ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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今回はLove GunとAP-Girlsの舞台裏的なお話です。


第十四話   Behind the scenes

「の゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!」

 

 

 天敵英子にモフられ硬直したまほは、地獄の底から響くような呻き声を上げた。

 後に彼女は折に触れこの時の事を、人生最大の恐ろしい出来事であったと述懐したという。

 

 

 

 

 

「ピーキーさで言ったらⅢ号の方が遥かに上ですよ?」

 

「なんだってぇ?」

 

「それは本当の事なのか?」

 

 

 まほの思い付きによるサプライズで招かれた英子を加えての晩餐の席。

 厳島家現当主である亜梨亜の傍にはラブとまほとアンチョビに加え、招待客である英子が腰を下ろす以外は特に席次に決まりはないらしく、搭乗する車両に関係なく好き勝手な席に着いてAP-Girlsのメンバー達も宴を楽しんでいた。

 但しその場にいる全員が戦車道に深く関わりがあるせいか、食事の合間に交わされる会話の殆どがそれに類する話ばかりでホストである亜梨亜も苦笑を隠せずにいた。

 そしてこの席にまほとアンチョビがいる以上、話は自然とエキシビションマッチで突如として復活し、彼女達の度肝を抜いたLove Gunに関するものになっていた。

 Love GunもAP-Girlsの頂点に君臨するラブの乗騎として復活する以上、ただ榴弾暴発事故で受けたダメージから回復させるだけに留まらず、異能の域に達した今の彼女の能力に合わせ大幅なチューンが施されているであろうというのが、まほとアンチョビの共通した見解だった。

 何しろ昨年の秋に富士で再会後に行われた六連戦に於いて、待望の実戦デビューを果たしたAP-Girlsが駆るⅢ号J型の化け物ぶりは只事ではなく、対戦した彼女達としてもそのⅢ号と同様に工科学校で生まれ変わったパンターG型のスペックは大いに気になる処であった。

 

 

「えぇ、20トン級中戦車のⅢ号と比べれば実質重戦車のパンターG型は遥かに余裕がありますから、そんなギリギリまで切り詰めたカリカリチューンをする必要もありませんね」

 

「そうなのか……」

 

 

 現在AP-Girlsのメンバー中では香子だけが新生Love Gunの操縦経験者であり、Ⅲ号の頃と全く変わらぬ激しい戦闘機動を見せた彼女に、まほとアンチョビの質問も集中しがちだった。

 

 

「余裕があるか…確かにそうかもしれんな……」

 

 

 新学期からはいよいよAP-Girlsもいよいよ二年生になるとはいえ、ラブ以外は学年満年齢で言えばまだ全員が十六歳だった。

 しかしながらその全員のたわわでぷるんぷるんな胸部装甲は、揃いも揃って搭乗しているⅢ号J型とは逆を行くマウスも裸足で逃げ出す超重戦車級で、年齢にそぐわぬそのサイズの前には大学選抜のアズミでさえ控えめに見えてしまうだろう。

 そんな彼女達がコンパクトなⅢ号J型に何故搭乗出来るのかは最大の謎だが、まほもチラリと覗いた事があるその車内は当然鮨詰め状態であった。

 香子の余裕があるという発言にふと以前に見たその光景を思い出したまほは、無意識のうちに新旧Love Gunの使い勝手の違いについて解説する顔女の胸元をジッと見ていた。

 

 

「ねぇまほ、アンタさっきから一体ドコ見てんのよ……?」

 

「え?あ!いやこれは……!」

 

 

 だがそんな彼女の行動をラブは見透かしていたらしく、香子の話に耳を傾けながらも彼女の胸を凝視するまほをやや据わった目で睨み付けていた。

 

 

「そ、それにしてもあれだ…香子君は慣れた様子で極自然にLove Gunを操っていたな……」

 

 

 ラブに睨まれハッとした顔で視線を逸らしたまほは、それを誤魔化そうとするかのようにエキシビションマッチで香子が見る者を唸らせる操縦技術で、Ⅲ号J型の頃と遜色ない戦闘機動を披露していた事を賞賛したのだった。

 

 

「あぁ…私は元々パンターの操縦経験がありますから……」

 

