ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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やっとお風呂回ですが今回はいつもと様子がw


第九十四話   Venus(泡姫様)

「──ございません……」

 

「何ですって?声が小さ過ぎてよく聞こえないわ…もう一回やり直しね……」

 

 

 周囲もどうリアクションすればいいか迷う程に、それは極めてシュールな光景だった。

 

 

「えっと…ラブ姉……私なら大丈夫、もういいから……」

 

「駄目よ晶ちゃん、これはちゃんとけじめを付けなければいけない事なのよ?ここでキッチリと締めておかなければ先々このポンコツの為にもならないわ」

 

「はぁ……」

 

 

 何と返事をしたものか判断の付き兼ねた晶は曖昧で溜息のような返事を返したが、ラブは眉間に皺を寄せ鋭い視線を足下でひれ伏すまほの背中に容赦なく突き刺していた。

 しかし今一番問題なのはそこではなく、ラブを始めそこにいる者達全員の状態が問題であった。

 何しろ全員が洩れなく全裸、一糸まとわぬすっぽんぽん、ラブのような規格外から程良く実った者や少々残念なサイズの者まで例外なく真っ裸(マッパ)だったのだ。

 それもそのはず。彼女達がいるのは笠女が生徒達の為に造った入浴施設の浴場であり、成る程ここなら全裸である事も頷ける事だった。

 とはいえ破壊的なプロポーションを誇るラブが秘部すら隠そうとせず、腕組みの仁王立ちで足下で黒御影石の床に額を押し付けるまほを睨み付ける構図というのはやはり只事ではなかった。

 だがそもそもが何故このようなカオスな状況に至ったかといえばその理由はただ一つ、試合中ラブと晶のコスプレ作戦を見破ったまほの「胸の小さい方がニセモノ」なる失言が発端であった。

 この味方であるアンチョビすら怒らせたまほのデリカシーに欠ける女子力の低い発言は、晶のコスプレに大満足のラブの逆鱗に触れこうして屈辱的説教を喰らう事態を招いていたのだ。

 

 

「さてまほ……それじゃあもう一回最初からやってみようか」

 

「くっ……」

 

 

 全裸土下座などという屈辱以外の何ものでもない事態にまほも唇を噛むが、誰一人として彼女に助け舟を出す者はいなかった。

 何故なら機嫌を損ねたラブにもしうっかり迂闊な事を言えば、後で大変な事になると過去の経験から全員がよく解っていたからだった。

 

 

「…まほ……?」

 

 

 自分で蒔いた種とはいえ恥ずかしさと悔しさにまほが固まっていると、ラブの声のトーンがもう一段下がり周囲の空気が凍り付いた。

 

 

「…ち……」

 

「ち……?」

 

 

 土下座しているまほにラブの姿は見えなくとも気圧された彼女が口籠ると、問うような声音でラブはまほにその先を促した。

 しかし128㎜砲弾より重く気まずい沈黙は呼吸する事さえ憚られる程重苦しく、浴場全体が耐え難い緊張感に支配されていたのだった。

 ただ、まほもずっとこのままでは何も状況が変わらない事は理解しているらしく、勢いを付けてガバっと顔を上げ涙目で晶に向けて謝罪の言葉を口にしていた。

 

 

「ちっぱいの分際で失礼にも古庄さんの事を貧乳呼ばわりした事をお詫び致します!誠に申し訳ございませんでした!」

 

『うわぁ…そこまで言うか……』

 

 

 ヤケクソとも取れる勢いでひたすら低姿勢に謝罪するまほの姿に周囲がドン引きする中、彼女の背後で事態を見守っていたアンチョビは、ここで漸く助け舟を出そうとした。

 

 

「なぁラブ、もうそろそろこの辺で勘弁してやって……ぐっはぁ!」

 

 

 だがアンチョビが全てを言い終えるより先にまほが力任せの再土下座をした結果、彼女は対戦車ライフルをぶっ放したような勢いで鼻血を噴射し、そのままGO TO HEAVENしてしまったのだった。

 しかしなぜそんな事になったかといえば、理由は全てまほの行動にあった。

 まほが全力土下座をするにあたり必要以上に勢いを付けたが為に、その反動で大きくお尻が突き上げられ、直ぐ後ろに立っていたアンチョビに向けて彼女の最重要機密部分をくぱぁしていたのだ。

