ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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恋愛戦車道の読者の皆様大変長らくお待たせ致しました。
まだまだ病み上がり感は強いですが漸く最新話の投稿です。

しかし投稿再開早々にサブタイトルはおバカですw


第四十六話   マッパGoGoGo

「それじゃラブ姉また明日……」

 

 

 例え試合に勝ってお風呂で惨敗したとしてもいじけてホストの役目をおざなりにするラブではなく、彼女主催の夕食会とカラオケパーティー(大宴会)は今回も大盛況だった。

 特にある程度お腹が満たされた頃から自然な流れで始まるカラオケ大会は、本物のAP-Girls専用ステージで歌えるまたとない機会とあって黒森峰の選手達の間でも人気が高く、もし日頃彼女達と鎬を削るライバル達が見れば狐に抓まれたような顔をする事請け合いなはっちゃけぶりであった。

 何しろステージ上では入れ代わり立ち代わりAP-Girlsのメンバー達が飛び入りで参加し、盛り上げ役として一緒に歌ってくれるのに加えステージのもう一方の主役であるRepli Gunまでもが登場して、装備されたギミックフル稼働で大暴れするので彼女達が弾けたのも当然の事といえただろう。

 そしてスロットル全開の馬鹿騒ぎの終了後、翌日の16号戦復活記念を兼ねたライブに備えて疲れ切った身体を休める為宿舎に向かう送迎バスに乗り込もうとしたその時の事。

 

 

「イヤイヤイヤ、何言っちゃってのよエリカさん!?エリカさんはコッチ!エリカさんはこっちのバスに乗るの!」

 

「ちょ!危ないわねぇ何すんのよ…まぁそんな事よりコッチってナニ?どういう事よラブ姉、このバスはラブ姉達の寮に行くバスでしょ?なのに何で私がこのバスに乗らなきゃいけないんですか……?」

 

 

 別れ際に軽い挨拶を済ませたつもりのエリカが送迎バスの昇降ステップに足を掛けようとすると、不意に駆け寄ったラブが彼女の腕を取り半ば強引に自分の方へと引っ張ったのであった。

 するとバランスを崩してラブのたわわなエアバッグの上に軟着陸したエリカは、訳が解らず背中に感じるプニプニの感触にドギマギしながらも文句を言った。

 

 

「何でって決まってんじゃん!今夜エリカさんは私達の部屋にお泊りするからよ!」

 

「ハァ!?何が決まってるですってぇ!?」

 

 

 文句を言うエリカの腕をここで逃がしてなるものかと一層力強くたわわの谷間にグイグイやりながら、ラブは一人勝手に理不尽極まりない事をさも当然のように力説していた。

 

 

「だぁ~かぁ~らぁ~!今夜エリカさんはぁ~、私達とぉ~お泊り会すぅ~るぅ~のぉ~!」

 

「ハァァァ…ホンっとこの人は私の話なんか聞いちゃいねぇ……」

 

 

 何か下らない事を思い付いたら人の迷惑省みずリミッターの外れたクルセイダーと化すラブに、また巻き込まれるのかと眉間に皺を寄せたエリカは盛大に溜息を吐く。

 

 

「おっ泊り会♪おっ泊り会♪」

 

「…アンタらもいーかげんでラブ姉の事止めなさいよ……」

 

 

 これは決定事項と独り勝手に浮かれて盛り上がるラブを尻目に、やりたい放題する彼女を止めようともしないAP-Girlsにもエリカは苛立ちを覚えていた。

 だがこうなったら何を言っても耳を貸さず言うだけ無駄だと解っているAP-Girlsは、突き刺さるエリカの鋭い視線から全員が目を逸らし誰一人目を合わせようとはしなかった。

 

 

「さ!そういう訳でエリカさんはコッチコッチ♪」

 

「だから何がそういう訳なのよ!?」

 

 

 彼女を寮に連れ帰って楽しいお泊り会をする事で頭が一杯なラブの耳に、心底迷惑そうなエリカの声は残念ながら全く届いていないのであった。

 そして無邪気なニコニコ顔でエリカの腕を取り宿舎行きの送迎バスに乗るのを阻止したラブは、そのまま自分達の乗るバスへと押し込もうとしていた。

 

 

「オホホ…それじゃ私達はこの辺で……」

 

「は?小梅……?」

 

 

