大人数でアレコレ買うと必ず地雷が潜んでいます……。
仕事の出先で腰をやられ病院送りとなりそのまま入院する羽目に……。
幸い手術は回避出来たのですが、このコロナ禍の入院は生きた心地がしませんね。
まだ仕事は当面休み休み指示だけ出すとして、投稿は何とか今までのペースで再開しようと思っています。
「何で折角のお休みのお昼ごはんがよりにもよってコレなのよ……」
ラブの通う笠女が間借りしているベースの中、Main Street Food Courtというそのまんまなネーミングのフードコートの一画、軍服や迷彩作業服姿の米兵達に紛れて席に着いたラブは、不満タラタラでテーブル上に所狭しと並べられたジャンクフードに溜息を吐いていた。
育ちの良い割に日頃食べ物の事であまり文句を言わないラブだったが、自分なりに考えていた休日プランが全て流れた上に、ランチまでもがまさかのベースのフードコートになってしまいさすがに気持ちが抑えられなかったようだ。
「ったくもう…私は小さい頃アメリカに居たからある程度耐性が付いてるけど、慣れないアンタ達は気を付けて食べないと撃沈するわよ……?」
アメリカ暮らしもそれなりに長く、アメリカンな味付けのジャンクフードにもある程度慣れているラブと違い、ジャパニーズなジャンクの味しか知らないはずのアンチョビとまほにメニューを選ぶ前に一応警告したが、それでもテーブル上には幾つか地雷メニューが紛れていたので、もの珍し気に買い込んだジャンクフードを検分する二人に彼女は改めて注意を促した。
「言う程酷そうには見えないが…初めて笠女で世話になった時、
「…その凄いの意味を少しは考えなさいよ……」
入浴後すっかり予定が狂い昼食をどうしたものかと考えていたラブに、普段カレー以外では飲食に関して意見を言わないまほが行きたい所があると言い出し、珍しい事もあるものだと興味を示したラブは気軽にその提案を受け入れ今になってそれを後悔していたのだ。
「それに千代美、アンタも何でピザ頼んだのよ?アンツィオ舌にサンダース味は合わないんじゃなかったの……?」
「モノは試しというか後学の為に一応……」
「千代美…千代美は確か前にアメリカのピザはピザに非ずとか言ってたわよね……?」
それは彼女達が再会を果たすより以前の話だったが、アンチョビが仲間達に本格的なピザを振舞った際、ケイが隠し持っていたタバスコをいきなりピザ全体にぶっかけてアンチョビを激怒させた事があったらしく、以来彼女は坊主憎けりゃ袈裟まで憎いでアメリカンピザとイタリアンピザは全く別の食べ物であると言い切り、露骨に毛嫌いする傾向にあったという。
「いや、アンツィオはもう卒業したし、今後の為に少し見聞を広めておこうかと思ってな……」
『…後学の為?何が見聞を広めておこうよ……そもそもアンツィオ名物の鉄板ナポリタンだって千代美が持ち込んだB級グルメの名古屋飯で、本来のイタリアンとは程遠いって聞いたわよ……?』
アメリカ暮らしが長い分国内のその辺の事情に疎いラブだったが、鉄板ナポリタンの謂れはカルパッチョとペパロニから聞かされていたので、今まで頑なにアメリカのピザを否定していたポリシーは何処へ行ったと目を逸らすアンチョビをジロリと睨むラブだった。
「な、なぁ…冷めないうちに食べないか……?」
事の発端は自分がここに来たいと言ったのが原因なだけに、機嫌の悪いラブに恐れをなしたまほは何とが状況を打開しようとおっかなびっくり口を挿んだ。
「確かにまほの言う通りね…冷めると一層ろくでもない事になるモノもいくつかあるし、さっさと食べるに越した事はないわ……けどホント気を付けて食べなさい、ちょっとでも合わないと思ったら無理しないで素直にギブアップする事、いいわね……?」
「わ、解った……」
諦め半分なドスの効いたラブの脅し文句じみた警告に、そんなに凄いのかと息を呑んだまほは震える声で短く答えるのがやっとだった。
「あのアイスクリーム凄い色してるな…一体どんな味なんだろう……?」
「そういうチャレンジャーなシロモノに手を出そうとするのは止しなさいよ……」
