ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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ご無沙汰しています、漸く最新話の投稿に漕ぎ付けました。

今回のサブタイトルは私がドリフ世代なのでこんな事にw


第五十話   エリカの国語算数理科社会

「ちょっと待って…一体これの何処が高二の数学の教科書なのよ……?」

 

 短期留学の初日、朝っぱらからアホなラブの転校生と気さくなクラスメイトごっこに付き合わされ無駄にメンタルを削られたエリカは、一限目の授業開始早々恐ろしい事実に直面し手にしたばかりのシャーペンをノートの上に取り落としたのであった。

 昨年度邪な先輩達の差し金で梓と二人セットで短期留学したオレンジペコの体験談は、まほ経由でエリカもある程度は耳にしていた。

 しかし伝聞と実体験とで比べれば得られる情報量は桁違いなので、自ら直面した恐ろしい現実を前にエリカは震えを隠す事が出来なかった。

 だが残念ながら現実は現実でパニくるエリカをよそに授業は淡々と進み、さんすう大好きと浮かれるラブ以外のAP-Girlsのメンバー達までもが平然と数式と格闘していたのだ。

 

 

「んふふ♡我ながら美しい数式だわ……ん?どうしたの逸見さん、どこか解らない所があるのかしら?」

 

 

 エリカも数学は嫌いではなくどちらかといえば好きな教科であったが、最早高校で学ぶ範囲かどうかすら怪しい授業に付いて行けずエリカは困惑を隠せなかった。

 するととっくに授業が始まったにも拘わらずごっこ遊びを続けるラブは、チャンス到来と気さくなクラスメイトキャラでエリカにちょっかいを出し始めた。

 

 

「…いーかげんそれ止めて貰えません……?もしこれ以上続けるなら、私今すぐ艦首からダイブして黒森峰まで泳いで帰りますよ?」

 

「うぐぐ……」

 

 

 もうラブのアホなお遊びに付き合うのはまっぴらだと、エリカはみほをいびる時のような口調と凍れる無表情で脅し文句を突き付ける。

 常識的に考えればそんな無茶な真似は出来るはずがないと頭では解っていても、隣の席で静かに怒るエリカなら本気でやり兼ねないと彼女の据わった目に本気を感じたラブは、開きかけた口を噤み短く呻いた後に押し黙った。

 

 

「…ったく、こっちが黙ってりゃ次から次へとしょーもない事を思い付くんだから……いいですか?もしまた次に何か下らない遊びを始めたら私マジで帰りますからね……?」

 

「エリちゃんのケチ…ちょっとぐらい付き合ってくれてもいいのに……」

 

「なんか言いました……?」

 

「何でもない!」

 

 

 これ以上何かやって完全に彼女を怒らせ帰られてしまっては元も子もないので、ブチブチ言って睨まれたラブはプイっと顔を背けて誤魔化し授業に集中するフリをしたのだった。

 

 

 

 

 

『話に聞いちゃいたけど、どの教科も凡そ高校で学ぶ範囲を大幅に逸脱してたわね…なのにこの連中と来たら普通に授業に付いて行ってるってどういう事……?大体いつもは黙ってろっていうのが無駄なくらい騒々しいヤツらなのに授業中のあの集中力はナニ?ウチ(黒森峰)ですら授業中に無駄口叩くヤツがいるからそれなり賑やかなのに、コイツらと来たら普段とはまるっきり別人じゃない……まさか私がいるからまた猫かぶって変なキャラ作ってんじゃないでしょうね?それとも単に試合中に見せるあの異常な集中力が発揮されているだけなのか……だとするとこれは厳島流のドクトリン…この場合はメソッドかしら?とにかくラブ姉の指導が何かしら影響を及ぼしていると見るべきかも……』

 

 

