ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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ラブとまほはやっぱり母達から受けた影響は大きいでしょうね。
そう、良くも悪くもw


第百七話   此の親達にして此の子達あり

「ん?亜梨亜ママ何でここに…?って、あれ?しほママも……?」

 

 

 自分が散々振り回した事が原因でヨレヨレになった連中をエステでリフレッシュさせるべく、厳島のグループで経営しているサロンにやって来たラブは、受付フロントのあるロビーで母にして厳島の代表である亜梨亜に遭遇しキョトンとした顔をしていた。

 更に亜梨亜だけではなくその隣にしほまでいた事に驚いたラブは、思わず二人の顔を交互に見比べてしまうのだった。

 

 

「何ですか人の顔をジロジロと行儀の悪い」

 

「え?あ…これはその……でも何で……?」

 

「あなたから予約の事で連絡を貰った後、折角だから私達もと思ったのよ……いけない?」

 

「いやそんな事は──」

 

「お母さまぁ!?」

 

 

 母に窘められ返答に困り口籠ったその時、まほの裏返った叫びがロビーに響き渡る。

 

 

「まほ…アンタなんて声出すのよ……」

 

 

 耳元で叫ばれラブは思わず顔をしかめるが、彼女以上に驚いた顔のまほはそれ処ではないようだ。

 

 

「いやだってオマエ…お母様が一体こんな所に何の用があるんだよ……?」

 

『絵に描いたようなおまいうだな……』

 

 

 母がこのような洒落たサロンにいる事が信じられないと驚きを隠せないまほであったが、仲間内で最もお洒落とかの類に頓着しない彼女の疑問はまさにお前が言うなだった。

 

 

「ちょっとまほ、それはどういう意味よ……?」

 

「どう意味もこういう意味もウチ(西住流)のお母様だぞ?それが大きな美容院に来て何するんだよ?」

 

「大きな美容院ってあのね……」

 

 

 春からは大学生になる女子としてその無頓着ぶりにはどうなのと、まほの言動に軽い頭痛を覚えたラブはマジマジと彼女の顔を見ながら盛大に溜息を吐く。

 

 

「だってお母さまが美容い…え、エステに来る意味は……?」

 

「まほ…エステが何する所か本当に解ってる……?」

 

「ば、馬鹿にするな!それ位私だって解ってるさ!けど相手はあのお母様だぞ?エステなんか来るより修理工場にでも行って装甲を取り換えればそれで済むだろう!?」

 

 

 このポンコツは一体何を言い出したのかと珍獣を見る目のラブが何かを言うより早く、それまで亜梨亜の手前発言を控えていたらしいしほが沈黙を破った。

 

 

「まほ…あなたは母を一体何だと思っているのです……?」

 

「何って、あだっ!?」

 

 

 しほに向かってまほが何かを言い返そうとした瞬間辺りにスパーンっと小気味良い音が響き、その直後まほが大声を上げながら後頭部を抱えていた。

 突然の衝撃に頭を抱えながらまほが背後に振り向けば、そこには皆に配るつもりだったサロンのパンフレットの束を丸めて握り締めるラブの姿があった。

 

 

「いきなり何すんだよっ!?」

 

「何すんだよじゃない!まほ!アンタねぇ、しほママはこんなに若くて綺麗なのに一体何の不満があるってのよ!?」

 

『あ…喜んでる……』

 

 

 右手で握り締めたパンフレットで左の掌をポンポンと叩きながら、ラブは身長差にモノを言わせてまほを上から睨み付けていたが、周りで事の成り行きを見守っていた者達は彼女がしほの事をこんなに若くて綺麗と言った直後、当人の表情が僅かながらも変化した事を見逃さなかった。

 だがその事を指摘するような度胸を誰一人として持ち合わせてはおらず、全員揃って気付かぬふりで事態を静観していた。

 

 

「ふざけんな!何かって言うと人の頭をポンポン叩きやがって!」

 

 

 この手の言い合いでまほがラブに勝てた試しはないのに、それでも彼女は懲りる事なくラブに歯向かおうとしたが、思わぬ伏兵の一撃に呆気なく意気消沈してしまうのだった。

 

 

「アホ!今のは100%オマエが悪いわ!」

 

「あ、あんざい!?」

 

 

 ラブに火力を集中させていたまほはアンチョビの背後からの一撃に驚き振り向いたが、彼女の怒った顔を見た途端それまでの勢いは消え、あっという間にシオシオと萎んでしまっていた。

 

 

