「あれは野外炊具1号……」
その存在に気が付いたまほがポカンとした顔で見ているのは、災害時などにもその威力を発揮した事で知られる陸自の現用装備、移動式調理器材である野外炊具1号の改良型の22改だった。
ただしその塗色はお馴染みのOD色ではなく、笠女のスクールカラーである鮮やかなマリンブルーに塗り替えられていたが、元来が軍用装備なのでその武骨さには変わりがなかった。
「ごめんね~金曜じゃないからレトルトなんだ~、けどご飯の方は炊き立てだからね~」
ラブに引き連れられまほ達が訪れたのはまだ未使用と思しき床に油染み一つないまっさらなハンガーだったが、その建屋の中にはアウトドア用の折り畳みテーブルと椅子が多数並び、その光景はさながら自衛隊の駐屯地内にある隊員食堂のようであった。
帰艦作業に精を出すまほ達の労を労うと称しラブは彼女達の為に昼食を用意していたようだが、その準備でテーブルの間をAP-Girlsが足早に動き回る光景は少々シュールなものだった。
何故ならラブを筆頭にAP-Girlsだけでなく、オマケのように付いて来たダージリン達まで全員が揃いのメイドドレスを着用していたからで、本来なら航空機が格納され点検整備を受けるべきハンガーはまるで学園祭の模擬店の様相を呈していた。
「レトルト……って事は学園艦カレーか!あれは凄く美味いんだ、ごめんどころか最高の贅沢じゃないか!いや有難い、まさかこんな状況で学園艦カレーにあり付けるとは夢にも思わなかったぞ♪」
レトルトと聞いただけでラブが自分達の為に用意した昼食が、彼女の大好物の学園艦カレーであると看破したまほは満面の笑みでガッツポーズを決めていた。
「まぁいいけどさぁ、あんま食べ過ぎんじゃないわよ?」
「わ、解ってるよ……けどこれで午後も頑張れるぞ!」
笠女学園艦カレーを食べ過ぎた前科があるまほにラブは念の為にと釘を刺すが、それでもまほは肩をグルグルさせたりして食べる気満々で忠告はあまり効果がなさそうだった。
「何でレトルトってだけでカレーって断定出来るのかしら……?」
「何でって、笠女でレトルトって言ったら大体それが相場じゃないよ…まぁまほの場合、一年三百六十五日三食カレーでもいいってくらいカレー好きってのもあるけどさ……」
「何よそれ…いくら何でもそれは大袈裟なんじゃないの……?」
メグミも何度となく笠女学園艦カレーは口にしているが、さすがにケイの話は盛り過ぎだろうとつい懐疑的なもの言いをしてしまう。
「前科があるのよ…ちょっと待ってなさい……ええと、あぁコレだ…何度見てもエグいわ……」
携帯を取り出したケイは画像フォルダを呼び出すと、学園艦カレーの喰い過ぎで顔がカレー色になった時のまほの画像を探し出し、嫌そうに顔を顰めてから液晶画面をメグミに向けたのだった。
「何よ?ゲ…マジ……」
「取っとくなよんなモン……」
ケイがメグミに見せた画像が、以前不慮の事故でラブから送られて来た物だと察したナオミは、これからカレーを食べるのに嫌な事を思い出させるなと不快感を露にする。
「何なのよコレは……?」
「だから言ったでしょ?前科があるってさ……」
「……」
人間が一体どれくらいカレーを食べたら顔がカレー色になるかメグミには理解出来ず、ラブが学園艦カレーの差し入れに来た事でテンション爆上げなまほを宇宙人を見る目で見ていた。
「うふふ♪お疲れ様ですメグミお姉様♡」
「がっ!?ゆ、結依ちゃん!?」
おそらくスーパーギャラクシークラスの機体でも余裕で収容し、点検整備が行えるであろう新築のハンガー内に用意された臨時学食にやって来た一行がテーブルに着くと、メイドドレスに身を包んだラブ達は即座に温めた学園艦カレーを皿に盛り付けては給仕し始めていた。
