響き渡る『ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!』の連続コールに、思わずアンチョビは頭を抱えそうになるが敬礼は止められない、チラリと見ればぺパロニもノリノリだ。

 そのぺパロニの顔には『オメ~ら解ってるじゃね~か~』と書いてある。

 

 

『や、止めんかこのバカモノ~!』

 

 

 心中でそう毒突くがドゥーチェコールは鳴り止まない。

 そして視界に入った隊長席でも当然ラブが右の拳を振り上げドゥーチェコールを繰り返し、更に周辺の他校の隊長を巻き込み無理矢理ドゥーチェコールをやらせる始末。

 

 

『た、頼む!お願いだから止めてくれ~っ!!!』

 

 

 アンチョビの心の叫びも虚しく行進は進んで行く。

 一方連盟観閲席ではその光景に亜美としほが笑ってはいけない高校戦車道観閲式を演じていた。

 その後も行進は続き登場したサンダースのケイとナオミにも同様の『さま~♪』攻撃を仕掛け、飛び跳ねてバルンバルンするおっぱいにケイは再びプルプルさせられている。

 そして観閲行進も残るはいよいよ二校、黒森峰と大洗を残すのみ。

 まずまほの搭乗するティーガーⅠを先頭に一糸乱れぬ隊列で敬礼を決め整然と入場して来ると、やはりさすがは黒森峰、これまで以上の拍手が巻き起こる。

 が、ここでもやはりラブのやる事は容赦が無かった。

 クールに敬礼を決めるまほに対し色気全開のハスキーボイスで叫び掛ける。

 

 

「いや~ん♡まほ様素敵~!結婚して~♪」

 

 

 これにはさすがに周りも笑いを堪えるのに必死であり、やられたまほの鉄面皮にもヒビが入りその口元が微かにヒクヒクと痙攣している。

 

 

『後で絶対アハト・アハトをぶち込んでくれる!』

 

 

 そんなまほの瞳の怒りの炎もラブは一向に気にせずクネクネ身をくねらせていた。

 それとやはり例の二人がこの日二度目の笑ってはいけない高校戦車道観閲式を味わっている。

 

 

「こ、怖い…ラブお姉ちゃんが怖いよぅ!」

 

 

 前方の光景を目にしコマンダーキューポラ上のみほは既にガクブル状態だ。

 

 

「ちょっと~、みぽりん大丈夫~?」

 

「どうしたのでありますか西住殿?」

 

 

 その様子に沙織と優花里が声を掛けるが耳に届いていない様子。

 首を捻る二人を余所にいよいよ大洗が入場する出番がやって来た。

 大洗女子学園の名がコールされ我に返ったみほもパンツァー・フォーの号令を掛ける。

 隊員も搭乗するその戦車も高校戦車道界きっての個性派集団、奇跡の大洗の登場に会場内もこの日最大の歓声と拍手に包まれ湧きかえっている。

 思えば判官贔屓な国民性の日本人にとって大洗の快進撃は、最も熱くなる展開故これもまた当然と言えば当然の反応で、中には感極まって泣いている高齢の観客も見受けられた。

 全国大会優勝旗をはためかせ進むあんこうチームとみほに熱い声援が飛ぶのは当然として、すっかりジャイアントキリングで名を馳せ『大洗の首狩り兎』の二つ名を奉られた後に続くウサギさんチーム、中でも新人賞のヤングタイガー賞を受賞している梓にもかなりの声援が飛んでいる。

 M3の車内でも『梓すご~い♪』などと盛り上がっているが、当の梓はそれ処ではない程ガチガチに緊張して敬礼したまま固まっている様だ。

 

 

『うぅ…とうとう隊長席の前まで来ちゃったよぅ…』

 

 

 自分が一体どんな攻撃をされるか戦々恐々で隊長席のラブに視線を送るみほ。

 遂にあんこうが隊長席前に差し掛かりみほの視界にラブの姿が入って来る。

 が、しかし──。

 みほの目に飛び込んで来たラブは普通に手を振り時折左手の人差し指で目じりを拭っている。

 

 

『え!?泣いてる?』

 

 

 そして遂には号泣し始めたらしく両隣のどこかの隊長に慰められている姿が目に映る。

 

 

「ラブお姉ちゃんそりゃ一体どぎゃん攻撃たい!?」

 

 

 思わずお国言葉が口を突いて出てしまうみほだが隊列はそのまま先に進む。

 その先辿り着いた連盟観閲席では感極まったしほが顎を梅干しにして耐えており、その横では何とも言えない微妙な困った顔で亜美がみほの事を見ていた。

 そんな一部の人間には『コレ何て罰ゲーム?』な観閲行進も大洗が下手の観客席前を通過した処でどうにか無事終わりを告げたのであった。

 

 

「前言撤回!アイツは昔からなんも変わっちゃいないわ!」

 

 

 観閲行進中ラブの仕掛けたイタズラのお蔭で、一同死んだ魚の様な目でゲンナリしている中、カチューシャのみが癇癪を起こし只独り気を吐いていた。

 そこへLove Gunのコマンダーキューポラから身を乗り出し、途中すれ違う他校の隊長から掛けられる『厳島さんお久し振り』とか『ラブにまた会えて嬉しいわ』なんて声に応えつつニコニコ嬉しそうに手を振りながらノコノコと一同の元にやって来た。

