ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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どうにか投稿再開です……。

前回おあずけ喰らった反動がw


第十話   やっぱりお前はお姫様なんだよ

「やっぱりお前はお姫様じゃないか……」

 

「止めてよ……」

 

 

 その部屋に一歩足を踏み入れた途端ポカンと大口を開けて室内を見回したアンチョビは、天蓋付きのベッドを呆然と眺めながら呟きを洩らし、ラブはその一言に顔をしかめ不満を露にした。

 

 

 

 

 

「…うん、そうか……ああ解った……え?それは大丈夫だ忘れてないよ……」

 

 

 突然コロコロと古めかしい着信を知らせるベルの音を響かせた電話機から、まるで伝声管のような送話口の付いた受話器を取り上げたまほは、電話を掛けて来た相手と何やら話しながら実用一点張りなゴツイ軍用の腕時計で時間を確認していた。

 

 

「そうだな、まだ着替えの途中だから30分程したらそちらに行くよ…ああ、それじゃ後でな……」

 

 

 通話を終えたまほが受話器を本体のフックに戻すと、それに合わせて通話の終了を知らせるように控えめな音で内部のベルがチンと鳴った。

 

 

「今の電話ラブか?何だって……?」

 

「ああ、城内を案内する前に一旦ラブの部屋に来て欲しいそうだ」

 

「ふぅん…ラブの部屋にねぇ……」

 

 

 主にまほの思い出話としてラブの部屋の事は何度となく聞かされていたので、アンチョビも彼女がどれ程凄いのかに興味がある事を否定するつもりはなかった。

 とはいえ自分達に宛がわれた部屋ですら只事ではないのに、その部屋がこの城の中では普通の部屋だとつい今しがたまほから聞かされたばかりのアンチョビは、果たしてラブの部屋がどれ程のものなのかと想像してみたが、城のスケールがあまりに凄過ぎてそれこそ想像が付かないのであった。

 

 

「ん?あ…オイ西住……」

 

「何だ安斎?」

 

 

 想像するにあたって何かの参考なるかと室内を見回していたアンチョビであったが、たった今までまほが使っていたアンティークなダイヤル式の電話機に目を止めると、彼女がラブ相手に言っていた事を思い出しある事が気になり始めていた。

 

 

「お前は今30分程でそちらに行くと言っていたが、ラブの部屋は一体何処にあるんだ?アイツは確か私らと反対方向の階段を上がって行ったよな?城の規模を考えるとそれだけでもラブの部屋まで結構な距離があるように思えるんだが違うか……?」

 

「フム、そうだな…子供の頃と違うから多分10分位で行けるんじゃないかな……?」

 

「10分…だと……?」

 

 少し考えて自分達のいる部屋からラブの自室までの最短ルートを、子供の頃の記憶を頼りに頭の中で検索したまほは、何やら難しい顔をするアンチョビに答えたのだった。

 

 

「子供の頃ならもっと掛かったけどな……なに、近道も知ってるから大丈夫だよ」

 

 

 何故そんな顔をするんだと不思議そうなまほが、心配するなとばかりに右の拳で軽く胸を叩いて見せたが、その呑気さに却ってアンチョビの表情は一層険しくなった。

 

 

「近道を知ってるから大丈夫じゃない!移動だけで10分は掛かるってのに何が30分後だ!オマエがバカやったせいで私達はまだ肝心の着替えも済んでないんだぞ!」

 

「あ……」

 

「あ……、じゃねぇこのドアホウが!急げサッサと着替えるんだ!」

 

 

 これが戦車道や学業に係わる事だととことん時間厳守なクセに、プライベートでアンチョビが一緒となると気が緩むのか高頻度でやらかすまほに業を煮やしたアンチョビは、履き替える為に手にしていたキュロットスカートを彼女の顔面に力任せに叩き付けていた。

 

 

 

 

 

「全くオマエと言うヤツは……ええいキリキリ歩け!さっさとラブの部屋に案内せんか!」

 

「そ、そんなに怒るなよ…着いた、ここがラブの部屋だ……」

 

 