ところが、折り畳みのディレクターズチェアに腰を下ろしたメグミが一息吐いたタイミングで彼女の前にカレー皿を置いたのは、ラブでもAP-Girlsのメンバーでもなく、ついでに言うならダージリンとその巻き添えの聖グロのティーネーム持ち達でもなく、厳島家のメイドドレスを着用した笠女の生徒会長木幡結依その人だった。
「さ、冷めないうちにどうぞ、お替りならいくらでもありますから言って下さいね~♪」
「いや…下さいね~♪じゃなくって結依ちゃんが何故ここに……?」
「何故って、メグミお姉様の身の回りのお世話は私の役目だからに決まってるじゃないですか♪」
「あぅ……」
もう全てがバレバレなのは仕方がないとして、これ以上好奇の視線に晒され弄られるのはメグミとしても避けたがったが、最近の結依の行動を見ていると既成事実を積み重ねようとしているとしか思えず、眩暈を覚えた彼女はそのまま目の前に置かれたカレー皿に突っ伏しそうになっていた。
だが、彼女が不安に思う最大の原因であるケイとナオミはラブに何やら耳打ちされるとニヤニヤ笑いを止め意識を目の前のカレーに集中し、大学から一緒に来た連中も結依と同様にメイドドレスを着た生徒会役員に包囲され口を封じられていたのだった。
「は~い、どんどんお替りしてね~♪」
上機嫌でカレーを振舞うラブはそう言いながらせっせとカレー皿を運び続け、AP-Girlsも彼女に倣って給仕の仕事に精を出していた。
テーブル上には次々とカレー皿が並び真っ先にまほが手にしたスプーンを口に運べば、それに釣られて他の者達もカレーを消費し始めたのだった。
「…あのさ……さっきから気になって仕方ないんだけど──」
「言うなケイ、黙って食う事に集中しろ……」
「そんな事言ってナオミだってさっきからずっとチラ見してんじゃないよ?」
「…うるせぇな……」
鼻の奥を刺激するスパイスの香りに空腹感も増し、力仕事の後だけに誰もが結構な勢いで一皿目を空にし始めた頃、ケイがスプーン片手に落ち着きなく周囲をキョロキョロし始めていた。
ところがそれはケイだけに限った事ではなく、その場で昼食を取っている者達ほぼ全員に共通した行動であった。
そんな中ごく一部というか唯一の例外は仲間内でカレーの王女様と仇名され、カレーが出てくれば他の物は何も見えなくなるまほだけだった。
それ以外の者達はカレーを食べながらもあちこちと視線を彷徨わせ、どういう訳かその顔を僅かに赤らめていた。
ユサユサユサ、ぷるぷるぷる。
あっちでユサユサこっちでぷるぷる、ラブとAP-Girlsが胸のたわわを大きく揺らしながら、カレー皿を乗せたトレイを手にテーブルの間を器用に練り歩く。
それが日頃のダンスレッスンの成果なのかは不明だが、メンバー同士すれ違う時でも抜群のバランス感覚で彼女達がカレー皿の乗ったトレイを揺らす事はない。
代わりにその分たわわは揺れる、空になった皿を下げお替りを置く度目の前で揺れるAP-Girlsの実りに実り切った果実に、ケダモノ達の視線は既に釘付けになりつつあった。
だがそれらの視線もやがては一点に集中し、その視線の先を移動する別格な存在のたわわ追って右に左にと扇風機の首のように動いたのだった。
「うるさいって言いながら何処見て──」
「あら?お皿が空ですわね!お下げしますけどお替りは如何かしら!?」
「うぇ?あ、あぁお願い……」
ナオミとコソコソ言い合いをしながらカレーを食しつつラブのたわわを目で追っていたケイは、直ぐ傍にいたダージリンの存在に全く気が付いておらず、
「全くどいつもこいつも人の事無視していい度胸してやがりますわ!」
厳島家に仕えるメイド達が着用するメイドドレスは露出も少なく清楚なデザインだが、何故かラブが着ると途端にエッチに見えていらん妄想を掻き立てるようであった。
それに比べラブも嫉妬する程そのメイドドレスが似合っていたダージリンだったが、全ての視線をラブの揺れるたわわが持って行った事が面白くなかったのだ。