 体格で大幅に勝るラブに腕を絡め捕られたエリカの脚が止まると、まるで引き攣り笑いの口元を隠すように掌を当てた小梅はどこかで聞いたようなセリフだけを残し、巻き添えを食わぬうちにそそくさと送迎バスに乗り込んでいった。

 

 

「あ、この!アンタ達帰ったら覚えてなさいよね!」

 

 

 小梅の見せた薄情さにエリカが呆気に取られているうちに、黒森峰の選手達は一人残らず送迎バスに乗り込み、ドアの開閉時に鳴るブザーの音で彼女が我に返ると既にバスは発車した後であった。

 

 

「あいつら……」

 

「さ!エリカさんはコッチコッチ♪」

 

 

 彼女一人を生贄として差し出しておけば我が身の安全は保障される、そう瞬時に計算した小梅達にいともあっさりと売られ怒り心頭なエリカは、遠ざかる送迎バスを射抜きそうな視線で睨み付ける。

 しかしそんなエリカの心境などお構いなしなラブは、再び彼女の腕をグイグイとたわわに押し付けるように引っ張ると、そのまま問答無用で寮へと向かうバスへと乗り込んで行ったのだった。

 

 

 

 

 

「さ~着いたわよ~♪」

 

 

 バスに揺られる事数分、寮という名のマンションの車寄せに降り立ったラブは上機嫌でエントランスへと手招きする。

 

 

「これが寮……」

 

 

 車寄せにバスが滑り込む前に見た外観からして高級マンションにしか見えなかったが、その内装もまた外面と同様にセンスの良さを感じさせるものの凡そ学生寮とは思えない造りだった。

 AP-Girlsの寮が凄いらしい事は以前から何となく話には聞いて想像が付いていたし、近付くにつれ見えて来た細かなディテールからもやはり只事ではないのが直ぐに理解出来た。

 そして実際に中に入って見ればそこは自分が暮らす黒森峰の寮とは別世界だったので、さすがのエリカも高い天井を見上げて思わず溜息を吐いてしまったのであった。

 

 

「ささ、入って入って~♪」

 

 

 だが厳島のお姫様にとってこの程度ではどうって事ないらしく、ラブはお気楽な調子でエレベーターホールからエリカをヒラヒラと手招きしていた。

 

 

「…ハァ、ものの見事に寮って概念がどっかいっちゃったわ……」

 

 

 例え頭で解ってはいても改めて見せ付けられた異次元レベルの厳島のマネーパワーを前に、天を仰いで深く溜息を吐いたエリカは重い足取りでエレベーターに乗ったのだった。

 

 

 

 

 

「たっだいま~っと~♪」

 

 

 途中階に何度か止まる度に同乗していたAP-Girlsのメンバー達が降りた後、ラブと愛に加えてエリカの三人を乗せたエレベーターは最上階に到達していた。

 

 

「さ、エリカさんも入って入って~♪」

 

『マンションが寮になってるのは知ってたけど、コレはいわゆる億ションってヤツよね……』

 

 

 招き入れられたラブと愛の暮らす部屋に脚を踏み入れたエリカは、玄関に設けられた靴や外套などを収納するウォークインクローゼットを検分しながらついそんな事を考えていた。

 

 

「あ~そうだ、悪いんだけどドアはストッパーかけて開けっぱにしといてくれる?暫くは明日のライブの事やなんかでウチの子らが出たり入ったりするから~」

 

「ハァ……」

 

 

 玄関に入っただけで圧倒されていたエリカは、すっかりリラックスモードに頭が切り替わっているラブの頼み事に歯切れの悪い生返事を返す。

 

 

「…う~ん……とてもじゃないけど凡そ高校生が暮らす寮には見えないわね……」

 

 

 比べる事自体がナンセンスである事は彼女も解ってはいたが、つい頭の中で黒森峰の伝統ある木造の寮と比較してしまったエリカは、平然とした様子で脱いだばかりのコインローファーに除菌消臭スプレーをかける愛の姿に、何とも形容し難い不条理を感じられずにはいられなかった。

 但しここで彼女を弁護しておくならエリカは別に黒森峰の寮が嫌いな訳ではなく、代々使い込まれ思い出の詰まった趣のある部屋には愛着すら感じていたのだ。

 

 

「エリカさん、靴は脱いだらそのままにしておいて下さい…私が手入れしておきますから……」

 

「それ位自分でやるからいいわよ、スプレーとそのウェス借りるわね……」

 

