ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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お待たせしました、やっと最新話の投稿です……。


第三十九話   Stampede

「アンタいつまで遊んでるつもり!?」

 

「うるせぇ!テメエだって人の事言えねぇだろうがぁ!」

 

 

 エリカに追われる凛々子と直下に追われる夏妃が、すれ違いざま瓦礫の山越しに互いの無様な状況を無線越しに激しく罵り合っている。

 AP-Girlsの新戦力、漸く出揃ったパンターG型がどれ程の実力を秘めているかは未だ謎だが、黒森峰側のパンターG型を振り切る事が出来ずいる状況は、自分達を散々苦しめたⅢ号J型のピーキーさを知る者達にとっては中々に驚きの光景であった。

 

 

 

 

 

「う~ん、これはちょっと意外な展開だなぁ…っとまぁそれはひとまず置いといて……さて西住さん、さすがにもう落ち着いた……?」

 

「ハイ…その、ゴメ゛ン゛ナ゛ザイ゛……」

 

 

 梓のやや不用意な一言(ボコ)に過剰反応した挙句、実に頭の悪い発作(ボコ)を起こして暴れるみほを押え込むのに苦労したルクリリは、肩で息をしながらも努めて冷静に問い掛けた。

 すると騒ぎの元凶であるみほもすっかり縮こまりベンチシートの上に正座をすると、そのまま平身低頭で平謝りしていた。

 

 

「そう、落ち着いたのならまぁいいや…でもこれ以上はもう勘弁してね……」

 

 

 大分解れてしまったお下げ髪を背後霊(ニルギリ)が編み直すのに任せて、ルクリリはその視線を平べったくなるみほではなく、彼女を捕縛するのに加勢した後そのまま隣に腰を下ろしてしまった知波単の隊長である西絹代へと向けていた。

 

 

『何と言うかこの西さんって人も凡そ普通とは言い難いよなぁ……』

 

 

 今時誰も口にしない古臭いセリフと共に助太刀に入ると、タガが外れて暴れるみほを当身の一撃で苦もなく沈めて見せた絹代を、ルクリリは規格外の化け物でも見るような目で見ていた。

 

 

『ま、アレだ…あのダージリン様をあれだけ振り回す位だからこの程度の事は訳ないか……』

 

 

 本人を前にあまり口に出来ない事を考えながらルクリリはわざとらしく溜息を吐き、本来の目的から脱線し切った状況を修正すべく話の舵を切ったのだった。

 

 

「ハァ疲れた…にしてもだ、赤星さんは一体どうしたんだろう……?こう言っちゃ失礼かもしれないけど、あのラブ姉相手にあれ程のチャンスは滅多にないはずなのに……」

 

 

 只のポンコツと化したみほ相手にドタバタやりながらもやはり試合は気になるので、脇目でチラチラと展開をチェックしていたルクリリは、小梅が突然追跡を諦め千載一遇のチャンスをふいにしてしまった事を不思議がっていた。

 

 

「そうね、あの様子だと多分マシントラブルの類ではなさそうだけど…でもこれは本当にもったいなかったわね……」

 

 

 直ぐに壊れるダージリンの相手でこの手の荒事に慣れているのか、ルクリリの頭の切り替えは意外に早く彼女の寸評は実にシビア且つ的確なものであった。

 そして彼女の意見に賛同するカルパッチョもやや戸惑った様子で、突然二号車がスローダウンしてLove Gunの追跡を中止した場面のリプレイに見入っていた。

 

 

「…またラブお姉ちゃんが何かやったのかな……」

 

『う~ん…全く否定出来ない……』

 

 

 幼少期にラブの一の子分として下らないイタズラの英才教育を受けつつも、同時に姉のまほ共々そのイタズラの実験台であったみほは、小梅が何か精神的に折れるような攻撃を受けたのではないかと疑っていた。

 そしてラブの性格を嫌という程よく知る後輩達は、みほの洩らした疑念の呟きを一切否定する事が出来ずにいたのだった。

 

 

「え~っと、ラブ姉拡声器使ったか……?」

 

「いえ、今日はまだ使ってなかったと思うけど……」

 

 

