お盆休み返上でずっと仕事してました……。
なお腰の方の状態も相変わらずで、我ながらよくこの状態で切り抜けられたもんだと不思議でなりません……。
まだまだ試合は序盤ながら、エリカは早くもラブを本気にさせたようです。
「近い……私が思った以上にエンジン弄って来てる…うん、音も悪くない……」
16号戦の舞台となる国道16号の逸見隧道と田浦隧道の間は、一部の区間を除き上下車線が宅地等に隔てられ完全に分離している為、対向車の存在を察知する事は非常に困難であった。
だがその特殊な環境をものともせず、聴覚情報だけを頼りに人並外れた集中力で黒森峰の隊列が近付きつつある事を察知したラブは、微かに聴こえる音のみでエリカが秘密裏に用意していたパンターG型のスペックを見極めていた。
「ふん…この様子だとショートカットポイントは間に合わない……やるわねエリカさん、ここ迄の処全てにおいて
実戦の現場ではその僅かな差が勝敗の行方を大きく左右する事があるのをよく知るラブは、エリカが自分を倒す為に万全の備えをして来た事に思わずその口元を緩めてしまう。
「いいわ…そうでなけりゃつまらないもの……」
本来であれば対戦相手が想定以上に強いと解れば緊張する場面なはずだが、まるでその状況を楽しむように酔いに任せた恍惚の笑みを浮かべたラブは、特徴的なハスキーボイスで官能的で情感たっぷりな呟きを洩らしていた。
「最高よエリカさん♡狩りの獲物としては及第点処か満点以上の仕上がりだわ♪」
だが次の瞬間口角を吊り上げ表情を豹変させた彼女は、美しくも凶悪な捕食者の笑みを浮かべ高慢且つ恐ろし気なセリフを呟いたのだった。
「フフッ♪どうやらエリカさん達もいい感じに温まったようね…ならそろそろコッチも遠慮なく本気で行かせて貰うとしましょう……全車徹甲弾装填用意!このトンネルを抜けたら直ぐに会敵するよ!ここから先は遠慮は一切無用、全力でやりなさい!」
最初に会敵した安針塚駅入り口の交差点の手前、長浦隧道に突入する直前AP-Girlsに檄を飛ばしたラブは、トンネル対策で選択したクリアレンズのスポーツゴーグル越しに出口を見据え、獲物を狙う狐のように目を細めて再び口角を吊り上げていた。
「全車徹甲弾装填用意!今度は当てに行く!但し向こうも黙って撃たせてくれる程甘くないから気を引き締めなさい!」
ラブがAP-Girlsに檄を飛ばし徹甲弾の装填準備を命じたのと時を同じくして、エリカもまた部隊に同様の命令を下していた。
『エリカさん、砲撃タイミングはやっぱりすれ違いざま?』
「ええそうね、再度会敵するのはまず間違いなくさっきと同じ安針塚の交差点になるはずだから、もう一度すれ違いざまに撃ち合う事になるわ」
エリカがAP-Girlsと再び会敵し本格的なドンパチに突入するのは、最初に刃を交えた交差点だろうと踏んでいたが、その予想にはやりラブと付き合いの長い小梅も同意見だった。
『でしょうね、私もそうなると思います…けどそれは多分……』
「ラブ姉も同じ考えだろうって言いたいんでしょ?普通なら先手を打って機先を制す場面だけど、もし外したり当たっても跳弾でもさせてトンネル内弾着させたら一巻の終わり…一周目でトンネルトラップで失格なんてさすがにラブ姉だって願い下げなはずよ……」
自分の予想に同意見だと言いながら途中で言葉を切った小梅をチラリと振り返ったエリカは、彼女の含みのある視線に少し険しい表情でその続きを口にした。
『ふふ♪悔しいけどさすがラブ姉一番のお気に入りの後輩なだけあって、エリカさんは細かい処まで実によく解ってますね』
「小梅!」
『冗談ですよ……さ、指揮をお願いします』
楽しそうに前方を指差す小梅をひと睨みしながら、後でお尻の一発も蹴飛ばしてやるなどと考えるエリカは、視線を前方に戻し砲撃タイミングを外さぬよう全神経を集中させていた。
