ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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何やらタイトルが意味深な感じですが、決してそっち方面の話じゃありませんw


第八話   初めての千代美ちゃん

 東京湾の入り口に位置する浦賀水道は世界屈指の交通量を誇る水上交通の要衝であり、首都東京への海の玄関口といえる存在であった。

 しかしその玄関を出入りする船舶の多さに対し浦賀水道の航行可能な航路は非常に狭く、更に加えて潮の流れも早い為に、周辺海域に於いても最大の難所という側面も併せ持っていた。

 その浦賀水道を見下ろす観音崎の山の上に建つ観音崎灯台は日本最古の洋式灯台であり、大正時代の地震で二度建て替えられ現在稼働中の三代目は、海上保安庁東京湾海上交通センター(東京マーチス)のレーダーサイトと共に今も変わらず行き交う船達を見守っている。

 

 

 

 

 

「ほわあぁぁぁ……ラブ…お前って本当にお姫様だったんだなぁ……」

 

「やめてよ……」

 

 

 大きく開け放たれた正面大扉から厳島の城に入城したアンチョビは、それ以上首を傾ければそのまま倒れ込んでしまう程仰け反って美しいアーチを描く高い天井を見上げながら、そこに描かれた荘厳な壁画の数々にやや間の抜けた感嘆の声を洩らしていた。

 更に彼女はその城で生まれ育ったラブがただのお金持ちのお嬢様などではなく、ラブこそが本物のプリンセスなのだと妙な方向に認識を新たにしたのだった。

 だが彼女が感嘆の声に次いで洩らした寝言のような呟きに、ラブは心底嫌そうに顔をしかめ美しく筋の通った鼻の頭に皺を寄せていた。

 彼女も自分の実家が普通ではないどころか只事ではない事は重々承知してはいたが、それでも親しい間柄のアンチョビから今更そんな事を言われるのは不本意なようだ。

 しかし東京湾の表玄関のランドマーク的存在の厳島本家の居城は、優美な外観のみならずその内部も築城した当時の当主のセンスの良さが随所に垣間見られ、アンチョビがそんな呟きを洩らしてしまうのも当然と言えば当然の事だった。

 

 

「いやそうは言うけどなぁ、こんな凄い光景を私は今まで見た事ないぞ…あ、いやちょっと待て……あの壁画は何処かで似たものを見た気がするんだが……」

 

 

 仰け反って天井を見上げたままの姿勢で器用に呟いていたアンチョビは、初めて見る光景のはずなのに頭上に描かれた壁画に既視感のような感覚を抱いていた。

 

 

「フム、それはおそらくノイシュヴァンシュタイン城の壁画だろう、きっとテレビやネットか何かで見たんじゃないか?」

 

「ノ、ノイバン何だって……?」

 

 

 それまで目の前の余りに現実からかけ離れた光景に圧倒され上の空だったアンチョビは、不意に聞こえたまほの声に漸くその身を起こしたのだった。

 

 

「ノイシュヴァンシュタインはドイツで最も有名で美しいと言われる城の名前なんだ、そしてあの壁に描かれているのは、そのノイシュヴァンシュタイン城と同じくワーグナーの楽劇、ニーベルングの指輪を題材とした壁画だよ」

 

「ニーベルングの指輪……?」

 

「あぁ、完成までに約26年を費やし、四部構成の全てを一時に上演しようとすると15時間は掛かる大作でな…通常は一部だけとか何日かに分けて演奏されるのが普通なんだ……いずれ私も機会があれば全四部通しの演奏を聴いてみたいと思っているんだ」

 

「26年…15時間……」

 

 

 ニーベルングの指輪に纏わる途方もない時間の話にアンチョビは絶句したが、同時に彼女はまほのドイツに係わる知識量の多さに感心もしていた。

 

 

『そう言えば西住は大学選抜戦の作戦名決める時も似たような知識を披露してたっけ……』

 

「この壁画に限らずこの城は色々と見所が多いぞ?城内だけではなく外の庭園も素晴らしいんだ、何しろ築城するに当たって当時の当主は本国から専門の技師や職人を多数呼び寄せたらしいからな」

 

「マジか……」

 

 