 みほの呟きを否定する事は出来なかったがそのまま黙っていると間が持たず、ルクリリは小梅突然の失速の原因になりそうなラブ愛用の質の悪い凶器の名を口にしていた。

 しかしそれと同時に彼女の確認するような視線を向けられたカルパッチョは、少し困ったような顔をしながらも小さく首を振ってルクリリの問いを否定する。

 

 

「やっぱそうか…けどそうなるとラブ姉は一体どんな手を使ったのかな……?ねぇ西住さん、あなたならその辺ある程度予想が付くんじゃない?」

 

「ふぇ!?わ、私だってラブお姉ちゃんが何考えてるか解らないよ……」

 

「そう?残念……」

 

 

 ルクリリも厳島と西住が密な関係である事は把握しているので、つい何かを期待するような目をみほに向けてしまう。

 だが肝心のみほはカエルが潰れたような声を上げるだけで何の役にも立たず、その情けない様子はカルパッチョの同情混じりの失笑を誘うだけだった。

 

 

「う~ん参ったな…またあの人は何か新しい技でも編み出したのかなぁ……?」

 

「怖い事言わないでくれる……?」

 

「うえぇ……」

 

 

 もしラブが何か()()を編み出したのなら後々色々と厄介な事になる、そう考えたルクリリは深刻そうな表情で唸り始めると、カルパッチョとみほも止めてくれとばかりに特濃の渋茶でも一気飲みしたように顔をしかめたのだった。

 

 

「あの人ホント何やったんだろう……?」

 

 

 詳しい状況が不明な為にルクリリは勝手にラブが何かやったと決め付けていたが、彼女には過去と今も現在進行形でそう勘繰られるだけの実績があったので同情の余地は微塵もなかった。

 しかしながら恐怖に駆られた挙句に深読みし過ぎた後輩達の懸念は、直後に大型モニターが映し出したリプレイ映像があっさりと吹き飛ばしたのであった。

 

 

「あ、リプレイ映像が出ま…あ゛……」

 

 

 AP-Girlsのダンスステップさながらの機動で右に左にLove Gunが踊り、それに合わせてラブのたわわな柔らかぷにぷに重装甲も激しく踊る。

 

 

『あぁ……』

 

 

 大型モニターの分割画面に展開されるリプレイ映像を指差したカルパッチョが真っ先に固まり、それに釣られて画面に目を向けた者達も一斉に小梅が突然戦意を喪失した真相を知る。

 最も小梅の視点に近い背後から追うドローンからのバックショットには、揺れるLove Gunのコマンダーキューポラ上で悪あがきするラブの荒ぶる裏乳と、それを目の当たりにしたが為に耐え切れなくなり両手で顔を覆いイヤイヤと頭を振る小梅の姿が映っている。

 

 

「んも──っ!ラブお姉ちゃんのバカぁ!」

 

「いや西住さん、別にあの人が何かをした訳では…訳ではないが……」

 

「確かに何もしてないけど……」

 

 

 一般の観戦客は激しいチェイスシーンに気を取られているようだが、中学時代から既に桁外れのサイズを誇っていたラブの超弩級たわわに翻弄されて来た後輩達は、小梅達の身に何が起きたかに気付くなり三者三様な反応を示したのであった。

 

 

「あ~やっぱり…けどあんなに鼻血出してこの後試合続けられるかしら……?」

 

「あれ位なら大丈夫じゃないか?私らも散々経験してるし……」

 

「……」

 

 

 そして田浦駅前に逃げ込んだ後の惨状を目の当たりにした一同は、自分達の予想が間違ってはいなかった事に疲れた様子で溜息を吐き合っていた。

 

 

「…け、けどなぁ……ラブ姉のアレはともかく、正直この状況は予想外よね……決してAP-Girlsの動きが悪いじゃないのに、彼女達がこれだけ後手に回るなんて誰も思わなかったんじゃない?」

 

「…またラブお姉ちゃんが何かやったのかな……」

 

『すっかり被害妄想の塊ね……』

 

 

 このままでは息が詰まるとルクリリはやや強引に話題を変えに掛かったが、被害妄想の強いみほだけは一人ラブの影に踊らされたままマイナス思考がループしていた。

 

 

「えぇと……多分またラブ姉がAP-Girlsに何か特定の条件縛りを掛けてる可能性はありますね」

 

