ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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何故ダー様イジリはこんなに楽しいんだろうw


第百四話   Surprise(奇襲)

「安全第一だから念の為にもう少し下がっててね……」

 

 

 ラブに促され神妙な面持ちで一歩引き下がると、ステージ最前部の(かまち)の辺りが横一線に口を開け、奈落から25本のエレキギターが一気にせり上がって来た。

 

 

「成程…こうなっていたのか……」

 

 

 後輩達の手前、体面やら恥ずかしさが先に立ちカラオケで歌う事はしなかったまほ達であったが、やはり好奇心には勝てず、食事が粗方済んだ頃、見学と称しAP-Girls専用のステージに上がっていた。

 

 

「それにしてもギターってのは近くで見ると随分傷だらけなんだな……」

 

「そりゃそうよ、今日はもう明日のライブの為にこうしてセットされてるけど、レッスンやらリハやらで毎日のように弾いてるんだもの、この程度小傷は当たり前よ」

 

「そうなのか……」

 

 

 物心が付くか付かないうちからその才能を開花させ、戦車道と並行して音楽にのめり込んで生きて来たラブと違い、楽器といえば小学生の頃に音楽の授業で使ったハーモニカやリコーダー、後はオルガン程度が精々なまほには全てが驚きだった。

 これに関してはまほ以外の者達も大体似たようなものなので、ほぼ全員が興味深げにズラリとならんだ色とりどりな25本のエレキギターを観察していた。

 

 

「持って見る?」

 

「え…いいのか……?」

 

「別に構わないわ」

 

 

 特に気にした様子も見せずまほにそう答えたラブが指笛を鳴らすと、ステージ下で各校の選手達にちやほやされながら愛想を振り撒いていたAP-Girlsもステージに飛び上がり、まほと同様に好奇心を隠せない者達の為に各々愛用のエレキギターの下へと駆け寄っていた。

 そしてスタンドから愛用のレスポールを取り上げたラブは、緊張した様子で身構えるまほの背後に回り、そっと彼女の肩にストラップを掛けてやるのだった。

 

 

「どうぞ…ちょっと重いから気を付けてね……」

 

「あ、あぁ……うわ!何だコレ!?重いなんてもんじゃないぞ!」

 

 

 ラブが手を離した事でレスポールの全重量がその肩に掛かった途端、ズシリと来るレスポールの重さに驚いたまほは、ストレートにその驚きを言葉にしていた。

 

 

「アハトアハトよりは全然軽いんだけどね~」

 

 

 その重さに驚いた顔のままおっかなびっくりレスポールを抱えるまほの表情が、以前お茶の水で衝動買いしたMUSIC MANを手にしたしほと酷似していたので、やはり親子だとこみあげて来る笑いを堪えるのにラブは苦労していた。

 それでもどうにかそれを堪えたラブは短くそれだけ答えると、その背後からケイの解るわといったニュアンスの混じった声が聞こえて来た。

 

 

「あ~、レスポールはねぇ…4kgぐらいはあんの……?」

 

 

 学園祭の余興などでバンドを組んだ経験のあるケイは多少の心得があり、自分なりに知識を総動員してラブのレスポールの重さを予測してみた。

 

 

「ん~、いい線行ってるけどあれこれカスタマイズしたら、限りなく5kg近くなったわ……」

 

「ゲっ…マジかよ……?」

 

 

 ケイと一緒にバンドに参加していたナオミは、ラブの口から出た数字にギョッとしながらまほが抱えるラブのレスポールをマジマジと見る。

 事故の後遺障害という身体的ハンデを抱えながらもそれを克服すべくレフティに転向し、そのハンデを感じさせる事なく極自然に見える動きでラブはステージこなす。

 そのラブの不断の努力が果たしてどれ程のものか想像も付かず、ケイとナオミは絶句したまま顔を見合わせるのだった。

 

 

「なぁラブ…他の子達のギターもみんなこんなに重いのか……?」

 

「ん?あぁ、見ての通り使ってるギターもみんなバラバラだし、例え同じギターでもカスタムの違いで結構重さは変わって来るわ…けど基本的にアコースティックギターみたいに軽いエレキなんて存在しないのよ……多少中抜きしたりもあるけどそれでもやっぱり重いわね。尤も私のレスポールは、()()()()()が使うにはちょっとやり過ぎた感もあるけどね~」

