「これはまたなんという具沢山……」
目の前のトレイの上に所狭しと並ぶ調理パンは、どれも具が溢れんばかりというか完全に溢れる程詰め込まれており、その盛り過ぎな調理パンを前にアンチョビは唯一人絶句していた。
「オイ二人共…そろそろ子供じみた姉妹喧嘩は止めにしてここを離れないか……?私はいい加減疲れたし、何より周囲の視線が痛いんだがな……」
『う゛……』
自分が高校一年生である事をやたら強調するラブが普通免許を取った事に端を発し、ラブとまほが始めた下らない事この上ない口喧嘩に辟易としたアンチョビは、周りを見るよう自分の背後を親指で指差していた。
アンチョビに水を差され熱くなっていた二人は一瞬ムッとしたが、彼女に言われて周囲を見回した事で漸く足を止めた通行人の視線が全て自分達に集まっている事に気が付いたのだった。
「…二人共乗って……」
まほをおちょくるのに夢中で周りの状況がまるっきり見えていなかったラブは、さすがにバツが悪いのか二人から目を逸らしたまま自らもシュビムワーゲンに乗り込もうとしていた。
「クッ…よっ……ハッ……うぐっ!」
ところが小っちゃくて可愛いというラブにとって理想のコンセプトの詰まったシュビムワーゲンは、その理想とは対照的なプロポーションを誇る彼女には些か小さ過ぎて、運転席に乗り込むだけでも相当に苦労を強いられているのが丸解りだった。
「ラブお前……」
「気が散るから千代美はちょっと黙ってて……」
「……」
それから待つ事暫し、パイプ椅子に毛が生えた程度のシートとステアリングの間に、その我がまま過ぎるボディを押し込むべく格闘していたラブが漸く運転席に充満すると、肩で息をする彼女は死んだような目でその光景を見ていた二人にも改めてシュビムワーゲンに乗るよう促していた。
「お、お待たせ…さ、二人も早く乗って頂戴……」
「お、おぅ解った……」
ここでこれ以上いらん事を言ってラブの機嫌を損ねるのは得策ではないと判断したアンチョビは、彼女に悟られる事のないよう細心の注意を払いながら隣のまほに目配せをした。
するとまほもそれに解っていると目配せで応え、二人は無言で小さく頷きシュビムワーゲンのバスタブのようなボディーに手を掛け後部座席に乗り込もうとした。
しかしシュビムワーゲンは水陸両用という特性上浸水を防ぐ為にドアが存在せず、乗車するにはボディの縁を跨がねばならず、スカート履きの二人はここで思わぬ苦労をする事になったのだった。
アンツィオはパンツルックであったが、パンツァージャケットは基本的にアンダーがミニスカ履きが多く、殆どの選手がその下のインナーは所謂見せパンを着用していた。
だが今日の目的は厳島家訪問であり見せパンを履く必要もなく、当然二人はごく普通のインナーを着用していたので、いつもの戦車に乗り込む調子でシュビムワーゲンに乗り込んだら中央駅前がちょっとした騒ぎになるのは確実だった。
その為二人はうっかりパンチラせぬよう慎重な身のこなしで用心深くシュビムワーゲンに乗り込んだが、先程から周囲の視線は自分達に集中したままだったので、彼女達は緊張感の中相当に恥ずかしい思いをしなければならなかった。
「よ、よしいいぞ…だ、出して……ん?」
まほと二人どうにか後部座席に収まったアンチョビは、軽く身を乗り出してステアリングを握るラブに車を出すよう言おうとした。
「…何だこりゃ?なぁオイ、この助手席の大袋は一体何だ……?」
ところがその彼女の目の前、助手席のシートの上には何が詰まっているのか目一杯膨らんだ大袋が鎮座していて、その只事ではない大きさと膨らみ具合にアンチョビは驚いていた。
「ああコレ?言ったでしょ?買い物がてら迎えに行くって……量が量だから予め電話で注文しておいて、ついさっき受け取って来たおやつに食べるパンよ」
「パンだぁ?」
「そ、パンよ」
これはさすがに予想外過ぎて少し間の抜けた声を上げたアンチョビに、ラブはさも当然な事のように素っ気なく答えた。
「おいラブ、そのパンってもしかしてあのパン屋さんのか……?」
