ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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最近ではコロナの影響に限らず仕事での遠出はめっきり減りましたが、
新幹線が品川に停車するようになって以降は新横は使わなくなりました……。
横須賀在住の私には新横からより品川から京急一本で帰って来れる分、
格段に楽なんですよねこれが……。


第四話   Long Train Runnin'Girls

「はい?お母様今何と……?」

 

 

 波乱含みの安斎家訪問から三日後、新たな住処となるマンションでの暮らしに必要な準備を粗方終えたまほは、アンチョビに見送られ熊本にある実家に一旦帰宅していた。

 次に名古屋に戻るのは入学式直前になり、その後はそのまま大学での新生活に突入するので、それまでの数日が彼女にとっては熊本でのんびりする最後の時間となるはずだった。

 しかしのんびりするとはいえそこはやはり西住まほ、春休みであるにも拘わらず黒森峰の寮暮らしをしていた頃と変わる事なく目覚ましが鳴る前に起床し、朝食前の軽い運動と呼ぶには些かハードなロードワークこなした後、彼女と五十歩百歩な朝の鍛錬を終えた母と朝食を共にしていた。

 だがその席でしほが突然言い出した事をまほは直ぐに理解する事が出来ず、鰯の丸干しを取り上げかけた箸を止めそのままの姿勢で固まっていた。

 

 

「何です?私の話を聞いていなかったのですか?」

 

「いや、そうではなくてですね…卒業のご挨拶なら先日お会いした時に済ませたではないですか……その時に亜梨亜おば様からも充分過ぎる程の卒業祝いも頂いていますし……」

 

 

 安斎家訪問の当日、名古屋市内にある厳島グループの中部地区の拠点で合流した際まほは黒森峰を無事卒業した事を報告し、亜梨亜からは一般的とは言い難い額の卒業祝いを手渡されていた。

 にも拘らずたった今しほから通達されたのは明日横須賀に赴き、亜梨亜に高校卒業と大学進学の報告をせよという意味不明なものだったので、訳が解らずまほも戸惑っていたのだ。

 

 

「ですからそれはそれという事です…あなたは中学を卒業した時もご挨拶に伺っていませんからね……今回は横須賀の城に伺ってちゃんとした報告をせねばなりません」

 

「お言葉ですがお母様、中学の時は状況が状況だったではないですか…当時はラブと亜梨亜おば様の所在が不明で卒業のご挨拶処ではなかったのですから……」

 

 

 榴弾暴発事故の後暫くして忽然と姿を消し、約三年が経過した昨年の秋に東富士で再会を果たすまで行方が分からなかった厳島親子に、挨拶など不可能であった事を困惑しつつもまほは指摘していた。

 彼女としても日頃から無駄を嫌う母らしくない矛盾した発言であると不審に思い、何か裏があるのではないかとしほの様子を窺うのだった。

 

 

「だからこそです……卒業や進学のような人生の節目には必ず横須賀に報告に伺うのが昔からの決まり事、それを欠かすような事があってはなりません」

 

『ウチにそんなしきたりがあったか……?』

 

 

 母の態度こそ普段と変わらぬ毅然としたものであったが、何処か腑に落ちないまほは首を捻りながら西住家の家訓やらを思い越したが心当たりなどまるでなかった。

 

 

「とにかく、そういう訳なので横須賀に行って亜梨亜様に無事黒森峰を卒業し、大学に進学出来た事を報告してきなさい」

 

「はぁ……」

 

 

 念を押され曖昧ながらも一応返事を返したまほだったが、些か強引過ぎる展開にこれは何か裏があるのではないかと疑問を抱きつつあった。

 

 

「明日の朝一番の新幹線のチケットを取ってあります、名古屋で千代美さんと合流するよう手筈は整えてあるので乗り遅れないよう気を付けなさい」

 

「は……?」

 

 

 それが厳島と西住両家の古くからしきたりとばかりに、決定事項として立て板に水で明日の予定を通達するしほであったが、ぼんやりとそれを聞いていたまほは突然アンチョビの名が出た事で思考回路が一時的に鯖落ちしていた。

 

 

「──ほ、まほ!何ですかぼんやりして?私の話、聞いているのですか?」

 