『あ~出たよあの顔……』
16号戦の果たし状を叩き付けたエリカが用意して来たパンターG型の完成度の高さに、改めて彼女の本気度の高さを感じ取ったラブは本格的な激突を前に喜びの感情を隠せずにいた。
しかし整い過ぎとさえ言われる程整った美貌を誇る彼女の狂喜の笑みは、それが例えモニター越しであっても見た者を震え上がらせるのに充分な威力を秘めていたのだった。
そして中学時代彼女に目を掛けられ可愛がられて来た後輩達は、その笑顔が意味する処をそれこそ嫌という程身に染みて理解していたので、一人の洩れもなく一様に三倍濃縮の渋茶でも啜らされたような顔で呻き声を洩らしていた。
「あ~あエリカのヤツすっかりラブ姉をその気にさせちまって…ねぇ西住さん、エリカっていつもアナタにはキツく当たってるけど本当は相当なドMなんじゃないの?でなきゃラブ姉相手にあんな自分からハードル上げるようなマネしないと思うんだけど……?」
「る!?るるるルクリリさん!?わ、私ルクリリさんが何を言ってるのか全然解らないよ!?」
『ぶふっ!』
歴代最も聖グロらしくない隊長という評価が定着しつつあるルクリリの、身も蓋もなくどてっぱらに抉り込むデッドボールのような問いかけに、期待を裏切る事なくテンパったみほはワタワタとすっかり裏返った声で必死にとぼけようとする。
しかしこういう時にみほは全くハッタリが効かず、その無様且つ解り易過ぎる狼狽え振りは周囲の失笑を誘うだけだった。
「もう、やり過ぎだってば…けどまぁそれはともかく、このまま行くともう一度さっきと同じ安針塚の交差点で会敵するのは確実、そして今度は……」
「ええ、今度は双方本気で当てに行く…但しさすがにこれで脱落する車両が出る事はないとは思うけどね……だがこっから先は息吐く暇もなくなるのは確実でしょ……?」
「……」
思いもよらぬルクリリからのイジりの奇襲攻撃に狼狽えるみほに苦笑していたカルパッチョが、それでも頃合いを見て助け舟を出し話題が試合に関する方に進むよう舵を切る。
するとみほを揶揄い始めた張本人のルクリリも直ぐに隊長の顔に戻ると、カルパッチョの後を継いでこの先の展開がどうなるかを予想し、みほも無言で頷きそれを肯定したのだった。
「あ、来ましたよ……」
そして彼女達が固唾を呑み注目する中、トンネルを抜けた両チームはそのまま減速する事なく交差点に進入すると同時に発砲、生み出された火球が大型モニターの画面全体を覆い尽くした。
『撃てぇ!』
ラブとエリカの命令に応え全てのパンターG型の砲手達が一斉に主砲の発射ペダルを踏み込む。
暴力などという表現では生温い爆音と衝撃が出場している全選手を激しく揺さぶるが、それで怯むような者は一人もおらず全員が己が職務に集中し次なる事態に備えている。
「被害報告!」
「損害は!?」
激しい徹甲弾の応酬の後、両チーム共隊列を乱す事なく黒煙を纏ったまま次のトンネルに突入し、ラブとエリカはそれぞれ部隊の損害状況の確認に余念がなかった。
『こちらピンク・ハーツ、掠った程度で問題ないわ』
『二号車小梅です、防盾はしっかり仕事してくれてます』
『イエロー・ハーツ異常なしよ、これ位なら当たった内に入らないわね』
『こちら三号車、ちょっとヒヤッとしたけど健在よ』
『ブルー・ハーツも問題なしだ、この程度報告するまでもねぇよ』
『四号車…大丈夫だけど正直ビビったわ……』
『こちらブラック・ハーツ、さすがはエリ姉ガッツリ当てに来たわよ』
『五号車直下よ!当てたわよ、当てたけどラブ姉の相手は超怖いんだけど!?』
ルクリリが予想した通りこの撃ち合いで戦線離脱の憂き目に遭う車両こそ出なかったが、双方共に全車が見事に一発ずつ喰らっていた。
「ったく鈴鹿のヤツ…撃つ瞬間あからさまにガン飛ばして来たわね……」