 

 自分とラブの靴を手入れしていた愛からスプレーを受け取りエリカが靴の手入れを始めると、愛は自分達の靴をクーゼットの中の棚へと片付け始めた。

 もしこの場面だけを見ていればまるでラブが身の回りの世話の一切を愛に押し付け、彼女を小間使い扱いしているかのように思われるかもしれないが、愛が靴の手入れをする間にラブは洗濯機を回したりしていたので、二人の間に日常の役割分担が極自然に出来ている事がエリカにも手に取るように解った。

 

 

「何です?お手入れが終わったのなら先に行ってて貰っていいですよ……?」

 

「ええ、そうさせて貰うわ……」

 

 

 自分を観察する視線に気が付いたのか愛は先に部屋に行くようエリカに促したが、口ではそう答えながら一向に動こうとしないエリカの態度を彼女は訝しんだ。

 

 

「あの…まだ何か……?」

 

「ん?ああ何ね、アンタ普段はさんざラブ姉が愛情表現撒き散らしても無下に扱うクセにさぁ、いざそのラブ姉の事となると徹底してマメに働くなぁって思っただけよ」

 

 

 中々人に懐かぬ野生動物のように滅多な事で人に心を開かぬ愛だったが、不思議と自分にだけは素直な所を見せる彼女をエリカもまた憎からず思っていた。

 そしてだからという訳ではないが、目の前で少し怪訝そうにしている可愛い小動物を揶揄いたくなったエリカは、少々人の悪い笑みを浮かべると芝居がかった仕草で意地の悪い事を言ったのだった。

 

 

「…揶揄わないで下さい……」

 

「そうは言われてもねぇ……何と言うか新婚さんの新居にでもお邪魔したみたいでさ~」

 

「エリカさん!?」

 

 

 日頃あまり感情を面に出さぬ愛の声が、エリカの耳を疑うような発言に軽く2オクターブは跳ね上がる。

 

 

「アッハッハッハ!耳まで真っ赤にして可愛いのう♪それじゃお邪魔させて貰うわ」

 

 

 すっかり動揺した愛の姿に満足したエリカは用意してあったスリッパをつっかけると、大笑いしながらリビングへと続く廊下を進んで行った。

 

 

「…エリカさんのバカ……」

 

 

 いとも容易く手玉に取られ、愛は手にしていたラブのコインローファーを思わず胸に抱えると、崩れるようにその場にしゃがみ込んで何とも可愛らしい呟きを洩らしたのだった。

 

 

 

 

 

「あぁもう、この部屋の何処が学生寮なんだか……これだから厳島のやる事はって言われるのよ……」

 

「え~?何だって~?」

 

 

 軽く愛を一捻りにした勢いをかってリビングに突入したエリカは、その広さと学生寮らしからぬ凝った内装にもう何度目か解らぬ呆れの溜息を洩らしていた。

 

 

「別に大した事じゃないです…ただ単にへ~ここがラブ姉達の愛の巣か~って思っただけですから……」

 

「ちょ!ちょちょちょちょいちょいエリカさん!あ、愛の巣ぅ!?いきなり何を言い出すのよ!?」

 

 

 入寮当時部屋割りを決めるにあたりAP-Girlsのメンバー全員が一人部屋を選択し、ごく普通に新生活をスタートさせていた。

 しかし榴弾暴発事故の影響による後遺障害を抱えるラブの世話をする為、彼女の部屋に頻繁に出入りするようになった愛は入寮から三日と経たぬうちに移動の手間が煩わしくなり、早々に引っ越しを決断するとさほど多くはない自らの荷物をラブに部屋へと運び込みそのまま住み着いたのだった。

 そして秋を迎えラブが嘗ての仲間達と再会を果たして以降、急速に二人の関係は深まり文字通りその部屋はエリカの言うように愛の巣と化していたので、彼女の皮肉を込めたイジリは実に的確に的を射抜いていたのだ。

 

 

「イヤだってねぇ、入った瞬間すっげ~濃いメスのニオイが部屋中にプンプンと立ち込めてたし」

 

 

 エリカの痛烈な一撃を浴びてメスのニオイというフレーズに心拍数が跳ね上がったラブは、すっかり動揺した様子であたふたしながらお茶を入れる手を止めた。

 

 

「な、ナナナナニヲイッテイルカワタシニハサッパリワカラナイヨ!?」

 