 午前中の授業をどうにか乗り切り迎えた昼休み。

 ラブ達と一緒にトレイを抱えて学食の順番待ちの列に並んでいたエリカは、留学早々受けた強烈過ぎる洗礼とAP-Girlsの新たな一面に早くも戸惑っていた。

 とはいえ黒森峰で頭を張るだけあってただ狼狽えるような事もなく、少ない情報ながら冷静に頭の中で状況分析を開始していた。

 

 

「──さん、エリカさん」

 

「え?あ、はい?」

 

「前、進んだわよ~?」

 

「あ…すみません、ちょっと考え事してました……」

 

 

 相手が相手だけにそう簡単に行くとは思えないが、上手く立ち回ればAP-Girls(厳島流)の強さの秘訣なり秘密なりの一端を掴めるかもしれななどと考えに浸っていたエリカは、ラブの声で現実に引き戻されると慌てて一歩前に進んだのだった。

 

 

「うふふ♪」

 

「何です急に気持ちの悪い……」

 

 

 だが背中越しに彼女が手にしたトレイに乗せられた食券を覗き込んだラブが含み笑いを洩らすと、エリカは気味悪げに警戒しまゆをしかめて見せた。

 

 

「失礼ねぇ……私は単に今日のメニューなら絶対エリカさんはコレを選ぶだろうな~って思っただけよ?」

 

「う゛…こ、これはたまたま今日のおすすめになってたからであって……あ、まさかその為にラブ姉がこのメニューにさせたんじゃあないでしょうね……?」

 

「んなワケないでしょ、それこそたまたまよ……定番の人気メニューだし私だってコレこの通りエリカさんと同じの頼んでるじゃないよ~」

 

「……」

 

 

 意識のし過ぎだと呆れるラブが自分のトレイを掲げて見せると、そこにはエリカが頼んだのと同じ特製デミソースハンバーグ定食の食券が乗っていた。

 更にダメを押すように前後に並ぶAP-Girlsのメンバー達もほぼ全員が私も私もと手を挙げれば、これはさすがに勘繰り過ぎたかとエリカも口を噤んだ。

 

 

「今日はレッスンやら体を動かす授業は午後に集中してるからね~、その前にガッツリとカロリー補給しとくにはうってつけのメニューよ~♪」

 

 

 一応は納得したもののまだ何か釈然としない表情で黙ったエリカとは対照的に、人気メニューが待ち遠しいラブは何処までも能天気だった。

 

 

 

 

 

「…これ凄く美味しい……」

 

「でしょ~♪」

 

 ナイフで切り分けたハンバーグを口に運んだエリカが素直な感想を漏らすと、ラブもそうだろうそうだろうと満足そうにドヤ顔で何度も頷いて見せる。

 

 

「おぉ、ハンバーグ師匠のお墨付きが出たわ!」

 

「誰がハンバーグ師匠よ!また締め上げられたいの凛々子!?」

 

「ヒッ!」

 

「やっぱオメェ馬鹿だろ……?」

 

 

 すると昨日撃たれたばかりの凛々子()もめり込む拳の痛みを思い出したのか、かばうように頭を抱えて短く悲鳴を上げその無様な姿に夏妃は呆れの溜息を洩らしたのだった。

 

 

「けど……」

 

「けど……?」

 

 

 だがエリカはそんな夫婦漫才など気にも留めず、箸を付けたばかりのボリューム満点ハンバーグを前に何やら複雑そうな含みのある表情を浮かべ、その表情の変化にラブは様子を窺うように小首を傾げていた。

 

 

「…さすがにこの盛りの多さは女子高生がランチに食べるボリュームじゃないなと思って……」

 

「それは……」

 

 既に笠女の食糧事情は質量共申し分なしの定評があり、その満足度の高さには大洗のブラックホールこと五十鈴華も太鼓判を押す程であった。

 とはいえ大食いな体育会系の男子大学生が足繁く通う大盛りで名を馳せる定食屋的ハンバーグを、花も恥らう女子高生が余裕で完食するのはいかがなものかとエリカは疑問を呈したのだ。

 

 

「え~っとそこはホラ、ウチのガッコってどの科も体力勝負だから……」

 