事前にラブが忠告した事もありあまりにとんでもないメニューは回避していたが、それでもいざ実際に食べてみるとまほもアンチョビも箸の進まない料理があり、ラブはそれ見た事かと溜息を吐きながらそれらの料理を少しづつ消費していた。
にも拘らずまほは席の傍にあるドーナツ店の、冷蔵庫内の原色バリバリなアイスクリームに興味を示し、その命知らずな好奇心でラブに顔をしかめさせたのだった。
「千代美頼んだわよ?コイツはこの通りカレー以外は食べ物に無頓着だし、普段着る物も放っとくとそれこそ学校のジャージとかだけで済まそうとするんだから……」
「だ、誰がそんな事を……」
「エリカさんから聞いた…今までその辺はエリカさんが面倒見ててくれたから幸い大恥を掻かなくて済んでたけど、大学行ったら千代美が気を付けないとコイツ絶対やらかすわよ……?」
「そんな事は──」
「解った気を付けよう……」
「ぐっ……」
エリカ大好きなラブは結構な頻度で彼女と連絡を取っていたので、まほが過去にやらかした失態の殆どをほぼ正確に把握していた。
そしてアンチョビもまたまほが戦車道以外の事となると恐ろしくもの知らずで、それ故にトンチンカンな言動が多い事は最近一緒に居る時間も増え充分に把握していた。
なので彼女もラブの忠告には素直に従い、ぐうの音も出ないまほはそのまま押し黙った。
「なぁラブ…着る物と言えばだがな、本当にコレを貰ってもいいのか……?」
「何よ千代美、またその話~?」
まほの衣食に対する無頓着さについて話すうちに、アンチョビが再び入学祝と称しラブが用意していた着替えについて話しを蒸し返すと、ラブは聞く耳持たぬとばかり露骨に面倒そうな顔をする。
「そうは言うけどオマエ、私だって目立たないようにしていた中学の頃と違って多少は身嗜みに気を使っているし、物の価値が解らない程バカじゃないつもりだ…私のスカジャンも西住のライダースのレザージャケットもLove's Berryってブランドのオリジナルだろ?それにインナーやそれ以外の全てが同じブランドの物だし、私らの小遣い程度じゃおいそれと手が出せる代物じゃないはずだ……」
入浴後用意されていた衣服を選ぶうちに、それらの物がどれも気軽に手が出せる程安い物ではない事にアンチョビは気が付いていた。
「だ~か~ら~、私がいいって言ってんだからい~の!」
「あのな…オイ西住、オマエも何とか言えよ……」
何を言ってもラブが折れる事はなく、かといってこれ以上流されるのもどうかと考えたアンチョビは、多分役に立たないだろうと解ってはいてもすがる思いでまほに援護を求めた。
「フ~ム、炒飯は英語だとフライドライスと呼ぶのか…そして焼きそばはヌードルねぇ、けどこれは果たして本当に焼きそばでいいのか……?」
「ダメだこりゃ……」
ラブが白と言えば例えそれが何色だろうと白になってしまうまほにしてみると、アンチョビが困る理由など全然理解出来ず、彼女は一人中華の店で買い込んだメニューの検分に没頭していた。
「もういいかしら?」
「……」
まほが全く役に立たない事を知り憮然とするアンチョビに、ラブは勝ち誇るでもなく涼しい顔でシレっとダメを押すのだった。
「…目立つなコレ……」
ガックリと項垂れたアンチョビは服に合わせてラブがチョイスした、可愛いデザインだが派手な色のトレッキングシューズに溜息交じりの呟きを洩らした。
「ああそうだ、アンタ達とは近いうちにまた顔を合わせる事になると思うわ」
「何だって?そりゃあ一体どういう意味だ……?」
どうにか地雷雑じりのメニューを完食し、ラブの選んだ当たり障りのないフレーバーのアイスで一息吐いていると、彼女は何かのついでのように何とも曖昧な事を言い出した。
「今言った通りよ?」
「だから──」
「アンタ達も大学が始まればじきに大学選抜に召喚されるでしょ?そうなると訓練の時に嫌でも顔を合わせる事になるって言ってるのよ」
『ハァ!?』
当然それだけでは彼女が何を言い出したのかさっぱり解らないので、アンチョビは重ねて何を言っているのかと問い詰めようとしたが、それを遮るようにラブは二人の今後の事をまるで決定事項のように語り始めた。