「はっはっは!やはり千代美ちゃんに勝てる者などいないようだな♪」

 

『は……?』

 

「何だ揃いも揃って鳩豆な顔をして?」

 

「ちょっと英子!アンタもいい加減にしなさいよ!」

 

 

 亜梨亜としほの存在に気を取られ今の今まで気が付かなかったが、ロビーのソファーには亜美と英子が揃って腰を降ろし毎度お馴染みな夫婦漫才を繰り広げていたのだった。

 

 

「ええと…英子姉さんは何故ここに……?」

 

 

 何となく返って来る答えは解ってはいたが、それでも一応はといった感じでアンチョビが小さく手を挙げながら聞いてみれば、やはりというか案の定というか英子は何一つ悪びれる事なく実にあっけらかんと答えたのであった。

 

 

「ウム!亜梨亜様からお誘いを受けてな、滅多にない機会だからご相伴に与る事にしたのだ」

 

『ダメだこの人……』

 

「公務員がこんな事で本当にいいのかしら……」

 

 

 初対面から強烈なインパクトを与え、以降会う度に彼女が壊れて行くと感じるのは間違いではないとラブとアンチョビ以外の者達は認識を新たにする。

 その一方で亜美の方はといえば、流されるまま結果的に甘い汁を吸いそれに慣らされて行く事に葛藤を覚え、隣でからからと笑う英子を宇宙人でも見るような目で見ていた。

 尚、この公務員としてどうなのかという亜美の立場上当然な疑問に対し英子は、『誰も厳島のやる事に意見なんて出来ないしその勇気もないじゃん…そもそも亜梨亜様がこの程度の事で私みたいな下っ端に見返りなんか求めると思う……?』と後に答えたのであった。

 

 

「まぁ厳島隊長、こちらにいらしたんですね♪」

 

「ん?あら結依ちゃんじゃない、それにメグミさんまで~♪」

 

「メグミ……?」

 

 

 空気を読めないのではなく読む気のない英子は能天気に笑い、亜美は独り自問自答を繰り返す。

 このどうリアクションしていいか判断に困る状況にさすがのラブもまほを叱る処ではなく、他の者達も互いに顔を見合わせる位しか出来ずにいたのだった。

 そしてここで登場した笠女の生徒会長木幡結依とメグミのコンビは彼女達を一層困惑させたが、ラブだけは一人で嬉しそうにしていた。

 だがメグミの後輩であるケイとナオミは、最も自分達と縁遠い場所で彼女とのエンカウントは想定していなかったので、何か言われるのではと二人して引き攣り笑いを浮かべるのだった。

 

 

「や…これはその違くて……」

 

 

 しかしそれはメグミも同様であった上に、結依と二人きりでこのような場所に来ている処を見られたせいか、消え入りそうな声で言い訳しながららしくない程モジモジしていた。

 

 

「私は多忙なメグミお姉様にリフレッシュして頂きたくて予約を取っておいたんですよ~♪どうやら厳島隊長も同じみたいですね」

 

「うんうん♪さすが結依ちゃん、これ以上はない完璧な配慮ね!」

 

「いえ、それ程でも」

 

『そう思ってるのはオマエ等だけだ……』

 

 

 振り回される当事者達の意思などお構いなしに事を進めるラブ達を相手に、何を言っても無駄なのは経験上全員がよく解っていた。

 とはいえ二人の白々しささえ感じるやり取りに、全員がそんな事を考えているのはその能面のような表情から充分に読み取る事が出来た。

 

 

「それでは皆様こちらへどうぞ、この後のご予定もありますからあまり時間は御座いませんよ?」

 

 

 夜にはAP-Girlsのライブが予定されており、笠女学園艦に勤務する者であればそのタイムスケジュールも当然把握しているので、マネージャーらしき女性は騒ぎなど一切意に介さずあくまでも冷静に自分の職務を遂行するのだった。

 

 

「あ、御免なさ~い♪ホラ!それじゃみんな行くわよ~?」

 

 

 何処までもマイペースなラブもまた彼女の行動に疑問を感じる事はなく、言われるがままお気楽な調子ですっかり目の死んだ連中を手招きしていた。

 美肌エステ90分体験コースと銘打たれたその大盤振る舞いなプランは、系列の店舗全てで人気があり新規顧客獲得の為の目玉商品であった。

 慣れた足取りの厳島親子と結依の後に続く者達は、期待や好奇心や不安などといった様々な感情の入り混じった表情で未体験ゾーンへと突入して行くのだった。

 