「イントネーションが変ですよ…あぁ、ラブ姉の日本語がおかしいのは昔からでしたね……」

 

「……」

 

 

 幼少期亜梨亜と共に渡米後直ぐに英会話を学び始めたはいいが、その過程で一々英語と日本語を交互に変換するのが面倒になったラブは、最初から日本語ではなく英語で考えればよいという非常識極まりない結論に至っていた。

 そして信じ難い事に即座にその発想を実行に移してしまった彼女は、周囲も驚く驚異的な速さで英語力を向上させて行ったのであった。

 ただその過程で彼女の脳内に於いて第一言語が日本語から英語に切り替わったその結果、ラブの話す日本語は何処か間延びしたイントネーションのおかしなモノへと変化してしまっていたのだった。

 昨年熊本の西住家訪問時にこの事実を亜梨亜から聞かされていたエリカは、ラブの日本語がいつも以上に怪しくなった瞬間速攻でツッコミのネタにして彼女を黙らせていた。

 

 

「おやダンマリ?確か沈黙は是なりでしたっけね……?」

 

「そ、そんな訳────」

 

「へっ!どーせ覚えたての快楽に溺れて毎夜毎晩ちちくりマンボなんでしょ?」

 

 

 凡そ彼女らしからぬゲスい勘繰りに気が動転したラブは必死にそれを否定したが、それを遮るように右の掌をかざしたエリカは鼻で笑いながら更なる追い討ちをかける。

 

 

「ち、ちちくりぃ!?ひ、人をサカリの付いた動物みたいに言わないで!」

 

「違うの……?」

 

「ぐ…あのね……」

 

 

 耳まで真っ赤にしたラブが情けなく裏返った声で反撃を試みるも、今度は素に近い表情で意外そうに驚かれてしまい彼女は完全に言葉に詰まってしまった。

 事実昨夜もエリカ相手に戦意が高揚していたラブと愛は、おやすみのキスだけのつもりがそれだけでは収まらず高ぶる感情のままに互いを求め結局は激戦を演じていたので、図星を突かれた彼女は無意識のうちに視線を逸らしていた。

 

 

「じ、自分が欲求不満だからって八つ当たりしないで……」

 

「はぁ?何か言いました?ラブ姉の頭ン中が慢性的にどピンクなのはラブ姉の日本語がおかしいのと一緒で昔っからの事でしょうに…ナニ目ぇ逸らしてんです……?」

 

「……」

 

 

 隊長という立場上学校が所有する航空戦力は比較的自由に使えるエリカだったが、そう頻繁にドラッヘやらドルニエやら飛ばして大洗のみほの下へと通う訳にも行かなかった。

 その辺の事情を突いて反撃を試みるも肝心な時に脇の甘いラブは、エリカの強烈なカウンターを浴びて成す術もなく返り討ちにされたのだった。

 

 

「うぅ…今日のエリカさんは全然優しくない……私の可愛いエリちゃんは何処に行っちゃったの……?」

 

「ホッホッホッ!何とでも言うがいいわ!私なんざど~せただの通りすがりの敵役だし~♪」

 

「……」

 

 

 今度は臭い芝居でエリカに罪悪感を抱かせようと目尻に涙を浮かべるラブだったが、その程度のショボい手が彼女に通用するはずもなく似たような猿芝居で返されいよいよラブは打つ手がなくなった。

 

 

「ラブ姉、お湯沸いてますよ……?」

 

「え?あ、ゴメン…ソコに座ってて、今お茶淹れるから……」

 

 

 果たしてどの程度呆けていたのか、エリカに言われるまでケトルが湯気を上げている事に気付かずにいたラブは、我に返ってもまだ何処か緩慢な動作でお茶を淹れ始めたのだった。

 

 

 

 

 

「どうぞ……」

 

「あら、このハーブティー凄く美味しいわ♪」

 

「そう?気に入って貰えたのなら嬉しいわ……」

 

「……?」

 

 

 ガラスポットに適温に調整された湯が注がれ色とりどりのハーブが踊る。

 立ち昇る香りに目を細めたエリカは勧められるままにカップを受け取ると、なんの躊躇もなくカップを口元に運び淹れたてのハーブティーを口に含む。

 しかしラブとエリカの間に漂う微妙な空気に遅れてリビングにやって来た愛は事情が分からず、怪訝そうな顔でハーブティーを啜りながら様子を窺っていた。

 