 その広さ故に彼女も全てを把握している訳ではないが、幼少期より遊びに来る度に城内を探検するのが何よりも楽しみであったまほは、昔を思い出したのか幼い頃によく見せたであろう屈託のない笑顔を見せアンチョビをドキリとさせたのだった。

 

 

「ま~そうは言っても所詮はレプリカ、本物を見たかったら本国へどうぞだわ~」

 

 

 この巨城を自宅と呼ぶのはやや難があるが文字通りこの城で生まれ育ったラブには、まほのように特に感慨に浸る事はなかった。

 

 

「城内の案内でしたら私が後程いくらでも致しますので、まずは亜梨亜様にご挨拶を……」

 

「あ…済みません雪緒さん……」

 

 

 城内の様子に驚くアンチョビについ饒舌になり蘊蓄を披露していたまほは、先を行っていた雪緒が振り返り穏やかに笑みを浮かべているのを目にすると慌ててペコリと頭を下げ、ラブとアンチョビを促しその背中を追い城内を進んで行ったのだった。

 

 

 

 

 

「まほちゃん、それに千代美さん、高校ご卒業おめでとう…本当に時間が経つのは早いものね……ついこの間まほちゃんが履帯初めを済ませたばかりだと思っていたのに……それがもう高校を卒業して大学生になるんですもの、私も年を取るはずだわ……」

 

「あ、亜梨亜おば様…その話は……」

 

「履帯初め?何だそりゃ……?」

 

「そ、それは後で説明するから……」

 

 

 先を行くラブと雪緒の後を追い二人が辿り着いたのは、本来ならば城主に謁見する為の空間である謁見の間に該当する大広間であったが、いくら城とはいえ厳島の城はあくまでも民間人の暮らす住居なので、本来の用途とは違い一般住宅の居間か応接間的な使われ方をしていた。

 しかしそこでまほとアンチョビの到着を待ち構えていた亜梨亜は、ラブと生き写しの美しい顔に満面の笑みを湛えながらの渾身の棒演技で二人を出迎えたが、そのあまりにもわざとらしい彼女の小芝居に隣に腰を下ろしていたラブはまるで埴輪のような表情をしていたのだった。

 

 

『亜梨亜ママ……』

 

 

 亜梨亜はアンチョビの実家を訪問した際、まほだけではなくアンチョビにも卒業祝いを渡すと共にそれを祝う言葉も掛けていたので、今ここで再びそれを口にするのは不自然極まりない事であった。

 今回のまほとアンチョビの横須賀訪問が、果たして亜梨亜としほどちらの主導で実行されたのかはラブも知らされていなかったが、日頃ビジネスの最前線で表情一つ変えずに交渉相手を手玉に取る亜梨亜が、もはや小学生の学芸会レベルの猿芝居を演じているのが彼女には信じられなかった。

 しかし彼女のそんな様子など気に掛けるでもなく、亜梨亜は笑みを絶やさず胸の前で手を組み独り芝居を続けていたのだった。

 

 

「今夜は極細やかだけどお祝いの席を設けさせているので、二人共ゆっくりして行ってね…あぁ、それにしてもこの城がこんなに賑やかなのは一体いつ以来かしら……?」

 

「えぇ本当に…メイド達も皆張り切って宴席の支度に励んでおりますわ……」

 

『雪緒ママまで……』

 

 

 そして更にメイド長の雪緒までが亜梨亜に同調するように芝居がかった仕草でそれに追従すると、ラブの表情は完全に絶望的なものへと変わって行った。

 

 

『やっぱり亜梨亜おば様がラブの本当のお母さんなんだよ…ああいうトコ怖い位そっくりだ……』

 

 

 だが目の前で展開する笑ってはいけない厳島家を見る羽目になった二人は、口にこそ出さないがラブとは違った感想をその胸に抱いていたようであった。

 過去ラブの似たような小芝居に散々振り回されて来た二人にとっては、亜梨亜の言動がラブに多大なる影響を及ぼして来た事を目の当たりにする出来事だったのだ。

 

 

 

 

 

「二人して何を始めるかと思えば……」

 

 

