ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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今回はラブとアッサムの密約の内容が明らかにw


第九十七話   Wicked Assam

「あ…エリカさん、お姉ちゃん達が来た……ふぁっ!?」

 

 

 ラブの予想通り彼女達が試合の煤と汗を風呂で流す間、エリカの仕切りで一旦用意された宿舎にチェックインした各校の後輩達は、頃合いを見て食事会の会場となるAP-Girls専用アリーナに移動しラブ達がやって来るのを待っていたのだった。

 アリーナにはラブ達が戻るまでの間、先に会場入りした彼女達の為にソフトドリンクやお茶の類が用意されていたので、後輩達は待っている間好みの飲み物を手に今日の試合の感想や来年度から体制が一新される全国大会について意見を交わしたりしていた。

 みほもまた例外ではなく今年度全国大会の覇者である大洗の隊長として話題の中心に置かれ、未だ詳細の解らぬ来年度の大会の事で各校の隊長から勝手に予想を立てられていたのだ。

 だが解放されたままのアリーナのメインゲートの扉の向こう、現れた複数の人影に気付いた彼女はエリカの肘の辺りをツンツンしながらその事を伝えようとしたが、ラブ達の姿を目にした途端裏返った声で妙な叫びを上げたのだった。

 

 

「何ようるさいわねぇ、一体何て声出してんのよ?」

 

 

 耳元で叫ばれ顔をしかめたエリカは、下らない事で直ぐ大騒ぎするみほの頭を一発叩いてやろうと振り向いた。

 

 

「ったく、一々馬鹿みたいに大声出して騒ぐ騒ぐんじゃ……はぁぁぁ────────っ!?」

 

 

 語気も険しく手を振り上げかけたエリカは視界にソレが入った瞬間、みほを上回る声量で素っ頓狂な声を上げ大きく顎を落としていた。

 AP-Girls専用アリーナの客席側最大の出入り口となるメインゲートは大きく扉が開け放たれ、ラブを先頭に笠女の制服を身に着けた集団がゾロゾロ入場して来る姿があった。

 そしてエリカはその制服の集団の顔ぶれに驚き絶叫した後は、頭の中が真っ白になり言葉を失い口をパクパクさせていたのだった。

 ラブの差し金で笠女の制服を着る羽目になった三年生連合は、彼女に急き立てられドタバタと用意された制服を身に着けると休む間もなくこうしてアリーナにやって来た訳だが、表向きはしぶしぶ如何にも仕方なくといった態度を取っていた。

 特にダージリンなどはいつも以上にひねくれ者ぶりを発揮して、蘊蓄交じりに的外れな不満をグダグダ垂れ流したりしていたが、実際にはほぼ全員が何処か満更でもない様子を隠せていなかった。

 但しそれは100%ではなく中には例外も存在し、その例外の日頃の立ち居振る舞いからは想像も付かぬ自信なさげな態度がエリカに衝撃を与えたのだった。

 ラブに尻を叩かれながら笠女の制服を身に着けたはよいが、やはりそのデザインの可愛さが自分には似合わないと思い込む彼女は、膝を合わせた内股で黒森峰の物より若干短めなミニの裾を押さえ恥ずかし気に俯いていた。

 まほのポンコツぶりは誰よりもよく解っているつもりのエリカであったが、こんな可愛らしく恥じらう姿などさすがに見た事はなく、彼女にとってその破壊力は実に絶大なものであった。

 

 

「有り得ない…ウソでしょ……?」

 

 

 信じられないとでも言いたげな表情のエリカは、内股で可愛くモジモジするまほの姿に我が目を疑うようにゴシゴシやったと思うと、自分とみほの頬を同時に力強く抓り上げた。

 

 

「い!いひゃいよ(痛いよ)エリカさん!」

 

「マジか……」

 

 

 遠慮なくほっぺのお肉を引っ張られ涙目でみほが抗議するが、驚愕の表情で固まるエリカは中々その手を離してくれず、堪り兼ねたみほはポカポカと彼女の肩を叩いていた。

 

 

「痛い……」

 

 

 赤くなった頬をさするみほはブチブチと文句を言うが、やっとみほを解放したエリカはメインゲート付近で足がすくんだように動こうとしないまほを、珍獣でも見るような目で見ていた。

 

 

「何があったまほ姉…また隠れて学園艦カレーのドカ食いでもやりやがったか……?」

 

「エリカさん…ウチのお姉ちゃんを一体何だと思ってるの……?」

 

 

 姉のポンコツには昔から度々迷惑を被って来たみほだったが、さすがにエリカあまりの言いようにムッとしたのか、みほは抓られて赤くなった頬をぷうっと膨らませていた。

 