「え…?あ……何故ここで安斎の名が出るんですか?これはウチの……ウチと厳島の問題で安斎は何も関係ないでしょう?」

 

 

 訳が解らずフリーズしていたまほであったが少し語気を強めたしほの声で我に返ると、親戚同士の話に何故アンチョビが関係あるのかと問い質していた。

 

 

「まほ…あなたは何を言っているのですか……?千代美さんも将来的に私の娘になるのですから、横須賀に赴いて亜梨亜様にご挨拶するのは当然の事でしょう」

 

「ちょっと待てぇ!誰が誰の娘だ!しれっと寝言をぬかすなこのクソババァ!」

 

 

 だがしほがさも呆れたような口調でヤレヤレと小さく首を左右に振って見せると、怒髪天を突いたまほの思考回路は一気に氷解し、目の前で明らかに自分を挑発している母に向かって罵声を浴びせたのであった。

 

 

「何ですか母に対してその無礼極まりない口の利き方は!?私がクソババァならまほはまだケツの青い小娘でしょうに!」

 

 

 一方でしほもまほに負けず劣らずな瞬間湯沸し器ぶりを発揮し即座に反撃に出たが、アンチョビが絡むと途端にポンコツと化す親子の罵り合いは、極めてレベルの低い口角泡を飛ばしての聞くに堪えない罵詈雑言の応酬であった。

 

 

「事ある毎に安斎をモフりやがってこの色ボケ年増女!油断も隙もあったもんじゃない!ちっとはてめえの年を考えろ年を!」

 

「色気付いた小娘が何を言うか!母の若さに対する嫉妬か!?」

 

 

 朝っぱらから騒々しい事この上ない母娘喧嘩は近所迷惑も甚だしい騒ぎだったが、この界隈では既に風物詩と化していたし西住家の使用人達にとってもそれは同様の事であった。

 

 

「菊代ちょっと待ちなさい!何故勝手にお膳を下げるのです!」

 

 

 喧嘩が始まったと見るや座敷に姿を現した西住家の女中頭である菊代は、極自然な動きで二人の前に置かれたお膳を手際よく重ねると、軽々と持ち上げそのまま退室しようとしていた。

 いくら言い争いに夢中で頭に血が上っているとはいえ、目の前でそんな事をされればさすがにしほも気付かないはずもなく、平然とお膳を掲げて立ち去ろうとする菊代に待ったをかけたのだった。

 

 

「お食事の手が止まっていたのでもう宜しいのかと……」

 

「そんな訳ないでしょう!まだいくらも食べていないのは見れば判るでしょうに!」

 

 

 お膳を掲げた姿勢のまま足を止めた菊代の背中にしほは強い口調で抗議したが、当の菊代は暖簾に腕押し柳に風でのらりくらりとその声を受け流していた。

 更にその途中上段に重ねたしほのお膳の小皿に目を止めた彼女は、器用に片手でお膳を支えながらその小皿に鎮座する手付かずの甘めのふっくらと焼き上げられた卵焼きを、空いた片手で摘まみ上げヒョイと自らの口に放り込んだのだった。

 

 

「あぁ!その卵焼きは最後の楽しみに取っておいたのに!」

 

ふぁ(はぁ)ふぁひょうふぇふぉふぁいふぁふぃはふぁ(左様で御座いましたか)……」

 

「菊代アンタね……」

 

 

 口いっぱいに卵焼きを頬張る菊代が何を言っているのかしほにはさっぱり分からなかったが、泣く子も黙る西住流家元を屁とも思っていないのだけは充分伝わったようであった。

 尚、毎度の事とはいえ朝っぱらから大声で怒鳴り合う母娘喧嘩の声は当然常夫の耳にも届いており、二人は在宅時の朝食前の日課である戦車の点検を終えた常夫にガッツリお説教されたのだった。

 

 

 

 

 

「──とまぁそんな訳でな…その……何と言うか妙な事に巻き込んでスマン……」

 

 

 朝食の席でアンチョビを巡って母娘で醜い罵り合いをした翌日、常夫に送って貰い熊本発の山陽・九州新幹線の一番列車に搭乗したまほは、綱渡りな乗り換え時間で新大阪から東海道新幹線に乗り換えると、無事名古屋駅から乗り込んで来たアンチョビと合流を果たしていた。