「食事中に一体何を騒いでいるんだ騒々しい…あぁ済まない夏妃君、もう一杯お替りをお願い出来ないだろうか……うん、ありがとう……フム、久しぶりに見る厳島家のメイド服だが夏妃君に実によく似合っているじゃないか」
カレーの王女様の名は伊達ではなく、カレーに夢中で周囲で何が起きているかまるっきり解っていないまほは、空気も読まずたまたま通りかかった夏妃相手にポンコツぶりを発揮していた。
「う~ん、やっぱダージリンが淹れた紅茶って一味違うわね…前に教わった通りゴールデンルールに則って自分でも淹れてるけどこの味にならないのよ……」
まほ達に一通り昼食の学園艦カレーの給仕を終えたラブは、これだけは絶対に譲らぬとダージリンが淹れた食後の紅茶のお相伴に与り、その香りと味を堪能しながら至って真剣な顔でダージリンの自尊心をくすぐるような事を口走っていた。
「ふん…この程度の事で褒めてもこれ以上何も出ませんわよ……」
「ナニ怒ってんのよ……?」
ラブとの埋めようのない格差にダージリンが勝手に敗北感を抱き機嫌を悪くしていた事を知らず、彼女の態度に何だコイツと奇異の目をラブは向ける。
「ま、いいわ…ダージリンが変なのは今に始まった事じゃないし……ねぇケイ、帰艦作業の進捗状況ってどうなってるの?」
「マジでNo problemよ、まほ達の作業効率がどんどん上がってるから当初見積もりより大幅に時間短縮出来てるわ…夜……ううん、多分夕方には全校帰艦させる事が出来ると思うわ」
「そっか…そんなにペースアップしてるんだ……」
今夜は一般向けのライブが控えているので、ラブはその前に全員を見送り出来そうで少しホッとしたが、今度は帰艦作業に従事するケイ達がオーバーワーク気味な事が気にかかっていたようだ。
「けど大丈夫?結構なハードワークなはずなのにそんな飛ばして……?」
「ああそれなら何も問題ない……回数こなした事で慣れて来てるし、大洗のレオポンチームが残って作業に参加してくれているのが大きいからな」
「いやぁ、別に大した事してないよ……ただ先に帰ったドゥーチェから頼まれてたからね~」
『ん?何で千代美が……?』
思いがけぬ場面でまたしてもナカジマの口からアンチョビの名が出た事で、彼女達とアンチョビの接点が見えないラブは口元にティーカップを運びかけていた手を止め、疲れた様子も見せずまほ達と談笑するナカジマ達をジッと見つめていた。
「No, not at all!謙遜謙遜、スーパーギャラクシーのクルー達もさすがだって感心してたわよ?とにかくパッケージングが抜群に巧いってさ」
「あはは、
「ならないならない」
ケイもまほ達のサポートに徹して先を見越した動きで立ち回っているのを見ていたので、レオポンの三人を手放しで賞賛したが、ホシノとスズキは何処か自虐的な事を言うナカジマにツッコミを入れつつも、いつもの調子であっけらかんと笑うのだった。
「まぁ実際お恥ずかしい話だけど、環境が環境なもんで効率重視で手際良く立ち回らないとさ、とてもじゃないけどチームそのものがあっという間に回らくなっちゃうからね」
何と言ってもみほという存在が大きかったとはいえ、大洗の快進撃を陰で支えていたのは彼女達自動車部の手腕である事は周知の事実だったので、ナカジマに続いてホシノが軽く肩を竦めながら言った事を、大洗の実情を知る者達は彼女の軽い口調とは逆に重く受け止めていたのだった。
「あれ?やだな…みんな何て顔して……ん?何だこのエンジン音……?」
本人達としては特にヘビーな話をしたつもりはなかったのだが、ふと気が付けば周りが皆一様に神妙な顔で自分達の話に聞き入っていたので、ナカジマはいつも以上にお気楽に両手をヒラヒラさせながら雰囲気を変えようとしていた。
しかしその途中で彼女の耳はまだ距離はあるが聞き覚えのないエンジン音に反応し、意識はそっちに行ってしまいそれ以外の事は頭の中から綺麗に消え去っていた。