 

 

「きゃ────っ!千代美────っ!」

 

 

 盛大に鼻血を噴きブリッジでもするように仰け反ったアンチョビに驚きラブは悲鳴を上げ、大慌てで彼女の下に駆け寄ると抱き起す。

 

 

「ちょっと!しっかりして千代美!」

 

「ゆ…百合の花が満開……」

 

「千代美!一体何を言ってるのよ!?」

 

 

 腕の中で天国に召されたのか地獄に落ちたのかよく解らない表情で、鼻血を流しながら力なくクタ~っとするアンチョビを正気に戻そうとラブは必死にその名を呼ぶ。

 この段階でお説教タイムは既にグダグダだったが今のラブはそれ処ではなく、自らの弾力抜群なたわわ枕にお花畑に逝ってしまったアンチョビを抱き介抱していた。

 

 

「あれ……?」

 

「あ!気が付いた!」

 

 

 アンチョビが昇天してから一分程経った後、白目を剥いて目にクリンと瞳が戻りお花畑を彷徨っていた彼女の意識も現世に戻って来た。

 

 

「私は…私は一体……あ……」

 

 

 意識の回復したアンチョビはそれでも暫くの間ぼ~っとした様子だったが、自分の身に何が徐々に思い出すと赤ら顔で固まっていた。

 

 

「あ…あ……アイツはぁ……」

 

 

 そのデリカシーに欠ける言動が原因で説教を喰らう傍からやらかすまほの脳筋ぶりに、何とも形容し難い疲労感を覚えるのだった。

 

 

「あはは♪いやぁドゥーチェも何かと前途多難だねぇ」

 

「え……?」

 

 

 天国のような感触のたわわにもたれ掛かって脱力するアンチョビを心配そうに支えるラブは、意外過ぎる人物の思いもよらぬセリフに驚き目を丸くする。

 

 

『何でこの人がこんな事言うのかしら……?』

 

 

 意外過ぎる声の主、レオポンチームのナカジマの顔をぼんやりそんな事を考えながら見つめていると、呑気なナカジマを咎めるような声が彼女の背後から聴こえて来た。

 

 

「ちょっとナカジマさん!何呑気な事を言っているの!?それと厳島さん!」

 

「え?あ、ハイ何でしょう?…みどり子さん……?」

 

 

 立て続けの予想外の人物の介入に直ぐに反応出来なかったラブは、そど子の事を何と呼ぶべきか迷った末素直に彼女の名前を呼んでいた。

 

 

「何でしょうってあなたと安斎さん、二人共凄い状態よ?早く洗い流した方がいいんじゃない?」

 

 

 最初は彼女が何を言っているか理解出来ずキョトンとするラブだったが、そど子が指差す自身のたわわとその上で放心しているアンチョビに目を落とし、そこで初めて二人揃って血塗れである事に気付いたのだった。

 

 

「あ…うわぁこれは……千代美立てる……?」

 

 

 アンチョビを気遣いながらゆっくり彼女を立たせると、思っていたより足元はしっかりしっかりしていたが、念の為に寄り添い支えながらラブは慎重に洗い場へと向かった。

 

 

「その…色々すまない……」

 

 

 その場に独り取り残されたまほは自分が何をやったかまでは解っていなかったが、また何かやらかしたであろう事は何となく気付いていた。

 黒御影石の床に正座したまま二人の背中を見送ったまほは、ガックリと項垂れこれ以上はないくらいに小さくなっていた。

 そしてそのアクシデントの直前まで彼女から謝罪を受けていた晶は、そのまま放置されてしまいどうしたものかと困った顔で途方に暮れるのだった。

 だが、この時晶は気付いていなかった。

 自分の背後でラブとアンチョビを見送る、()()()()の目付きが少々危なくなっている事に。

 

 

 

 

 

「はい、これでいいわ…けど本当に大丈夫?上せて気持ち悪かったりしない……?」

 

 

 アンチョビ自身が浴びた血はシャワーのみで簡単に流す事が出来たが、彼女の緑髪にこびり付いた血はそうも行かず、ラブは髪色に影響が出ないよう念入りに洗髪作業を行っていた。

 

 

「あぁ問題ない、手間をかけてすまんな…大丈夫、のぼせたりはしていない……逆に冷えてしまったくらいだから少し温まらせてもらうよ」

 