 

 

「いやまぁそれはいいんだ…それより朝早くから長旅ご苦労だったな、疲れただろう……?」

 

 

 まほに話すより先にしほから事前にこのプランの連絡を受けていたアンチョビであったが、今回の横須賀行きが急な話である事に変わりはなく、昼を少し過ぎた時間に名古屋駅を後にした新幹線の車内で詳しい経緯を聞いた彼女は済まなそうにするまほを労ったのだった。

 

 

「確かに家を出たのは大分早い時間だったけどお父様が熊本駅まで車で送ってくれたし、新幹線に乗って直ぐ菊代さんが用意しておいてくれたおにぎりを食べた後は、新大阪に着くまでずっと寝てたから私は全然大丈夫だよ」

 

「そうか…時間が時間なんで名古屋駅で乗車前に駅弁を買っておいたんだが食べられるか……?」

 

 

 例え熊本から新大阪までずっと寝ていたとしても、長時間列車に揺られていた事で疲れているのではないかとアンチョビは気遣ったが、まほは心配無用と軽く手を挙げてそれに応えていた。

 

 

「うん、本当に大丈夫だ……ただ寝ていただけとはいえ、さすがに朝食が早かったし時間も大分経っているからお腹は空いてるよ」

 

「そうか、ならよかった」

 

 

 彼女を安心させようとまほが穏やかに微笑んで見せれば、アンチョビも少しほっとした様子で膝の上に乗せていたやや小ぶりな手提げの紙袋を掲げていた。

 

 

「ふむ…それはこちらの名物駅弁か何かか……?」

 

 

 アンチョビが掲げて見せた紙袋に印刷された弁当屋の屋号と、店の目玉商品と思われる商品名を興味深げにまほが覗き込めば、アンチョビも軽く頷いて買っておいた駅弁について簡単に説明してやるのだった。

 

 

「西住は名古屋コーチンって知ってるか?」

 

「あぁ、名前だけは…但し有名なのは知っているけど、食べた事があるかどうかを聞かれても正直解らないけどな……」

 

 

 何処かで食べた事があったかなと考え込むまほに、アンチョビもまぁそうだろうななどと相槌をうちながら説明を続けた。

 

 

「一応は比内、さつま地鶏と並んで日本三大地鶏と呼ばれててな…その名古屋コーチンを使った鶏めしの弁当を用意しておいたんだ……さて、人には好みがあるから口に合えばいいんだが……」

 

 

 名古屋コーチンの謂れを説明しながら紙袋から弁当を取り出したアンチョビは、これも乗車前に購入しておいたお茶のペットボトルと一緒にまほに手渡していた。

 

 

「ありがとう…う~む、こうして列車の中で駅弁を手にすると、急に旅をしている実感が湧くから不思議だな……どれ……うん、これは中々美味しそうじゃないか♪」

 

 

 アンチョビから受け取った駅弁を紐解いたまほは次いで蓋を開けると、その中身の充実ぶりに満面の笑みを浮かべたていた。

 それから暫くの間二人は他愛のない話に興じつつ、アンチョビの用意していた鶏めしの駅弁を消費する事に精を出したのだった。

 

 

 

 

 

「それにしてもだ…つい先日安斎のご両親の処にご挨拶に伺った時、亜梨亜おば様にも卒業のご報告は済ませたのに何だってこんな訳の解らん二度手間な事を言い出したんだか……何だか今回もウチの事情に巻き込んでしまったようで、安斎には本当に申し訳ないとしか言いようがないよ……」

 

 

 鶏めしの駅弁を完食しひと息吐いた後、まほは改めてアンチョビを急な横須賀行きの道連れにした事を詫びていたが、彼女としてもしほが何を意図してこのような二度手間な事をさせるのが理解出来ず、これはまた何かロクでもない目に遭わされるのではないかと疑念を抱いていた。

 

 

「私は別に構わないよ…けど西住、お前もあまり勘繰り過ぎるのもどうかと思うぞ……?いっくら何だって家元だって忙しいんだから、わざわざこんな事でお前をハメる為に手間をかける程暇じゃないと思うんだがな?」

 

「甘い、甘いぞ安斎……それはあまりに甘い考えだぞ?」

 