 

「ぶふぉ!ちょっと待ってくれ!あそこで滑りまくってるのはダージリン様か!?あ…こういう時はやはりアッサム様の方が状況に順応するのが早いな……」

 

「え……?」

 

 

 エリカに文句を言っていたみほだったが背後からの不意打ちに驚き振り向けば、そこには口の端を引き攣らせ容赦なく先輩をディスるルクリリの姿があった。

 だが確かに彼女が言うようにダージリンは毎度の蘊蓄が空回りして周りからオチられていたし、それとは対照的に澄まし顔のアッサムは笠女の制服に全く動じた様子見られなかった。

 

 

「ブレザーの色こそ地味だけどサンダース(ウチ)も制服はブレザーだから、あの二人に笠女の制服着せても新鮮味に欠けるわね……」

 

「は……?」

 

 

 国内産と本国物のコーラを飲み比べ首を捻っていたアリサは、興味のないフリをしながら互いの笠女の制服姿を指差しながらニヤニヤし合うケイとナオミをシニカルに鼻で笑う。

 ルクリリにしてもアリサにしてもらしいと言えばらしい反応だが、仮にも先輩に対しあまりな言い草の二人にみほはただ唖然としていた。

 

 

「さすがノンナ、彼女の絶対領域は完璧ですね……ですが笠女に初等科(小学校)があるのは知りませんでした」

 

 

 ラブに次ぐ高身長な上に色白なノンナのすらりと長い脚は、黒のオーバーニーソックスが実によく似合いその新鮮さも手伝い自然と周囲の視線を集めていた。

 マリンブルーを基調としたチェック柄のミニとの間に形成された絶対領域は眩く輝き、思わず生唾を飲み込まずにはいられない程神々しく、クラーラの完璧という評価は実に的確なものであった。

 しかしノンナの絶対領域から視線を横にスライドさせたクラーラは、ノンナの隣に立つ愛らしい小動物の制服姿に、天然なのか養殖なのか判断の付き兼ねる感心したような表情で本人が聞いたらマジ泣き必至な一言を言い放っていた。

 

 

『あっ……!?コイツハッキリ言いやがった!』

 

 

 確かにそのままランドセルでも背負えば、まんま付属に通う小学生にしか見えないリアルどんぐり小隊のカチューシャだが、それをハッキリと言葉にするのは誰もが避ける処だった。

 驚くべき事にプラウダの新隊長のクラーラは何ら躊躇う素振りも見せずに、サラリと前隊長を小学生扱いする発言をかまし、彼女のノンナの絶対領域に対する高評価にウンウンと頷いていた者達を唖然とさせたのであった。

 だがこの時クラーラの発言に驚くあまり誰一人気付いていなかったが、騙し討ちで笠女の制服を着せられ建前で口々に苦情を言う仲間達の中で、一番文句を言いそうなカチューシャだけが以外にも何一つ言う事なく沈黙を貫いていたのだ。

 一見不機嫌そうにラブの小細工に怒りのマグマを溜め込んでいるように見えたが、実際の処カチューシャの機嫌は悪くなく寧ろかなり上機嫌であった。

 大学選抜戦の際彼女の為に用意された大洗の制服は、ダージリンの仕込みなのか単にサイズがなかったのかは不明だが、お約束のようにダブダブでカチューシャとしてはそれが大いに不満だった。

 それに比べ今回ラブが用意していた笠女の制服は、明らかに彼女の為に仕立てられたテーラーメイドの一点物で、その着心地の良さと可愛さに満足し全く怒ってなどいなかったのだ。

 

 

「初等科?って…あ、小学校の事……ふふっ!」

 

 

 笠女の制服姿のカチューシャを初等科呼ばわりしたクラーラであったが、みほだけが直ぐにその意味を理解出来ず、僅かながら考えてからその意味を理解し軽く吹きだしていた。

 

 

「アンタねぇ、自分が笑える立場だと思ってんの?アンタんトコ(大洗)のアレ…アレだってどっちコッチ言わないレベルでヤバいと思うんだけど……?」

 

「ふぇ!?ぶふっ!」

 

 

 吹き出して直ぐ慌てて両手で口元を押さえクスクスやっていたみほだったが、エリカはフニャフニャと笑う彼女の鼻を手加減なしに力一杯押し込み、止めを刺すように顎でクイっと大洗の元ロリ生徒会長のいる方を示したのだった。

 ほぼアイドルのステージ衣装な笠女の制服に苦笑する柚子と死にそうな顔をする桃相手に、いつもの下がり眉毛の困り顔で笑う杏の制服姿は、確かにエリカの言う通りカチューシャと同等か或いはそれ以上にヤバいシロモノであった。