 ドタバタと特急で着替えを終えた二人は広げた荷物の片付けもそこそこに大急ぎで部屋を出ると、まほの案内でラブの部屋を目指し最短距離のコースを足早に進んでいた。

 幼い頃より遊びに来る度城内を探検して回り城の凡その構造は把握している上に、ラブから幾つか近道するのに便利な隠し通路も教わっていたので、彼女はどうにかギリギリでアンチョビと共に約束した時間内にラブの部屋の前に辿り着いたのだった。

 

 

『は~い、いいわ構わないから入っちゃって~』

 

 

 アンチョビに尻を叩かれながらラブの部屋の扉の前に立ったまほがノックをすると、即座に入室を促すラブの声が聞こえ、まほは長年使い込まれ独特の光沢を放つドアノブに手を掛け扉を開いた。

 

 

「ほわあぁぁぁ……」

 

「ま、また?今度は一体何よ……?」

 

 

 まほに続いてアンチョビがラブの部屋に入室するなり、城に到着した時と似たような脱力系の感嘆の声を再び上げ、二人を部屋に招き入れた彼女を不気味がらせた。

 しかし天蓋付きベッドに仰天し変な声を出したアンチョビは、そのまま見上げた天井に更に驚いたのかポカンと大きく口を開けたままラブの問いには応えなかった。

 口と同様に大きく見開かれた彼女の目が釘付けになった高い天井には、ドイツ発祥のメルヘンの原型と言われるフォルクスメルヘンを題材とした天井画が描かれ、その美しさと芸術性の高さはそれだけでも一見の価値があるものであった。

 そしてその天井画の美しさに圧倒されたアンチョビは、ただ天井を見上げた状態で彫像と化したかの如くその場に立ち尽くしていたいたのだ。

 

 

「千代美?お~い千代美!…何よ、反応がないわね……」

 

 

 そのおかしな反応とその後の様子に彼女が何を考えているのか凡その察しが付いてはいたが、変な声を上げたきりフリーズしたまま動きのないアンチョビに、ラブも若干戸惑いながら顔の前で手をヒラヒラさせたりしていた。

 

 

「フム……」

 

「あ…ラブ……お前何を──」

 

 

 どうしたものかと考える事暫し、何を思ったのかラブはアンチョビの背後に回り込むと、20㎝を超える身長差を埋めるべく大きく前に屈み込み、ムニュっと胸のたわわな緩衝材を押し付けながら肩越しに拘束するように腕を彼女の胸の前でクロスさせていた。

 彼女のその行動に驚いたまほが止めに入る間も有らばこそ、ラブは背後から拘束したアンチョビの耳元に美しくも艶めかしい唇を寄せほわっと熱い吐息を吹きかける。

 そしてラブは間髪を入れず、アンチョビの耳たぶを芝居がかった仕草と口調で『はむっ』と声に出しながら甘噛みすると、そのまま唇を離す事なく舌先で柔らかな耳たぶをペロリとひと舐めしたのだった。

 

 

「ちょ────っ!オマエ一体何を!?」

 

「うひひゃあ!?」

 

 

 突然の事にその暴挙を許してしまったまほが唖然とする目の前で、いきなり感じる処を責められたアンチョビは腰砕けでその場にへたり込みそうになり、クタっとしたヌイグルミのようにラブの腕に抱き抱えられていた。

 

 

「な、ななな!いきなり何しやがるこのバカタレが!」

 

「何ってアンタね…どっかの誰かさんが人の部屋に入るなり、奇声を上げたっきり呆けてたから正気に戻してあげたんじゃない……」

 

 

 耳ペロされて我に返ったアンチョビは這うようにラブの腕の中から逃れると、そのまま床の上にへたり込みペロリとやられた耳たぶを抑えながら真っ赤な顔で錯乱気味に叫んでいた。

 しかし怒鳴られたラブは全く動じた風でもなく、やや据わった目で床の上でアヒル座りになっているアンチョビを冷ややかに見下ろしていた。

 

 

「あ、あのなぁ!だからって人の耳を舐めるヤツがあるか!お前マジで何考えてやがるんだ!?」

 

 

 ラブの目付きにカチンと来たのかアンチョビもそれに負けじと語気も強く言い返したが、床にアヒル座りで耳を抑えたポーズのままでは、ラブを圧倒するような迫力などあろうはずもなくまるで反撃の効果など上がってはいなかった。

 

 

「で?訳の解んない声を出しといて、千代美は一体何が言いたかったのかしら?」

 