「何だこの音…ターボエンジンだと思うけど聞いた事のない音だ……」
「う~ん…マルチシリンダーだけどV型じゃなさそうだね……」
それまでとは雰囲気がまるで違うナカジマの変化に周囲が戸惑う中、ホシノとスズキも同様の反応を示し聞こえて来るエンジン音が何者なのか推理を始めていたのだった。
『う゛…この音は……亜梨亜ママまさか……』
レオポンチームの三人の顔が俄かに自動車部に変化したその傍で、ラブもまた急速に近付きつつある謎のエンジン音にこの後何が起こるか想像し口元を引き攣らせていた。
「Wow!凄い音ねぇ、相当ブン回してんじゃない?」
「あぁ…けどこりゃあ並みの市販車の音じゃないだろ……」
やがて誰の耳にもその轟く爆音と言っていい大排気量エンジン特有のエキゾーストノートが認識出来るようになると、其処此処でその爆音の主が果たして何者であるか論議が起こり俄然音のする方へと注目が集まって行った。
「What!?何よアレ?やけに平べったいのが来たわよ!」
そして注目が集まる中ハンガーの外へと顔を出した彼女達の視線の先、一つ隣りのハンガーの陰から構内速度を大幅に逸脱した一台の扁平かつ鋭角的な車両が、派手なドリフトでタイヤからスキール音とスモークを上げながら登場したのだった。
「またでけぇリヤスポ着けてやがるなぁ……」
「ん?あれは……」
驚き呆れるケイとナオミの傍では、まほだけが只一人彼女達とは違う意味で驚いた顔を見せ、目を丸くしたままラブの方へと向き直っていた。
「おいラブ…亜梨亜おば様まだアレに乗ってたのか……?」
「…亜梨亜ママがそう簡単にアレを手放す訳ないじゃない……」
予感的中、そんな表現がピッタリな顔をするラブがぼそりと呟くように力なく言い返すと、それを掻き消すかの如き大声を上げレオポンの三人がパニック状態で騒ぎ始めたのだった。
「え…え……えぇ────────っ!?」
「ウソ……本物っ!?」
「れ、レプリカじゃないよね!?」
「な、何事ですの!?」
蜂の巣を突いたような騒ぎとはこの事かと言いたくなる突然の大騒ぎに驚いて、危うく借り物のウェッジウッドのティーカップを取り落としそうになったダージリンは、早鐘を鳴らすようにドキドキする心臓の辺りを押さえながら、興奮して大騒ぎをする三人を諫めようとした。
しかし興奮し切った彼女達にダージリンの声はまるで届かないらしく、その狂乱の騒ぎは一向に収まる様子がなさそうに見えた。
そして爆音の主が彼女達の目の前に滑り込み急停車すると、レオポンチームの三人の興奮はいよいよ最高潮へと達するのだった。
「や、やっぱり……」
「信じられないけど……」
「本物だ……」
『コレはマジもんのM1だぁ!!』
自動車部魂の絶叫、突如降臨した鋭角的な楔を前に彼女達の興奮は止まらない。
「Why?これがM1?これのどの辺がM1なワケ……?」
「ケイ…M1つっても多分オマエが考えてるのとは違うから……あ、スマン構わず続けてくれ……」
騒ぐ自動車部の三人の間に首を突っ込むケイであったが、完全に勘違いしている彼女はナオミに襟首を掴まれそのまま引き摺られ退場させられる。
間の悪いボケをかましたケイが後ろに引っ込むと、少しポカンとした顔でそれを見送っていた三人は再び目の前の強烈な個性に向き直り、食い入るようにそのシルエットを見つめていた。
彼女達が興奮し大騒ぎする車両の名はBMW M1。
1970年代中盤、その当時存在したグループ4並びにグループ5と呼ばれたレースカテゴリーに於いて、頂点に君臨していたポルシェを玉座から引き摺り下ろすべくBMWはE-26の名で同車両の開発に着手していた。
しかし様々な要因から同車両の生産は遅れに遅れ、グループ4カテゴリーの参戦に必要となる連続する24か月間に400台の生産という条件をクリア出来ず、レース自体に出場する事すら叶わぬという事態が待ち構えていたのだった。
