ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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記念艦三笠の主砲がセンチではなくサンチ表示なのは私のちょっとした拘りです。


第三十三話   Parade lap

「何だか最近横須賀でばかり仕事をしているような気がするんだけど私の気のせいかしら……?」

 

「はっはっはっ!細かい事は気にするな、私なんざ刑事第一課に配属されているが、最近は交通課の代わりに()()()()ばかりやっているぞぉ♪」

 

 

 戦車道の試合を行う際大規模な観戦会場の確保に苦労する横須賀市の場合、苦肉の策として市内の公園や球技場等をサテライト会場として複数使用するのが常だった。

 その中で今回メイン会場として試合の運営本部が置かれたのは、笠女の校名の由来となった旧帝国海軍旗艦である記念艦三笠が保存されている三笠公園であった。

 尚、16号戦の交戦エリアに最も近いヴェルニー公園は、客席となるスタンドを組むには狭過ぎる上に、流れ弾が着弾する危険性もある事から観戦エリアとしては不向きであり、一応毎回候補に上がるも最終的に却下されるのがお決まりだった。

 そして三笠公園内に保存されている記念館三笠の後部甲板、40口径30.5サンチ連装砲を半ば覆う形で張られたテント下の運営本部には、最早お馴染みな二人が雁首揃えて戦況を中継の映像と飛び交う両チームの無線でチェックする姿があった。

 

 

「ねえ…アンタんトコ(警視庁)はそれでいいの……?」

 

「それを言うならオマエさんのトコ(防衛省)こそどうなのだ?オマエとて別に姫さんの専属審判という訳でもあるまい?」

 

「そ、それは……」

 

 

 AP-Girls絡みのイベントが市内である度、榴弾暴発事故以来亜梨亜から絶対的な信頼を置かれている英子は、管轄が違うにも拘らず警備責任者を任されるようになり署内でも厳島のお抱え刑事と認識されていたのだった。

 その英子と同様に亜美もまた彼女と似たり寄ったりな立場にあり、それを言われてしまうとぐうの音も出ず無駄に口をパクパクさせる事しか出来ずにいた。

 

 

「そもそもがだ、亜梨亜様にお願い事をされてだぞ?それを無下に断れる人間がこの世の一体何処にいるというのだ?」

 

「……」

 

「だろう?そういう事だから何ら問題なしという事だ、はっはっはっ♪」

 

 

 元々がそういう性格なのかはたまた知波単で暮らすうちにそうなったのか、その辺は正直亜美にも良く解らなかったが、細かい事など一切気にしない上総の大猪(英子)は公園内に複数設置された大型モニターで戦況を見守りながら辺りを憚る事なく呵々大笑していた。

 

 

『ハァ…もしかして西さんも将来はこうなるのかしら……?』

 

 

 何を言っても通じない、何を言っても動じない英子相手にそんな恐ろしい事を考えながら、独り亜美はそっと溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

『──それではここで両校の出場選手と使用車両をご紹介しましょう…まずは挑戦者となる黒森峰サイドの登録選手からご紹介します……』

 

「は?何だこりゃ……?」

 

 

 それは亜美と英子が恒例の掛け合い漫才を始めるより少し前の事。

 試合開始直前という考え得る限り一番最悪なタイミングでエリカに電凸したまほは、嫌味満載のお小言を頂戴した挙句一週間カレー抜きの追加制裁を科されてしまい、この世の終わりのような顔で絶望感に打ちひしがれていた。

 しかし現地からの中継が引きの画像に切り替わり黒森峰の隊列の全景が映った途端、それまでとは打って変わったアホ面で画面に見入っていたのだった。

 

 

「何だって何だ西住、オマエ何も知らなかったのか?」

 

「…何も聞いてないよ……隊長を引き継いだ後何かゴソゴソやってるのは知ってたけどな……」

 

 

 黒森峰のスタート地点となる田浦隧道側の折り返し地点に一列縦隊で並ぶ5両のパンターG型。

 それまではエリカの搭乗するフラッグ車の姿しか中継映像には映っていなかったので、まほも隊長自ら機動力重視で思い切った手に出たなとは思っていたが、まさか参戦する全車両がパンターG型だとは思いもせず、さすがの彼女も驚きのあまりアホ面を晒してしまったのだ。