 

 それは昨年ラブと再会後行われた6連戦のごく初期段階での話だった。

 自分達の出番が来るまで情報収集がてら観戦していたアンチョビは、ラブが一戦毎にテーマを決めてAP-Girlsに行動制約をかけた上で、様々な戦術なり戦法なりを試しているのではと疑念を抱き慎重に観察を続けていたのだ。

 

 

「あ~その話ね…その話は私もダージリン様から聞かされてたよ……」

 

 

 自分でその名を口にしておきながら言った途端に口をへの字にしたルクリリは、それでもダージリンから聞かされた謎多き異色の戦車道チームAP-Girlsについて語り始めた。

 

 

「そもそもが聖グロでダージリン様より先に気付いたのはアッサム様らしいんだけどね…どうやら経験値を稼ぐというのは表向きの口実で、実際には本気で私達をAP-Girlsの為の実験用のモルモットにするつもりですわ……って言われたのよ、練習上がりの紅茶の園で眉間に皺寄せてね……あ、それと仲間内で最初に気が付いたのはやっぱりアンチョビ先輩らしくて、ホントそういう所だけはよく見てるってブツブツグチグチとボヤキにも付き合わされたのよね~」

 

『う゛ぇ゛~』

 

 

 当時を思い出したルクリリが自虐的な口調で遠い目をすれば、ダージリンの性格をよく知っている者達が一斉に心底嫌そうに呻き声を上げる。

 但したった今ルクリリが語った事は各校の隊長達の間で情報交換がなされていたので、代替わりした現隊長達もある程度の状況は把握していたのだった。

 

 

「まぁでも自分達が率先してモルモット役を請け負った訳ですから、ドゥーチェもその事でとやかく言うつもりもなかったみたいですけどね」

 

 

 今この場にいるメンツの中でも、中学時代比較的ラブから目を掛けられていたルクリリとカルパッチョが話す合間にグルリと周りを見回せば、彼女達の傍に集まっていた各校の幹部クラスの選手達も向けられた視線にウチも似たようなものだと頷いていた。

 

 

「ん~っと多分…いや、確実に新設校リーグ戦でも実験は続けてたんじゃないか?全戦試合中継の録画はそれこそ穴の開く程見返したけど、その度に途中に何で?って場面があったからね……」

 

あの人(ラブ)なら充分にあり得ますね……」

 

 

 彼女から指導を受けた経験があるだけに、ラブの恐ろしさや何をやるにも必ず裏がある事を知っている二人は、悟りを開いた(開き直った)高僧のような態度でウンウンと頷き合っている。

 

 

「う゛ぅ゛…足枷されてあの強さって……」

 

「全くねぇ…たった5両のⅢ号もでも馬鹿みたいに強かったのがパンターG型に乗り換えた上に、新一年生も加わって戦力も上積みされる……あ~あ、つくづくAP-Girlsって厄介な連中よね~」

 

 

 ルクリリとカルパッチョの話に他の誰よりラブのえげつないまでの強さを知るみほは、重戦車の履帯に轢かれて熨斗烏賊にされたボコのような呻き声を上げる。

 その一方ですっかり開き直った口調で話すルクリリは、定番のお手上げポーズでやれやれと大袈裟に首を左右に振って見せるのだった。

 

 

「厄介ねぇ…それはまた随分と控えめな表現ですね……」

 

「そお?いずれにしたってアレよ、ラブ姉がまだ何か実験的な事を継続しているのなら、私達がその被験者になるのは解り切っている事なんだもの、厄介意外に適切な表現ってある?」

 

「また直球な事を……」

 

『……』

 

 

 身も蓋もないと言えばそれまでだがルクリリの言う通りであれば、卒業して行った面倒な先輩達に引き続き自分達がラブのオモチャになる事は確定しているので、この先彼女と対戦する可能性のある者達は一斉に天を仰ぎ深い溜息を吐いたのだった。

 

 

「つまりはアレですのね?私達がまたベニズワイガニのかませ犬になるんですのね!?」

 

「黙れこの突っ走るしか能のないシベリアンハスキー頭が!」

 

『この学校、何か必ずオチを付ける決まりでもあるのか……?』

 

 