「成程そうだったのか…それでもやはり香子君の操縦技術は只事ではないと思うぞ……まぁこれに関してはAP-Girls全員に言える事だがな」

 

「ありがとうございます」

 

 

 香子もまほが戦車道選手としては超一流である事と嘘は付かない人間である事は解っていたので、彼女が自分の操縦技術を賞賛する言葉を素直に受け取っていた。

 しかしまほもアンチョビも全くその事実に気付いてはいなかったが、AP-Girlsのメンバーが自らの過去に付いて人前で言及したのはこの時が初めてであった。

 

 

「ふ~む、それにしてもだ…いくら操縦経験があるといってもだな、いきなりあのLove Gunに乗ってあそこまで暴れられるもんじゃないと思うぞ……?」

 

 

 例え過去に操縦経験があったとしてもそれはごく普通のパンターであったはずで、それとは丸っきり別物なじゃじゃ馬を乗りこなすのは難しいであろうとアンチョビは指摘する。

 

 

「ねぇ二人共、あなた達も初めてウチ(笠女)に滞在した時、宿舎のゲーセンにある戦車シミュレーターで遊んだんでしょ?」

 

「あ……」

 

「アレはやはりそういうシロモノだったか……」

 

 

 いくら厳島流家元のラブが指導しているとはいえ、いきなり乗り換えた戦車であれだけ派手に暴れられるものではないと考えていたアンチョビは、口を挿んだラブの遠回しなもの言いに漸く全てが繋がったと口元をへの字にして渋い顔をしたのだった。

 これまでにも戦車道ショップに置かれているようなアーケードゲーム機はいくつかは存在したが、それらは全て所詮は()()()の領域を抜け切れてはいない物でしかなかった。

 その点笠女学園艦のゲーセンに設置されていたゲーム機は、用意されている専用のオプションパーツで筐体のレイアウトや各種設定を変更すれば、戦車道で使用される殆どの戦車を再現出来る優れモノで、これまで存在した物とは別次元の非常にレベルの高い戦車シミュレーターであった。

 

 

「ねぇ千代美ちゃん、その戦車シミュレーターってな~に?」

 

 

 これまでⅢ号J型のLove Gunに搭乗していたメンバー達が、乗り換えたばかりのはずのパンターG型を自在に操っていた種が明かされると、まほもアンチョビもそれで漸く納得が行ったのであった。

 しかし二人のそんな様子にそれまで亜梨亜と共に苦笑していた英子は、ワイングラスを口に運ぶ手を止め興味に駆られるまま首を突っ込んでいた。

 

 

「英子姉さんが現役の頃はその手のゲームってありませんでしたか?」

 

「私は元々あんまゲーセンとか行かなかったからな~、けど何となくだけどそんなゲームがあったのは覚えてるわ」

 

 

 返って来た英子の答えが多分そうであろうと思っていた通りだったので、アンチョビは彼女にも解るように笠女滞在時にゲーセンで遊んだ戦車シミュレーターがどのような物であったかを、間違っていないか時折ラブの反応を見ながら解説していた。

 

 

「ほ~、装填手や通信手まで必要とは恐れ入るわね~」

 

「ハイ、複数台で組織的に戦う場合の連絡手段は無線に限定されていますし、砲撃も実戦同様一撃毎に次弾を装填しないと発砲出来ません」

 

「その砲撃にしてもシュトリヒ計算が出来ていないとてんで当たりませんし、操縦の方でもクラッチワークでしくじると実車さながらにエンストして、そのままエンジンが掛からなくなるなんて質の悪いアクシデントも隠れてましたね」

 

「ナニその無駄に芸の細かい裏設定は……」

 

 

 最早感心しているのか呆れているのかよく解らない表情の英子に、アンチョビとまほが交互に自分が体験したシミュレーターの徹底したリアルさを身振り手振りを交え説明すると、英子の顔からは感心の部分が消え呆れの色だけが残っていた。

 

 

「普通そこまでする?つーかたかがゲームでそこまでする意味ってあるの?大体そんなゲーム機…シミュレーターだっけ……?そのシミュレーターっておいくら万円するの?街中のゲーセンに置いてあるゲーム機だって相当するんでしょ……?」