 

 

「あの車両番号…エリカのヤツ一体いつの間にあんなモノ準備してたんだ……?」

 

 

 黒森峰に在学中現役で実働状態にある車両は全て把握していたし、余剰車両も直ぐに現役復帰可能な物は概ね記憶していたまほは、隊列を組む5両のパンターG型がバックヤードで緊急時のパーツ取り等に回されていた車両である事を思い出していた。

 

 

「フム…見覚えのない車両番号だが、新車じゃあなさそうだな……」

 

「ああ…多分去年ラブと安斎が短期留学した時、エリカがベルターを見付けて来たバックヤードから引っ張り出して来たんだと思う……」

 

「あれか…いくら掘っても豆戦車と鍋しか出て来ないアンツィオとはエライ違いだな……」

 

 

 昨年ラブの巻き添えでアンチョビが黒森峰に短期留学した際、何かないかとバックヤードを引っ繰り返したエリカが見付けて来たティーガーⅠのパーソナルネームがベルターであり、嘗てしほが黒森峰に在学していた当時搭乗していた車両その物であった。

 

 

「鍋って…けど離れてみてやっと解ったが黒森峰はつくづくモノ(戦車)で溢れているんだな……普通余剰車両を引っ張り出しただけで変則とはいえ一個小隊分パンターG型が揃って……」

 

「どうした西住……?」

 

 

 最初こそは我ながら呆れるといった感じで、黒森峰の抱える過剰在庫な戦力を思い返していたまほであったが、話の途中何か気になる事に行き当たったのかその言葉が不意に途切れる。

 

 

「いや…あのな、去年の大学選抜戦でカールにやられたパンターG型の穴を埋める為に、黒森峰がラブの所に行く予定だった車両を業者の言い値で買っちゃっただろ……?」

 

「ああ、そういえばそんな事もあったな……」

 

 

 まほが真剣な顔をして大学選抜戦の後日談に改めて言及すると、何かとても恐ろしい事実に気が付いたようなその表情に、アンチョビも慎重に様子を窺いながら先を促した。

 

 

「もし…もしあの時私が冷静に学園が抱える余剰戦力の確認をしていたら……ラブの下へと行く予定だったパンターG型を横から掠め取るような事にはならなかったはずで、そうすればあの六連戦の結果だって全く違ったものになっていたんじゃないのか……?や、やはり私の短慮がラブとAP-Girlsに多大なる迷惑を掛けてしまったのでは……」

 

 

 それは常に勝利する事を宿命付けられた絶対的強者たる黒森峰が迷い込んだ、負のスパイラルとでも呼ぶべき足枷のような思考の迷宮であった。

 いつの頃からか学園全体に蔓延する勝利至上主義は如何なる行動も正当化し、装備調達の場面に於いても必要とあらば金に糸目を付けなくなり、AP-Girlsが導入予定だったパンターG型を横取りした時と似たようなケースは過去にも何度となく発生していたのだ。

 そしてまほもまたその呪縛から逃れる事は出来ず、高騰する価格にも躊躇する事なく新車両の導入を推し進めていたのであった。

 

 

「そ、それはあくまで結果論で…過ぎた事でラブも気にしてなかったし……と、とにかくオマエが気に病む事はない……あ、オイ見ろ!出場選手オーダーの紹介が始まったぞぉ!」

 

 

 苦肉の策でⅢ号J型を導入した事で思いがけぬ発見と成果も上がっていたので、その件でラブは特に何も気にしてはおらずむしろ満足すらしていた。

 何よりそれが切っ掛けで様々な葛藤を抱えていたLove Gunを復活させる踏ん切りも付いたので、アンチョビが言う通りまほが気に病む必要は何もなかったのだ。

 しかしそうは言っても根が生真面目過ぎる彼女の事なので、やはり自分は取り返しの付かない大失態を犯したのではと顔色を変え、アンチョビはそんなまほの気を静めるのに苦労していた。

 

 

「…そ、そうか……ん?んん!?」

 

「ど、どうした西住!?」

 