 何とか口元と腹筋が引き攣るのを耐えながら、二度目の高校卒業と進学の挨拶を済ませた二人と共にリビングとして使っている広間を後にしたラブは、シャワーでトレーニングの汗を流したであろうAP-Girlsが待つダイニングに向かう途中、信じられぬと何度も深い溜息を吐いていた。

 

 

「あ~そう言えば西住、さっき亜梨亜おば様が言っていた履帯初めってのは一体何だ?」

 

「う…それはだな……」

 

 

 今のラブに何か言ってもヤブヘビになるだけなので、それをスルーしたアンチョビは先程亜梨亜に挨拶を済ませた際、彼女が口にした履帯初めなる謎の言葉について改めて質問していた。

 しかし後で説明すると言ってその場では何も答えなかったまほは、その事についてアンチョビに問われると何処か恥ずかしそうに言葉に詰まったのだった。

 

 

「西住……?」

 

 

 その様子を不思議に思ったアンチョビが彼女の顔を覗き込むと、ラブと似たような深い溜息を吐いたまほは漸くその重い口を開いた。

 

 

「ええと安斎はお食い初めとかお箸初めって知ってるか……?」

 

「はぁ?お食い初め?…あぁ……え~と、確か、赤ちゃんが一生食べる事に困らないようにってやる儀式だったっけ……?」

 

 

 突然の質問返しにアンチョビはうろ覚えの記憶を頼りに答えたが、その答えにまほはさすがだなと小さく頷くと、要領を得ない顔をする彼女に履帯初めについて説明を始めた。

 

 

「履帯初めってのは云わばお食い初めの戦車道バージョンなんだよ…改めて言うまでもない事だが、西住流家元の我が家では代々女児が誕生するとだな、生後百日目に一生戦車と共に突き進むようにと母に抱かれて生まれて初めての戦車に乗る習わしがあるんだ……」

 

「それが履帯初めか…スゲぇな、さすが西住流……けど西住流家元の家ならそれ位の儀式があっても別に不思議じゃないと思うが、さっきから何をそんなに恥ずかしそうにするんだ……?」

 

「え?あ、そうか…別に恥ずかしい事は何も……」

 

 

 履帯初めなどという凡そ一般的ではない習わしにアンチョビが理解を示した事は驚きだったが、それ以上に彼女が自分の態度の変化を事細かに見ている事の方がまほにはより驚きであった。

 

 

「履帯初めそのものが恥ずかしい訳じゃなくて、その当時の自分の様子がまほは恥ずかしいのよ…だって関係者……まほの履帯初めに列席した西住と厳島両家の親族の間じゃ、今もその時の事は語り草らしいもの……」

 

「ラブお前!」

 

「隠したっていずれバレるわよ…だって当時の写真やら動画やら証拠は山程残ってるし……」

 

「お~い、オマエらさっきから何の話をしてるんだ……?」

 

 

 まほがそれ以上は聞かれないようどう話を逸らすか思案している処に、不意に口を挿んだラブがまほが何を恥ずかしがっているかをバラそうとすると、まほは慌ててその口を塞ごうとしていた。

 しかしそんな彼女を鬱陶しそうにしながら、ラブは自分も見た事のある写真や動画に残る当時のまほの様子を訳が解らんアンチョビに掻い摘んで説明してやるのだった。

 

 

「履帯初めで戦車に乗せると、大概はその音と振動で大泣きするらしいのよね…そりゃそうよ、生後百日の赤子だもの泣くに決まってるわ……大体それ用に減薬してあるといっても空砲もぶっ放すし、いくら耳栓して咽頭マイク被せてもあの衝撃で泣かない方がどうかしてるでしょ……」

 

「もしかして西住は違ったと……」

 

 

 ラブの口振りと自分より遥かに背の高いラブの口を塞ごうと足掻くまほの様子に、何となくオチの見えたアンチョビはそれでも念の為に話を続けるよう促した。

 

 

「千代美ももう察しが付いてるんでしょ?その通りよ…しほママに抱っこされてティーガーⅠのコマンダーキューポラに収まってるまほは泣きもしなけりゃ笑いもせず、履帯初めの儀の間終始千代美もよく知ってるまほ顔で動画なんかに映ってるのよ……」

 

「まほ顔ってなんだよ!?」

 

