ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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本当にご無沙汰してしまいました。
漸く今年最初の恋愛戦車道本編の投稿です。


第五十一話   To tread on the tiger's tail

「お、お願いねって……イヤイヤイヤ!何言ってんですかラブ姉!Love Gunを任せるって私に何やれって言うんですか!?」

 

 

 お願いの意味を考えてひと呼吸分の間絶句していたエリカは、我に返ったはいいがすっかり気が動転していきなり無茶振りするラブにえらい剣幕で噛み付いていた。

 

 

「何やるってAP-Girlsの隊長に決まってるじゃない、大丈夫、黒森峰で隊長やってるエリカさんならAP-Girlsの隊長だって余裕のよっちゃんで務まるわよ~♪」

 

「余裕のよっちゃんってアンタいつの生まれですか!?」

 

 

 あまりにガバガバな根拠に基づくアンサーが返って来るなり一層頭の中が沸騰したエリカは、口角を限界まで吊り上げ一番どうでもいい事にキレていた。

 

 

「ちょっとぉ…人をオバサン扱いしないでくれるぅ?昔しほママが使ってたから私も使ってんだけど……?」

 

「あの人はぁぁぁ……!」

 

 

 ほんの数日誕生日が早ければエリカとは二つ学年が違っていた事を意識したのか、彼女の罵声の言葉にラブは眉間に皺を寄せ低い声で不満を言った。

 するといよいよエリカはイライラが抑えられなくなり、折角メイク班の手で整えられた髪をワシャワシャと掻きむしって舟形帽を足下に落としていた。

 

 

「ま、その話は置いといてエリカさんなら大丈夫、普段やってる事そのまんまやってくれれば万事問題なしでおっけ~だからさ~♪」

 

「何がおっけ~だからさ~よ!ホントいい加減なんだから!」

 

 

 何を言おうが彼女に隊長役(面倒な仕事)を押し付ける気満々なラブの背中に、エリカは拾い上げた舟形帽を叩き付けながら罵声を浴びたのであった。

 

 

「…だからこのパンジャケだったのか……」

 

 

 今にして思えばラブと同じ仕様のパンジャケが用意されていた段階で気付くべきであったが時既に遅く、エリカの目にはロングブーツの白が只恨めしく映っていた。

 

 

 

 

 

 ひと騒動の後にエリカが連れて来られた格納庫区画。

 一両毎に区画分けされたまるでサーキットのピットエリアのような格納庫に注意喚起を促す回転灯が回り、跳ね上げ式のシャッターが一斉に開き始める。

 スイングアップシャッターはあまり見掛けないが、自動シャッター自体は大して珍しくもなく取り立てて大騒ぎするものでもないだろう。

 ところがシャッターが開き始めるなり大きく目を見開きその光景を食い入るように見つめていたエリカは、シャッターが開き切ると今度は浮かぬ顔で小さく一つ溜息を吐いていた。

 

 

『ハァ…さすが最新鋭艦、格納庫まで黒森峰とはまるで別次元ね……』

 

「どしたのエリカさん?」

 

 

 するとその溜息を不思議に思ったラブが何かおかしな事でもあったのかと彼女の顔を覗き込み、特に隠す程の事でもないのでエリカも思った事をそのまま話したのであった。

 

 

「あぁ、そういう事…春休みに来たまほと千代美も似たような事言ってたわね……」

 

 

 話を聞いたラブもまほチョビの二人をここに連れて来た時にほぼ同じような事を言っていたのを思い出し、彼女もそれをそのままエリカに語って聞かせてやったのだった。

 

 

「ドゥーチェのトコ…アンツィオもですか……まぁアンツィオも艦齢で言ったらウチと似たり寄ったりな老朽艦ですから無理もない話ですね……」

 

 

 大学が始まる前の春休みにあの人(まほ)は何やってんだと少し気の抜けた様子で、エリカはシャッターが開け放たれた格納庫の中をぐるりと見回す。

 彼女の視線のその先、そこには五両のパンターG型と出撃に向け最終点検を手際良く行う整備クルーの姿があった。

 

 

「しかし笠女の分業制は本当に徹底していますね…ウチに限らず強豪古豪と呼ばれるような学校でも、大体は整備班も戦車道履修生がやってますよ?けど笠女じゃ専門の学科があってその科の生徒達が整備してるんですよね……?」

 

「ええそうよ、将来的にその道のエキスパートを目指す子達が実戦経験を積むのにこれ程理想的な環境もそうないでしょ?学校の方針としては卒業の段階で新人ではなく、現場で即戦力になれるだけの実力を付けさせるってのが目標だからこれは当然の事なの……そもそも笠女には普通科が存在しなくて各分野の専門的な教育カリキュラムが売りなんだからこれで普通なのよ」

 

「ああそうでしたね、つい忘れてました……」

 

 

 戦車道で勇名を馳せる黒森峰ですら一応普通科が存在するのでエリカも失念していたが、笠女は高度な専門教育極振りな高校なので、ラブが言うように学内では餅は餅屋が徹底され全てが極めて効率的に機能していたのだ。

 

 

『…けど今ラブ姉が言った事ってど~考えても経営者のセリフよねぇ……』

 

 

 両親を失って以降厳島の美しき女帝亜梨亜ベッタリで育ったラブの生い立ちを考えれば、彼女の思考が経営者のそれである事はエリカにも容易に想像がついた。

 しかし今ここでそれに言及しても面倒な事になりそうな気がしたし、何より今はそれ以上に重要な問題が目の前にあったのでエリカはその件に深入りしようとはしなかった。

 