 

 ラブに係わる事でまほが落ち込み始めると気を取り直すまでに相当時間を要し中々に厄介なので、何か彼女の気を逸らす手はないかとワタワタしていたアンチョビは、黒森峰のパンターG型5両を背景に画面に表示された選手オーダーを指差し殊更大袈裟に騒いで見せた。

 すると自ら痛恨の大失態をやらかしたと独り思い込み、目尻に涙を溜めワナワナとその身を震わせていたまほも、敢えて大袈裟に騒ぐ事で自分の気を紛らわそうと必死なアンチョビの気持ちに応え、彼女が指差すテレビの画面へと目を向けたのだった。

 ところが画面に表示される車両毎の搭乗選手名と各ポジションに目を通した途端、涙目だったまほの表情は一変し驚きに大きく目を見張り唸り始めていた。

 

 

「エリカ本気か……?う~ん…いや、本気で勝ちに来ているからこのオーダーなのか……」

 

「なぁ西住、私にも解るように説明してくれないか?」

 

 

 寸分の隙もなく整然と並ぶ黒森峰のパンターG型を背景に映される選手名だけでは、まほがそこまで驚く理由がアンチョビには思い付かず、唸りながら独り言を洩らす彼女の顔をそっと覗き込んだ。

 

 

「ん?あ!済まない安斎、エリカがあまりにも大胆な手を使って来たからついな……」

 

「フム、確かに黒森峰がパンターG型だけで部隊を編成して来たのは充分驚きに値するが……」

 

 

 例え大戦力を有する黒森峰であっても、練習試合で対戦校の戦力に合わせて部隊編成を小規模なものに変更するのはよくある事だったが、今回のように同一車両で纏めて来たケースはアンチョビにも記憶がなかった。

 だがそれだけでまほが驚いている訳ではない事は彼女にも解っているので、敢えてその事に触れながらも続きは言葉にせず先を促していた。

 

 

「ええとだな、出場しているのが全員三年生なのは解ってるよな……?」

 

「まあな、確かに全員見覚えのある顔だし画面に並んでる名前もその顔と大体一致してるよ」

 

 

 聞かれるまでもなく今日出場しているのは、黒森峰入学当初から頭角を現しているような一軍でもエース級の選手ばかりで、答えた通りアンチョビは彼女達の顔も名前も粗方把握していた。

 

 

「そうかなら話は早い…彼女達は全員中等部時代に16号戦を経験した者ばかりなんだよ……」

 

「何だって……?」

 

「今回の16号戦、エリカは選手全員中等部時代に参戦経験のある者のみで編成して来たんだよ……」

 

「マジか……?」

 

 

 アンチョビとてさすがに当時の事を全て記憶している訳ではないので、ついそれは本当かと問い質すようなセリフを口にしたが、彼女達を率いて戦って来た張本人が間違えるはずもなく、今度はアンチョビが驚いた顔で画面に見入っていた。

 

 

「ああマジだ…だがさすがにこれは私も驚いたよ……」

 

「う~む、エリカもまた随分と思い切った手に出たもんだなぁ…つ~かアレだ、エリカのヤツはガチで勝負しに来てるじゃないか……」

 

 

 同一車種に車両数も同数に揃えて来たこの状況は、素人目には黒森峰が対戦相手に合わせて大幅に投入戦力を抑えているようにしか見えなかったが、16号戦に於けるラブの他を寄せ付けぬ超常的な強さを知る者にとっては、今回エリカが取った一手は途轍もなくチャレンジングなシロモノであった。

 

 

「引退して隊長をエリカに引き継いだ後に何かやってるなとは思ったが、まさかこんな事をやっているとはさすがに思いもしなかったな……」

 

「西住の目を欺くとはエリカのヤツも中々どうしてやるもんじゃないか」

 

「それはそうかもしれんが……」

 

 

 前隊長であるまほの目を盗み小梅達と共謀し、秘密裏に16号戦対策を進めていたエリカの手腕をアンチョビは称賛するが、完全にのけ者にされたまほはどうにも複雑な心境であった。

 

 