すれ違いざまの撃ち合いは双方の指揮官同士の思惑が同じであった為、それぞれ隊列の先頭と最後尾が放火を交える形となったが、エリカは砲撃の瞬間AP-Girlsの殿を務める鈴鹿が意識して自分に挑発的な視線を突き付けていた事を見逃さなかった。
その一方で黒森峰側の殿を任された直下と対峙したラブは、コマンダーキューポラから少し身を乗り出すと、砲塔左側面の黒焦げになったパーソナルマークを見下ろし憮然とした顔をしていた。
「やってくれたわね直下さん…随分と腕を上げたようだわ、私16号戦で試合序盤のこんなに早い段階で当てられたのは初めてよ……面白い、面白いじゃない……いいわ、実にいいわ……その調子でもっと私を楽しませて頂戴……」
ラブとて直下だけではなく黒森峰の選手を見縊るつもりは毛頭なかったが、限られた条件下でもたった今の一撃を躱すだけの余裕と自信は持ち合わせていた。
故に例え掠めた程度であっても試合開始早々当てられた事実を前に、さすがのラブも驚きを隠せず彼女にしては珍しくそれが顔に出ていたのだ。
とはいえそれも一瞬の事で対戦相手の強さとそれに相対する喜びが比例している彼女は、生きる糧を見付けた肉食獣の笑みで狂気に満ちたセリフを芝居じみた仕草を交え吐き出していた。
『一々メンドクサイ女……』
強敵や目を掛けて来た後輩に撃たれて喜ぶラブの性癖が顔を出した途端、AP-Girlsのメンバー達は一斉に嫌そうな顔で歓喜する彼女向けて呪詛のような毒を吐いた。
「ハッハッハッ!これはアッパレ、
「西さん!?」
「は?西隊長!?」
「イヤ、出遅れました……道中
『……』
ラブとエリカのガチンコ勝負に気を取られ、その豪快な高笑いが耳を打つまで彼女の存在に気が付かなかったみほ達は、絹代の冗談なのか本気なのか解らぬ物騒な話に無言で顔を見合わせる。
「ああ失敬、もう少し早く出立すればよかったのですが練習試合の準備で色々と忙しく、すっかり艦を離れるのが遅くなってしまいました…それにしてもフム、皆さんもお変わりないようで何よりです……しかしアレですな、全国大会の組み合わせ抽選会の前にこうして再び顔を合わせる事になるとは思いもしませんでしたなぁ♪」
「えっと、あの…西さん……?」
姿を見せるなり立て板に水でペラペラとよく喋る彼女に、漸く我に返ったみほがオズオズと話し掛けると、へにょっと眉尻を下げた笑い顔で絹代は美しいデコをペシっと叩いて見せた。
「や、これは重ね重ね失敬…久方ぶりで皆様方の元気そうなお顔を拝見しましたのでつい……イヤ失敗失敗、さぁ話はこれ位にして今は試合の中継に集中しましょう♪」
『……』
突然登場した挙句そのハイテンションぶりで居合わせた者達を困惑させた絹代であったが、実は彼女達を一番戸惑わせたのは彼女の態度ではなくちょっとした容姿の変化にあった。
快闊な性格で凛々しいと評される整った顔立ちに加え、抜群なスタイルで大学選抜戦以降ファンも多い絹代であったが、今の彼女は明らかに以前に比べてやつれて見えたのだ。
先代隊長の辻つつじの更迭以降、それをよしとせず不穏な動きを見せる一部シンパの三年生達が卒業するまでの間、その絶やさぬ笑顔の影で筆舌に尽くし難い苦労を強いられて来た絹代は心身共に疲弊し、英子の要請で亜美が介入し事態を鎮静化させた頃にはすっかりやつれ果てていたのだった。
しかし彼女が如何に苦しい立場にあったか外部に知る者は皆無に等しく、皆そのやつれように何があったのかとヒソヒソしたがさすがに当人に尋ねる事は憚られ、只隣同士で目配せしたり顔を見合わせたり位しか出来ずにいた。
「えっと、その…あ、そうだ西さん、西さんはさっきラブお姉ちゃん達……AP-Girlsが増々腕を上げたって言ってたけどそれは一体……?」