 

 

 か弱い女子の部分をラブが強調したので、皆ここに反応したら後々厄介な事になると素知らぬ顔でスルーしたが、まほだけは一人真剣な顔で考え込んでいた。

 

 

「そういうものなのか…そういうものなんだろうな……」

 

 

 イマイチ自分にはピンと来ない世界の話だったが、同じ戦車でも仕様が異なればその重量も丸っきり違って来るなどと考え自分に解るよう話しを置き換え一人納得する辺り、やはりまほは骨の髄まで筋金入りの戦車乗りだった。

 

 

「やり過ぎって言うならあのアックスベースでしょ、あれこそやり過ぎよ…あれ何キロあんのよ……?てかそれ以前に一体幾ら掛かってのよ?ったくさあ、ベースまで弾けるなんて思いもしなかったわ……よく練習する時間があったもんね~?」

 

 

 KISS MEのステージでラブが使っていた斧型のベースギターは、形状もさることながらその大きさの方も化け物じみたサイズであった。

 その点を考えればいくらラブが日本人離れしたプロポーションを誇っていたとしても、女性が弾くには無理があると考えるのが普通だろう。

 だがステージ上のラブは大胆且つ挑発的なアクションを交えながら、余裕でその巨大な斧型のベースを弾きこなしていたのだった。

 

 

「あれはステージでのパフォーマンを考慮して作ったから見た目途重くはないわ…それとさぁ、幾ら掛かったかなんて野暮な事聞かないでよ……機材ケチるとロクな事にならないのは戦車道と一緒よ?大体私達が貧相な機材でショボいステージやったらどう?嬉しい?」

 

「そ、それは……」

 

 

 中学時代既に大人向けのファッション誌でモデルを務めていたラブは全てに於いてセンスが良く、ケイはそんな彼女の貧乏臭い姿など想像も付かないし見たいとも思わなかった。

 故に彼女は胸を反らしあのねぇと言った態度のラブのその問いに即答する事は出来ずにいた。

 

 

「まぁ機材の方はともかくだなぁ、オマエのあのチョンマゲやらKISS MEの電飾ピカピカとか見た時はマジ倒れそうになったぞ?あれこそやり過ぎってもんだろ~?」

 

 

 答えに窮したケイと違い、隣にいたナオミは最初からヘラヘラとした態度で、KISS MEのステージの本家本元同様の派手な演出にツッコミを入れる。

 

 

「ナニよ~?そんな事言ったってナオミは嫌いじゃないんでしょ~?」

 

「ま~な」

 

 

 敢えてタカビーな態度で返すラブだがその目は怒ってはおらず、ナオミもニヤニヤしたまま彼女の追及を受け流していた。

 

 

「それよりだなぁ……」

 

「今度は何……?」

 

 

 同世代の女子の平均より身長のあるナオミであってもそのままではラブと肩を組む事は出来ず、彼女はチョイチョイとラブを指招きすると、不審げに屈んだラブの肩にがっしりと腕を回した。

 

 

「あのさぁ、KISS MEのステージでもしあのまま本当にブラ投げてたら、お前ダージリンのブラだけ投げ返すつもりだったろ……?」

 

 

 ラブが神の如く崇め奉りリスペクトする本家本元のバンドには、アーミーと称する熱狂的なファンが存在する。

 そしてライブ中最前列に陣取るアーミーの女性達が、興奮してステージに向かって外したブラを投げるのがお約束だった。

 エキシビションマッチ終了後に行われたKISS MEのライブ中、悪ノリした挙句ダージリンを巻き込みブラを外し投げようとしたケイとナオミだったが、ギリギリの処でさすがにマズいとアンチョビ達が止めに入った事で、放送事故になりそうな事態は回避されていたのだ。

 その時のステージ上のラブの反応を見逃していなかったナオミは、ニヤニヤ笑いで肩を組みながら彼女にカマを掛けたのだった。

 だがそんなナオミの誘導尋問にラブは何も答えようとはせず、ケイとナオミの顔に交互に視線を巡らせたっぷりと勿体を付けた。

 彼女のその態度に釣られたケイが屈み込むと、そのタイミングを待っていたラブは二人に向け突然スイッチを切り替えたようにニタ~っと笑って見せ三人の間に一瞬の沈黙が生まれる。