 

 

「う~む…こう言っちゃなんだが確かにカチューシャ先輩と大洗の元生徒会長がだな、あのままランドセル背負って街中歩いてたとしても誰も疑問に思わんかもしれんなぁ……」

 

「ルクリリあんた……」

 

「いやだってこれはオマエが……」

 

 

 エリカが杏に絡めてみほを弄った事で気が緩んだのか、遂にルクリリが微妙に避けられていた事をハッキリと言ってしまい、さすがのエリカもルクリリの顔をマジマジと見てしまうのだった。

 

 

「で、でもまぁ二人共良く似合ってるのは確かですし……」

 

 

 涼しい顔でしれっとカチューシャをディスったクラーラと、それに誘発された一連の問題発言に引き攣る後輩達であったが、こういう時気遣いが出来るカルパッチョは空気を換えようとフォローを欠かさない。

 

 

「何言ってんのよカルパッチョ?ってかアンタそんな事言ってる場合……?」

 

 

 噛んだ上に語尾も震え自分でもあまり上手く行っていない自覚はあったが、それでもどうにかフォローは出来たとカルパッチョは思っていたが、そんな彼女の考えはエリカによっていともあっさりと否定されてしまうのだった。

 

 

「他の人達に笠女の制服が決して似合わない訳じゃないけどさ…ドゥーチェ一人だけ全然違和感がないのはカルパッチョだって解ってるんでしょ……?」

 

「そ…それは……」

 

 

 カルパッチョが言葉に詰まる通り笠女の制服を身に纏ったアンチョビは、ラブの周囲でリラックスした様子で自由に振舞うAP-Girlsの群れに、驚く程自然な感じで馴染んでいた。

 可愛い事で定評のあるアンツィオの制服姿も人気の高いアンチョビは、笠女の制服も余裕で着こなし注目を集めていたが、本人にはその辺の自覚がまるっきりなかった。

 今も彼女は好き放題自分達を振り回すラブに何やら小言を言っているようだったが、同じ笠女の制服でそんな事をやっていると胸のサイズ以外はAP-Girlsのメンバーにしか見えず、本人は気付いていないが周囲の視線をかなり集めていたのだった。

 

 

『違和感が全く仕事してない…完全に馴染んでる……』

 

 

 桜色のブレザーでツインテを揺らすアンチョビの可愛らしさは後輩達の目にも新鮮に映り、ドキドキする胸の鼓動と共にその頬も薄っすらとピンクに染まっていた。

 

 

『今更だけど何であの人(まほ)があそこまでドゥーチェに夢中になるのか解った気がする……』

 

「えぇ…今更……?」

 

 

 副官として常に傍にいたカルパッチョにしてみればまさに今更感一杯な事だが、先輩であるアンチョビの可愛さを突然意識してしまった後輩達は、微妙な後ろめたさにラブ相手に騒いでいる彼女からそっと目を逸らすのだった。

 

 

 

 

 

「アッサムさま──────っ!」

 

 

 頭のテッペンから突き抜ける2スト直管の排気音のような甲高い声と共に、ふわふわピンク髪と笠女に短期留学して一気に膨らんだたわわを盛大に揺らしながらローズヒップが駆け寄って来る。

 アリーナ入りしたアッサムはいつも通りの澄まし顔ながらもその口元に微かに笑みを浮かべると、リミッターを外したフルスピードで彼女の胸に飛び込んで来たローズヒップを軽々と受け止め、右足の踵を軸にしてクルリと一回転してその勢いを削いでいた。

 

 

「まぁローズヒップ、淑女たる者そのようにドタバタと走ってはいけないと、常日頃からあれ程言っているのにもう忘れてしまったのですか?」

 

 

 遊びに夢中な子犬のように駆け寄って来たローズヒップを抱き留めたアッサムは、如何にも仕方ない子だといった風に小言を口にするが、その目は全く怒っていない処か寧ろ可愛くて仕方がないと笑っていた。

 教育係の立場からいえば淑女としての礼儀作法を全く覚えようとしないローズヒップは、実に頭に痛い存在なはずであったが、出来の悪い子程可愛いの典型なのかアッサムはこの元気のはみ出し気味なローズヒップの事を溺愛していた。

 その溺愛ぶりは些か度を越しているというのがもっぱらの声であったが、実際アンツィオ戦の際のフェロモン騒動やラブに彼女を預けたわわ化させたりと、自らの欲望を満たす為に鬼畜な所業も目に付き彼女に対する評価は概ね事実であった。

 

 

「そんな事はありませんわ!今日も試合中はお言い付け通りちゃんと良い子にしてましたですわ!」

 