 

「ええ、本当に美味しいです…けどこれは既製品って感じじゃないですよね……このハーブティーってもしかしてラブ姉のお手製じゃないんですか?」

 

「中々鋭いわね…確かにこのハーブティーは自家製だけど私が作った訳じゃなくて、私の実家にあるハーブガーデンで栽培してるハーブで私好みに作って貰ってる物なのよ」

 

「実家…あ~、あのお城の……」

 

 

 ラブの実家と聞いて少し考え込んだエリカだったが、やがてそれが東京湾の玄関口にあたる浦賀水道を眼下に見下ろす小原台にそびえるドイツ風の古城である事を思い出した。

 しかしその城の威容と実家という単語の意味が直ぐには結び付かず、上の空で天井を見上げたエリカは曖昧な返事しか出来なかった。

 

 

「お替りいかが?」

 

「ん?あぁ頂きます……」

 

 

 あの城なら相当広いはずだしハーブガーデン位あるだろうとぼんやり考えるうちに、いつの間にかすっかり飲み干し空になっていたエリカのカップに淡い琥珀の液体が再び注ぎ込まれる。

 

 

「ふ…何と言うかこの香りと味は気持ちが落ち着きますね……」

 

「私の好みに合わせてあるけどリラックス効果重視で作って貰ってるからそう言ってくれると嬉しいわね♪もし良ければ帰る時に分けてあげるから持って帰るといいわ」

 

「いいんですか?それじゃ遠慮なく頂いて帰ります」

 

 

 実家謹製のハーブティーを褒められ気を良くしたのか、エリカに軽く捻られいじけ気味だったラブのテンションも持ち直し暫くは愛も交えた三人で他愛もない茶飲み話に時間を費やしていた。

 しかしそうしているうちに事前にラブの言った通り、AP-Girlsのメンバー達が入れ代わり立ち代わり部屋を訪れては明日のライブに関する相談やらちょっとした打ち合わせを繰り返し、その間中ラブはメンバー達の為にハーブティーを淹れ続けていたのだった。

 

 

「なんかやたら茶葉のストックが多いと思ったらこういう事だったのね…けど来るヤツ来るヤツ揃いも揃って自前のカップ持って来てるって事はこっちが目当てで話は二の次なんじゃないの……?」

 

「まあそ~っすねぇ…エリ姉の言う通り話よりコッチが目当てなのは当たってるよなぁ……?」

 

「何で私に聞くのよ?まぁ否定はしないわ……」

 

「アンタ達ね……」

 

 

 この日最後にラブの部屋にやって来た夏妃と凛々子が手にしたマグカップを呆れの目でエリカが睨めば、息ピッタリの夫婦漫才でそれに応じた二人は仲良く注いで貰ったハーブティーに口を付けた。

 

 

「エリ姉の言いてぇ事は解るけどこればっかりは仕方ない…何しろこのハーブティーだけは幾ら淹れてもラブ姉と同じ味が出せねぇんだから……後でエリ姉も自分で淹れてみれば解りますって……」

 

「そうなの……?」

 

 

 口は悪いが料理の腕はダントツな夏妃の意外な発言に目を丸くしたエリカは、そのままキッチンでハーブティーを淹れるのに使った茶器を片付けるラブに向ける。

 

 

「さぁ?私は誰が淹れても同じだと思うけど……」

 

 

 片付けの合間に自らのカップに口を付けたラブは、茶葉の入ったガラスポットをキッチンの壁に作り付けられた棚に戻しながら短くそう答える。

 

 

「一度ダージリン先輩辺りに判定して貰ったらどうです?」

 

「止めてよメンドクサイ……」

 

 

 淹れて貰ったハーブティーの味と香りに目を細めたエリカの何の気なしに放った一言に、ラブは眉間に深い縦皺を刻み彼女の提案を即座に却下した。

 

 

「そんじゃ今度会った時にペコにでも味見させっかな~?」

 

「夏妃アンタね、お茶イコール聖グロに直結して考えんな!そもそもこのハーブティーは自家製でそんなに沢山作ってる訳じゃないんだからね!さ、二人共明日も忙しいんだから帰った帰った!寝不足でステージでドジこいたら承知しないよ!?」

 

「ちょっとぉ!この馬鹿(夏妃)と十羽一絡げに扱うの止めてくんない!?」

 

「んだとおぉ!?」

 

 