 それまで黙っていたのは口を挿む余地がなかったのかタイミングを計っていたのかは不明だが、突然乱入したローズヒップのおバカ発言に速攻でキレたルクリリは、辺りを憚る事なくフルボリュームで自称ラブのマブダチを怒鳴り付けた。

 そしてグイっと身を乗り出してとっ捕まえたローズヒップ頭を小脇に抱え込み、握った拳をその頭頂部にグリグリと力任せにめり込ませている。

 

 

「アダダダ!痛い、痛いですわ!そんなグリグリされたら頭のカニ味噌が出ちゃいますの!」

 

「やっかましい何がカニ味噌だ!オマエの頭に詰まってるのはせいぜいカビの生えた糠味噌かなんかだろう!ったく毎度毎度わざとしょーもないネタを…ん、何だ……?」

 

 

 説教&拳による制裁を喰らっても尚ボケるローズヒップだったが、そのふざけた態度に更にキレたルクリリは抱え込んでいたピンク頭を激しく上下に揺さぶっていた。

 するとカクテルを作るシェイカーよろしくシャカシャカされたローズヒップの胸元からポロリと一冊の手帳が零れ落ち、落ちた拍子に開いたページの書き込みがルクリリの目に留まった。

 

 

「何だこりゃ手帳か?随分と高そうな手帳だな……」

 

「あ!それは!」

 

 

 ローズヒップの物とは思えぬ手帳が彼女の胸ポケットからたわわの圧で射出されると、小さいながらも見るからに高そうな装飾の革表紙にルクリリは目を見張った。

 するとヘッドロックされたままのローズヒップが慌ててその手帳に手を伸ばしたが、それより先にルクリリがグッと屈んでその手帳を拾い上げてしまう。

 

「オマエこんな手帳持ってたか……?」

 

「だ、ダメですの!返して下さいですの!」

 

 

 ガッチリ頭を抱えられているローズヒップは、動揺し裏返った声で何とか手帳を取り返そうと必死だったが、それに構わずルクリリはあからさまに怪しい手帳の中身を検めにかかった。

 

 

「…おいローズヒップ、何だコレは……?」

 

 

 ローズヒップの頭を左腕で抱え込んだままの状態で、右手だけで器用に拾い上げた手帳のページを捲ったルクリリであったが、その内容に目を走らせるうちに彼女の目付きはみるみる険しいものになり、声の方も数段トーンが下がりドスの効いた声へと変わっていた。

 

 

「こ、ココココレは何でもな……イ゛!イ゛ダダダ!痛いですの────っ!」

 

「オマエやっぱりこんなモノ作ってやがった…ん……?」

 

 

 ダージリンがラブに梅こぶ茶に代わるべにふうきのティーネームを与えて以降、彼女が記憶する限りローズヒップが真面にその名を呼んだ事はなく、いくら走り回るしか能のない駄犬だとしてもさすがにそこまでアホではないはずだとルクリリも思っていた。

 故に絶対にわざとやっているだろうと端から疑っていたルクリリは、拾った手帳に目を通しながら怒りに肩を震わせていたのであった。

 しかしこの大バカヤロウがと抱えたピンク頭を一層力強く締め上げた処で、開いたページに羅列されたべにの付く単語の筆跡がローズヒップのものではない事に気が付いたのだった。

 

 

「こ、この独特の筆跡は……」

 

 

 絶対にわざとやっているだろうと疑うのと同時に、果たしてローズヒップの残念なおつむにそれだけのボキャブラリーがあるかどうかも疑っていたルクリリは、相当に特徴的なクセの強い筆跡で書かれた文字列に全てを理解したのであった。

 

 

「…成程ね、あの人の仕込みなら手帳がやたら高価そうなのも納得だ……あ───っ!やっぱりそうだ!ったくあの人はホントにもう!」

 

「グェ!」

 

 

 全てはラブの差し金、ローズヒップはあくまでも手駒に過ぎず彼女が毎回無理のある言い間違いを繰り返していた背後にラブという黒幕がいた事を確信したルクリリは、ローズヒップと手帳を足下に叩き付けながら泣き言交じりに不満を爆発させていた。

 

 

「そもそもがだ!ダージリン様が最初から素直にちゃんとしたティーネームを贈らないからこんな事になるんじゃないか!どうしてあの人は卒業してまで迷惑かけるんだ!?」

 