 

 何とかラブを黙らせようとしていたまほは自分の表情の事で意味不明な表現をされ、つい話を止めさせるのを忘れ抗議の声を上げていた。

 

 

「そんな事も解らないの……?アンタが試合中相手がどんな強敵だろうが眉一つ動かさずに、完膚なきまでに叩きのめす時の顔の事を言ってるのよ」

 

「あぁ、あの顔か…成程納得行った……」

 

「あ、あんざいぃぃぃ!」

 

 

 ラブの大雑把且つ情けの欠片もない説明だけであっさりと首を縦に振るアンチョビに、まほはショックを受けその目尻に涙を溜める。

 

 

「ナニ今更泣いてんのよ?バカじゃないの……?」

 

「お、オマエだって人の事言えないだろう!?」

 

「私の事は関係ないわ……」

 

 

 アンチョビに幼い処か赤子の頃の事をバラされたまほはガチギレ気味に声を荒げると、攻めらるばかりで終わるものかと反撃に出た。

 

 

「関係ない事あるか!オマエの履帯初めだって似たようなもんじゃないか!私だってラブの履帯初めの動画は何度も見てるんだからな!」

 

「チッ…余計な事を……」

 

 

 自分の事は棚に上げ小さく舌打ちするラブだったが、西住流だけではなく厳島流でも同様に履帯初めをやっている事にアンチョビは目を丸くしていた。

 

 

「厳島流でも履帯初めがあるのか……?」

 

「あぁ当然あるさ…何しろ西住と厳島は姉妹流派だからな……両家共に後継となる女児が誕生すれば我が事のように祝うのが常だし、それが直系ともなれば一層話は大きくなるさ」

 

「う~む…私にゃ想像も付かん話だな……」

 

 

 いくら高校戦車道での実績を買われ大学に特待生扱いで進学するとはいっても、一般家庭に生まれ育った彼女には二人の境遇が特殊過ぎていまいち頭が付いて行かないようだった。

 

 

「それでだ…私が見たラブの履帯初めの動画だが……麻梨亜おば様に抱かれたラブがな、とてもゼロ歳児とは思えぬ表情……あの試合中に見せる女狐の顔で辺り一帯を睥睨してるんだよ」

 

「あぁ……」

 

「そう、あの顔…あの目だよ……あの見た者が凍り付いて試合中であろうがその場でひれ伏しそうな狐の女王の目……あんな恐ろしい笑みを浮かべるゼロ歳児に比べれば、単に機嫌が悪くて仏頂面の私なんか可愛いものだと思わないか?」

 

「まほ…アンタそこまで言う……?」

 

 

 自分もまほの過去をアンチョビにバラした以上、ある程度の事を言われるのは覚悟していたようだったが、あまりの言い草にさすがのラブも声のトーンが目一杯下がっていた。

 

 

「なんだかなぁ……」

 

 

 アンチョビからすれば五十歩百歩でどっちこっち言わん話でしかなかったが、ラブとまほは互いに一歩も引かず竜虎のように睨み合い火花を散らしている。

 

 

『しかしアレだな…この二人こうしてるとやっぱり何処か似てるんだよな……』

 

 

 喧嘩する程仲が良いなどと言うが、その喧嘩の内容が内容なだけに仲裁する気も起らぬアンチョビは、睨み合う二人の横顔をぼんやりと眺めながらそんな事を考えていた。

 血縁とはいえ代を重ねる毎にその繋がりは薄まりつつあるが、それでも両家は血縁以上にその結束が強く、それが二人の顔立ちにも影響しているのではなどと何の根拠もない事だがアンチョビはふとそんな風に感じていたのだった。

 

 

『フム…血縁以上に仲が良いのと、一緒に暮らした事があるのも関係あるのかね……ん?そう言えばコイツらさっきからずっとラブに付いて回ってるけど、緩い顔している割に意外と無駄に吠えたりはしないな……以外にその辺の躾はしっかりしてるのか……』

 

 

 広間での亜梨亜の妙な小芝居の間も含め、夏妃と別れて以降ずっとラブの後を付いて回っている五頭のジャーマンシェパードは、時折鼻を鳴らしたりするものの一切無駄に吠える事もなく、今の今までアンチョビにその存在を意識させる事がなかった。