「しかしそうなるとアレだ、経験者揃いの黒森峰とラブ以外は経験者のいないAP-Girlsがガチンコで激突するこの一戦、どうにも簡単に勝敗の行方が読めなくなって来たな…お、いよいよ始まるみたいだぞ、って今チラッと映った運営本部に英子姉さんの姿があったよな……?あの人また警備主任か何かに駆り出されたのか……」

 

 

 上手い事まほの気を逸らす事が出来てホッとしたのも束の間、中継映像が切り替わり運営本部のテントの下に英子の姿を認めたアンチョビは、大方の事情を察したように眉尻をへにょっと下げ困った顔で苦笑を洩らしていた。

 

 

 

 

 

「各車用意はいいわね?タイミング外すんじゃないわよ、もし外したら自分達が赤っ恥を搔くだけじゃなくてラブ姉にも恥搔かせる事になるんだから気合入れなさい!」

 

Jawohl!(了解)

 

 

 試合開始を告げる信号弾が打ち上げられスタート地点を進発した黒森峰の隊列の先頭、フラッグ車のコマンダーキューポラに収まるエリカが無線を介して檄を飛ばし、黒森峰としては些かガラの悪い煽り文句に参加選手達も高揚した様子でそれに応える。

 

 

「ふ…中々いい感じに熱くなってるようね……全車三時方向に砲塔旋回!榴弾装填用意!」

 

 

 まだまだ手の内を完全に晒していないだろうマイバッハの12気筒にものを言わせグイグイと加速して行く黒森峰の5両のパンターG型は、エリカの指示の下一斉に砲塔を右に90度旋回させ、その統率の取れた動きは遠く名古屋の地で中継を見守るまほを『ほう』と唸らせる程見事な動きだった。

 

 

「あら~、小梅まで凄い顔してるわ……」

 

 

 砲塔を旋回させた事で振り返らずとも後続の様子を見る事が出来るようになったエリカは、直ぐ後ろを追走する小梅の横顔が黒森峰らしい好戦的な表情になっているのを目にすると、一体どれだけ16号戦に入れ込んでいるのかと半口開けて呆れていた。

 

 

「ま、気負い過ぎもアレだけどやる気が充分なようで何よりよ…さて、多分ラブ姉にはこっちのスペックもとっくに見抜かれているだろうから無理する必要もない……とは言え全部ラブ姉におんぶに抱っこも申し訳ないわよね」

 

 

 この16号戦の為だけに特別編成した部隊の士気の高さを再確認したエリカは、視線を前方に向けると思考を切り替え意識をラブに集中させる。

 

 

「こっちも決して加速が悪い訳ではないけど、まず間違いなくそれに関してはAP-Girlsの5両の方が上よね…けどあのセレモニーの為にはラブ姉が速度調整してこっちに合わせてくれるはず……あ、でもまさか肝心のラブ姉がこの事忘れてるとかないわよね……?」

 

 

 準備万端整えて横須賀に乗り込んで来たエリカだったが、ここに来て何やら不安要素を見付けたのか急に落ち着かない様子で眉を曇らせていた。

 

 

「イヤ!ラブ姉なら大丈夫、派手好きなラブ姉がアレを忘れる訳ないもの…多分……」

 

 

 この16号戦の為に昨年から準備を進めて来たエリカであったが、試合開始早々他力本願な弱音を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

「さて、あの様子だとやっぱり結構イジって来てるみたいだし、うかうかしてたらこっちが出遅れてとんだ赤っ恥を掻く事になり兼ねないわね…あ、でも肝心なのは果たしてエリカさんが覚えてるかどうかなんだけど……だ、大丈夫!エリカさんなら絶対覚えてるわ……多分……」

 

『なぁラブ姉、コレって本当にやらなきゃいけないのかよ?』

 

 

 スタート早々やや不安そうな顔でエリカと何やら似たような事を呟いていると、隊列の最後尾で本日の殿を任されているブルー・ハーツの車長である夏妃が、何処か腑に落ちぬといった口調で無線を飛ばして来た。

 その声にまたかと言いたげにラブが振り返ると、車長としてコマンダーキューポラに収まる愛と鈴鹿と凛々子の、夏妃と同意見だと主張する顔が並んでおり何度も説明したのにとラブは溜息交じりのぼやきを洩らすのだった。