「西住知ってるのか……?」
パンと聞いて身を乗り出したまほは大袋の中を覗き込みながら、顔も上げる事なく懐かしそうに袋の中を検分している。
「ああ、子供の頃こっちに遊びに来ると、よくおやつなんかにこのパン屋さんのパンを用意してくれてな…どれどれ……?」
「そうよ、よく覚えてたわね」
「そりゃ覚えてるさ、ここのパンは美味いからな…あ、シベリアだ……懐かしいな、私はココアの蒸しパンが好きなんだよなぁ……小判型と言うか大判サイズのフワフワのも美味かったんだよ、他にもアレだ、定番の菓子パンや調理パンの類も素朴だけど外せないよな♪」
「ホントよく覚えてるわね~」
「おい西住ぃ、オマエちょっと行儀悪いぞ?」
立て続けに自分が好きだった菓子パンを列挙するまほに呆れながらもラブはクスクスと笑い、アンチョビは狭い後部座席で隣から身を乗り出し袋の中身を物色するまほに小言を言った。
「私はここのシュークリームが好きなのよね…あま~いカスタードたっぷりな昔ながらのシュークリームが……でもそれ以前にパン屋さんが作るケーキとかが元々好きなのよね~♪」
「そうなのか……?」
桁外れなお嬢様な割にラブが飲食で贅沢を言わない事はよく知っていたが、ここまで明確に自分の好みを聞いた事がなかったので、大袋を覗き込むまほを笑いながら見てるラブの横顔にアンチョビは意外そうな顔をしていた。
「う~ん…結構私の知らないのが増えてるなぁ……」
「まほ…アンタお腹空いてるの……?二人共もしかしてお昼食べて来なかったの?」
「いや、私も西住も新幹線の中でちょっと半端な時間にお弁当食べたからな…その後乗り継ぎも良かったから勢いでそのまま横須賀まで来ちゃったんだよ……」
「そっか…じゃあお腹空いてても無理ないわよね……ねぇ、二人共折角だからパン屋さん寄ってみる?まほも久しぶりだし、千代美も興味あるんじゃない?」
「いいのか!?」
大袋を覗き込んでいた顔をガバッと勢い良く上げたまほは即座にその提案に喰い付いたが、それまでまほが物色していた大袋に目をやったアンチョビは、その量の多さにこれ以上は必要ないのではないかと躊躇しているようであった。
「これだけ買ってあるならもういいんじゃないのか?そりゃ私も気になるのは確かだけどさ……」
「何言ってんのよ千代美~?
アンチョビも特に遠慮した訳ではないが、助手席を占拠する程買い込んであればこれ以上買う必要はないのではないかと思い、喜ぶまほを横目についそんな事を言ってしまうのだった。
しかしラブがAP-Girlsもいるのにこれでも少なめだと告げると、彼女達が城に来ているとは知らなかったアンチョビは少し驚いた顔になった。
「え?あれ…ちょっと待て……お前AP-Girls全員連れて帰ってたのか……?」
「ちょっと千代美、アンタ何言ってんの?今のあの子達にとっての実家はウチだって事忘れたの?」
するとラブは如何にもアンチョビらしくないと言いたげな表情を作ると、敢えて一言一言をハッキリと発音して以前説明した事を思い出させるよう仕向けたのだった。
「はぁ?一体何を…あ、そうか……そうだったな……」
AP-Girlsの第一期生は全員ラブが直接スカウトして集めたメンバーであったが、その素性というか育って来た環境は相当に訳ありらしく、彼女達を迎え入れるに当たり法的な事や問題のある家族や親族を厳島家が総力戦で黙らせた経緯があったのだった。
そして彼女達を庇護下に置いた厳島家は全員の本籍地を小原台にある厳島の城に変更し、結果としてラブの実家イコールAP-Girlsのメンバーの実家となっていたのだ。
以前ラブが目の手術を受ける際、その辺の細かな事情を聞かされていた事を思い出したアンチョビは、漸く彼女達が春休みで実家に帰省中であると理解したのだった。
「やっと思い出したか」
「いや思い出したけどさ…それでもその量はやっぱり多い気がするんだがなぁ……」
状況は理解出来たしAP-Girlsが大所帯なのも良く解っているアンチョビだが、それでもおやつに食べるには些か量が多いと感じたようだ。