 

 

 

 

「──数値的に肌年齢は十代、実に素晴らしいですわ……ですがお仕事柄お肌の事を考えれば、今後は定期的なケアを受けられる事をお勧め致します」

 

「そうですか……」

 

「はい、現在は関東地区のみに展開中ですが、夏には全国主要都市にも展開が完了致します。当然熊本にも出店致しますので宜しければ是非」

 

「商売がお上手ね」

 

「あら、これは大変失礼致しました」

 

 

 美肌エステ体験コースの施術を終えたしほは担当したエステシャンと共に、雑談交じりに肌に関するアドバイスを受けながら宛がわれていた個室を後にしていた。

 

 

『社交辞令…ってだけではないようね……そもそもが亜梨亜様の経営だもの、こんな処で利用者に対して嘘とか絶対有り得ないし……』

 

 

 肌年齢の若さを賞賛され若干の気恥ずかしさを覚えながらも、しほは頬をひと撫でした後その感触にほっと小さく息を吐いていた。

 

 

『それにしてもエステがこんなにも気持ちの良い物だとは思いもしなかったわ…夏には熊本にもオープンすると言ってたわね、パンフレットだけでも頂いておこうかしら……?』

 

 

 熊本の自宅には偶然とはいえ自らが掘り当てた美肌効果も高い温泉が湧いており、出張等で帰宅出来ない時以外は毎日その温泉に入っていたので、彼女はこれまで特にこれといった肌対策はした事がなかった。

 心身共に若々しいとはいえ彼女にとって今回のエステ体験は目から鱗であったらしく、真剣に入会を検討し始めていたのであった。

 

 

「ではもう少し詳しく──」

 

「や、やっぱりこんなの恥ずかしいからダメだ!」

 

「そんな事は御座いませんよまほお嬢様、とても良くお似合いですよ?やはり恋お嬢様と基本的な顔立ちが似ていらっしゃるのですね、こうしてメイクするとそれが良く解ります」

 

「まほ?一体何を騒いでいるの……?」

 

 

 しほが担当エステシャンに入会について相談しようとしたその時、目の前の廊下の少し先で扉が開き、中からやや裏返ったまほの大声が聞こえて来た。

 そしてその声にしほが眉を顰めていると、開いた扉の中からエステシャンに背中を押されたまほが恥ずかしそうに抵抗しながら部屋から出る姿があった。

 

 

「何ですかまほ騒々しい」

 

「え?あ!お、お母様!?」

 

 

 部屋から出たまほがしほの存在に気付き一層狼狽えていると、廊下に並ぶ扉が次々と開き施術を終えた仲間達が続々と姿を現したのだった。

 身に着けるエキシビションマッチ参戦記念の制服こそそのままだが、全員がエステで磨き上げられAP-Girlsばりにガッツリとメイクまで施されていた。

 校則でメイクする事が義務付けられているAP-Girlsと違い、ここまで本格的なメイクをする機会などこれまでなかったので、全員自分がどう見られているのか不安らしく落ち着きがなかった。

 

 

「あらまぁ……」

 

「ふん、ちったぁ見られるようになったじゃない♪」

 

「恋……?」

 

 

 十人十色とはよく言ったもので、全員が肌質や肌色に合わせ最適な色でメイクを施されている。

 だがメイクした顔などこれまで見た事がなかったので、顔を合わせるなりああでもないこうでもないと互いに顔を指差しては言い合う姿をしほは呆れ半分で眺めていた。

 そんな彼女が背後から聞こえた声に振り返れば、そこにはいつもと変わらぬ姿のラブが実に楽し気にニヤニヤと笑いながら立っていた。

 

 

「あなたはいつも通りなのね……」

 

「しほママ……私この後ステージメイクするのよ?今から気合入れた事しても意味ないわ」

 

「そうですか……」

 

 

 ラブの置かれた特殊過ぎる環境がどんなものなのか芸能に疎いしほには想像も付かず、彼女の返す言葉は短く曖昧なものであった。

 

 

「それにしても…馬子にも衣裳ね……」

 

『しほママがそれ言う……?』

 

 

 それから暫しの間ぼんやりと騒ぎを眺めていたしほであったが、改めてメイクした娘の顔を見た彼女の身も蓋もない呟きに、ラブはまほの事が少し可哀想に思えたのだった。

 

 

「いや参ったわ~、最近捜査捜査で忙しかったとはいえ、食生活から何からすっかりオッサン化してたツケが回って来た感じだわ~」

 