 ひと呼吸分の間を置きその人の悪い笑みの意味を理解したケイとナオミは、彼女と全く同じ笑みを浮かべ三人でダージリンに無遠慮に悪意満載の視線を向けていた。

 

 

「何ですのその目は!?言いたい事があるならハッキリとおっしゃい!」

 

 

 話の途中からヒソヒソやっていたので三人が何の話をしていたかは不明だったが、その何ともいやらしい笑みと視線から悪意だけは敏感に感じ取ったダージリンは、ニタ~っと笑いながら無言で自分を弄って来る三人を相手にヒスっていた。

 

 

 

 

 

「子供達が賑やかでごめんなさいね」

 

「いえ問題ないですよ、でも本当に元気ですよね~」

 

 

 アリーナのステージを見下ろす位置に設けられた席でワイングラスを傾けていた亜梨亜は、ステージに上がったラブ達のあまりの騒がしさに、申し訳なさそうに軽くながらも頭を下げた。

 しかし彼女とは対照的な豪快さでワイングラスを煽りなみなみと注がれたワインを飲み干した英子は、別段気にした風でもなくキレて喚くダージリンの様子を面白そうに見物していた。

 

 

「ちょっと英子、アンタいい加減にしなさいよ!程々って言葉を知らないの?黙って見てればハイピッチで飲み過ぎ!少しは自嘲しなさいよね!」

 

「ナニ言ってんだオマエ?この程度の酒量でどうにかなる程私は柔じゃないぞ~?」

 

「そういう事を言ってるんじゃない!」

 

 

 いくら亜梨亜に超VIP待遇の賓客として招かれての事とはいえ、次々と空になって行く値段を知るのが怖いワインのボトルの数に、亜美の頭は酒量と反比例してどんどん醒めていたのだった。

 

 

「あら?ワインばかりでは飽きてしまいますね、そろそろ他のお飲み物ご用意しましょう……何かお好みの物は御座いますか?」

 

「イエイエイエ!これ以上はもう!コイツ(英子)もそろそろ止めさせないと本当に歯止めが利かなくなりますから!」

 

 

 英子に限らず自分自身も超の付く体育会系である事は亜美も自覚があり、酒に関しても相当鍛えられそれなりに自信があった。

 だが熊本の西住家の酒席で目の当たりにした厳島と西住の女達の蟒蛇ぶりは只事ではなく、もしそれにオールで付き合ってしまえばとんでもない事になるのが良く解っていたので、亜美としてはこれ以上深入りして前後不覚になる事だけは避けたかった。

 

 

『家元の強さも只事ではないけど、菊代さんとあの雪緒さんって方も普通じゃないわ…けどそれ以上にヤバいのはやはり亜梨亜様だわ……如何にもほろ酔いって雰囲気だけど、あれって果たして本当に酔っていらっしゃるのかしら……?』

 

 

 日頃は厳島の代表としてあまり感情の変化を表に出す事はなく、周囲にも物静かな印象を持たせる亜梨亜であったが、頬を微かに上気させ若干饒舌になっている処だけ見れば確かに彼女も酔いが回っているようには見えた。

 だが亜美の目にはラブとそっくりそのまま生き写しな彼女のエメラルドの瞳には、全くアルコールによる影響が出ているようには見えなかったのだ。

 

 

『日本戦車道二大流派の家元達が揃って恐れる夜叉姫様って一体どんな感じだったのかしら……』

 

 

 一切感情の動きを読ませぬ亜梨亜の瞳をぼんやりと見ているうちに、ふとそんな考えが頭の中をよぎった亜美であったが、その先を考えようとした処で彼女の思考は急制動が掛かり停止していた。

 例え多量のアルコールを摂取してはいても彼女自身も極めて優秀な戦車乗りであり、その本能がそこから先は危険な領域であると無意識のうちに回避行動を取っていたのだ。

 

 

「どうかされましたか?」

 

「え…あ!いえ、何でもありません、失礼致しました……」

 

 

 自分が何を考えていたかに気付いた途端怖くなって思考停止していた亜美は、そんな彼女の考えなどお見通しとでもいったタイミングで声を掛けられ我に返ったが、彼女のエメラルドの瞳に見つめられるとすっかり気が動転し、見事に裏返った声でそう答える事しか出来なかった。