「はて?ああその事でありますか…文科省の眼鏡の木っ端役人の不始末のせいで昨年度AP-Girlsに戦車道の履修許可が下りず、許可が出るまでの間敷島殿の命で我ら知波単が的の役を仰せつかっていたのは皆さんもご存じの通り……私が先程増々と言ったのはその当時に比べての話でありますよ」
『木っ端役人…的て……』
開校以来政財界に多くの人材を輩出し、一省庁の一役人程度ではおいそれと手出しが出来ぬ聖域知波単ではあるが、今や獄中に繋がれた身とはいえ元文科省の高級官僚を木っ端役人呼ばわりする絹代の、やつれて尚揺らぐ事のない豪胆さに皆揃って唖然とする。
だが同時に高級官僚を木っ端役人呼ばわりしたその口で、自らを的などと卑下するような事を口走る絹代の卑屈とも取れる態度に何も言えなくなっていた。
「ま、まぁそう言いたくなる気持ちも解らないでもないが…何しろ私達聖グロが最初に対戦した時から、彼女達AP-Girlsはデタラメに強かったからなぁ……けどその後のデタラメぶりをずっと見てたせいか、西隊長が言うような変化が直ぐには実感出来ないのは仕方ないか……」
大型モニターのスクリーンに映る美しくも恐ろしいラブの狂喜の笑みに、ウゲェと顔をしかめるルクリリはその表情に似合いの苦々し気な声でそう独白した。
「そうだ!短期留学経験者のあなた達ならその違いが一番解るんじゃないかしら?」
「はいぃ……?」
「えぇ!?」
「もちのロンですわ!」
『ウソつけ……』
するとそんなルクリリの呟きに苦笑していたカルパッチョが、不意に何を思ったのか握った右の拳で左の掌をポンっと打ち、笠女に短期ながら留学経験のあるオレンジペコと梓とローズヒップの三人の反応を窺いながらパスを繰り出した。
三者三様、突然回って来たパスにそれぞれがその性格を反映した反応を示したが、何故か元気にお返事したローズヒップにだけは誰もが塩対応な一言を吐いていた。
ローズヒップ相手の冗談交じりの雑な扱いは抜きにしても、AP-Girlsに関する情報収集は喫緊の課題なので、果たしてこの先どうしたものかとルクリリは渋い顔のまま考え込む。
だがあのアッサムですら手を出さなかった笠女を相手に、ずぶの素人な自分が情報戦など仕掛けられるはずもなく、困り果てたルクリリはとうとう戯言レベルのアイディアに手を出したのだった。
「あ、そうか……おいペコ、オマエもういっぺん笠女に留学する気はないか?」
「ハァ、突然何を言い出すかと思えば…ルクリリ様、今の話の流れで何故また私が笠女留学という話になるのでしょうか……?」
全国大会を前に最大の脅威となるであろうAP-Girlsの最新情報を少しでも収集したい、そんなルクリリの心情は解らないでもないが話があまりに唐突過ぎたので、さすがにオレンジペコも感情を巧くコントロール出来ず露骨に嫌そうな顔を見せていた。
「そう嫌そうな顔をしなさんなって……前回の留学でペコは
「遠慮させて頂きます!」
本来の目的を放棄して半ば投げやりな猿芝居で先輩ぶった事を言うルクリリだが、その魂胆が透けて見える処か丸見えな上に明らかに面白がっている彼女の表情にムカついたオレンジペコは、最後まで言わせずに途中で話をぶった切っていた。
「…最後まで言わせろよ失礼なヤツだなぁ……何ならまた大洗の
「当校の事情に梓さんを巻き込まないで下さい!」
ルクリリの口からやや誇張した口調で自分の名前が出た途端、自らの顔を指差して『え?私……?』などと言いながらおたつく梓だったが、彼女の隣に座っていたオレンジペコは肩を怒らせ立ち上がるや大声で質の悪い先輩を怒鳴り付けていた。
「そんな怒鳴らんでもいいだろう……じゃあアレだ、チームメイト同士仲良くローズヒップと一緒に行くのはどうだぁ?」
「もっとお断りです!」
