ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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ご無沙汰です…相変わらず腰の状況が思わしくなく、
投稿ペースが低下したままで申し訳なく思います……。

ラブ達もいよいよ二年生、待望の後輩達が入学して来ますが、
やはり早々に一波乱あるようです。


第二十九話   来たわに!

「ハァ…毎度の事ながら見難いわねぇ……」

 

 

 入学式当日、朝食を取り終え暫く経った黒森峰の隊長室。

 歴代の隊長達が代々受け継いで来た執務机に片肘を突き、一見不機嫌そうに見えて実はそれが素な表情のエリカが、机上のノートパソコンの液晶画面を冷めた視線で睨み付けていた。

 一体何を調べているのか、マウスホイールをカリカリと回して画面をスクロールさせてはクリックを繰り返すエリカは、その味も素っ気もないお堅いホームページ相手についぼやきを洩らす。

 

 

「見る度に思うけどこのホームページ本当に見せる気あるの……?」

 

 

 しかし文句を言いながらも彼女のマウスを操作する手が止まる事はなく、最新の更新情報を一つ一つ丹念に上から順に検索していた。

 

 

「こういうのもお役所仕事って言うのかしら…っとコレね……」

 

 

 何度となく同じような作業を繰り返した後、漸くお目当ての情報に辿り着いたのかエリカのマウスホイールを回す指が止まり、米粒のように小さな文字列を思わず目を細めて確認した彼女は、それまでの工程にウンザリしたような顔でそのタイトルをクリックした。

 

 

「え~っと、時期的にそろそろのはずだけど今日も特に変化…ン?あった……」

 

 

 独り言の様子からするとどうやら彼女は頻繁にそのホームページにチェックを入れているらしく、更新日時とその一覧の内容から新しい項目が増えている事に直ぐに気付いていた。

 

 

「これってもしかして……」

 

 

 最新のお知らせの一覧から目当てにしていた項目を見付けたエリカは、まだ半信半疑ながらも逸る心を抑え表示されているタイトルをクリックした。

 

 

「ここまではいつも通り…あ、これだわ……例によってPDFか、この辺やっぱお役所よね……」

 

 

 文句は言うが別に怒っている訳ではないエリカは、表示されたお堅い文面に目を走らせながらマウスホイールを回し、かなりのハイペースで画面をスクロールさせて行く。

 

 

「あ~もう、文章も回りっくどいし絶対読ませる気ないわよね……っと、ちょっと待った!」

 

 

 どうでもよさそうな部分を飛ばし気味に読むペースに合わせ、留まる事なく画面をスクロールさせていたエリカは、その途中で気になる項目を見付けたのか慌ててマウスホイールを逆回転させて何行か画面を後戻りさせる。

 

 

「──年度…改修……終了の……」

 

 

 後戻りさせた項目を文頭から落ち着いてゆっくりと読み始めたエリカは、説明文と文章の合間に挿入された図表を何度も見返すうちに徐々にその口数が減っていた。

 

 

「来たわ……」

 

 

 だがそれも一時の事で、PDF形式の報告書を凝視していたエリカは、暫くするとその肩をワナワナと小刻みに震わせ始め机の上で両手を力強く握り締めていたのだった。

 

 

「ふ、ふふふ……ついにこの時がやって来たわに!」

 

『わに……?』

 

 

 途切れ途切れの呟きに続く暫しの沈黙。

 まるで地の底から湧き上がるような低く不気味な笑い声。

 そして直後突然覚醒したようにカッと大きく目を見開いたエリカは、高射速で撃ち出された徹甲弾が如き勢いで立ち上がると、それまで腰を下ろしていた執務机と対になる重厚な造りの椅子を豪快に後ろへと弾き飛ばしていた。

 すると最近ではすっかり彼女のキレ芸と奇行に慣れっこな役付きの幹部隊員達も、その意味不明な言動に思わず顔を見合わせ、握り拳で仁王立ちするエリカの様子にまた何か拗らせたかと奇異の視線を向けたのだった。

 

 

「小梅!例の準備はどうなってる!?」

 

「はぇ!?れ、例の準備……?」

 

 

 鼻息も荒く目が逝ってるエリカから何かとばっちりが来ないよう目を逸らしていた小梅は、その矢先にいきなり名指しされテンパり声が裏返ってしまう。

 

 

「小梅……?」

 