 

 ダージリンが卒業して漸く蘊蓄と諺から解放されたとホッとしたのも束の間、彼女の悪ふざけに起因する災難を前にルクリリはワシャワシャと髪を掻きむしり、折角ニルギリが結い直してくれたばかりのお下げ髪を台無しにしていたのだった。

 

 

「はっはっはっ!卒業されても尚こうして慕われているとはさすがは紅茶殿でありますなぁ♪」

 

『コイツも相変わらず人の話聞いてねぇな……』

 

 

 ダージリンの置き土産にキレるルクリリを不憫に思う一方、場の空気も読まずに高笑いする絹代に周囲は只冷ややかな視線を向けたが、面倒な諺女の相方を務めるだけにその程度の事で彼女は動じるような素振りを見せなかった。

 

 

 

 

 

 

紗英(さえ)!車長権限よ!リミッター限定解除!一気に加速してエリ姉を振り切って!」

 

 

 ラブの予想を遥かに上回る機動力を発揮して肉薄する対16号戦仕様のパンターG型に追われ、簡単に振り切れる相手ではない事を思い知らされた凛々子は、窮地を脱する為に自らに許された中で最も強力なカードを切ろうとしていた。

 

 

「ちょっと凛々子それ本気で言ってるの!?」

 

 

 イエロー・ハーツの操縦桿を握る花邑紗英(はなむらさえ)は、車内に充満する猛るが如きエンジンの唸りに負けぬよう大声で怒鳴り返す。

 

 

「エリ姉がしつこいんだから仕方ないでしょ!取れる回避機動も限られた状況でいつまでも逃げ切れるもんじゃないってのはアンタだって解ってんでしょ!?」

 

 

 左右に大きく揺れるコマンダーキューポラから負けじと怒鳴り返す凛々子だが、エリカに聞こえてしまったのではと振り返る辺り彼女が相当切羽詰まっている証拠だった。

 

 

「けどホントいいの?よっぽどの事態になるまであまり手の内晒すなってラブ姉言ってたよね?」

 

「うん言ってた、全国までは程々にってね~」

 

 

 エリカの猛追を振り切れぬ事に業を煮やした凛々子は非常手段に打って出ようとするが、紗英に続いて砲手の村瀬林檎(むらせりんご)と装填手栗原緋色(くりはらひいろ)にまで横槍を入れられると、一層険しい表情で口角を吊り上げ本音をぶちまけ始めた。

 

 

「うっさい!今がそのよっぽどの事態なのが解んないの!?ったく何でアンタ達は毎度毎度そう呑気なのよ!?私はⅢ号からパンターに乗り換えて早々に白旗第一号なんてまっぴらゴメンなの!大体もしそんな事になったら夏妃の馬鹿に何言われるか分かったもんじゃないでしょ!?」

 

 

 ついさっきすれ違いざまに夏妃を罵倒した手前、意地でも彼女より先にリタイアしたくない凛々子は、例え禁じ手を使ってでも窮地を脱しようとしていたのだ。

 

 

「追い詰められて本音が出たね」

 

「うん出たね、夏妃相手だと途端にこれだから解り易いわ~」

 

「何か言った!?」

 

「別になんも言ってないわよ」

 

「言ってない言ってない♪」

 

 

 隙あらばタッグを組んでイジリに来る林檎と緋色のコンビを睨む凛々子だったが、彼女の鋭い視線など何処吹く風で二人は軽く受け流していた。

 

 

「…取り敢えずラブ姉には一言私から言っとくわ……」

 

 

 非常事態にも拘らずイエロー・ハーツの車内はいつも通り騒がしいが、唯一人別次元なアンニュイな空気を纏った通信手の高御堂寧(たかみどうねい)は、凛々子の返事を待つ事なく通信機に向かいラブを呼び出し始めていた。

 

 

 




何と言いますか急がし過ぎて完全に時間の間隔がおかしくなっています。
多分平均睡眠時間が4時間以下の状態が続いてるのが原因なんでしょうけど……。
次回はもっと早く投稿出来るよう頑張ります。

ガルパン博にも行きたいけど、前売り買っても無駄になる可能性が高いです……。

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