 

 戦車道選手であれば確かに体力勝負なので総じてよく食べる傾向にあるが、笠女の場合はステージと試合をこなすAP-Girls以外の生徒達も非常に食が太く燃費の悪さは他校の比ではなかった。

 

 

「体力勝負ねぇ……」

 

「そ、そう体力勝負なの…だ、だからウチには太った子ってひ、一人もいないでしょ……?」

 

 

 どうにも大飯喰らいの集団のように見られている気がしてならないラブはあれやこれやと言い繕うが、エリカのジトッとした視線に勝てず舌が縺れて言い訳はグダグダだった。

 

 

「ふむ、まぁ確かに笠女にゃ一般的なデブはいないですね…けど……」

 

「け、けど……?」

 

 

 一応納得したように見えて全く納得していないエリカの刺すような視線と濁した最後の一言に、何とも居心地悪そうにラブは彼女の様子を窺っている。

 

 

「…言わせたいんですか……?」

 

「な、何を……?」

 

 

 獲物を弄ぶかのように細めたエリカの目に彼女が何を勿体ぶるのか大方察しは付いたが、それでもラブは何の事かと惚けて無駄な抵抗を試みた。

 

 

「…は、解ってるクセに……」

 

「だから何を!?」

 

 

 詰んで尚降伏勧告を受諾しない対戦相手に呆れたような態度を取るエリカに、まんまと釣られたラブもつい強い口調で応戦してしまう。

 

 

「……おっぱいデブ」

 

「え、エリちゃん!?」

 

 

 彼女の冷めた目が膨らみ切った自分の胸元に向けられていたのはラブも薄々感付いてはいた。

 しかし彼女もさすがにそこまで言うまいと高を括っていたのか、エリカのぶん投げた剛速球が脇腹にめり込んだラブはフォークに刺したままだったハンバーグを盛りの良いご飯の上に落としていた。

 

 

「ナニ今更ショック受けたような顔してんです?」

 

「だ…そ、それはエリカさんがお、おっぱいデブなんて言うから……け、けどそんなに……?」

 

 

 無条件で自分に優しいと勝手に思い込んでいたエリカの雑で手厳しい扱いに、すっかり動揺したラブは何度も噛んでまともに話す事もままならない。

 しかしエリカは彼女の狼狽ぶりなど全く気にも留めず、ラブに背を向け肩を震わすAP-Girlsにその鋭い切っ先を突き付けたのだった。

 

 

「一つ言っとくけどアンタ達だってラブ姉の事笑ってらんないんだからね?特に愛、比率で言ったらアンタが一番ヤバいって事くらい自分で解ってるんでしょ?」

 

「エリカさん……」

 

 

 背を向けたAP-Girlsのメンバー達の中でも唯一ポーカーフェイスを保っていた愛だったが、思いもよらない貰い火に鋼の仮面にひびが入り珍しく人前でアホ面を晒していた。

 

 

「ホント、一体何をどうすりゃ女子高生の乳がここまで膨らむんだか……」

 

「アゥアゥ……」

 

 

 このまま言い負かされては立場がないと頭をフル回転させるラブだったが、エリカにここまで言われるなどとこれっぽっちも思っていなかった彼女の思考回路は空回りを続け、酸欠の金魚宜しく延々と口をパクパクさせる事しか出来なかった。

 

 

「あら?もしかして知らなかったんですか?世間じゃもっぱら笠女じゃなくて乳女って呼ばれてるの?」

 

「ち、ちちち、ちちじょおぉぉ……!?」

 

 

 ここが勝負の決め処と絶句するラブを嘲笑うようにエリカが必殺のアハトアハトをぶっ放すと、AP-Girlsのみならず学食中で笠女の生徒達の箸が止まったのであった。

 

 

 

 

 

「またなんちゅう騒々しい……」

 

 