そこでBMWは苦肉の策として当時のF-1の前座レースとしてM1によるワンメイクレースを企画、約一年程名だたるF-1パイロット達に搭乗して貰いどうにか面目を保った経緯があったのだ。
その後1980年の年末に漸く400台目を生産出来たM1は、連続する24か月間に400台の生産という条件をお情けで免除されどうにかグループ4参戦に漕ぎ付けていた。
だが残念ながら1982年にはカテゴリーの変更が控えていた為、M1はモータースポーツの檜舞台で目立った戦績を残す事が出来なかったのだ。
そして1978年から始まったM1の生産は僅か三年後の1981年に終了し、その総生産数はたったの477台という希少車となったのであった。
「あぁ良かった、まほちゃんまだ帰ってなかったのね」
『まほちゃん……』
急停車したM1のドアが開きその車内から姿を現した亜梨亜は、まほの姿を認めるなりホッとした様子で彼女をいつも通りちゃん付けで呼んだ。
しかし彼女がちゃん付けで呼ばれる事になれていない者達は、それを聞いた途端まほの顔をマジマジと見ながらその違和感に固まっていた。
「亜梨亜おば様…私に何か……?」
派手に登場した亜梨亜であったが彼女がM1をぶっ飛ばして来た理由がラブではなく、どうやら自分にあるらしいと知ったまほはどういう事かと戸惑っている。
「あのねまほちゃん、これをしほちゃんに渡して貰えないかしら……?」
『しほちゃん……』
まほちゃんに続き亜梨亜が口走った日本戦車道最強の名のちゃん付けに、免疫のない者達の顔は青ざめ膝は小刻みに震えている。
「それは構いませんがこれは一体…あぁ、この袋は……」
「お土産に用意していたのに、私ったらしほちゃんの帰り際にうっかり渡すの忘れちゃったのよ……あぁそうそう、こっちはまほちゃんの分だから帰ったらみんなで食べてね」
「はぁ…ありがとうございます……」
亜梨亜がまほに手渡した手提げの紙袋は地元の和菓子屋の物であり、子供の頃から横須賀に来る度にお土産に貰っていたので、彼女もその紙袋には見覚えがあった。
「ちょっと亜梨亜ママ!いきなり現れてこんなトコで思いっ切り親戚のおばちゃんみたいな真似止めてよね!って亜梨亜ママ!足下!靴!」
自分を無視してまほ相手にホームコメディを始めた亜梨亜にラブは抗議しかけたが、彼女の足元に目が行ったラブは亜梨亜の靴を見た途端慌ててつま先を指差し恥ずかしそうに叫んでいた。
「あらいけない、私とした事がお恥ずかしい……」
自分の足元を見降ろした亜梨亜は口元を右手で覆い恥ずかしそうに笑うと、一旦M1の運転席に戻り助手席の足元に置いていたヒールを取り上げ履き替え始めたのだった。
一部の隙もないビジネススーツのタイトミニからスラリと伸びた亜梨亜の美脚。
その誰もが生唾ゴックンな彼女おみ足が履いていたのはレーシングシューズ。
確かに今履き替えている気合の入り過ぎなヒールではM1の運転など不可能だが、だからといってレーシングシューズを履くのも極端過ぎると思えるものの、相当履きこなした感じから見て彼女が日常的にそのレーシングシューズを使用しているのは疑う余地がなかった。
「はい、ごめんなさいね……それじゃあまほちゃん申し訳ないけどお願い──」
「ねぇ亜梨亜ママ!何でよりによってコレなのよ?いつものマルニはどうしたの!?」
「何ですか大声を出して…マルニは今車検に出してるのよ──」
『マルニ!もしかして2002Turbo!?』
「あ…しまった……」
墓穴を掘ったと慌てたラブがハッとした顔で振り向けば、そこには目をらんらんと輝かせる自動車部の三人の姿があった。
母である亜梨亜が
マルニにM1……どっちもお高いw
今後も亜梨亜は色々ととんでもない車に乗って登場する予定ですww