 

 

「おぉ!西住先生あれをご覧なさい、可愛い千代美ちゃんがマイクを手にしましたよ♪」

 

『英子アンタねぇ……』

 

 

 絶好調でワイングラスを傾けていた英子はいい調子ながらも、愛してやまないアンチョビの動向のチェックだけは怠っていなかった。

 だがたった今肝を冷やしたばかりの亜美にとって英子の能天気さは甚だ腹立たしく、ギリギリと握り締めた拳で力任せに彼女の頭を殴りたい衝動に駆られていたのだった。

 

 

「何ですって!?まぁホント!何て可愛らしいのかしら♪」

 

『……』

 

 

 しかし次の瞬間しほがポンコツ極まりない叫びを上げた為に、亜美は脱力しそのままガックリとテーブルの上に突っ伏していた。

 そんな彼女の事などお構いなしに英子としほが熱い視線を送るステージ上では、頑なにカラオケを拒否していた一同が、AP-Girlsに包囲されなし崩しにマイクを持たされた姿があった。

 

 

 

 

 

『昔っからそうだったけど、何でまほってマイク持っても棒立ちのままなのかしら……?』

 

 

 最初のうちはステージ下の後輩達の目もあるので、カラオケはやらないと頑なに拒否していたまほ達であったが、包囲するAP-Girlsが言葉巧みに唆すとなんやかんや言いながら結局は全員がカラオケマイクをその手に握っていたのだった。

 集まる好奇の目に最初こそぎこちなさが目立っていたが、デュエット宜しく寄り添うAP-Girlsに釣られ自分達でも気付かぬうちに、流れる曲に合わせその身をスウィングさせていた。

 だがその中にあって唯一の例外がまほであり、彼女一人だけが直立不動の棒立ちで淡々と歌い続けていたのだ。

 その姿はカラオケ用のマイクを握って歌っているのにそうは見えず、まるでコマンダーキューポラ上で咽頭マイクを押さえ戦闘指示を出しているようにしか見えなかった。

 

 

『う~ん…まほって声質もいいし音痴って訳でも……ううん、むしろ音感は良い方だし……何より私とも血縁があるのに何でこうなるのよ……?』

 

 

 自身もAP-Girlsと一緒に仲間達を上手い事リードする一方で、只一人表情も変えず国歌斉唱でもするかのように歌い続けるまほの姿に、ラブは内心でそんな事を考えながら頭を抱えたくなるのを堪えていたのだった。

 ラブが何故こうなるか悩む要因はといえば、ひとえにまほの真面目過ぎる性格に因る処が大きかったが、やはりその下地となったのは長年受けて来た厳しい躾にあるだろう。

 だがこの時その躾を施した張本人であるしほはそんな事などすっかり忘れ、同じステージ上でなんやかんや言いながらもノリノリで歌うアンチョビとまほを比較してはその不器用さに呆れ、我が娘ながら不甲斐ないなどと実に勝手な事をほざいていたのだった。

 そもそもお堅い育ちのまほと違いごく普通の一般家庭に生まれ、アンツィオでノリと勢いの三年間を過ごしたアンチョビを比較するのは少々酷な事だが、身勝手な事にしほはその辺の事情を全く考慮に入れていないのであった。

 尤も彼女もその思いやりの欠片もない発言の直後に、意外そうな顔で亜梨亜の放った『何を言っているのしほちゃん?昔のしほちゃんにそっくりじゃない』という破壊力抜群なお言葉を賜り見事に自滅し、英子と亜美に笑ってはいけない西住流を強いていたのだった。

 

 

『なんか将来的に色々不安になって来たわね…このままだといつか私までいらん恥を掻く事になりそうな気がするわ……』

 

 

 生まれ育ちに起因するとはいえ時として苛立ちすら覚えるまほの真面目さと融通の利かなさに、漠然とではあるが多少身勝手な危機感を抱いていた。

 

 

『あ…でもあれね、その辺は私が言わなくても千代美が何とかするか……大学に行けば一緒に暮らす訳だし、まほの実態を嫌でも目にするだろうからきっとスパルタで躾するに決まってるわ……』

 

 