「大学選抜ぅ?増々何を言ってるか解らんぞ……?選抜チーム召喚ってオマエな、西住はともかく私程度じゃそうそうお声は掛からんだろ?」
「無駄な謙遜ね…去年あれだけ目立っといてそんな訳ないでしょ……?」
大洗と大学選抜の一戦はそれに至った経緯だけではなく参戦した各校の選手にも注目が集まり、特に隊長格の選手達は卒業も近く注目度は段違いに高かった。
大学選抜も四年生が抜ければ当然欠員がかなりのが出来る訳で、先々を見越して新一年生の中でも有望株を招集するのは当然の事であった。
「確かに安斎は謙遜が過ぎると思う、だがそれと顔を合わせる事に何の関係がある……?」
まほもアンチョビが自らを過小評価し過ぎると常々感じていたようで、ラブの彼女に対するやや辛辣な苦言には同調して見せたが、それでも大学選抜での顔合わせについては何を言っているのか理解出来ず、どこか探るような目をラブに向けていた。
「去年の大洗と大学選抜の試合はほんの切っ掛けに過ぎないけど、あの試合を契機に日本戦車道が抱える問題点を改善する動きが強くなったわ…大学選抜チームの指導に主だった流派の家元が持ち回りで指導に入るのもその一環よ……」
「オイちょっと待て…まさかオマエ……」
黒森峰のように西住流のお膝元の学校がその影響下にあるのとは違い、選抜チームが長年一つの流派のみの監督の下活動を続けるのはかなり問題のある状況であった。
その状況を重く見た家元会議は、島田流家元の千代の了承を取った上で複数の流派の家元による選抜チームへの指導を採択し、新年度からより強固なチーム作りの為に動き出す事が決定していた。
「ええ、私も…厳島流もその枠の中に入っているわ……多分何回かは指導員として顔を出す事になるからその事だけは覚えておいて頂戴……」
「そ、そうか…解った……」
「けど大丈夫なのか?全国大会だって控えてるし、それ以外でも相当忙しいだろうに……」
まだ高校生でありながら厳島流家元を襲名したラブは、復帰を果たした家元会議において最低限ながら課される義務を果たしていた。
しかし笠女戦車道チームの隊長の職務とAP-Girlsのリーダーとしての責任に加え、小なりとはいえ一流派の看板まで背負う彼女の日常の忙しさは只事ではなく、更に家元としての仕事が増える事に二人は不安を覚えるのだった。
「その辺はしほママや他の先生方が配慮してくれてるから大丈夫よ、課されるノルマも最低限に抑えて貰っているし、学生としての本分に支障が出ないよう日程も調整するってしほママが言ってたから大丈夫よ」
「ノルマ……?」
多忙を極めるラブの身を案じるだけに、まだ高校生の彼女に家元会議からノルマが課されている事にアンチョビはいい顔をしない。
「家元会議に加盟している以上、いくつかこなさなければならない仕事はあるわ…まぁこれは会議で発言権を確保する為に必要な対価のようなものね……」
「対価か…だがお前の話しぶりからすると、どうやらその対価を払っていない流派もあるように聞こえるがその辺はどうなんだ……?」
「あ~もう、これだから千代美相手は油断出来ないわね…えぇその通り、義務は果たさず権利だけは声高に要求する連中は確かに存在するわ……けどそういう類の人間は何処にでもいるし、一々相手をしていたらきりがないから何か言って来ても受け流してるから問題ないわよ?」
相変らず鋭い処を突くアンチョビに閉口しながら、ラブも何でもない事のように軽い口調で事情を説明するが二人はまだ何処か不安が拭えないようだった。
「私もお母様から色々聞いてはいるが、最近は六芒会とか問題のある流派が利権が絡むと徒党を組むそうじゃないか、そんな連中と一緒じゃ指導処じゃないんじゃないのか?実力が伴わないのに年ばっか食った連中がラブの指導の邪魔をする可能性もあるぞ……?」
まほも何かと評判の良くない六芒会の名を引き合いに出し、年若い家元であるラブの才能に嫉妬した輩が、彼女の足を引っ張って来る可能性を仄めかす。
「あの人達もさすがにそこまで馬鹿じゃないと思うけど……そもそも私が指導に入る時は、多分しほママや島田先生が一緒に来るんじゃないかしら?」
『あ゛ぁ゛……』