 微妙な気まずさの残った昼食の後、戻った教室の騒がしさにエリカは指で耳を塞ぎ顔をしかめていた。

 まだ昼休み中の事なので校則から逸脱しない限り何をやろうと自由だったが、黒森峰とはあまりにかけ離れたその光景にエリカも戸惑いを隠せない。

 幾ら電池駆動のミニアンプとはいえ複数人数が好き勝手にエレキでジャカジャカとやれば、例えボリュームを抑えても相当煩くなるので慣れぬエリカには騒音でしかなかった。

 そしてそれ以外にも遊びに来た他の学科の生徒と雑談する者やトランプなどに興じる者もいたので、エリカにすればその騒がしさは黒森峰では凡そ考えられぬカオスであった。

 

 

「ねぇちょっと!今ほっぺに何か描いてるよね!?」

 

「え~?そんな事してないよ~?」

 

「ウソ!絶対何か描いてるでしょ!?大体今使ってるのチークブラシじゃないじゃん!」

 

 

 因みに一番騒がしそうなラブがこの時何をやっていたかといえば、新しいメイクパターンを試させろとやって来たメイク班のラブ担当の生徒にオモチャにされ、頬にフェイスペイント用の黄色の絵の具でチョコチョコ足跡を残して可愛く闊歩するヒヨコの絵を落書きされていた。

 

 

「…この人も何やってんだか……けど結構違う学科の子達が出入りしてんのね……」

 

 

 笠女の場合軍隊に於いて所属する兵科を表示するワッペンと同様、学科毎に異なるワッペンが制服の腕の部分に縫い付けられていたので、余所者であるエリカにもラブ達の教室に出入りする少女達がそれぞれ違う学科の生徒である事は簡単に見分ける事が出来た。

 その彼女達が入れ代わり立ち代わりAP-Girlsと一緒に大騒ぎを繰り広げる状況は、例え昼休みでも気が抜けない黒森峰が当たり前なエリカにはとても付いて行けなかった。

 

 

「ないわ~、やっぱここは私の居場所じゃ……」

 

 

 こんな昼休みとてもではないが付き合い切れないと教室を見回すエリカだったが、学科こそ違うが全ての生徒達が極普通にラブを同級生として扱っている事に気が付いた彼女は、()()()ではなく()()()が今のラブにとっての居場所である事を唐突に理解したのだった。

 

 

「あ…そっか、ここが今のラブ姉の居場所なんだ……」

 

 

 頬に落書きされながら同級生達と騒ぎ戯れるラブの姿に、エリカは独りそっと安堵の溜息を洩らした。

 

 

 

 

 

ワンモアセッ!(one more set!)

 

 

 凡そ黒森峰では考えられない馬鹿騒ぎの後に始まった午後の授業。

 トレーニング好きなエリカも思わずホオっと声を上げたフィットネスジム内のガラス張りのスタジオに、何処かで見たような気がする筋骨隆々な黒人インストラクターの掛け声が響く。

 

 

「…まさかね……」

 

 

 何よりもタフさを求められるAP-Girlsにとって基礎体力作りの一環であるそのハードなトレーニングは、海兵隊の新兵訓練用プログラムを元にした所謂ブートキャンプ呼ばれるものであった。

 そしてAP-Girlsが採用するブートキャンプのプログラム内容がどれ程ハードかだが、ダイエットプラグラムとしてハードルを下げたものと違い、海兵を鍛える為の過酷なレベルほぼそのままのトレーニングだった。

 

 

「…けどこれいいわね、ウチ(黒森峰)でも取り入れようかしら……?」

 

「いきなりやったらいくら黒森峰でも全員ぶっ倒れるんじゃね……?」

 

「初めてなのに付いて来れるエリ姉がどうかしてんのよ……」

 

 