 

 相変わらず何処かおかしなお嬢様言葉で元気いっぱいに答えたローズヒップは、飛び込んだアッサムの胸から顔を上げ満面の笑みで彼女の瞳を見つめ返していた。

 

 

「ふふ♪それは本当かしら?」

 

「本当ですわ!嘘だと思うなら一緒にいた人達に聞いて下さいですの!」

 

 

 アッサムに頭を撫でられご満悦なローズヒップは猫のように目を細めながらも、敢えてわざとらしい事を言うアッサムに自分が約束を守った事をアピールするのだった。

 

 

「そういやローズヒップのヤツ今日はやけに静かだったような……」

 

「言われてみれば確かに……」

 

 

 衆人環視の中アッサムが臆面もなく始めた猿芝居を死んだような目で見ていたルクリリは、いつもであればどれだけ怒られても馬鹿みたいに大騒ぎをしては、彼女をイライラさせるローズヒップの声が全くと言っていい程聞こえなかった事に気が付いた。

 そして彼女の傍で似たような目をしていたエリカも、時々耳を塞ぎたくなるような甲高いローズヒップの叫び声を今日は聞いていない事に驚いた様子だった。

 一体何をどうやればあのローズヒップを黙らせる事が出来るのかと不思議に思った二人は、暫く見つめ合った後にアッサムとローズヒップのやり取りに聞き耳を立てていた。

 だがそれは二人に限った事ではなく観戦エリアにいた者達共通の疑問であり、全員が耳を九〇式大聴音機ようにして様子を窺っていた。

 

 

「冗談よ、ちゃんと解っていますわ」

 

「まぁ!私をお揶揄いになったんですの!?酷いですわアッサム様!クルセイダーを今日の試合に出場させる事を認めてお約束通り静かに観戦していましたのに!」

 

「あら悪かったですわ、そんなに怒らないでローズヒップ…私もちゃんと約束通り特別なご褒美を用意してあるのですからね……」

 

「ホントですの!?」

 

「えぇ本当です、ラブにお願いして今夜の為に特別な部屋を用意して貰いました…ラブはあなたと()()()()なのでしょう?そのラブがあなたを騙すと思いますか……?」

 

「思いませんわ……それじゃあ♪」

 

「えぇ、今夜はローズヒップの望むだけご褒美を差し上げますわ」

 

「アッサムさまぁ♡」

 

「あらあら……♪」

 

 

 エキシビジョンマッチ開催決定後、愛して止まないクルセイダーを自分が出場出来ない試合に出す事を渋ったローズヒップであったが、アッサムは一計を案じ中々首を縦に振らぬローズヒップの目の前に特別な餌をぶら下げる事で彼女を説得していたのであった。

 

 

『あぁ…そういう事か……』

 

 

 揶揄われた事で頬を膨らませ不満を露にしていたローズヒップだったが、アッサムが種明かしをした途端表情を一変させ再びアッサムの胸にその顔を埋めグリグリする。

 だが二人のこのやり取りで聞き耳を立てていた者達は、アッサムが覚えたての蜜の味を餌にローズヒップを籠絡した事を瞬時に見抜いたのだった。

 そしてこれこそがジャグジーバスでアッサムがラブに確認していた密約の正体、クルセイダー参戦を条件に以前も使用した宿舎の最上階、実質的にはスイートルームである特別室を使用出来るよう便宜を図る事であった。

 

 

『この女マジさいってぇぇぇ……』

 

 

 自分の欲求を満たす口実に、クルセイダーのエキシビションマッチ参戦というラブの希望を利用したアッサムを、その真っ黒な目論見を見抜いた者達は揃って白い目を彼女に向ける。

 今回はアッサムに完全に出し抜かれた形になるダージリンも、彼女の背後で穴でも開きそうな鋭い視線でその背中を睨むも愛おし気にローズヒップの髪を撫でるアッサムには通用しなかった。

 

 

「人が大変な思いをしていたのにこのでこっぱちは……」

 

 

 聞こえるように彼女が気にしているワードをダージリンが忌々し気に呟いたが、アッサムは一切動じない処かより一層愛おし気な表情でローズヒップの頬にスリスリと頬擦りを始めていた。

 付き合いが長いだけにダージリンもこの抜け駆けを見抜けなかった事に苛立ちを隠す事が出来ず、それが良く解っているしたたかなアッサムは背中越しに彼女に向けて舌を出す。

 そんな二人の淑女にあるまじき低レベルな駆け引きに、仲間のみならず後輩達までもが汚物でも見るような目を向けるのだった。

 

 

 




アッサム最低ですねw
でもダー様と一緒にいるならこれ位当然かww
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