「あのなぁ……」

 

 

 アンチョビもまほの気持ちは解らないでもなかったが、母親相手に何もそこまで言わんでもと同時に感じていた。

 

 

「なぁ西住、私もこれが事の真相だと断言出来る訳ではないんだが、今回の横須賀行きは少し羽を伸ばして来いという家元の…おば様の配慮じゃないかと思うんだがどうだろう……?」

 

「安斎よ…お前自分で何言ってるか解ってるのか……?あのオニババァにそんな思いやりがこれっぽっちでもある訳がないだろう……?」

 

「オマエはまたそんな言い方を……」

 

 

 まほのあまりの疑い深さにアンチョビもすっかり呆れていたが、これまで散々しほのいいように振り回されて来ただけに、まほの猜疑心の強さは相当なものであった。

 

 

「だってそうだろう?まあ横須賀に行って亜梨亜おば様に挨拶して来いと言う以上は、亜梨亜おば様もこの件に一枚嚙んでいるのは間違いないはずなんだがな…けどあのクソババァや亜梨亜おば様が何を考えているのかは私にもさっぱりだ……」

 

 

 浦賀水道を眼下に見下ろす小原台の城に行く以上は現城主である亜梨亜の承諾が必要であり、それは即ち彼女がこの一件に関与している事を示唆していた。

 

 

「あ~それなんだがな西住…今回の横須賀行きは亜梨亜おば様に挨拶云々はあくまで建て前で、本題はやっぱりラブにあるんじゃないのか……?」

 

「それはどういう事だ……?」

 

 

 熱弁を振るうという程ではないが話すうちに感情的になっていたまほは、クールダウンする為かペットボトルに残っていたお茶を一気に飲み干すと、少し冷えた頭でアンチョビが何を言っているのか考え始めていた。

 

 

「なぁ西住、お前はこの間私の実家に来た時の事を忘れてないよな?」

 

「ああ勿論だ…けどそれが今回の件と何か関係があるのか……?」

 

 

 しかしいくら頭を冷やしてもアンチョビが何を考えているのか理解出来ず、更にラブの名が出た事で一層困惑したまほはアンチョビの横顔をジッと見ていた。

 

 

「いいか?よ~く思い出してみろ…私の実家からの帰り際……というかマンションまで送って貰う道中、ラブが一体どんな様子だったかをな……」

 

「そりゃオマエ思い出すまでもないよ、その場の思い付きで私達のマンションに押しかけて泊まる気満々だったのが、日帰りの予定で着替えなんか端っから用意してなかったもんだからあっさり計画が破綻して、別れ際になってもず~っといじけたまんまだったじゃないか」

 

 

 過去事ある毎にラブのいいように踊らされて来たまほにしてみれば、事が思い通りにならぬ彼女が打ちひしがれいじける姿は、実に胸のすく思いのする光景だったのだ。

 

 

「またコイツは……」

 

 

 滅多な事でやり込める事が出来ないラブがへこむ姿を思い出しいい顔をするまほにアンチョビはガックリと肩を落としたが、そこで話を終わらせる訳にも行かず彼女は小さく溜息を吐き話を本筋に戻していた。

 

 

「多分な…それが今回の横須賀行きの原因なんじゃないかと私は思うんだよ……考えてもみろ、あれだけはしゃいでたのがお泊り出来ないと解ると急転直下であの落ち込みようだ……おそらくは横須賀に帰ってからもずっといじけっぱなしで、見かねた亜梨亜おば様が春休みのうちに私達を遊びに寄越すよう取り計らったんじゃないかな……?」

 

「…何で大人達は揃ってラブに甘いんだろう……?」

 

 

 あくまでアンチョビに推測に過ぎないのだが確かにありそうな話だと納得してしまったまほは、我が身との扱いの差に釈然としない顔をしていた。

 

 

「そりゃあんだけハードモードな人生送って来たんだから仕方なかろうに…まぁもっと見方を変えるとだな……アイツをあのままいじけさせとくとまた何か良からぬ事を思い付いて、ロクでもない事態を招きかねないと危惧された可能性もあるんだが……」

 

「あぁ……」

 

 