「そう?ならいいけど……」

 

 

 ラブはまだ心配げにアンチョビの様子を窺うが、酷い目に遭ったと表情こそ冴えないものの顔色は悪くなく、鼻血の大量噴射の影響は感じられなかった。

 

 

「それよりお前も私の鼻血で汚れてしまっているんだから早く流さんとマズいぞ?」

 

「ん?私?千代美の背中と髪流してるうちに粗方流れたし髪色も赤だから大丈夫よ?まぁ直ぐに愛にやってもらうから気にしないでいいわ」

 

 

 自分のせいでラブまで巻き添えにしてしまったアンチョビが、申し訳なさそうな顔で今度は逆にラブの事を気遣うが、彼女は安心させようと冗談ぽい口調でそれに応じた。

 

 

「それなんだがラブよ…あそこでなんか追いかけっこしてるの……ありゃあ確かエニグマの副隊長の原沢とか言ったか?何か愛のヤツ必死に逃げ回ってるように見えるんだがな……?」

 

「あ゛……?」

 

 

 アンチョビが指差す先のプールと見紛うサイズの浴槽にラブが目を向ければ、エニグマの副隊長にしてアッサムの属するGI6にガチでロリと認定されている原沢紗江子(はらさわさえこ)に追われ、一見いつも通りの無表情ながらも相当焦った様子で逃げ回る愛の姿があった。

 

 

「紗江子……」

 

 

新設校リーグ戦でエニグマとの一戦で使った、財政破綻した地方都市の源泉に笠女施設科が構築した仮設温泉での一件も記憶に新しいラブは、暗澹たる思いで逃げる愛の姿を目で追っていた。

 

 

「愛……」

 

「…何かよく解らんが色々と大変そうだな……まぁあれだ、代わりと言っちゃなんだが、私でよければ髪を洗わせて貰おうと……ダメか?」

 

「…お願いするわ……」

 

 

 広大な浴場に立ち込める湯気の向こうに消え行く愛の姿を死んだ目で見送ったラブは、表情の消えた虚ろな顔のまま力のない声でアンチョビの申し出に頼る事にしていた。

 だがこの時彼女まだその事に気付いていなかったが、愛だけではなく他のAP-Girlsのメンバー達も風呂という隠す事も隠れる事も容易ではない環境に、すっかりブレーキの利きが甘くなった両連合のケダモノ達相手にちょっとしたピンチに陥りつつあったのだった。

 しかし浴場の広さが災いしラブもそこまで目が届かずこの危機的状況を把握出来ずにいたが、さすがにその事で彼女を責めるのは酷な事だろう。

 何故ならアンチョビに髪を洗って貰う為に無防備極まりない状態の彼女にもまた、美少女二人が血を洗い流すなどという究極に倒錯的な光景に理性が飛び、危ない目で隙を窺うケダモノ達の包囲網の只中で孤立していたのだから。

 

 

「ふぅ…これでもう大丈夫だろう……」

 

「ありがと千代美……」

 

 

 ラブの髪を洗い上げコンディショナーで仕上げを終えたアンチョビが手際良く彼女の髪をアップに纏めると、鏡越しに背後に立つアンチョビに向けて微笑み感謝の気持ちを伝えていた。

 

 

「お互いこの長さだと洗髪一つとっても大変だからな…たまにふと面倒になってバッサリ行こうかとか思う事もあるんだけどな……」

 

「あぁ、それは私も……」

 

「けどうっかりそんな事言おうものなら、周りが大騒ぎで反対して来るのはどういう事だ?そもそも髪型なんてそれこそ個人の自由なはずなのにな……」

 

 

 ラブの髪を結い上げたアンチョビが思い出したように呟き口をへの字にすると、ラブもそれに同意とばかりに似たような愚痴を零すのだった。

 

 

「それ解るわ…私も時々思い切ってショートに変えようかなとか言うとさ、決まって猛烈に反対されるのよ……まぁ私の場合は特に愛がねぇ……」

 

 

 困ったものだとでも言いたげに渋い顔のラブが眉を寄せると、アンチョビもよく解ると言うように腕を組みウンウンと何度も頷いて見せる。

 

 

「笠女から届くシャンプーとコンディショナーのお陰で、髪の状態も良いし手入れも格段に楽になったけどなぁ…それでもやっぱり大変は大変だよ、けど私も最近じゃ西住のヤツが……って、あ……オマエまだそんなトコで固まってたのか……」