「そ、それはだな……」

 

 

 現にジトっとした目でねめつけられたアンチョビも怯んでしまい口籠ったが、ラブ相手にだんまりや誤魔化しが一切通用しないのは重々承知していたので、小さく深呼吸した彼女は再び城に到着した時と同じセリフを上目遣いで口にしていた。

 そして思っていた通りの事をアンチョビが言った事で、やっぱりねと眉をしかめたラブは不愉快そうにフンっとひとつ鼻を鳴らしたのだった。

 

 

「あ、あんざいの耳……」

 

「ん?どうした西住?」

 

 

 微妙に気まずい空気が漂う中、いつものまほであればどうしてよいか解らずただオロオロするだけだったが、この時は何やら様子が違い小声で呟きながらラブがペロリとやったアンチョビの耳たぶを凝視して、その只ならぬ雰囲気にアンチョビも怪訝そうな顔をしていた。

 だがそのアンチョビの声が呼び水となったのか、それまで彼女とラブがドタバタやっていた間独り呆然と立ち尽くしていたまほは、ゆらりと一歩を踏み出すといきなり覚醒したかのような素早い動きでアンチョビに襲い掛かった。

 

 

「おぉぉぉ──────っ!あんざいぃぃぃ──────っ!」

 

「うわっ!何だ急に!?」

 

 

 ラブの暴挙と急降下した機嫌の悪さに気を取られ一時的にその存在を忘れていたアンチョビは、まほが上げたケダモノの咆哮に驚き飛び上がり掛ける。

 そして何事かとドキドキする心臓の辺りを押さえながらアンチョビが振り返れば、その顔を一直線に伸びて来たまほの両手がガッシリと鷲掴みにしていた。

 

 

「な!何をする気だぁ!?」

 

 

 いきなり過ぎて訳が解らないアンチョビは、それども突然暴れ出した西住製重戦車まほ型に何とか抗おうと試みたが、元々が大馬力なまほだけに一旦リミッター(タガ)外れるととても彼女の手に負える相手ではなかった。

 血走った目で鼻息も荒々しく迫り来るまほの形相に、これはあかんヤツだと頭の何処かで認識しつつアンチョビも必死に抵抗を続けていた。

 

 

「何をする気だじゃない!ラブばっかズルいぞ!私にも安斎の耳たぶをペロペロさせろ!」

 

「はぁっ!?」

 

 

 しかしグイグイ来るまほを少しでも遠ざけるべく、アンチョビが渾身の力を籠め両手で彼女の顔を押し戻そうとすると、まほも抵抗するなとばかりにポンコツ極まりない叫びを上げる。

 そしてその有り得ないレベルのおバカな絶叫に、さすがのアンチョビも耳を疑い一瞬思考回路がフリーズし何も考えられなくなっていた。

 

 

「うわぁ……」

 

 

 一方そのカオスな状況を傍観していたラブが煩悩ダダ洩れなまほのポンコツ発言に、自らの行為が原因であるにも拘らず変態を見る目でドン引きすると、彼女の身勝手さにキレたアンチョビはまほの顔を押す腕に一層力を籠めながら怒声を上げていた。

 

 

「何がうわぁだこの大バカヤロウ!誰のせいでこんな事になったと思ってやがんだ!?オマエがいらん事するからコイツまでおかしくなったんだろうが!そこで呑気に見物してるヒマがあったらサッサとこの煩悩重戦車を何とかしろ!」

 

「え?わ、私ぃ!?」

 

 

 表向きドン引きしているように見えて、その実この後どうなるかと内心ワクテカで目を離せずにいたラブは、堪忍袋の緒がブチキレたアンチョビに責任を取るように言われ目を白黒させる。

 

 

「オイにしずみぃ!オマエもいい加減目を覚ませ!そもそもがオマエは今まで何を見てたんだ!?」

 

 

 事の発端であるラブをどやし付け返す刀でまほにも一太刀浴びせたアンチョビであったが、彼女が耳ペロされたという事以外は脳内に記録が残っていないまほには、どれだけ厳しい事を言っても一切効果は見られなかった。

 

 

「あんざいぃぃぃ──────!」

 

「うぎゃ──────────────────っ!」

 

 

 いくら抜きん出た才能の策士二人が揃っていたとしても、リミッターが外れた西住純正のポンコツ重戦車の暴走をそう簡単に止める事など出来はしないのであった。

 