 

「そんなの私に聞かれても……」

 

 

 何でどうしてと質問を乱発する英子にさすがのアンチョビも閉口気味だったが、それでも彼女の疑問は留まる事を知らなかった。

 

 

「そもそもが何でそんな採算の取れなそうなシロモノを作ったのかしら?さっきの話じゃ千代美ちゃん達も無料で遊んだみたいだし、そんなのそれこそ採算以前の問題じゃない…大体そこまで凝ったゲームだと一回遊ぶだけでも結構高く付くんじゃないの……?」

 

 

 ゲームに詳しくないとは言っても知識がまるっきりない訳ではないので、英子も昔の記憶を頼りに自分なりに凝り過ぎなゲームの料金を予想して複雑な顔をしていた。

 

 

「何の為って言われても、そりゃその為じゃないんですか……?」

 

 

 英子の疑問に答えながらアンチョビがその原因であるラブへと目を向ければ、その含みのある視線の意味が解っているはずの当人は、あからさまにとぼけた顔で黒森峰から事前に取り寄せていたらしいノンアルコールの麦ジュースで喉を潤していた。

 

 

「コイツは…お言葉ですが英子姉さん、シミュレーターの価格とプレイ料金……どちらも厳島なら問題にすらならないんじゃないですか?あのシミュレーター自体もグループのアミューズメント部門で造った物のようですしね……」

 

「そっか~、成程ね~」

 

 

 酔うには程遠いが適度にアルコールが回り始めらしい英子のお気楽な様子に、果たして彼女が自分の話を本当に理解しているのか疑いながら、アンチョビは多少ドキドキしつつ横目でチラリと亜梨亜の反応を盗み見たのだった。

 しかし彼女の目に映った亜梨亜の表情はさすが厳島の女帝と思わせる涼し気なもので、亜梨亜はその表情を崩す事なく黙ってワイングラスを傾けていた。

 

 

『この親子はホントにもう……』

 

 

 ラブの煮ても焼いても食えない性格は絶対にこの人の影響だと再認識したアンチョビは、手元のグラスに残っていた麦ジュースをグイっと一気に飲み干すと、辺り憚る事なく大きな溜息を吐いたのだった。

 

 

「まあその辺の事情はともかくとして、二両のLove Gunはそんなに扱い辛いのか……」

 

 

 アンチョビの態度と話の転がる方向に息苦しさを覚えたまほは、自分でも不自然だと自覚しながらも軌道修正を試みるように再び香子に話を振った。

 

 

「扱い辛いというのとは少し違いますね…操縦系統に限らずLove Gunの操作性はあらゆる面で非常にリニアですから、どんな局面であっても思い描いた通り動かす事が出来ます……但しそれは適切な操作が出来ていればの話で、少しでも雑な扱いをすれば全てがそのまま跳ね返って来ます……そういう意味ではLove Gunが乗り手を選ぶのは確かですね」

 

 

 それは見方を変えれば挑発とも取れる香子の発言であったが、現実問題限界に近い処までチューンされているであろう二両のLove Gunの操縦は、生半可なレベルの選手では到底無理であろう事はまほも充分に良く解っていた。

 故に彼女も丁寧に受け答えする香子の言葉の端々に、Love Gunの操縦手としての絶対的な自信がにじみ出ている事を感じ取っていたが、まほもそういう気の強さは嫌いではなかった。

 

 

「う~む…Love Gunに限らずAP-Girlsが使うⅢ号J型は、あの飛び抜けた機動力が最大の武器なのは確かだな……Ⅲ号自体はトータルバランスの取れた実によい戦車だとは思うが、あの火力と装甲で重戦車の相手は相当に大変だったはずだ……そういう意味でもあのカリカリチューンは方向性として正解だったんだと思う、もし私も同じ立場なら多分似たようなコンセプトでセッティングするだろうからな…けど実際ありゃあ香子の言うように相当乗り手を選ぶぞぉ……」

 

 

 火力と装甲に関しては一番苦労して来たアンチョビだけに彼女が言う事は実に説得力があったが、それを聞いていた香子はニッコリと満面の笑みを浮かべそれに応じていた。

 