 現に今もラブとまほの足下に座り、いつ果てるとも知れない下らない姉妹の喧嘩を見物しながら、呑気に尻尾をパタパタさせてくつろいでいるようにしか見えなかったのだ。

 

 

「どれ…お~い、オマエらこっち来い……」

 

 

 何となくその様子に興味を引かれたアンチョビがその場に膝を突いて五頭に呼び掛けると、それまで特に彼女に何も反応を示さなかったジャーマンシェパード達は、耳をピクリとさせた後に立ち上がりトコトコと彼女の下へと歩み寄って来たのだった。

 

 

「おぉ、来た来たエライ人懐こいけどいいのかな…よしよし……う~む、さすが厳島家で暮らすだけあってオマエら毛並みがいいな……しかし何と言うかこの雰囲気、始めて会ったのに誰かに似てる気がするんだよなぁ……」

 

 

 寄って来た五頭を順繰りに撫でてやりながらも、アンチョビはその自分を取り囲むジャーマンシェパード達の緩さに既視感のようなものを感じ取っていたが、それが何に起因するものなのかは彼女にも特定する事が出来ずにいた。

 

 

「何だろうなぁこの感覚…ん?もっと撫でろってか?待て待て順番だ……」

 

 

 初対面の時から敵意を持たれていない事はアンチョビもある程度解ってはいたが、すっかり彼女の事が気に入ったのか次々すり寄って来る五頭に、困った奴らだと苦笑しながらもまんざらでもなさそうに相手をしてやるのだった。

 

 

「全くお前らは番犬のクセにそんなに人懐こくてどうする?あ~あ、私はジャーマンシェパードのへそ天なんて初めて見たぞぉ……?」

 

 

 とうとう一頭が彼女の前で仰向けに寝転がりお腹丸出しで撫でるようアピールを始めると、その緩さと間の抜けた動きにいよいよアンチョビのニヤニヤも止まらなかった。

 基本面倒見が良いアンチョビはじゃれるワンコどもを一頭毎に手を抜く事なく相手にしていたが、それはアンツィオ時代に彼女がペパロニやカルパッチョ達に見せていた姿勢そのままであり、その日々の態度が彼女が後輩達に慕われる最大の理由であった。

 しかしこの時アンチョビが最後まで気付く事がなかった既視感の正体こそ、姐さんと彼女を慕うアンツィオの後輩達の存在であり、構って欲しくてすり寄る様は拳を突き上げドゥーチェコールを繰り返す彼女達に酷似していたのだ。

 

 

「ったくしょうがない奴らだ…キリがないとはこの事だな……あ、いかんそうだった……」

 

 

 ワンコ達の腹を際限なくモフりながらも、途中で自分達がどこに行こうとしていたかを思い出したアンチョビは、まだ下らない事で言い争う二人に呆れつつも漸くそれを止めさせに掛かった。

 

 

「おい二人共、姉妹で仲が良いのも結構だが腹を空かせて待ってる奴らがいるんじゃないのか?」

 

「あ……」

 

「しまった……」

 

 

 彼女がチラリと掲げて見せた腕時計を見た二人は、それで大分時間が経過している事に気付き我に返ったが、アンチョビはそんな二人の様子に心底呆れた目を向け長い溜息を吐いたのだった。

 

 

「はぁ~、オマエらホントいい加減にしろよ?また凛々子辺りにネチネチと嫌味を言われても私は知らんからな……?」

 

「う゛……」

 

 

 白い目と共に突き付けられた辛辣な小言に、さすがのラブの思わず言葉に詰まる。

 

 

「と、とにかく行こう…お茶の用意ぐらいしないとマジ凛々子が煩いわ……」

 

 

 特にとぼけて誤魔化そうとした訳ではないが、アンチョビの指摘はラブにとって一番避けたい事態だったので、彼女はそれだけ言うとEsszimmer(エスツィマァ)に向けて足早に歩き始めていた。

 

 

 




様々な道の家元の家に生まれつくと、何かしら儀式のようなものを体験するのではないかと、履帯初めなんてものをでっち上げてみましたw
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