 

 

「…そりゃ確かに私とまほが勝手に始めた事で義務って訳じゃないけど……」

 

 

 それは中学に入ったラブとまほが初めて16号戦で対戦した時の事。

 まほの何とかラブの鼻を明かしてやりたいという対抗意識と、ラブのまほをからかってやろうという悪戯心から自然発生した謂わば偶然の産物。

 義務ではないがいつの間にか16号戦の開戦を告げるセレモニーとなったすれ違いざまの一撃。

 周回距離約3.5kmの中間地点に近い安針塚駅入り口の交差点付近の100m程の区間は、交戦エリアの中で上下線が唯一直接すれ違う区間であった。

 思惑はそれぞれ全く異なるが考える事が一緒な二人は、ファーストラップのすれ違いざまにその僅かな区間で脅しの一撃を同時に放ったのだった。

 そしてその計ったようなタイミングの鮮やかな撃ち合いで喝采を浴びて以降、両者が16号戦で対戦する際はファーストラップの挨拶代わりの一撃が暗黙の了解となったのだ。

 

 

「けどホラ、観戦に来てるお客さんも期待して待ってるし、何よりエリカさんだって絶対そのつもりでいるはずだから練習通りにやってってば!ハイ!全車三時方向に砲塔旋回!」

 

 

 敢えて身も蓋もない事を言えば完全に無駄弾な一発を撃つ事に、果たしてどれ程の意味があるのかとAP-Girlsは今ひとつ乗り気ではないがそれを無理矢理押え込むようにラブは叫ぶ。

 

 

『…こんな事なら例えやらせと言われても事前に打ち合わせした方が良かったかしら……?』

 

 

 エリカなら言わずとも応えてくれると信じつつも、中々言う事を聞かぬAP-Girlsを相手にするのに疲れたラブは、思わず天を仰いで今更な事を呟くのだった。

 

 

 

 

「おいおい、どっちも砲塔を右に振ったって事はアレをやる気か……?」

 

「フム、状況的には多分そうだろうな…エリカも何度か経験してるから問題ないだろう……」

 

 

 いざ試合が始まってしまえばまほも余計な事を考える暇がなくなるので、アンチョビとしても安心して観戦する事が出来たが、試合開始早々双方が示し合わせたように砲塔を右旋回させると驚いた彼女は大きく見開いた目を丸くしていた。

 

 

「けど大丈夫か?アレは殆どお前とラブの阿吽の呼吸で成り立ってた一発芸だろう?」

 

「一発芸ってあのな…基本は単なる威嚇射撃だからそんなに難しい事じゃないさ……だから最初は私とラブだけでやってたけど、ある程度慣れて来てからは私とラブの指示で発砲可能な車両が同時にぶっ放してただろ?エリカも優秀だったから一年の頃から参加してたから経験は充分だし、AP-Girlsもラブが仕込んでるんだから多分大丈夫だろう」

 

「まぁ西住がそう言うならそうなんだろうがな…だがラブのヤツはスタートしてからAP-Girlsと何かもめてなかったか?大方あのじゃじゃ馬共がこれに何の意味があるんだとか、無駄弾撃たすなとか好き放題言ってごねたんだろうよ……」

 

「…無駄弾……」

 

 

 無駄弾と言われまほとしては何とも釈然としないものがあったが、いまいち浮かぬ顔のアンチョビの予想はものの見事に正鵠を射ていた。

 

 

「あ~、ラブのヤツ速度調整してやがる…こりゃあ間違いなくやるな……」

 

 

 AP-Girlsの隊列が僅かながら減速した事に気付いたアンチョビは、間違いなくラブが恒例の一撃を放つ為の準備段階に入った事を確信していた。

 

 

 




昨日は仕事が片付かず投稿が遅れました。

サブタイトルのパレードラップとは、サーキットで行われるレースに於いてスタート前のダミーグリッドから、スターティンググリッドに移動する為にサーキットを一周する事をそう呼ぶのですが、この世界ではフォーメーションラップと呼ぶ方が一般的かもしれません。


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