 既に卒業したダージリンとは違い同期な上に、短期留学でAP-Girlsの番外メンバー扱いのオレンジペコの名を出して適当な事を言う夏妃にラブの堪忍袋の緒が切れ、とばっちりを喰らった凛々子がすかさず牙を剥いて食って掛かる。

 

 

「アンタら本当に息ピッタリね~」

 

『ぐっ……』

 

 

 だがその凛々子に馬鹿呼ばわりされた夏妃が声を荒げると、息の合った掛け合いに感心したようなエリカのツッコミがすかさず入り、反論の余地がない二人は言葉に詰まり目を白黒させた。

 

 

「騒がしくてゴメンなさいねエリカさん」

 

「いえ、消灯前の学生寮なんて何処も似たようなもんじゃないんですか?」

 

「ここ消灯時間決まってないのよね……」

 

 

 痛打を浴び沈黙した二人をここぞとばかりに部屋から追い出したラブが困ったように苦笑を洩らすと、さして気にした風でもなくエリカは肩を竦めて見せる。

 

 

「黒森峰だって消灯時間というか就寝時間なんて有名無実化してますよ?」

 

「う~んいずこも同じか、ウチは特に騒がしい気がするけど…ま、それは今に始まった事じゃないし……さて、明日もあるから今日はもう寝ないとさすがにきついわね……」

 

 

 厳しい規律で知られる黒森峰とあってもそこはやっぱり女子高生、エリカの洩らした内情に曖昧な表情で低く唸ったラブは壁掛けの時計を見上げてグッと伸びをする。

 

 

「やれやれやっとか…ねぇラブ姉、私は何処で寝ればいいの……?」

 

 

 タフさにはそれなり自信はあるが、それでも試合とその後の一連のドタバタ騒ぎに流石の彼女も疲れを隠す事を出来ず、欠伸をかみ殺しながらリビング中に視線を彷徨わせた。

 玄関からリビングに来る途中、ドアの開いていた部屋は学習部屋という名のクローゼットと化していたし、可動式の間仕切りが解放されたリビングの隣の部屋はこちらも二人の機材(楽器)置き場だった。

 

 

『ふん、となると今夜の私の寝床はこのリビングかしらね?このソファーは中々寝心地良さそうだからここで寝るか…こんな事なら寝袋持ってくれば良かったわ……』

 

 

 ラブの返事を待たずに今夜の寝床は今自分の座っているロングソファーにしようと決めたエリカは、毛布の一枚も借りるかと腰を浮かしかける。

 

 

「は?ナニ言っちゃってるのエリカさん?エリカさんは私達と一緒に寝るに決まってんじゃん!」

 

 

 ところが立ち上がりかけたエリカを右の掌をかざして制したラブは、何を今更解り切った事を聞くのかと語尾に横須賀弁を交えて畳み込んだ。

 

 

「い、一緒にってちょっと!」

 

 

 するとさすがにこれは想定外だったらしく一瞬頭が真っ白になったエリカを手を掴み、身長差にモノをいわせて一気に立たせたラブはそのまま寝室へと連行しようとする。

 しかし彼女が何を言い出したのか漸く理解したエリカが、そうはさせじと両足を精一杯踏ん張り抵抗の意思を示すと、信じ難い事に愛までもが援護に回りエリカの背中をグイグイと押し始めた。

 

 

「ゴラァ愛!アンタまで何考えてんのよ!ラブ姉にどう丸め込まれたぁ!?」

 

「人聞き悪いわね~」

 

「ラブ姉!この!愛も止めなさいこの馬鹿力!」

 

 

 チーム一小柄な外見に似合わぬ怪力を誇る愛に背を押され、エリカ自身が愛の巣と揶揄した二人の部屋の最深部に当たる寝室に向け、蟻地獄に陥る蟻のように消えて行った。

 

 

 

 

 

「こ、このベッドサイズは……」

 

 

 必死の抵抗も空しくラブと愛の寝室に収監されてしまったエリカは、目の前に鎮座するグラーフ・ツェッペリン級の超弩級ベッドに眩暈を伴う既視感を覚えていた。

 それは昨年ラブと再会を果たした高校戦車道観閲式の後の事。

 彼女の提案で笠女学園艦に乗艦し横須賀へと向かう道中、エリカ達はラブが手配してくれた宿舎に投宿し快適に戦車道三昧な船旅を楽しんでいた。

 しかしながらそこは底意地の悪い悪戯が好きなラブのやる事、エリカだけは西住姉妹と特大ベッドが一つしかない部屋に相部屋にされ、結果その問題に何も疑問を抱かないポンコツ二人に挟まれて寝るに寝れない地獄を味わわされたのであった。