自称控えめな性格のオレンジペコとしては、性格同様控えめだった胸のサイズがたわわ化した結果梓にだけは積極的になれた事は肯定的に捉えていたし、感度までが大幅にアップして彼女との関係がより濃密な深みの域に達した事も喜ばしく思ってもいた。
しかしながらそれを差し引いてもラブのあまりにも突拍子なさ過ぎる性格と言動に加え、24時間絶叫マシンに括り付けられているような笠女での生活はもう懲り懲りだったのだ。
そんな風に考えてしまう程彼女にとって笠女への短期留学は、人生観が根底からでんぐり返ってしまう位衝撃的な体験であったようだ。
とはいえ本人はその事態を回避する為に必死過ぎてそこまで考える余裕はなかったが、彼女とルクリリの掛け合いは第三者の目にはコント以外何ものでもなく、お仲間で埋まるスタンド全体が息も出来なくなるレベルの笑いに包まれていたのだった。
「何だろう?あのスタンドだけ何かやたら盛り上がっているな…確かにさっきの撃ち合いは一見の価値ありな場面だったが、ここまで騒ぐ程の事もない気がするんだが……」
「盛り上がってるつ~より爆笑してるぞアイツら……」
「ま、まさかみほがまた何か訳の解らん事でも言ったのだろうか……?」
「いや、みほのヤツも一緒になって真っ赤な顔で馬鹿笑いしてるぞ?」
「何?そ、そうか……」
同居する二人の為にしほが奮発して購入した超大型の高精細液晶テレビは、デカいだけあって中継映像の細かな所まで実に良く見えていた。
現に今も観戦エリアの様子を映す分割画面の一つには爆笑するみほ達の姿が流れ、事情を知らぬアンチョビとまほは訳が解らずにその映像をぼんやりと眺めていたのだった。
「お、さっきのリプレイだぞ…ウ~ム、これは結構ヤバかったな、エリカはモロに砲塔の防盾に一撃喰らってるじゃないか……これがもしG型じゃなくて初期のA型だったとしたら、ショットトラップでお陀仏してた可能性もあったぞ……」
「確かに今のはかなり際どかったな…高機動中の命中精度はやはりラブに鍛えられたAP-Girlsに分があるしなぁ……けどそのAP-Girls相手に黒森峰も全車命中させているし、今の処はまだ五分五分の力関係と言ってもいいんじゃないか?但しこの先ラブのヤツは何段階かギアを上げて来るだろうから、それに何処までエリカが付いて行けるかが勝負の分かれ目になるんじゃないか?」
「やはり安斎は最終的に分があるのはAP-Girlsの方だと見るか……」
まほとて身贔屓するつもりは毛頭なかったが、それでもアンチョビが最終的にAP-Girls有利と見ている事にはやや複雑な心境であった。
「そりゃあな…何と言ってもAP-Girlsの黒幕はあのラブなんだ、そう判断するのも当然だろ……?」
「…ごもっとも……」
決して彼女もその事を失念していた訳ではないが、改めてラブが黒幕と言われたまほはガックリと肩を落とし暗い顔でアンチョビの指摘に同意したのだった。
「あ~、ラブのヤツが動き始めたぞぉ~」
そうこうしているうちに黒幕呼ばわりされたラブが本腰を入れて動き始め、中継の実況を担当するアナウンサーの声も熱を帯び始めていた。
忙しいながらも夕食の時などに録画しておいて貰ったアニメをチェックする日々。
今期の一押しはやはりリコリコなんですが、千束のキャラクター設定が色々とラブと被ってて私も驚く事が多いですね。
中でも一番驚いたのは、千束が人工心臓だった事。
結局ボツにした設定ながら話を作り始めた当初、ラブは榴弾暴発事故で大きな破片が左胸を貫通し、厳島の医療機器部門が開発中だったまだ認可を受けていない人工心臓を埋め込まれるなんて設定があったんですよね。
当然その事実はトップシークレットとなり、厳島家もそれをひた隠しにして話に暗い影を落とす予定でしたが、自分でもこれ以上ラブに重荷を背負わせてどうするとなりこの設定はお蔵入りになりました。
それにしても色々と早く落ち着かないかな?ゆっくり原稿書く時間が欲しいです。