 最初こそ不満気なまほであったが、後出し宜しくアンチョビが付け加えた話に、そのターゲットが誰であるか容易に予想が付いたのか、顔から表情が消え抑揚に欠ける声で短く相槌を打ったのだった。

 

 

 

 

 

「フム…もう新横浜か、そろそろ降りる準備しないといかんな……」

 

「何言ってんだ西住、新横浜じゃ降りないぞ?チケットをよく見ろ、降りるのはその次の品川だ」

 

「え?あ…本当だ……」

 

 

 熊本を発つ事約六時間、車内アナウンスが間もなく新横浜に到着する事を告げると、新横浜で乗り換えと思い込んでいたまほは網棚から荷物を降ろそうと立ち上がりかけていた。

 しかし彼女が腰を浮かしかけた処でアンチョビがまほに待ったをかけ、言われた通りにチケットを確認したまほは拍子抜けした顔で目を丸くしていた。

 

 

「おば様から横須賀行きの打診を受けた時、新幹線を使うと聞かされたので私から乗り換えは品川にするようお願いしたんだよ」

 

「そうなのか…けど何で横須賀に行くのにわざわざ東京の品川乗り換えなんだ?同じ神奈川の新横浜で乗り換えじゃないのか……?」

 

 

 再び席に腰を下ろしたまほはアンチョビに至極当然な質問をしたが、今度はアンチョビが意外そうな顔で目を丸くしたのだった。

 

 

「あれ?西住はもしかして横須賀に行くのに新幹線を使った事なかったのか……?」

 

「えっと…そうだな、言われてみれば確かにないかもな……子供の頃から横須賀に遊びに行く時は、直接ヘリで行くか一度本郷の別邸に寄って車で行ったりしてたからなぁ……」

 

「う~ん…それじゃあ知らないのも無理はないか……」

 

 

 何故自分が品川乗り換えに変更して貰ったのかの経緯を説明する為には、あの忌まわしき榴弾暴発事故当日の話題に触れねばならなかったが、下手に言葉を濁しても却ってまほに要らぬ気を遣わせるだけだと判断したアンチョビは、事故発生後自分が取った行動について改めて詳しく話して聞かせ、何故品川乗り換えにしたかについても説明したのだった。

 

 

「成程な…安斎のお父様のご判断だったのか……しかし新横浜駅というのは、在来線に乗り換えるのがそんなに面倒な駅なのか……?」

 

「いや…私も降りた事がないから詳しくは知らんのだがな……後でお父さんに聞いたら品川駅に新幹線が停まるようになったのは私らが十歳かそこらになった頃の話らしいんで、それまではこの技も使えなかったみたいだけどなぁ……」

 

 

 敢えてアンチョビが話をぼかさなかった事はまほも理解していたようで、特に感情を乱す事なく新横浜駅の不便さがどれ程のものかと首を捻っていた。

 

 

「あ~、そういや去年の秋にラブと再会した後、ダージリンとアッサムと当時の話をした時にその話をしたら、二人揃ってすっげ~嫌そうな顔してたっけ……」

 

「新横浜というのはどんだけ不便な駅なんだ……」

 

 

 横浜を母港とする聖グロに在籍していた二人が嫌がるという事は相当不便なのだろうとは思ったが、実際に降りた事がないまほにはそれがどれ程のものかは想像も付かなかった。

 そうこうするうちに減速を続けた新幹線は新横浜駅のホームに滑り込み、車窓越しの栄えた様子の街並みをまほはぼんやりと眺めていた。

 

 

「さて、新横浜を出たら降りる準備をしないとな……」

 

「え……?」

 

「え?ってオマエ、新横浜出たら品川までたったの十分で着くんだぞ?」

 

「そんなに近いのか……」

 

 

 その家柄故にあまり一般的ではない育ち方をした為に、公共交通機関を使う機会の少なかったまほにとって今回の旅は驚きの連続であった。

 

 

 




まほとチョビ子にとっては初めての二人旅なはずだけど、
どうにもあまり楽しむ余裕はなさそうですねw

ちょっと忙し過ぎてお盆休みは返上になりそうで、
もしかするとその辺りでまたしても投稿を一回くらいお休みする事になりそうです。
それさえ過ぎれば落ち着くとは思うのですがご容赦下さい。
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