「アンタは昔っから中身がオッサンそのものだったでしょうが!」

 

「英子さん!?わぉ♡」

 

 

 折角磨き上げてやったまほに対するしほの一言にラブが呆れていると、その背後から不意を突くように英子の豪快な笑い混じりの声が響き、次いで亜美の鋭いツッコミが炸裂した。

 その声に驚いたラブが振り返ると、そこには見事に磨き上げられいつも以上にカッコいいお姉さんな英子と亜美の姿があり、美しいものに目がない彼女は思わず歓声を上げていた。

 そして英子はそんなラブに対するサービスのつもりなのか単なるボケなのかは不明だが、しほ相手にとんでもない事を言い始めるのだった。

 

 

「や、これは西住先生大変お見苦しい処をお見せしました…しかし先生は本当に美しくていらっしゃる……とても高校生のお嬢さんが二人もいるようには見えませんぞ?いやいや、もし人妻でなければ是非とも宜しくお願いしたい処ですよ」

 

「あら誘っていらっしゃるの?とてもお上手だけど、そんな褒めても何も出ませんよ?」

 

「ハッハッハ♪これは手厳しい、ですが私は事実を述べたまでですよ?」

 

「こ、この馬鹿…日本戦車道の重鎮相手に何という事を……」

 

 

 ラブはしほと英子の三文芝居にご馳走を目の前にした犬か猫のように目を輝かせるが、亜美は英子の暴挙に卒倒しそうな顔で口元をヒクヒクさせていた。

 

 

「え、英子姉さん……」

 

「じ~ざす…恐るべし知波単ズね、絹代も将来ああなるのかしら……?」

 

「オイ、いつも以上に日本語英語になってるぞ……」

 

「マジですの……ってケイ!変な事言わないで下さる!?」

 

「マジですのはローズヒップだから可愛いのであって、あなたが言っても可愛くありませんわ……」

 

「カチューシャ様これを……」

 

「だからノンナは何でいつも替えのパンツ持って……って、それ紙オムツじゃないのよ!」

 

「ゲテモノ喰いめ……」

 

 

 そしてこの薄ら寒くも恐ろしいやり取りに、それまで騒いでいた者達も信じられないものを見たと青い顔をするのだった。

 

 

「こ、怖くて出ていけない……」

 

「あらあら♪」

 

 

 尚、一番最後に顔を出したメグミは怖ろしさのあまり部屋の扉の影から一歩も動けずにいたが、そんな彼女の姿を結依はただニコニコと見守っていた。

 

 

「どうやら全員揃ったようですね」

 

「あ、亜梨亜ママ♪」

 

 

 しほ相手にボケ倒す英子の耳を引っ張る亜美を追ってゾロゾロと全員がフロントに移動すると、そこには既に全ての会計を終えた亜梨亜の姿があった。

 

 

「近くのお店を予約してあるのでそちらに参りましょう」

 

 

 目の前のカオスな状況に全く動じた様子のない亜梨亜はいつの間に手配していたのか、昼食を取る為に艦内でも人気の店に全員分の席を予約していたのだ。

 

 

「…全ての決定権は亜梨亜様にありますから……」

 

 

 決定事項だけ伝えた亜梨亜は娘を従え先を行き、残された者達の視線は説明を求めるようにしほへと集中したが、微妙に視線をそらした彼女は短くそれだけ言うと親子の後を追っていた。

 

 

『やっぱりあの人が一番変だ……』

 

『ラブの性格ってあの人の影響が強いんじゃないの……』

 

 

 一足先にサロンを出ようとする厳島親子の背中を目で追う者達はヒソヒソと囁き合うが、それを面と向かって言える根性の持ち主はやはり誰一人としていなかった。

 

 

 

 

 

「千代美さんのお口に合うと良いのですが……」

 

「いえ亜梨亜おば様、このお店凄く美味しいです……」

 

 

 エステの体験コースを終えた一同を亜梨亜が連れて来たのは、こちらも最近オープンしたばかりながら早くも人気のイタリアンレストランであった。

 ビューティーサロンやこのイタリアンレストランに限らず、見切り発車で就航した笠女学園艦内は今もなお様々な業種の新規開店が続いており、ラブ達もまだ艦内の全てを把握出来てはいなかった。

 

 

「千代美のお墨付きが出たって事はこのお店はホンモノって事ね♪」

 

「あのな…私は別にプロじゃないんだぞ……?亜梨亜おば様も私の口に合うかとか止めて下さい……いくらアンツィオがそれで外貨稼ぎといったってプロの料理人の方には遠く及ばないんですから」