恐らくは下手な横槍が入らぬよう事前に裏で取り決めてあったようで、ラブが指導に入る際はしほや千代に加え、家元会議の重鎮たる坂東相模流家元
果たしてラブがそこまで裏の事情を把握しているかは不明だが、それを聞いた二人は彼女の背後に金剛力士の阿形と吽形宜しく睨みを利かせるしほと千代の姿を見た気がして、同時に地の底から湧き出るような苦く低い呻き声を洩らしていた。
「何て顔してんのよ……ま、私が行く以上ギッチギッチしごいてやるから楽しみにしてなさい♪」
AP-Girlsの今の実力と彼女達の話しぶりから察するにラブの鬼教官ぶりは相当なもので、アンチョビとまほには彼女をよく知らない大学選抜の先輩達が、死んだ方がマシと思うような演習で地獄に叩き込まれる死屍累々な予感しかしなかった。
「あ~成程そういう事、納得行ったわ~」
「ほえ?あ、
大学進学後の進路上に特大サイズの地雷が敷設されていると知り、まほとアンチョビが浮かぬ顔でデザートのアイスを突いていると、ラブの背後に立った女性将校が彼女の背中を見て昼食のトレイ片手に器用に肩を竦めながら苦笑していた。
するとその声に驚いて振り返ったラブは、そのまま椅子を蹴って立ち上がりハイテンションに女性将校の名を呼びながら抱き着いたのだった。
「お、おいラブ……」
「うん?確かあの人は…しかしラブに抱き着かれてトレイを落としもしないとは、やはりあの人も只者じゃないな……」
突然のラブの奇行に驚く二人だったが、ラブが嬉しそうに抱き着いた女性将校には彼女達も見覚えがあった。
ベースに間借りする笠女と合衆国海軍の関係が円滑に回るよう、その間を取り持つ重要な役目を担う調整役、連絡将校アビゲイル・ガーネット中尉とはベースに初上陸した際に対面していたので二人もその顔は覚えていたのだ。
「さっきポンポン砲声が聞こえてたのはあなただったのね?けど春休みでみんな揃って家に帰ってたんじゃなかったの?」
「え~っと…色々と事情がありまして……」
「事情?ま、いいわ……それより表の駐車場のアレ、ラブが乗って来たんでしょ?」
牡蠣のように張り付いたラブを慣れた手付きで引っぺがしたアビーは、彼女を椅子に座らせながら何故ここにいるのか聞いた後に、窓の外の駐車場を指差しながら何かを確認した。
「うん、まぁそうだけど…けどアレは私のじゃなくて亜梨亜ママの車よ……学園艦からこっちに来るのに足がなかったから亜梨亜ママから借りて来たの……」
確認するように聞く割に断定的だったので、ラブは何処か歯切れの悪い口調で言い訳するように車の所有者は亜梨亜である事を強調する。
「そう…やっぱり亜梨亜様のコレクションだったか……でもまぁそうじゃなければ、本国から遠いこの日本であれ程のコンデションはそうそう維持出来ないものね~」
するとアビーはさもありなんと何度も頷いてから、ポカンとするアンチョビとまほに気さくな態度でにっこりと微笑んで見せた。
「まほさんと千代美さんでしたね、ベースにようこそ♪」
「え…あ、どうも……」
「お、お邪魔してます……」
いきなりの事で展開に付いて行けない二人はシドロモドロだが、アビーは気にする事なくそれぞれと空いた右手で握手を交わすと、そのままラブの座っていた席の隣に腰を下ろした。
「おいラブよ…車がどうのと言ってたけど、さっきから一体何の話をしているんだ……?」
どうやらアビーが自分達の乗って来た車について何か言っている事は理解出来たが、二人のやり取りの意味まで理解出来ないアンチョビは自分達にも解るよう説明しろと要求していた。
「あ~、日本じゃアメリカの車ってイマイチ人気がないんだったわね……」
「古いフォードなのは解りますが、そんなに凄い車なのですか……?」
巨大な学園艦の艦内から同じく広いベース内を移動するには、徒歩やラブのケッテンクラートでは移動に時間が掛かる為に、ラブは亜梨亜に連絡を付けて一台の車を借り受けていた。
その育ち故にドイツ車ならある程度区別の付くまほだったが、相当古そうなアメ車となるとさすがにメーカー程度しか見当が付かなかった。