「それアンツィオ卒業した千代美が言う……?」
「う゛…だって私らは年中ドタバタやってたし……そもそもアイツらおやつが少ないと覿面やる気失くしやがるから仕方なくだなぁ……」
「ポイントはソコよ、ウチだって一緒なの解ってるでしょ?大体今日もあの子ら朝からずっとフィジカルトレーニングやってるから、例えランチ挟んでも消費したカロリーは相当よ?この程度おやつに食べたって問題ないし夜のご飯だってガッツリ平らげるわ」
食わせないと動かないというアンツィオとAP-Girlsの共通点を指摘したラブは、次いでその運動量の多さからこの程度の事で夕食が食べられなくなる事はないと言い切っていた。
「AP-Girlsのフィジカルトレーニングか、中々ハードそうだな…フム、実に興味深い……」
それまでまほは懐かしいパン屋に立ち寄る事しか頭になかったが、AP-Girlsがフィジカルトレーニング中である事を知ると、彼女達のタフさの基礎となるトレーニングの内容が果たしてどんなものなのか興味を示していた。
そして基本的に自らを鍛える事が好きな彼女は、AP-Girlsの身体能力の高さとそれを維持する為に行っているトレーニングに、もし可能であれば参加したいと考えていたのだった。
「あぁ、まほならアレに付いて行けるかもしれないわね…但し中にはダンスの要素が取り込まれたものもあるからその辺が直ぐには対応出来ないかな……?」
「ダンスってステージでお前達が踊ってるアレか?う~ん…私はダンスなんて小学校の運動会のフォークダンスぐらいしかやった事ないから、とてもじゃないがあんなのは無理だ……」
もし城に行ってから時間があれば、AP-Girlsのフィジカルトレーニングに参加させて貰おうかと考えていたまほであったが、ダンスと聞いた途端に絶望的な顔で肩を落としていた。
「アンタもしかしてトレーニングに混ざるつもりだったの?一体何しに来たのよ~?こんな時くらいはのんびりしなさいよね~」
「あ…いや、別にそういう訳じゃ……」
まほの非常に解り易過ぎる表情の変化から、彼女がAP-Girlsのフィジカルトレーニングに参加する気になっていた事を察したラブは、その脳筋ぶりと休み下手に呆れ果てていた。
「別に怒っちゃいないわ…まほのそういうトコは昔っから変わんないし……とにかくこんなトコでこうしててもしょうがないから、取り敢えずはパン屋さんに行くわよ」
実際いつまでもそうしていては時間の無駄な上に、いくら小さいとはいえ駅前に路駐を続けては迷惑なのでラブは慎重に後方を確認すると、バタバタと年齢を感じさせぬ軽快なエンジン音を響かせてシュビムワーゲンを発進させたのだった。
「ま、さすがに無人のコインパーキングって訳には行かないからね~」
駅前を出て目的のパン屋から少し離れた場所にある、管理人のいるタワーパーキングにシュビムワーゲンを入庫させたラブは、事務所で受け取った駐車券をヒラヒラさせながら苦笑いしていた。
いくら亜梨亜が最新のセキュリティシステムを組み、その知名度から手を出す者がいないと言われてもそれが絶対ではない事はラブもよく解っていたので、彼女も駐車場を使う時は無人のコインパーキングを避けるようにしていた。
「ま~賢明な判断だな……」
シュビムワーゲンが格納され自動ドアが閉まるのを見届けていたアンチョビは、駐車券片手に戻って来たラブの困ったもんだと言いたげな一言に応えながら、改めて頭のてっぺんから爪先まで彼女のいで立ちを見直していた。
『コイツやっぱお洒落だよなぁ……』
ノンナより10㎝以上背が高い上に最近また少し背が伸びたのではと噂されるラブは、その日本人離れしたプロポーションを活かし中学時代には大人向けのファッション誌のモデルすらこなしていた。
そんな全てに於いて規格外な彼女の今日のファッションはといえば、その足の長さが際立つパンツルックだったが、おそらくは既製品では中々サイズの合わぬ彼女の為にフルオーダーで作られたであろう物であった。