 

 

 

 

「うぅ…最低だわ……」

 

「あぁ?何だって……?」

 

「…何でもない……」

 

 

 結局は馬力で勝るまほの吶喊を止める事が出来なかったラブは、防戦一方のアンチョビを援護する為に『それ女子としてどうなの?』と言われそうな手段を用いる羽目になり、状況の終了後嫌そうな顔で自己嫌悪の呟きを洩らしていた。

 しかしそれだけやってなお全てが後手に回り結果は手遅れとなり、性欲の重戦車と化したまほに蹂躙の限りを尽くされたアンチョビは、ぼやくラブをすっかり据わった目で睨み付けて黙らせた。

 そして我を忘れ煩悩のままに暴走した挙句、ラブの禁じ手とでも云うべき荒技で強制的に制動を掛けられたまほがどうしたかというと、窓辺のソファーに腰を下ろすアンチョビの足下に正座して極限まで小さくなっていた。

 

 

「で?わざわざ内線で私達を自分の部屋に呼び付けた理由は何だ……?」

 

 

 まほにペロペロどころかちゅ~ちゅ~までされて赤みを帯びた耳たぶを気にしつつ、すっかり乱れた髪を整えようとトレードマークの黒いリボンを解いていたアンチョビは、このバカ騒ぎの発端となったラブが自分の部屋に二人を招いた理由を問い質した。

 

 

「え?あぁソレよ、丁度今千代美が解いてるソレの事で呼んだのよ」

 

「ソレって…このリボンの事か……?」

 

「そう、そのリボンの事よ」

 

 

 城内を巡るだけのつもりで何も持たずにラブの部屋を訪れたアンチョビは、乱れた髪を手櫛で整えようとしていた手を止めどういう事かと首を傾げた。

 

 

「言ってる意味が良く解らんのだが、私のリボンが何だと言うのだ?」

 

「今日の千代美はいつもと違って髪をポニーに結って来たでしょ?」

 

「ああ、さすがに大学生にもなってツインテもどうかと思ってな…取り敢えずポニーに結って来たんだがそれがどうかしたか……?」

 

 

 リボンを解いた事で纏まりなく背中を覆い隠すように大きく波打つ髪を軽く揺らして見せたアンチョビは、ラブが何を言い出すのか注意深く耳を傾けていた。

 

 

「うん、千代美はいつもリボンで結ってるみたいだけど、忙しい時とかプライベートで部屋にいる時なんかはどうしてる?」

 

「忙しい時とかプライベートな時?そうだなぁ…簡単にヘアゴムだったり髪留めクリップやらバレッタなんか使ってるかな……?」

 

「で、パブリックな場では基本的にリボンって訳ね?」

 

「まあな……」

 

 

 何の話かと少し身構えていたアンチョビは、話の内容が完全にファッションの類に関するものである事を理解すると、肩に入っていた力を抜いて警戒も解いていた。

 

 

「そっか…でも実際公の場でもリボンじゃ煩わしい時ってあるんじゃない……?」

 

「う~ん、そうだなぁ…確かに試合中ツインテでリボンが解けかけたり、急な整備や修理をする時に面倒に思う事はあるかな……」

 

 

 暫く考えて記憶を遡ったアンチョビは何度かリボンが原因で困った事を思い出したが、果たしてそれがどう自室に呼び出した理由に結び付くのか想像が付かなかった。

 

 

「やっぱりそうよね……じゃあさ、良かったら千代美もこれを使ってみない?」

 

「ん?何だそれは……?」

 

 

 一向に話の見えないアンチョビに比べ満足の行く答えを得られたらしいラブは、何度か頷きながら傍らに予め用意しておいたらしい年代物の外国のお菓子か何かの空き缶を取り上げると、そのままアンチョビに差し出したのだった。

 

 

『なんかこの空き缶だけでもプレミアが付いてそうだな……』

 

 

 空き缶の塗装自体も退色しあちこち掠れたりしていたが、時代を感じさせる猫の絵柄は何処か芸術的でアンチョビはそれだけでも価値があるように感じていた。

 とはいえそんな生な話をラブの前でする訳にも行かず、彼女は差し出された空き缶を前にその中に何が隠れているのかを考えていたのだった。

 