 ラブの隣で嬉々として汗を流すエリカがつい洩らした脳筋な呟きに、彼女の後列でそれを耳にした夏妃と凛々子はゲンナリとした様子で互いに顔を見合わせていた。

 その可憐な容姿とは裏腹にAP-Girls随一の身体能力を誇る夏妃と違い、フィジカル面で彼女に遠く及ばぬ凛々子は苦しそうにエリカの背中を睨み付ける。

 そんな凛々子の複雑な胸中を知ってか知らずか、レッスン開始早々その身体能力を見抜き彼女を気に入ったらしいインストラクターに目を付けられたエリカは、直ぐ目の前で挑発するように繰り返し掛け声を発するマッチョに挑戦的に喰らい付いていた。

 

 

「エリ姉って意外にAP-Girls(ウチ)向きの人材だったのかしらね……?」

 

「ラブ姉がその気になるからヤメて!」

 

 

 大したもんだなどと余裕の表情でレッスンを続ける夏妃の隣、こちらもまた涼しい顔で右ストレートを繰り出す鈴鹿の呟きに、最早限界が近そうな顔色の凛々子は吐き捨てるようにそれを否定したのだった。

 

 

ワンモアセッ!(one more set!)

 

 

 だがそんな凛々子の心情などお構いなしにインストラクターは再び得意の掛け声でエリカを煽り、それに負けじと彼女もまた一層派手なアクションでその声に張り合っていた。

 

 

 

 

 

「…何だろうこの違和感……?ダンスっていうよりスパーリングみたいな……」

 

「それを言うならシャドーボクシングじゃないの?」

 

「どっちにしてもボクシングじゃない」

 

 

 ブートキャンプによるフィジカルトレーニングに続いて、AP-Girlsはそのまま同じスタジオでダンスレッスンに突入していた。

 しかしレッスンが始まって暫くするとAP-Girlsのメンバー達は、持ち前の負けず嫌いを発揮するエリカの動きに違和感を覚え始めヒソヒソしていたのだ。

 

 

「確かエリ姉ってボクササイズとサンドバッグ叩いてるって言ってたわよね……」

 

『それだ……』

 

 

 エリカに音感がない訳ではないがやはり日常的に踊るような環境ではないので、いきなりぶっつけでダンスレッスンを受ければ動きが硬いのは当然の事であった。

 だがそれを差し引いてもフットワークは良いが動きが直線的で攻撃的に見えたAP-Girlsは、彼女が日頃行っている自己鍛錬を思い出すと全員あっさりと納得したのだった。

 

 

『…さっきから本人目の前によくもまぁこんだけ言いたい事言えるもんだわ……』

 

 

 レッスンに使用するスタジオの正面は前面鏡張りなので、そこに映る自分の動きが硬く直線的な事はエリカ自身が一番よく解ってはいた。

 エリカが一緒に居るだけでご機嫌なラブと違って彼女に振り回される立場のAP-Girlsは、例えその本人が目の前に居ようとこうして平気で言いたい事を言う。

 彼女達の言動に関してはエリカもそれなり付き合いが長いので特に怒ったりはしないが、さすがに全員揃って変に納得されるとそれはそれであまり愉快ではなかった。

 

 

『ま、確かに私の動きはまんまボクシングだからなんも言い返せないけどね……』

 

 

 しかしアップテンポな曲に合わせステップを踏みながら正面の鏡に映る己が姿に目を向けたエリカは、確かに自分の動きはシャドーボクシングのようだと自虐の笑みを口元に浮かべるのだった。

 

 

『それにしても……』

 

 

 レッスンスタジオの正面の壁はフォームなどの確認の為に大概の場合は鏡張りになっているが、その鏡には自分を含めレッスンを受けるAP-Girlsのメンバー達の姿が映っていた。

 そして鏡に映る彼女達は全員揃って動き易い分ボディラインがモロに出てしまう、ぴったりフィットなかなり際どいトレーニングウェアを身に着けていたのだった。

 インストラクターの指示の下彼女達が軽快にステップを踏むその度、胸のたわわもそれに合わせて目のやり場に困る程縦横斜めに激しく揺れる。

 

 

『本当によく揺れるわね……』

 

 