「ええと例の準備って…あ、そういう事……大丈夫よエリカさん、仕様はもう決まっててセッティングは直ぐに変えられるようにしてあるからいつでも問題なく行けるわ」

 

「結構!」

 

 

 しかし数段トーンを下げた声で再び名を呼ばれ問うような視線を向けられると、彼女が自分に何を求めているかにやっと気が付いた小梅は怠りなく準備を進めていた旨報告し、エリカもそれを受け簡潔に答えて大きく頷いていた。

 それまでの不満気な表情から一変し好戦的な戦闘民族の笑みを浮かべるエリカに、事態を理解しつつあった小梅はそれでも敢えてお伺いを立ててみた。

 

 

「エリカさんもしかして……?」

 

「ええそうよ私の張ったヤマが当たったわ、もしやるとしたら多分年度末近くだろうと踏んで網を張ってたけワケだけど大正解、見事ビンゴよ!」

 

 

 小梅の問いに意気揚々と答えたエリカは勢いに乗り、今度はその矛先を直下に向けた。

 

 

「直下!選抜メンバーの方はどうなってる!?」

 

「こっちも大丈夫、全員中等部時代に経験してる古参兵ばかりだから全く問題ないわ」

 

 

 小梅とのやり取りで直下を始め隊長室に詰めていた者達も、ここまで来るとさすがにエリカが何を騒いでいるか察したようで、問われるままに次々と何かの作戦の準備状況を報告している。

 隠そうとすらしないエリカの闘争心に中てられたのか、隊長室で額を突き合わせる幹部隊員達も不必要なまでにテンションが高く、その雰囲気はまるで出入りを控えた任侠の集まりのようだった。

 

 

「フム、準備は万端整ってわね……小梅!航路科に進路変更を通達!本艦は入学式が終わり次第直ちに熊本を出航、最大戦速で横須賀に向かうわよ!」

 

 

 一般的な学園艦に比べ黒森峰では艦の進路決定に関し、戦車道チームの隊長に驚く程絶大な権限が与えられていた。

 新学期が始まる直前、早々にその権限を行使する機会に直面したエリカは、その力の大きさに酔うような高揚感を覚え、嬉々とした様子で矢継ぎ早に指示を出し始めていた。

 

 

「クックック、この壱番槍の栄誉は他の誰にも渡さない…私達黒森峰のもの……よし!早速果たし状(試合の申し込み)をラブ姉に叩き付けてやるわよ!」

 

 

 何処か精神的な箍が外れたように笑うエリカだったが、彼女に限らず小梅達までもがその口元に似たような笑みを浮かべ、隊長室には狂気をはらんだ空気が充満している。

 エリカの芝居じみた宣言を受け、幹部隊員達は新年度の準備そっちのけで何やら別の仕事に取り掛かり、誰一人としてその事に異を唱える者はいなかった。

 

 

「さて、対戦申し込みはさすがに自分のパソコンからはマズいわね……」

 

 

 自前のノートパソコンを執務机の脇によけ、エリカは学校側から隊長用に支給されているパソコンをネットに繋ぎ、AP-Girlsホームページの対戦申し込みのフォームをクリックする。

 

 

「え~っと、対戦形式の記入欄はと……」

 

 

 対戦の申し込みに記入必須な欄を、エリカはテキパキと流れるようなタイピングで埋めて行く。

 

 

「う~ん、さすがと言うか何と言うか…笠女はこんな事務的なフォームまでセンスいいわ……それはともかく学校支給のこのパソコンはちょっとスペックがアレよねぇ、この液晶画面もいまいち目に優しくないし……」

 

 

 ()()()のノートパソコンと趣味で盛るだけ盛った自前のノートパソコンを比べ、その微妙な処理速度と画質の悪さにエリカはそっと溜息を吐く。

 事務用品枠で大量に一括購入したと思しきノートパソコンらしく、低価格を追求した分元々のスペックも数段劣り、確かに彼女のノートパソコンに比べ差は一目瞭然だった。

 その官給品に一時的にポジションを譲ったエリカのノートパソコンは、先程からネットに繋がれたままになっていて、その高精細な液晶画面には国土交通省 関東地方整備局 横浜国道事務所のホムページが開きっ放しになっていた。

 

 

 

 

 

「うは──っ!今年も超可愛い子がいっぱいだわぁ♪」

 

『黙れこのド変態!』

 

 