 

「開けてみてよ」

 

「私がか……?」

 

 

 ラブの意図が読めないアンチョビが空き缶と彼女の顔を交互に見比べていると、そんなアンチョビの胸中を察したラブが先回りするように促していた。

 

 

「一体何が入ってるんだ…ん?これは……」

 

 

 ラブの表情を窺いながら空き缶の蓋を開いたアンチョビは、その中身を目にした途端これはどういう事かと目を丸くする。

 

 

「これなら割と楽に髪を纏められるし、日常的に使えて便利だけどどうかしら?」

 

 

 ラブの説明を聞きながらアンチョビが空き缶の中から取り上げたのは、直径が5㎝で幅が2㎝程の金属製のリングで、その表面は七宝焼きで鮮やかな厳島の青に仕上げられていた。

 

 

「これって昔からお前が使っている髪留めのリングだよな……?」

 

 

 窓から差し込む午後に陽射しにアンチョビがリングを掲げれば、厳島の象徴の青で焼き上げられた七宝のリングは陽光を受け鮮やかな輝きを放つ。

 

 

「よく覚えてるわねぇ…えぇそうよ、それこそ子供の頃髪を結えるようになった頃からずっと使ってる髪留めよ……まぁ使ってたのは私だけじゃなくて亜梨亜ママと麻梨亜ママも使ってたけどね」

 

「何だってぇ?じゃあこの髪留めは厳島家で代々使われて来た由緒ある物だったのか…あ、この髪留めよく見たら厳島の家紋の波千鳥の柄じゃないか……」

 

「由緒って言ったってねぇ…私から見てひいお婆様に当たる人が、亜梨亜ママと麻梨亜ママが生まれた時に舞い上がって大量に作らせた物らしいからね……」

 

「それでこんなに沢山あるのか……」

 

 

 ラブが物を大事に扱うのは仲間内ではよく知られている事なので、アンチョビもてっきり彼女がずっと一つの髪留めを使い続けていると思い込んでいた。

 だが実際には大量にある同じ物を彼女が使い回している事を今の話で理解したアンチョビは、やはり金持ちのやる事は何処か普通ではないと感じていたのだった。

 しかしまたここでそんな事を口にすればラブの機嫌を損ね話が振り出しに戻るので、彼女もそこから先を言葉にするのは自嘲していた。

 

 

「あ~それまだほんの一部…云わば氷山の一角でしかないからね~、確か倉庫に古い茶箱で後10箱分位はあったんじゃないかしら……?」

 

「あ゛……?」

 

「だから言ったでしょ?自分によく似た孫が双子で生まれて、舞い上がったひいお婆様が大量に作らせちゃったって…でね、見ての通りいっぱいあるし使い勝手もいいからから千代美にも使ってもらおうと思ったのよ……どう?丁度これから結おうとしてたんだし試しに使ってみない?」

 

 

 いくら孫の誕生に舞い上がったとはいえ作らせた数が尋常ではない事にアンチョビは絶句したが、見るからに高価そうな物を平気で他人に使わせようとするラブにも驚きを隠せなかった。

 

 

「いやいやいやちょっと待て!これは亜梨亜おば様達の誕生を祝って作られた物だろ?そんな物を私が使う訳にはいかないって!大体七宝焼きの髪留めリングなんて一体いくらするんだよ?こんな高価そうな物、私は怖くて気軽に使えないってば!」

 

「あのさ~、さっきも言ったけど大きな茶箱で10箱はあるのよ?それだけ大量生産させれば一個辺りの単価は相当安くなってるに決まってるじゃない…だから千代美にも遠慮なく使ってもらって構わないんだってば……大体私が子供の頃からドンドン使い倒しても一向に減らないんだから、千代美も少しは協力しなさいよね~」

 

「やっぱ金持ちのやる事はよく解らんわ…つ~かやっぱりお前はお姫様なんだよ……」

 

 

 只々呆れるしかない話に付いて行けず、アンチョビもこれ以上本音を隠すつもりはなかった。

 

 

 




結局全ての代行業務が終わったのが昨夜日付が変わる頃で、
今日は一日ダウンしてました……。

まほは日に日に手が付けられなくなるなぁw
しかしラブはそのまほを一体どんな手を使って止めたんでしょうねぇ?
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