 

「え?まほアンタ……」

 

 

 その名が出た処で漸くその存在を思い出されたまほは、ラブとアンチョビが洗い場に向かったその後もずっとその場で小さくなったまま固まっていたのだった。

 

 

「あ~も~アンタ何やってんのよ~?ホラこっち来なさい、そのままいたら風邪ひくわよ?」

 

 

 自分もうっかりしていたとはいえ、まさかそのままそこで固まっているなどとは思いもしなかったラブは、呆れるやら驚くやらといった顔で彼女に手招きをした。

 だがいじけているのか或いは足が痺れたのか俯いて正座をしたまま、まほはその場から決して動こうとはしなかった。

 

 

「しょうがないわねぇ……」

 

 

 面倒そうに一旦天を仰いで彼女の下へと歩み寄ったラブが手を差し伸べるが、石像の如く固まったまほはその手を取ろうとしない。

 

 

「ホ~ラぁ、何いじけてるのよ~?もう怒ってないから立ちなさいってば~」

 

 

 見る者の目を釘付けにして離さない超弩級なたわわをぷるんと揺らしながら、前屈みになったラブがそっと彼女の腕を引いてやると意外な程抵抗せずにまほは素直に立ち上がっていた。

 

 

「ヤダもう、こんなに冷えちゃって…これで風邪でもひかれたら私が悪者じゃない……ホラ、グズグズしないでコッチ来るの……千代美!まほの事は私に任せて千代美は先に温まっててくれる?」

 

「そうか…すまんが頼む……」

 

 何がしか思惑もあるのだろうとアンチョビも特に言及せず、まほをラブに任せると一番近くにあるハーブの香りのする浴槽にその身を沈める。

 その一方でまほの手を引き洗い場に戻ったラブはシャワーの温度を慎重に調整すると、冷え切ったまほの背をゆっくりと落ち着かせるように流してやるのだった。

 

 

「やっぱりまほって肌質が私と似てるわね…それに髪質も……私達戦車道選手はどっちも荒れがちなんだからちゃんと自分でケアしなくちゃダメよ?まほも大学生になるんだもの、メイクなんかももっと気を遣うのよ?そうだ、乳液やら一式私が使っているのと同じ物を今夜のうちに用意してあげるから使ってみるといいわ……これからはもっと自分を磨きなさい、自分の為…そして大事な千代美の為にもね……」

 

「……」

 

 

 泡立てたボディーソープで自身も一緒に泡々になりながら背中を流すラブの言葉に、無言ながらもまほは一言一句聞き逃すまいと耳を傾けているように見えた。

 

 

「まぁそうは言ってもねぇ…しほママにももうちょっとその辺までね……曲がりなりにも女の子なんだからさ、もう少し気を遣うべきだったんじゃないのと思わないでもないんだけどねぇ……」

 

 

 今度はまほの髪をシャンプーで泡立てながら、ラブは少し遠い目でしほの顔を思い浮かべていた。

 西住流の次代の家元としての将来を案ずるあまりまほに戦車道極振りな英才教育を施した結果、その代償として今の超絶朴念仁なまほがあるとラブは確信していた。

 

 

『そういう意味じゃまほも犠牲者ではあるんだけど……』

 

 

 呟きの後半は言葉にしなかったが、この点に関しては彼女もまほを気の毒に思っていたのだ。

 何しろ根が真面目で一本気な性格のまほの事なので、彼女が発揮する天然なポンコツを矯正するのは生半可な事ではないと今日の一件からも痛感しているラブであった。

 

 

「ハイ、終わったわ…ん?どうしたの……まだ何処か気になる?」

 

 

 話す間も手を止める事なくまほの髪を洗い上げコンディショナーの仕上げまで終わらせたラブは、反応のない彼女の両肩に手を添え背後からその顔を覗き込む。

 

 

「…大丈夫……気持ち良かった……」

 

「そう、それは良かったわ……さ、千代美の所に行ってゆっくり温まって来なさい」

 

 

 ラブに促され立ち上がったまほは何処か覚束ない足取りで、アンチョビがリラックスしたふりで聞き耳を立てながら浸かるハーブ湯に向かう。

 

 

「アレ…大丈夫かしら……?」

 

 