「さすがにあなた達位の年齢だと余程興味がないと知らないのも当然よね…ええ、確かにあれはフォードの車で間違いないわ……Ford MUSTANG Mach 1、それがあの車の名前よ」
「マスタング…マック1ですか……?」
マスタングという名ははまほも聞き覚えがあったが細かい事は何も知らないので、曖昧な顔でアビーの極自然な発音をたどたどしく復唱していた。
「日本じゃマック1じゃなくてマッハ1って呼ばれてるわね……ドイツ語由来の外来語だから、英語だとそういう読み方になるのよ~」
「そうなのか…けど亜梨亜おば様の車って事はやっぱり凄い車なんだろうな……」
ラブの補足で解ったような解らないような顔をするまほは、それでも亜梨亜が所有する車である以上は普通ではない事だけは予想が付いた。
「確かに普通じゃないわね、7リッターの429CJを積んだMach 1が製造されたのはたったの一年だけだし、生産台数も1,000台を僅かに超える程度だもの」
「1,000台ですか……」
ラブのシュビムワーゲンのような特殊車両と違い市販車の生産台数としては少ないのだろうが、数字的には充分多い気がするまほには言う程少ないのかどうにもピンと来ない。
「ちょっと待って下さい、今7リッターと言いましたよね?オイ西住、お前の乗っていたティーガーⅠのエンジンは何リッターだった?」
「え…あぁ、マイバッハHL210P45は21リッターだがそれがどうした……?」
「そうか、私が乗ってたP40は…それはまぁいいや……いくらデカいっていったってな、乗用車のエンジンで7リッターって凄くないか……?」
生産台数で驚くまほと違い火力や装甲だけではなくパワー面でも苦労したアンチョビは、Mach 1に搭載される429CJの排気量の大きさに顔色を変えていた。
「コブラジェットはオイルショックやら色々と規制が掛けられるより前の世代のエンジンだからね、でも当時は8リッタークラスのエンジンもあったのよ」
「さすがに詳しいな…けど8リッターってまたとんでもないな……でもそんな排気量だとボンネットの中はエンジンしか入ってないんじゃないのか……?」
顔色を変えるアンチョビにラブは補足するように説明を加えたが、日本車では考えられない数字を前にアンチョビは最早呆れるしか選択肢がなかった。
「いくら何でもそこまでデカくないわよ…まぁ近いものがある事は認めるけどね……」
いつもならそんな訳あるかと速攻でツッコんで終わりになる処だったが、相手が全盛期のV8アメリカンのモンスターエンジンとなるとラブもアンチョビの戯言を全否定出来なかった。
何しろ1971年に生まれたフォード産の野生馬は排気ガス規制を受ける前の最後のモデルであり、特に429CJコブラジェットと呼ばれる7リッターエンジンを搭載したMach 1は、歴代のマスタングの中でも最強のモデルであったのだ。
「マジでとんでもねぇ車だったんだな……」
正直纏まったお金がなければ維持するのが難しい車の事なので、何処か後ろめたさを感じたラブがMach 1が生まれた当時の時代背景なども含めボソボソと説明すると、自分達が乗って来たのが単なるクラシックカーではない事を知ったアンチョビは呆れたようにラブの顔を見ていた。
「つ~かさ、よくそんなとんでもない車に免許取りたてで乗る気になるな?いや、それ以前にお前は色々クセのありそうな車を極普通に運転してたよな……?」
「だって…仮免取った後亜梨亜ママに時間がある時は殆ど毎晩運転の練習させられてたもん……」
『何やってんだあの人は……』
恐らくは国際Aクラスのライセンス持ちの重度のカーマニアで、黒森峰に在籍した当時は夜叉姫と恐れられた亜梨亜が果たしてラブにどんな練習をさせたかは想像も付かないが、それが相当に非常識なものであろう事だけは想像出来たアンチョビとまほは、やはり亜梨亜はラブの母であり色々と普通ではないと再認識したのだった。
ラブが大学選抜の指導に入ると、バミューダの三人が真っ先に地獄を見そうw
憧れのラブの登場で愛里寿もどんな反応を示すかも気になる処です。
またしても登場した亜梨亜のコレクションの一画、
ぶっちゃけ彼女の車趣味はまんま私の趣味なんですけどねww
それにしても腰が痛い……。