鮮やかな厳島の青で染められたロングTシャツとその上に重ね着したアザレアピンクのTシャツは、色の組み合わせ的に中々着こなすのは難しいが、派手な顔立ちのラブが着れば何も問題はなくむしろ彼女には地味にすら感じられた。
そしてその上に羽織る着丈が背中の中程までしかないボレロ丈のデニムジャンパーは、所謂Gジャンに在りがちなだぶついた袖ではなく、肘の辺りで僅かにすぼめられライダーズジャケットのようなスリムなデザインだった。
そして同じデニム生地で作られた股上の浅いローライズのブーツカットジーンズは、裾のフレア部分の前後でカットの長さを変え彼女の美脚のラインの美しさを強調していた。
更に左足の裾には白糸一色でシンプルながらも大胆に刺繍が施され、彼女が一歩踏み出す度にアンチョビの目を引いていた。
「何よ千代美、人の事ジロジロと……」
「あ、いや…いつもながらお洒落だと思ってな……」
つい見惚れていたアンチョビは不躾な事をしていたと気が付いて少し慌てたが、ラブの方は別段怒っている様子はなくただ眉尻を下げ恥ずかしそうにしているだけだった。
「千代美ったら急に何言いだすのよ~?」
「や、別に深い意味はなくてその何だ…えぇと……ん?なぁラブ、そのジーンズの刺繡って……」
「え?あぁコレ……?」
シドロモドロで言い訳をしながらラブの困ったような笑い顔から目を逸らしたアンチョビは、落とした視線の先で視界に入ったブーツカットの裾の刺繍の柄に目を止めた。
「それって確か千鳥柄ってやつだよな?お洒落だとは思うけど何でまた千鳥柄なんだ……?」
アンチョビが不思議そうに目を向けるラブのブーツカットの裾のフレア部分には、かき氷の氷旗などでお馴染みの三羽の千鳥が白波の間を飛び抜ける柄が刺繍されていたのだった。
「波に千鳥の柄はラブの家…厳島家の家紋なんだ……確か家紋の方は波輪に陰千鳥だったよな?」
「え……?何だってぇ!?」
少し屈んで千鳥柄の刺繍を覗き込んでいたアンチョビは、ラブではなくまほから質問の答えが返って来た事に驚いて顔を上げた。
「何でまほはこんな事だけはよく覚えてるのよ……?」
「そりゃ子供の頃から西住と厳島両家の基本情報は、徹底的にお母様から叩き込まれたからな……」
訳が解らぬアンチョビを他所に、自分より先に厳島家の家紋について受け答えして見せたまほをラブは半ば呆れたような顔で見ていた。
「なぁ…二人共出来れば私にも解るように話してくれんか……?」
「あ、ゴメン…まほが今言った通りこの波千鳥、波輪に陰千鳥がウチの家紋なのよ……千鳥と波の組み合わせはね、波間を世間に例えて共に荒波を乗り越えて行くとかそんな意味があるの……夫婦円満や家内安全を象徴する所謂縁起物の柄なんだけど、千鳥を千取りに掛けて勝運祈願や目標達成の願掛け的な意味もあるらしいわ」
「ほう……」
最初は訳が解らなそうに困惑気味だったアンチョビも、ラブの説明を聞くうちに興味深げに相槌を打ち、自分もあまり知らぬ厳島家に関する話に聞き入っていた。
「でね、その縁起の良い千鳥柄を海運業で成功した当時の当主が家紋に定めたらしいわ…けどウチの場合事業規模を考えると、他所と比べてもそれに関わる一族の人数は今も昔も驚く程少ないのよ……それでこれは私の勝手な解釈なんだけど、その辺の事情も踏まえて例え小さくても荒波に負ける事のない千鳥に厳島を重ねて見たんじゃないかと思ってるのよね」
「ふ~む…成程ねぇ……」
「あ、これはあくまでも私の私見で決して正解って訳じゃないからね?この刺繡も特にそういう事を意識して入れた訳じゃなくて、単に千鳥柄が可愛くて好きってだけなのよ……」
まるで歴史的な逸話でも聞くように真剣に耳を傾けるアンチョビに、ラブはそれが自分独自の解釈のようなもので厳島家全体の認識ではない事を強調していた。
「いけない…つい話が長くなったわ……あまり遅くなるとあの子達が怒るから、取り敢えずパン屋さんに行きましょ?」