 そしてあの時と同サイズのドレッドノートを前に西住サンドの悪夢を思い出したエリカは、何とかして逃げ出せないかと隙を窺っていた。

 

 

「さ~寝よ寝よ、ホラ、エリカさんも早く着てる物脱がなきゃ♪」

 

「脱がなきゃって…あ!まさか……!」

 

 

 だが何か窮地を脱する策を思い付くよりも早くラブがサラッと恐ろしいセリフを吐き、エリカは彼女が就寝時一糸纏わぬスッポンポンになるという話を思い出し全身が凍り付いてしまった。

 

 

「どしたの~?もう寝るんだから制服は脱ぎ脱ぎしなきゃ駄目よ~♪あれ?仕方ない私達が手伝ってあげるから早く制服脱ごうね~♡」

 

 

 逃げる処かフリーズしてしまったエリカの凍り付いた顔を不思議そうに覗き込んでいたラブは、彼女の目の前で掌をヒラヒラさせた後そのまま彼女の制服のボタンを外しに掛かる。

 

 

「…ん?あ!ちょ!ナニやってんですかラブ姉!?」

 

「ナニってエリカさん、寝る支度に決まってんじゃん……さ、ボタン外すから動かないでね~♡」

 

 

 瞬間冷凍されていた思考回路が急速解凍されエリカの意識が回復すると、彼女の直ぐ目の前に膝を突いたラブが実に危ない目付きで制服のボタンを外していた。

 

 

「う、動かないでってラブね────」

 

「愛~?」

 

 

 自分が非常にマズい事態に陥ているのを理解したエリカが抵抗の意思を示そうとしたが、それを遮るようにラブは愛に援護を要請する。

 

 

「オ゛ィ゛!アンタさっきから何でラブ姉の言いなりなのよ!?コラ何とか言え!あ、止め!シレっとした顔でスカートのホックを外すな愛!」

 

 

 背後に回った愛にスカートのホックを外されいよいよ身動きの取れなくなったエリカは、何とかスカートを脱がされまいと腰を落として両足を踏ん張り最後の抵抗を試みた。

 だがそんな彼女の努力を嘲笑うように立ち上がったラブは、見ただけで蕩けそうな妖艶な笑みを浮かべてエリカの耳元にほわっと熱い吐息を吹きかける。

 

 

「あぁ……♡」

 

 

 そしてその攻撃に脆くもボーダーラインを突破されてしまったエリカは脱力し、その隙を逃さず愛は背後から彼女のスカートを手際良く引き摺り下ろしたのだった。

 

 

「ふふ♡エリちゃんいい反応だわ……さぁ愛、今のうちに全部脱がせてあげるわよ~♪」

 

 

 熱い吐息で腰砕けになったエリカを背後に回ったラブが支え、彼女の放つフェロモンに中てられたように愛は言われるままエリカの制服のボタンを外して行った。

 更に愛はその下から現れた最後の防壁もあっという間に剝ぎ取り、残りは靴下のみという何ともマニアックな状況に追い込まれたエリカは、ラブに軽く押されてバランスを崩しそのままベッドに倒れ込んでいた。

 

 

「え?あ、ウソ…でしょ……」

 

 

 呆然自失、ラブと愛の仕掛けた電撃戦に惨敗を喫し、気が付けば二人に両足の靴下まで脱がされマッハの速さでマッパにされたエリカは呆けたようにそれだけ言うのがやっとだった。

 

 

 




ラブと愛に取っ捕まったエリカは多分みほが知ればブチギレ確実な目に遭うでしょうw

どうにか仕事も再開してはいますがやはりまだ本調子には程遠く、かつて仕事を教えた弟子達に力仕事はお任せで何とかやってる状況です。
実際問題力を入れると傷痕は痛むので無理は出来ず、かといってパソコンの前にも長時間は座っていられないので結構ストレスが溜まります。
けどやっと執筆も少しづつでも出来るようになって来たので、今は焦らず地道にやるよう心掛けています。

今後もまだ投稿ペースはあまり上がらないとは思いますが、それでも投稿は続けるのでお付き合いの程宜しくお願いします。
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