 

「それならドゥーチェやペパ姉は何も問題なく、ウチのⅢ号乗りこなせるでしょ?特にドゥーチェなんか例え横転しても蹴っ飛ばして元に戻せるんだし、相当無茶やっても大丈夫だと思う」

 

「ば、馬鹿言え!ありゃコツがいるしカルロベローチェみたいな豆戦車だから出来るんだよ!」

 

 

 三保の松原で知られるアンツィオ高校の母港である清水で行われたAP-Girlsとの一戦に於いて、アンチョビは横転したカルロベローチェに飛び蹴りを入れて元に戻し観戦して者達を仰天させた前科があったが、その事を引き合いに出された彼女は頬を赤くして恥ずかしそうに反論していた。

 

 

「そうなの?私てっきり千代美はどんな戦車も飛び蹴りで引っ繰り返せるんだと思ってたのに」

 

「んなワケあるかぁ!」

 

 

 絶対ボケると思ったタイミングでボケるラブに、アンチョビも間髪入れずにツッコミを入れるがその程度でラブが堪えるはずもなく、ヘラヘラ笑う彼女の態度にアンチョビも多少イラっとしている。

 

 

「…ったく下らない事ばっか覚えてやがる……」

 

「まあまあ…それはともかくとしてだな、火力の方は仕方がないとしても装甲の方はもうちょっと何とかなったんじゃないのか……?」

 

「どういう事……?」

 

 

 ラブ相手に苛立つアンチョビを宥めつつ、まほはずっと感じていた疑問を丁度良いタイミングとばかりに持ち出していた。

 

 

「シュルツェンだよ、アレは本来対戦車ライフル対策で造られた物だが、使い方次第で結構効果があるんじゃないか?現にみほのⅣ号…あんこうでも役に立ってたようだし、お前だったらみほより遥かに上手く使えるんじゃないのか……?」

 

 

 実際シュルツェンは戦車砲の前ではペラペラな鉄板でしかなかったが、シュルツェンを装備して以降みほのあんこうは何度となく紙一重の場面でそのペラペラな鉄板に救われていたので、AP-Girlsが使用するⅢ号J型も同様以上の効果が得られるのではとまほは考えていたのだ。

 

 

『あ~……』

 

「な、何だどうした……?」

 

 

 ところが彼女がシュルツェンの使用を勧めた途端、それまで彼女達のやり取りを面白そうに聞いていたAP-Girlsが溜息と共に天を仰ぎ、それに驚いたまほは何事かとキョロキョロしてメンバー達の表情を窺っていた。

 

 

「シュルツェンね…それは私も考えたわ……」

 

「な、なら……」

 

 

 何かとんでもない地雷でも踏んだかと狼狽えるまほを軽く手で征し、ラブが何とも歯切れの悪い調子で話を切り出すと、まほも再度シュルツェンの装備を勧めようとした。

 

 

「今も言ったけどさ…私も一度はそれを考えたし、シュルツェン購入の申請書も提出したわ……」

 

「それじゃ何で……?」

 

 

 例えそれが首の皮一枚程度の効果でも、実戦の場に於いてはその首の皮一枚が勝敗を左右する確率が高い事を知っているまほは、その手が有効と知って手を打たず煮え切らない態度を取るラブと、それに同調するAP-Girlsの反応に納得が行かなかった。

 しかもラブが申請書迄出しながらも、これまで一度もAP-GirlsのⅢ号J型にシュルツェンが実装されなかったと知りまほは増々訳が解らないと首を捻った。

 

 

「それはホラ、私達は試合以外のパフォーマンスでも戦車を使うじゃない……?」

 

「はぁ?お前一体何を言ってるんだ?」

 

「もしかして観閲式のアレか……?」

 

 

 まほにしてみれば話の関連性が見えずラブが何を言い出したのか全く理解出来なかったが、アンチョビはパフォーマンスと聞いて即座にAP-Girlsのド派手なデビューを思い出していた。

 

 

「は?観閲式が何だって……?」

 

「西住…お前もうコイツら(AP-Girls)のド派手なデビューを忘れたのか……?」

 