 フラフラとアンチョビの下へと向かうまほの背中を、少し不安げな顔で見送る。

 果たして薬が効いたのか効かなかったのか、今のまほの様子からは彼女にも判断が付き兼ねるらしく、その場で腕を組んだラブは不安げな顔まま首を捻るのだった。

 

 

「…私も温まろ……」

 

 

 しかし今ここでそれ以上考えても無駄だと判断したラブは、自身も湯に浸かり疲れを取るべく盛大に泡立つジャグジーバスへと足を向けた。

 

 

 

 

 

「お隣宜しくて……?」

 

「ん?あぁアッサム……別に構わないわよ~」

 

「それでは遠慮なく」

 

 

 ジャグジーバスのノズルが生み出す心地の良い水流と泡に浮かぶたわわを揺らすラブの隣に、お風呂仕様のアップに髪を纏めたアッサムがしなやかな身のこなしで滑り込んだ。

 

 

「色々と大変でしたわね……」

 

「ん~?あ~ま~ねぇ~、アレはもう一生直らないかもね~」

 

 

 思わず生唾を飲み込みたくなる色っぽいピンク色に染まり、泡に翻弄されながら浮き沈みするラブのたわわなアハトアハトをチラ見したアッサムは、話題を変えるような口調でさり気なさを装った。

 だがラブの方はそんな事など気にも留めず、弛緩し切った口調でそれに答えた。

 

 

「まぁ確かに昔からああでしたからね…処でラブ、依頼しておいた件なのですが……?」

 

「あぁ、あの事?大丈夫、ご希望通り用意させてあるわ…こちらこそ要望に応えて貰ったんだもの、この程度の事はそれこそお安い御用ってものよ……」

 

「そう…ありがとう……ローズヒップの説得は骨が折れましたがご褒美を餌に先に釣ってしまいましたから助かりましたわ……逆に私からも何かお礼をしないといけないくらいですわね……」

 

 

 何やら事前に密約でもあったのか声を潜めたアッサムに合わせ、ラブも声のトーンを落とし彼女の問いに答えれば、礼を述べつつ一礼したアッサムは極自然な動きでラブとの距離をスッと詰めると肌を密着させた。

 

 

「え?ちょ…アッサム……?」

 

 

 泡に揉まれ力の抜け切っていたラブは不意を突くようにすり寄ったアッサムが、まるで恋人にしな垂れかかるように身体を預けて来た事に驚き身を固くした。

 付き合いの長いケダモノ達の中にあっても、アッサムは最も理性的であるというのがラブの彼女に対する評価であった。

 ケダモノ達がラブのたわわを前に理性を失い暴走する際も、彼女が真っ先に行動を起こす事はなく比較的安全な存在であると認識していただけに、アッサムがこんな風に積極的にモーションを掛けて来るなどラブにとっては完全に予想外の事態だったのだ。

 だがアッサムもまた立派なケダモノの一員である事は疑いようのない事実であり、ラブも過去の経験上それを重々承知していたはずなので、この事態は云わば彼女の油断が招いたものであった。

 

 

「好きよラブ……♡いつもどんな願いでも叶えてくれるアナタに、私はこんなお礼しか思い付かないわ…受け取って貰えたら嬉しいんだけど如何かしら……?」

 

「あ、アッサムさん…そ、それはお礼と違うんじゃ……」

 

 

 ジャグジーバスのノズルから噴き出し弾ける泡に隠れた湯の中で、ラブの太腿の間にアッサムが足を割り込ませ絡ませて来る。

 捕食される獲物の立場になったラブは差し迫った危機に何とか脱出を試みようとしたが、既に彼女は絡め捕られアッサムの毒牙にかかるのは時間の問題であった。

 

 

「しまった…目が逝ってる……」

 

 

 この時になってやっと彼女の脳裏に手遅れという言葉が思い浮かんだが、それ自体がまさに手遅れなタイミングであり泡の中ラブは目の前が真っ暗になったのだった。

 

 

 




お風呂回が前後編w

ラブ優位な展開に見えて結局はいつも通りになるのかw
今回は意外な人物が最初に動きましたが、
果たして彼女はラブとどんな密約を交わしていたのでしょうねぇww

作中のGO TOネタは今騒いでるキャンペーンが始まるよりずっと前、
草稿に近いネタ帳に書いてあったんですよねぇ……。
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