 若干希望的観測が混じっているきらいもあるがラブはそれで自分を無理矢理納得させると、頭を一つ振って再びカラオケの盛り上げ役に集中するのだった。

 生まれついてのエンターテイナーであるラブは人の気分を高揚させるのが非常に巧く、ステージの支配者として自由自在にマイクを握る者達を操りパーティーを盛り上げていた。

 まほも相変わらず直立不動なままであったが、その表情の微妙な変化から彼女なりに状況を楽しんでいるのはラブも良く解っていた。

 

 

『ふふ♪いい感じに暖まって来たわね…けどこのまま終わったんじゃつまらないでしょ?最後に取って置きを用意してあるから覚悟しなさい……』

 

 

 仲間達の間を巡りながら煽りまくっていたラブは、曲が間奏に入ったタイミングでステージのセンターに立つと、皆の注目が自分に集まった瞬間右手を高く掲げ指を鳴らした。

 するとアリーナ内の随所に設置された注意喚起を促す回転灯が回り始め、全ての目がラブからステージ後方へと移り始めた。

 その回転灯の演出はステージにLove Gunのレプリカが登場する際の合図であり、マイクを握っていた者達も間近でそれを見られるのかと興奮の色を隠せなかった。

 

 

「おいおい、ラブのヤツ本気か……?」

 

「Wow!また随分と大盤振る舞いね~!」

 

「遠目には本物にしか見えませんわね、あのレプリカは……」

 

「フム…ハリボテみたいな事を言っていたが、中は一体どうなっているんだろうな……?」

 

「私はあの紙吹雪砲が撃ってみたいわ!」

 

 

 Love Gunの登場を告げる回転灯のフラッシュに、全員の視線がLove Gunがせり上がって来るはずのステージ後方へと集中する。

 AP-Girlsのライブでもトリを務めるよう終盤に登場するLove Gunのレプリカは、ステージを盛り上げる重要な存在でありライブのもう一つの顔であった。

 当然ファンの間でもそのパフォーマンスは人気が高く、そのLove Gunのレプリカを間近で拝めるとあってまほですら興奮を隠そうとはしなかった。

 

 

「来るぞ!」

 

 

 エレキギターが登場した時は特に何も感じる事はなかったが、回転灯が回り始めた直後からステージ全に鈍い振動が伝わり、ライブ中は巨大な音響機器が叩き出す爆音に掻き消され気付く事のなかった低い機械の駆動音も聴こえて来た。

 通常のステージで使用されるセリを考えれば規格外なサイズを誇る昇降機が、まるで飛行甲板に艦載機を搬送するようにLove Gunを押し上げる。

 ステージにLove Gunが姿を現す直前、奈落の底への転落事故を防止する為の安全柵に仕掛けられたノズルから、激しい噴射音と共に勢い良く液化炭酸ガスが噴射され振り向いた者達の視界を一瞬だけ奪った。

 

 

「え……?」

 

「ちょ……!」

 

「ウソっ!?」

 

「なっ!」

 

 

 そしての液化炭酸ガスの噴射が止まり瞬く間に霧が晴れLove Gunの姿を視認した途端、まほ達は口々に驚きの声を上げ驚愕に大きく目を見開いて固まっていた。

 驚く彼女達の視線の先、そこには最近すっかりお馴染みになりつつあったⅢ号J型の姿はなく、代わりに特徴的な形状の赤外線暗視装置を装備した元祖Love GunであるパンターG型の姿があった。

 

 

『うわっ!』

 

 

 完璧な奇襲を受け絶句するまほ達であったがその程度でラブが攻撃の手を休めるはずもなく、彼女が振り上げた右腕を振り下ろすと同時Love Gunの主砲が火を噴き、砲口から多量の紙吹雪が轟音と共に放出され、不意打ちに驚いた者達はその場でバランスを崩し尻餅を突いたのだった。

 

 

「ふふ♡奇襲ってのはかくあるべしよ♪」

 

 

 見事に転がった仲間達を見下ろしながらキュっと目を細めたラブは、芝居ががった仕草で右手の甲を口元に当てると、女狐の笑みを浮かべそんな事を嘯くのだった。

 

 

 




昔やってたバンドで酔っ払った客の子がブラを投げようとして、
店が大騒ぎになった事がありました……。
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