 そんなただ中で平均よりスタイルは良いはずのエリカは、独り浮かぬ顔でレッスンを続けていた。

 

 

 

 

 

「漸く本題に辿り着いたような気がするわね……」

 

 

 エリカの留学初日の戦車道の時間割はその日の最後の授業の時間が割り当てられ、その後はそのまま放課後の演習へと突入する予定になっていた。

 

 

「う゛~ん゛…制服もだけどまさか私がこのパンジャケを着る羽目になるとは思わなかったわ……」

 

 

 舟形帽こそほぼ同じデザインではあるものの、それ以外は着慣れた黒森峰の物とは程遠い笠女のパンツァージャケットを着用したエリカは、更衣室の姿見に映る己が姿に有り得ないと眉間に皺を寄せて低い声で呻いていた。

 何しろ黒森峰のそれだけで他を圧する黒と違い、笠女のそれはパンツァージャケットにあるまじき桜色な上にデザインの方も相当派手だったので、戦車に乗っていなければちょっとパンツァージャケットのは見えないシロモノだった。

 更にエリカの為にに用意されていたのは一般隊員が履く短靴ではなく、ラブの物と同じ絶対領域もエロい極めて女王様な白のロングブーツであったのだ。

 

 

「うんうん♪と~ってもよく似合ってるわエリカさん♡」

 

「…あんま素直に喜べない……」

 

 

 自分と同じ仕様のパンツァージャケットを着たエリカの晴れ姿にラブは甚くご満悦であったが、訓練中ずっと彼女と比較されそうでエリカの表情は何処か複雑そうだ。

 

 

「ふふふ♡やっぱ素材が良いと映えるわ~♪」

 

「…そういうのいいですから……それよりも何で訓練前にこんなにガッツリメイクする必要が……?」

 

 

 エリカ大好きなラブは見立てた通りに仕上がった彼女をハグして頬擦りするが、ラブの過剰なスキンシップに慣れているエリカは面倒そうに気になっていた事を問い詰めた。

 

 

「何でってエリカさん…ウチの校則忘れたの……?メイクするのは校則で決められている事だし、メイク班だって私達にメイクするのが授業の一環で成績に係わるんだからやって当然の事よ~?」

 

「あぁ…そういえばそうでしたね……」

 

 

 ラブに言われて笠女の校則にメイクが必須である旨記載されている事を思い出したエリカは、改めて笠女が黒森峰とは対極の存在である事を思い出しそれ以上この件に関して考える事を放棄していた。

 

 

「それでラブ姉、今日の訓練は一体何を?」

 

「あ~それなんだけどね、今日はLove Gunをエリカさんに任せるから好きにやっていいわ~」

 

「は……?」

 

 

 服装や化粧など戦車に乗ってしまえばどうでもよい事、そう頭を切り替えたエリカは果たしてラブがどのようにAP-Girlsを鍛えるか探りを入れた。

 しかし返って来た予想外な答えに頭が空白になったエリカは、言葉を失いガクンと音を立てて大きく顎を落としていた。

 

 

 




今回の投稿が年内最後の投稿になります。

来年は何とか投稿ペースを元に戻したいのですが中々思い道理には行かなそうです。
ここまで来ると最早笑うしかないのですが、実は現在肋骨三本骨折中でして思うように動けずかなり難儀しています。
仕事中の貰い事故的な怪我なので金銭的な保証は受けられものの、それでもやはり日常生活には支障をきたしているので精神的に疲れますねぇ……。
何しろコルセットをしていても呼吸するだけでも辛いので、咳やくしゃみなどしようものならその度に地獄を見ています。
更に我が家の連中はここぞとばかりに笑いの刺客と化し、食事の時などに録画してあるお笑い必須なアニメを再生しやがるので油断出来ませんw

新年には短いですが何とか番外編を投稿出来るよう準備中です。
来年もどうか恋愛戦車を宜しくお願いします。
それでは読者の皆様、どうか良い年をお迎え下さい。
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