 

 

 基本的に艦内の全てが厳島のグループの経営なので、飲食店なども当然その味は確かだった。

 

 

「そんな事はありませんよ?アンツィオの技術は本物、そうでなければ本校の給養員学科と組んであれだけの売り上げを達成出来ませんし、私もその許可を出しません」

 

「ハァ……」

 

 

 身も蓋もない話ではあるが、右に出る者のいない商人である亜梨亜の弾く算盤は、非情にシビア且つ外れる事はなく求めるレベルも高いので、その彼女にそこまで言われるアンチョビは周囲の目もあり何とも落ち着かない心境であった。

 しかしながら供される料理は彼女が言った通りどれも素晴らしく、笠女学園艦を訪れた際には是非また来たいと思うアンチョビだった。

 

 

 

 

 

「──処で新設校の子達はほったらかしで宜しいの……?」

 

「ん~?あの子達はAP-Girlsと一緒に遊んでるわ…さっきまでリトルどぶ板のゲーセンでピンボール大会やってたけど……っと、今は生徒会執行部とサンダース大の皆さんが合流してボーリング大会やってるって~」

 

 

 艦全体に横須賀の要素を多く取り入れた笠女学園艦内でも、最も景気が良かった頃のどぶ板通りをモチーフに子連れでも楽しめるように作られたアミューズメントパークの名を口にしたラブは、以前新設校の為に亜美が開設したアカウントをそのまま流用している自分達の伝言板に、次々と投稿される写真を皆に掲げて見せた。

 

 

「だからオマエ等何でそんなに元気なんだよ……?」

 

「明日フライト出来るかしら……?」

 

 

 どちらかと言えば体力馬鹿なまほもさすがに新設校の一年生達の元気さに呆れるが、戦車の空輸を引き受けたメグミとしては撤収の為に飛べるかどうかが不安でならないようだ。

 

 

「何言ってんのよババ臭いわね~」

 

「ババ臭いってあのなぁ……」

 

「アンタ達現役引退してマジ鈍ったんじゃない?そんなんで大学行って務まるの?」

 

「そういう問題じゃ──」

 

「あ~解ってるからもういいわ」

 

 

 更に何か言い募ろうとするまほに右の掌を突き付けて話をせき止めたラブは、そのポーズのまま食後のエスプレッソの最後の一口を飲み干した。

 

 

「さて、それじゃ私はそろそろ行かせて貰うわね」

 

「え?もうそんな時間なのか……?」

 

 

()()の戯言の途中で時間を確認したラブがスッと立ち上がれば、まほも慌てて自身の腕時計に目を落としていた。

 

 

「あ~アンタ達はまだ全然大丈夫よ~、私はホラ、特に衣装の準備とかが時間掛かるからさ~」

 

『あぁ……』

 

 

 天使の翼だったり九尾の狐の尻尾だったりと、ギミック満載なラブのステージ衣装が頭に思い浮かび、それを身に着ける手間を想像した一同は何となくその苦労察したように黙り込む。

 

 

「ん…ボーリング大会も丁度今終わったみたいね……うんうん、あの子等(AP-Girls)もちゃんとホストの役割果たしてるわね……おぉ!優勝チームのほっぺに夏妃が祝福のキスしてる!?うは~、何かスゲ~もの見たわ~♪」

 

「何だとぉ!?アイダっ!?」

 

 

 席を立ちながら携帯で再び伝言板に投稿された写真を確認したラブが嬉々とした声を上げれば、夏妃のキスというキーワードに反応したまほも、鼻息荒く気色ばんだ顔で椅子をガタリと鳴らして立ち上がっていた。

 しかしそこはお約束で隣に座るアンチョビが面白くなさそうな顔でお尻を抓り、彼女は間抜けな悲鳴を上げ周囲の失笑を買ったのであった。

 

 

「んじゃ私はホント行くわよ……あ、亜梨亜ママ後は宜しくね~♪」

 

 

 軽く手を挙げそれだけ言うと、ラブは亜梨亜の返事も待たずそのまま立ち去ろうとしていた。

 

 

「あ~そうそう、今日のライブはマジ期待してくれていいわよ♡」

 

 

 ほんの一瞬だけ足を止めたラブはふり返る事なく背中越しにそれだけ言うと、今度こそ本当に立ち去って行ったのだった。

 

 

 




西住親子のポンコツと怖いものなしな英子は、やっぱり書いてて面白いですw
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