 春の陽射しが差し込む教室の窓から愛用の単眼スコープで校門の辺りを観察するラブは、新入生を歓迎する為に掛けられた生花のアーチを潜る新一年生の列に興奮し、AP-Girlsはそんな彼女に一切容赦する事なく声を揃えて罵声を浴びせている。

 

 

「誰が変態よ!?」

 

「ラブ姉の事に決まってんだろうが!ラブ姉がそんなんだからアタイらまで巻き添えでこんなトコに閉じ込められてんじゃねぇか!忘れてんじゃねぇこのボケがぁ!」

 

「ぼ、ボケぇ!?」

 

 

 己が節操のなさを省みず変態呼ばわりされた事が面白くないラブは、口を尖らせ教室内に分散してだらけているAP-Girlsに言い返したが、一番気の短い夏妃に罵倒され酸欠の金魚宜しく口をパクパクさせていた。

 いつもであればこの辺りで言っている事の是非はともかくとして、その言葉遣いの悪さに凛々子が顔をしかめ二言三言では済まぬマシンガン説教を始める処だが、今日に限っては夏妃を援護するようにその銃口をラブに向けたのだった。

 

 

「そうね、入学式が終わるまでこの色ボケホルスタインを野放しにしない辺り、会長もよく解ってるわ……けどそのお陰で私達まで一緒に軟禁されるのはさすがにちょっと納得行かないわよね」

 

「い、色ボケホルスタイン!?野放し!?り、凛々子アンタねぇ!?」

 

 

 夏妃と違いチクチクと嫌味を言う凛々子がいつも通り遠慮のない毒を吐き、ラブも涙目で彼女を睨むがそもそもその程度の事で怯むような相手ではなかった。

 そしてこんな状況でも誰一人として自分を擁護せず、口に出さずとも夏妃と凛々子に同調するような態度を取っている事もラブには腹立たしかったようだ。

 しかし現実問題凛々子が言うように入学式の後に催される歓迎ライブまでは、AP-Girlsのメンバー全員が新入生の前に姿を見せぬよう生徒会長の結依に厳命されていたので、誰一人として助け舟を出そうとはしなかったのだ。

 ラブとしては受付やら誘導やら生徒会の仕事を手伝う気満々だったが、まだ何も事情を知らぬ新入生相手に素敵な先輩ぶりたいという彼女の下心を結依は早い段階で看破し、何かやらかす前に予防検束的にAP-Girls諸共教室に封印していたのだった。

 ただ実際の処はラブとAP-Girlsの人気ぶりを考えれば、下手に彼女達を受付などに置けば混乱は必至なので、ステージの時間まで無用のトラブルを避ける為の当然の措置であった。

 だが何をするでもなく教室で待機させられる彼女達にすればそんな話はどうでもいい事で、リハーサルも終わった今この退屈な時間が苦痛でしかなく、その不満をラブにぶつけているだけだった。

 何しろ同じ理由で彼女達は新一年生の入寮日から今日まで寮に戻る事が出来ず、AP-Girlsの新メンバーとなる後輩達との顔合わせもまだなので、文句の一つも出るのは当然の話だろう。

 

 

「しっかしよぅ、アタイらの芸能科歌唱部に入って来る新一年生、ホントに使いモンになんのかぁ?蓋を開けたらダメでしたじゃ話になんねぇぞ?その辺マジ大丈夫なんだろうなぁ?」

 

 

 現に未だ顔すら知らぬ新一年生に対し、果たして自分達と行動を共にするだけのスペックが備わっているか懐疑的な夏妃が、これまで一切情報を開示していないラブに早速文句を言っていた。

 そしてその口調こそ自分達に何も教えぬラブを責めるものだが、夏妃も彼女なりにAP-Girlsのこれからの事を考えていたので、それを酌んだラブも真顔に戻りメンバー全員の顔を見回してから、漸くその口を開き新一年生達について語り始めた。

 

 

「私は一応隊長として実技試験を演習場のコントロールタワーからモニターしてたけど、さすがにウチ(笠女)を受験するだけあってどの子も結構いい線行ってたわよ?」

 

「けどそれはあくまでも中学戦車道レベルでの話でしょ?」

 

 

 新たにAP-Girlsに加わる事になる新一年生が果たしてどの程度使えるかは、現メンバー全員が最も注目するポイントだったので、ラブのいい線行っているという評価を額面通り受け取れない凛々子が即座に追い撃ちを掛ける。