「AP-Girlsのデビュー?観閲式…あぁ、アレの事か……」

 

 

 最初は口を挿んだアンチョビが何を言っているか解らず考え込んだまほであったが、富士を背にラブと共にこれまで見た事もないパフォーマンスを繰り広げたAP-Girlsの姿を思い出し、それで漸くラブが何を言い出したのか理解した様子だった。

 

 

「それでラブよ、そのパフォーマンスとシュルツェンに一体何の関係があるんだ……?」

 

 

 とは言え彼女にはまだその両者の関連性が見えず何とも曖昧な顔をしていたが、その点に関してはアンチョビも同じらしく似たような表情で考え込んでいた。

 

 

「…私もまさかそんな事になるとは思わなかったから普通に申請した訳だけどさ、AP-Girlsの記録映像やライブの中継を担当してくれてる映像学科の方から待ったが掛かったのよ……」

 

「何だそりゃ……?」

 

 

 ところが先を促されラブが重い口を開くと、考えていた以上に話の方向が明後日の方を向いていたので、まほもアンチョビもその表情は一変して間の抜けたものになっていた。

 

 

「だから今言った通りよ…私達は戦車を使ったパフォーマンスをする時、大概ハッチは全開にしてるじゃない?でもシュルツェンを装備するとサイドハッチなんかがその陰に隠れちゃって、大幅に撮影に支障をきたすから止めてくれって言われたのよ……」

 

「オイちょっと待て……」

 

 

 漸くラブが何を言っているか理解する事は出来たが、その内容があまりにも有り得なさ過ぎて二人の頭の中にはクエスチョンマークが溢れていた。

 それもそのはずで、戦車道で使用するのが第一前提な戦車の装備が、それ以外の理由で申請を却下されるなど聞いた事もなく、ましてそれが芸能活動が原因などと言われてハイそうですかと納得出来るはずもなく、その言語道断な事態がまかり通る事自体が完全に二人の理解の範疇を超えていたのだ。

 

 

「そういう訳でシュルツェンを装備する計画はあえなく頓挫、結局AP-GirlsのⅢ号J型はあのままの姿で戦う事になったのよ……」

 

「そんな馬鹿な……」

 

「ありえねぇ……」

 

 

 アンチョビも主に予算的な問題で必要な装備が調達出来ず、幾度涙を呑んだか解らなかった。

 そしてまほもまた黒森峰の強者としての体面が災いし、新規導入を目論んだ機材の購入が見送られた経験が少なくはなかった。

 しかしここまで信じ難い理由で使用する戦車の強化が却下された話など聞いた事がなく、衝撃の事実を前に二人は揃って頭を抱えていた。

 

 

「いやいや、事実は小説より奇なりとは言うが、これが世に知れたらまた騒がれそうですなぁ」

 

「英子ねぇさ~ん……」

 

 

 最高の料理と最高の酒にすっかりご機嫌な英子は、うっかり他言出来ない類の裏話を無責任に笑い飛ばしアンチョビに情けない顔をさせる。

 

 

「亜梨亜おば様……?」

 

「本校は生徒の自主性を重視していますから、細かな事に上からあれこれ口出しするつもりはありません…それにその程度の装備変更で勝敗が左右されるようでは、恋も家元としてまだまだという事でしょう……ですがその辺が課題という事は本人が一番解っているはずですから、それに関しても私から特に何か言う事はありません」

 

「だってさ……」

 

「ラブ……」

 

 

 年齢的に考えればこれ程べったりな母娘関係も今時珍しいかもしれないが、それ以外の面では亜梨亜もラブにはとことんシビアに接する事が多く、その一端を垣間見たまほも驚き絶句していた。

 だが当人達にとってはこれが日常であり、ラブも特に動じる事なく肩を竦めるだけであった。

 

 

 




AP-Girlsの使用するⅢ号J型がシュルツェンを装備出来ない理由は、
彼女達をⅢ号J型に乗せると決めた時ほぼ同時に思い付いていたネタなんですよね。
ゲーセンのシミュレーターにもこんな役割があった訳ですが、
厳島の事だから多分それだけで終わらせないんじゃないかなw
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