 

 

「みんな~!超カッコ良かったわよ~♪」

 

「わよ~♪じゃない、随分面白い事やってくれるじゃないか?」

 

 

 目の前にやって来たラブの両のほっぺをび~っと引っ張りながら、ナオミが静かに恫喝する。

 

 

「ひ~ん、ゴメンってば~。でもみんながカッコいいから嬉しくって~♪」

 

「油断した私達が愚かだったという事です…わ!」

 

 

 眉間に皺を寄せつつダージリンが吐き捨てる様に言うも全然ラブは堪えていない。

 この日何度目かの溜息を吐きつつアンチョビがラブを指揮用鞭で指すと言った。

 

 

「とにかく時間が無い!さっさとLove Gunを隊列の間に入れんか!」

 

「はぁ~い」

 

「ハイは短く!」

 

「はい…」

 

「しょぼんとして同情を買おうとするな~!」

 

「きゃ~♪」

 

「…早く学園艦(お家)に帰って寝たい……」

 

 

 ウンザリ顔で再び溜め息を吐き肩を落とし自分の乗機に向かうアンチョビ、そしてそれを潮に他の面々も同様のウンザリ顔でそれぞれの戦車に搭乗して行く。

 かくして隊長車による隊列も整い前進の合図を待つのみとなる。

 所属校も使用する戦車の国籍も違えど隊長車がズラリと並ぶ様は実に壮観だ。

 同じ戦車とは言え隊長車ともなるとやはり風格があり見る者を魅了するオーラがあった。

 その隊長車による特別編成戦車大隊の大隊長には、その場で行われる隊長会議に於いて満場一致でまほが選ばれており先頭で入場する事になる。

 必然的にラブのはその次に入場する為まほのティーガーⅠと、みほのあんこうの間で待機中だ。

 すぐ目の前のティーガーⅠのコマンダーキューポラ上にまほの背中が見える。

 

 

 「まほ!…その…ありがとう……」

 

 

 まほの背に向けラブが掛けた言葉に、まほは振り返る事無く右手を揚げ黙って親指を立てる。

 それと同時に入場コールが掛かりまほが大音声で前進の命を下す。

 

 

Spezial bataillon! Panzer vor!(特別戦車大隊前進せよ!)

 

『jawohl!!』

 

 

 無線から聞こえたまほの命令に対し、この時ばかりは黒森峰流に全車からドイツ語の了解の声が一斉に上がり、会場の客席でもスピーカーから聞こえたその声に拍手と歓声が巻き起こる。

 エンジンが唸りを上げ履帯を軋ませ続々と演習展示地域に戦車が進入し、陣地展開して行くがさすが全てが隊長車なだけにその動きには無駄が無くそれだけでも見る者に感動を与えている。

 そして最後尾の一列の展開が終わると演習展示地域は完全に戦車で埋め尽くされた。

 

 

『こちらFDC、対TOT戦車の華道発動!』

 

 

 FDC、ファイヤーデレクションセンターの略称の名の下に、亜美の号令により一斉砲撃命令が下される無線交信の声が会場のスピーカーから響き渡った。

 すでに全車の砲身は高く振り上げられ富士山を指向している。

 

 

『TOT20秒前!』

 

 

 カウントの後眼前に居並ぶ戦車砲が一斉に火を噴く、その腹に響き全身を揺さぶる衝撃に観客席全体から『おぉ!』っと驚きの声が上がる。

 

 

だんちゃーく(弾着)!今!』

 

 

 亜美の叫びと同時に晴れ渡った青空と富士を背景にして、中空に色とりどりの特殊スモーク榴弾が一斉に花開き、ワンテンポ置いた衝撃音が見る者の全身を再び揺さぶった。

 鳴り止まぬ拍手と歓声に振り向き全隊長が敬礼で応え、祭りの終わりの時間が訪れる。

 

 

『状況終わり!』

 

 

 全てが終わった事を告げる亜美の声が響くと後列から順に居並ぶ戦車も撤収を始めた。

 

 

『Ob's stürmt oder schneit,Ob die Sonne uns lacht,──』

 

 

 撤収する戦車の隊列の中、誰からともなく何時の頃からか戦車乙女たちのテーマソングになっているパンツァーリートを歌う声が上がり始める。

 ひとりまたひとり唱和する声は増えて行き、手の空いている者は各々ハッチから顔を出しつつ笑顔で手を振りながら歌っている。

 殆どの隊長が三年生でありこれを最後に公式行事からは引退して行く。

 その歌声はまるで引退して行く彼女達からの別れの歌の様に聴こえて来るのであった。

 かくしてこの別れの歌を最後に高校戦車道観閲式はその幕を閉じた。

 

 

 




観閲行進にはやはり陸軍分列行進曲が最適だと思います。

作中の曳火射撃は本来アレですがソコはノリと勢いという事でお願いします。
御存じない方は対TOT富士で検索して頂くとつべに動画がいっぱいありますよ。

今年は総火演行きたいなぁ…一昨年は行けたけど去年はハズレちゃったんですよね。







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。