 

 

「私から見りゃ出会った頃のアンタ達と大して変わらなかったわよ?」

 

「この怪獣が……」

 

 

 確かにAP-Girlsのメンバー達の個々の強さは、彼女達の直ぐ上の世代処か間もなくスタートするプロリーグの指揮官クラスですら驚愕するレベルにあったが、一騎当千の厳島の家元を務めるラブからすればまだまだであった。

 なので受験入学の新入生達の実力がどの程度のものか疑問視する凛々子を、ラブも何ら躊躇する事なく袈裟懸けにバッサリと切り捨てたのだった。

 

 

「そんな心配しなくても大丈夫よ、人の持てる力を最大限引き出して戦うのが厳島の真骨頂、更に私が新たに組み上げたメソッドを用いれば、ルーキー達の育成もそんなに大変な事じゃないわ……つ~かさ、アンタ達の方がアクが強過ぎてよっぽど苦労したんだけど?」

 

「んだとコラァ!」

 

 

 如何にも厭味ったらしい口調で苦労したと言うが、そもそもそのアクの強い人材をスカウトして集めたのは他ならぬラブ本人なので、彼女の言い草にカチンと来た夏妃は早々に牙を剥き噛み付いていた。

 

 

「ホラ、そういうトコよ」

 

「チッ!」

 

 

 しかしまだまだ甘いと言わんばかりに上げ足を取られ返り討ちに遭った夏妃は、ラブの余裕のある態度に腹を立て忌々し気に舌を打った。

 

 

「あのさぁ、もういい加減しょうもない事で時間を無駄にしないで現実的な話をしてくれる?新人が入って来るのが問題じゃない、一番の問題はラブ姉がルーキー達をいつ()()()()に立たせるつもりかって事でしょ?その時期次第で今後の方針だって大きく違って来るはずよ?」

 

「それ今聞く……?」

 

 

 戦車道に限らずあらゆる面でまだ遠く及ばないラブを相手に口でも勝てるはずもなく、尚も何か言いたそうにしている夏妃と凛々子を目線で黙らせた鈴鹿は、返す刀でラブに未だ明確に示されない新年度の方針を明らかにするよう迫っていた。

 だが鈴鹿に口を割るよう迫られたラブの方は酷く面倒そうに眉をへの字にすると、ぼそりと一言呟いてチームで一番厄介な女に恨めし気な目を向けた。

 

 

「ハァ…対面する前から変な先入観を持たせたくなかったら黙ってたのに……そりゃアンタ達みたいな最初っから規格外と同じって訳には行かないわよ……」

 

 

 深い溜息の後にボヤキ交じりで前置きをしたラブは、これまで頑なにはぐらかしていた新一年生に関する事を語り始めた。

 

 

「そりゃどういう意味だ!?」

 

「夏妃……」

 

 

 漸く口を開いたラブに規格外扱いされ彼女が本題に入るより早く夏妃はいきり立つが、感情を抑えた鈴鹿にひと睨みされるとムッとしながらも口を噤み、面白くなさそうに手近な椅子にどっかと腰を下ろしていた。

 

 

「まず初めにはっきりさせておくと、新入生は間違いなく全員使えるわ」

 

 

 一旦話し始めてしまえばラブももう何も隠し立てするつもりはないらしく、合間に聞かれた事に答えながらよどみない口調で淡々と話を進めて行った。

 

 

「ラブ姉がそう言うなら疑いはしないけど、ラブ姉の言うその使えるってのは一体どの程度の使えるなのかしら……?」

 

「そうね…有力校からの推薦入学や中等部から上がって来る内部生とは違う、一般受験で入学して黒森峰の一軍に喰い込んで来る外部生程度の実力はある子達よ……」

 

 

 作戦行動中どちらかというと忍耐力を要する地道な役回りをこなす事の多い凛々子にとって、この先使える手駒がいるか否かで取れる手立ての自由度が変わって来るので、自然とまだ見ぬ後輩に対するオーダーもシビアなものになっていた。

 

 

「マジかよ?それじゃ何で黒森峰じゃなくてウチ(笠女)なんかに来たんだ……?」

 

「ウチなんかってアンタご挨拶ね……」

 

 