時計を確認したラブはそこで話を切り上げると少し足早に歩き始め、まほとアンチョビの二人もその背中を追ってパン屋に向かって歩き始めたのだった。
「おぉ…結構種類があるなぁ……」
パン屋に到着し三人が店内に足を踏み入れると、ラブが再び来店した事に店の人間は目を丸くしていたが、彼女が事情を説明すると皆揃ってまほとアンチョビの来店を笑顔で歓迎していた。
「私が子供の頃処か亜梨亜ママも子供の頃からここのパンを食べてたのよ?何しろ創業は昭和の初めだから老舗って呼んでいいのかな……?フランス人技師のヴェルニーが横須賀の造船業の基礎になった横須賀製鉄所を創った時、一緒に連れて来たパン職人が伝えたフランスパンがルーツなのよ」
「へぇ、そうなのか……」
「そしてこれが横須賀のフランスパンよ」
「は?これがフランスパン?」
「そうそう、久しぶりだなぁ、これにピーナッツクリーム塗って貰うのが美味いんだよ♪」
ラブが指差した柔らかそうな丸いパンはアンチョビの知っている一般的なフランスパンではなく、その見た目はハンバーガーなどに使うバンズと呼ばれるパンやコッペパンの類に近かった。
そして驚くアンチョビの隣ではまほが早速注文を始めていて、注文を受けた店員は慣れた手付きで開いたパンの間にピーナッツクリームを塗っていた。
「人気メニューよね♪ねぇ千代美、このパンが横須賀のソフトフランスよ」
「ソフトフランスか…成程ねぇ……しかしこの店は本当に種類が多いな、目移りしちゃって何を買ったらいいか中々決められないよ……そうだラブ、お前のおススメとかあれば教えてくれんか?」
「私のおススメ…?そうねぇ……さっきも言ったけど私は昔からこのシュークリームが好きなの……もう愛してると言ってもいいわ♡」
「シュークリーム?あぁコレか…しかし愛してるて……」
「えぇソレよ、私はこのあま~いカスタードたっぷりなシュークリームが大好きよ♡」
見た目は実に素朴な昔ながらのパン屋さんの作る洋菓子そのものなシュークリームだったが、ラブはショーケースに並ぶシュークリームを指差して満面の笑みを浮かべている。
「確かに美味しそうだけど…けど他の菓子パンも美味しそうだしコレは増々迷うなぁ……」
アレにするかコレにするかと迷いながらも、アンチョビはラブが食べ物の事であまり贅沢を言わず、値段に関係なく美味しい物は美味しいと言う彼女の性格を好ましく思っていた。
「決まった……?」
「ああ、私はラブのおススメのシュークリームと、そっちの甘食パンに決めたよ」
「お?さすが千代美お目が高い、その甘食もおススメよ♪」
「そうか、それは楽しみだな♪」
アンチョビとまほがそれぞれ好みのパンを選び会計を終えると、ラブは店員達に挨拶を済ませ店の外へと足を踏み出していた。
「さ、それじゃ今度こそ家に行くわよ?これ以上待たせるとあの子達ガス欠して後が面倒だからさ」
「お前春休みなのにアイツらにどんだけハードワーク強いてんだよ……?」
「アイドルに春休みは関係ないし、あの子達は身体が鈍るって自主的にやってるのよ……?」
空腹で動けなくレベルのトレーニングがごんな内容かアンチョビには想像が付かず、思わずラブを鬼でも見るような目で見ていたが、ラブもまた面白くなさそうに頬を膨らませてアンチョビの事を睨み返していた。
「う~ん…どの学校も戦車道なんかやってると、春休みはおろか夏だろうが冬だろうが長期休暇なんて一切関係ない気がするけどなぁ……」
『…ごもっとも……』
思いがけず睨み合う事になったラブとアンチョビであったが、パンの入った袋片手に考え込んだまほの呟きを耳にした途端、ぐうの音も出ずにそれだけ言うのがやっとであった。
今の若い子達がどの程度ソフトフランスの事を認識しているかは知りませんが、
旅番組なんかで横須賀が出るとたまに紹介されたりしてますね。
横須賀も以前に比べると昔からやってるパン屋さんが大分減ってしまって、
総菜パンの類が好きな私としては寂しい限りです。
ラブには些か小さ過ぎるシュビムワーゲンを彼女が運転すると一体どうなるのかw