 黒森峰以外の学校を侮るつもりはないが、それでも自分達にとって最強のライバルは黒森峰だけだと勝手に思っている夏妃は、新入生達がその黒森峰の一軍に一般受験で入れる実力を持つと聞き驚いたのはいいが、つい口を滑らせ身も蓋もない事を言ってラブに睨まれる。

 

 

「でもそれはあくまで西住流で通用するレベルって事でしょ?それで果たしてこの厳島流でやって行けるのかしら……?」

 

「鈴鹿オマエもか…ったくアンタ達と来たら……」

 

 

 強豪黒森峰とはいえ推薦や内部生だけではなく、一般受験の外部生でも一軍で頭角を現す選手は毎年必ず何人かは存在するが、それは少数派であり大多数が二軍のまま卒業して行くのが常であった。

 つまり一般受験で黒森峰入りして一軍に居座る者は相当な猛者であり、内部生のエース達からも一目置かれる存在であった。

 自分の手駒が増えるかどうか気にする凛々子と、それだけの実力を有する選手が黒森峰ではなく笠女を選んだ事に素で驚く夏妃に、誰もが最強と認める西住流より厳島流が上だと平気で口にする鈴鹿達の顔を、ラブはほとほと困った様子で順繰りに見回した。

 

 

「…アンタ達だって解ってんでしょ?外部入学で黒森峰の一軍を取りに行く実力がありながらウチに来る理由……彼女達もあなた達と同じでこの世界(戦車道)じゃアウトローなのよ……けど私がスカウトして集めたあなた達が道を示したから彼女達もここに来た……あ~もう、少しは素直に後輩が出来た事を喜びなさいよね……」

 

 

 絶対的な強さと揺るぎない自信、しかしその強過ぎる個性故に普通の群れに馴染む事が出来ず、所謂一匹狼と呼ばれる人種を束ねるラブはその分何処の隊長よりも苦労は多かった。

 しかしそれでもその強過ぎる個性を選んだのは他ならぬラブであり、背負った苦労は彼女が得た圧倒的な力の代償と言えるだろう。

 

 

「で?使えるようになるのはいつ頃?」

 

「…最短で全国大会決勝ラウンドのファイナル辺りね……」

 

「あっそ……」

 

「……」

 

 

 しかしそんな彼女の苦労などお構いなしに鈴鹿は容赦なく結論を述べるよう迫り、ラブの導き出したあくまで概算的な見積もりに、初めから期待はしていなかったように肩を竦めていた。

 

 

「私達のやろうとしている事の妨げにならず、共に戦う者となるのなら私は何も言わないわ」

 

「愛……」

 

 

 全く以って可愛げのないと渋い顔をするラブの隣、基本的に彼女の決めた事に意見する事のない愛が珍しく口を開くと、漸く味方が現れたかとラブの表情が一変する。

 

 

「けれどもし新入生達が結果を出せず、恋の足枷になるようならその時は私が即排除するわ……」

 

「あ゛い゛ぃ゛ぃ゛……」

 

 

 だが彼女がパートナーの援護射撃にパッと顔を輝かせた直後、それが援護ではなく止めとなるまさかの非情な宣告であると知ると、抱えた頭をゴンッと鈍い音を立てて打ち付けそのまま机に突っ伏していた。

 

 

「もういや…何なのよコイツらは……」

 

 

 溺愛するパートナーにまで背後から撃たれショックのあまり机にダイブしたラブは、その姿勢のまま疲れ切った声で泣き言を零したのだった。

 順風満帆の船出となるはずが何とも情けない心境で入学式当日を迎えたラブであったが、それを新入生歓迎ライブに引き摺るような事なく、彼女のWelcome Kasajyoの絶叫と共に幕を開けたその夜のステージは、観覧を許された新入生とその親族に生涯忘れられぬ夜だったと言わしめる程パーフェクトなものであったという。

 そして、同日に入学式を迎えていた黒森峰の隊長であるエリカから送られて来た対戦申し込みにラブが気付いたのは、翌日登校してからの事であった。

 

 

 




やはりエリカの来たわにネタの誘惑には勝てませんw
けどそのハイテンションなエリカが何を狙っているか、
読者の皆様にもそろそろ見えて来たでしょうか?

前書きでも触れさせて頂きましたが腰の状況が芳しくなく、
パソコンの前に長時間座る事が出来ず執筆ペースは下がったままです。
それでも途中で筆を折る気はありませんので、今後もお付き合い頂ければ嬉しいです。
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