 

「…で?どこまで本気なんですか……?」

 

「何が~?」

 

「何がじゃないですよ!さっきの話です!」

 

「は?」

 

「は?じゃないですとぼけないで下さい!!私にAP-Girlsの隊長やれとか何考えてるんですか!?」

 

 

 いつまでも笠女の近代装備を羨ましがっていても仕方がないと頭を切り替えたエリカは、厄介な事態を何としても回避すべくラブに強い態度で迫っていた。

 

 

「またその話~?さっきも言った通り黒森峰の隊長さんで可愛いエリちゃんなら、この怪獣共だって素直に言う事聞くから大丈夫だってば~」

 

「可愛いとか関係ない!それとこんな時だけエリちゃん言うな!」

 

 

 だが海千山千なラブにとってのらりくらりと相手の追及を躱すのは最も得意とする処だったので、柳眉を逆立てるエリカが相手であっても窮する事なく柳に風で彼女の猛攻を軽くいなしていた。

 

 

「んじゃそんな訳で宜しくね~♪」

 

「宜しくじゃない!あ!待てこのペテン師!」

 

 

 そして言うだけ言うと猛るエリカを無視したラブは踊るようなステップで走り去り、その背中に向かってエリカはフルボリュームで再び罵声を浴びせたのだった。

 

 

 

 

 

『この怪獣共相手に基礎的な事やっても今更よね……』

 

 

 AP-Girlsの一期生の面倒を押し付けられ練習内容をどうするかでエリカは悩む。

 例えそれがラブが面白がってやった事であったとしても、根が真面目で手抜きが出来ない彼女は文句を言いつつも任された仕事を投げ出すような真似はしなかった。

 

 

「つ~か愛、アンタ副隊長なんだからちっとは手伝いなさいよ」

 

「……」

 

 

 とはいえ直ぐ傍にラブの傍らに影の如く付き従う時と同様に愛が控えているのに気が付くと、さすがのエリカも思わずつっけんどんなもの言いで彼女に絡んでいた。

 ところがいつも通りの無表情で彼女がすっと目を逸らすと、その態度で愛が仕事を全部自分に丸投げする気だとエリカは見抜いたのだった。

 

 

「アンタ今メンドクサイとか思ったでしょ……?」

 

「…思ってません……」

 

「ウソおっしゃい!顔に書いてあんのよ!」

 

 

 愛の態度にカチンと来たのかエリカはそう言うなり彼女の左ほっぺに、右手の人差し指をビシッと突き刺しプニプニする。

 

 

「…止めて下さい……」

 

「な~にが止めて下さいよ!こうしてやる!」

 

 

 元大洗のロリ会長とさほど変わらぬ小柄な愛に逃げられぬようヘッドロックを決めたエリカは、そのまま彼女のほっぺに連続プニプニ攻撃を続けた。

 

 

「そこ!何ニヤニヤしてんのよ!よ~し決めた!今日は徹底的にしごいてやるから覚悟しろ凛々子!」

 

「なんでよ!?」

 

「オメェはホントによぉ……」

 

 

 日頃何かと可愛がられている愛がオモチャにされる姿に凛々子が内心ほくそ笑んでいると、その微妙な表情の変化を見逃さなかったエリカは容赦なく彼女に理不尽な制裁を加える事にしていた。

 それは毎度の事といえば毎度の事だったが凛々子の迂闊さにもう馬鹿かと言う気も失せた夏妃は、いっそ気の毒そうな目でエリカに食って掛かる凛々子を見ていたのだった。

 

 

「それと鈴鹿!オマエも空気のふりして状況楽しんでんじゃない!」

 

 

 凛々子が切っ掛けでややとばっちり気味に巻き添えにされた鈴鹿だったが、それでも得意のポーカーフェイスを崩すようなヘマはせず、如何にも驚いた風を装い『私?』といった感じで可愛く自分の顔を指差したりしていた。

 

 

「コイツ……」

 

 

 クセが強いなどという表現では控えめ過ぎなキャラが揃う爆乳美少女達を相手に、苛立ちMAXなエリカは一層険しい目付きで興味津々なAP-Girlsの尻を蹴飛ばしに行った。

 

 

「オラ!訓練始めるわよ!時間を無駄にすんな!各車サッサと運行前点検済ませなさい!」

 

『Jawohl!』

 

 

 集まる好奇の視線を跳ね除け状況を楽しむAP-Girlsに雷を落としたエリカに、彼女達は一斉に黒森峰流にドイツ語で了解と答えるとそれぞれの乗機に駆け寄り点検を始めた。

 

 

「フン!な~にがヤヴォールよ……」

 

 

 泣く子が更に泣く黒森峰の鬼隊長相手でも全く委縮しないAP-Girlsに早くも手を焼くエリカは、ラブと同じ仕様のロングブーツの踵を鳴らしLove Gunの下へと足を向けたのだった。

 

 

 

 

 

「で?今日の訓練プログラムはどうなってんのよ……?」

 

「さぁ?アタイらはなんも聞いてねぇっスね……」

 

「ああもう!あの人そういうトコ昔っからいい加減よね!」

 

 

 点検終了後エンジンを始動した五両のパンターG型は暖機運転を終えると、格納庫前にLove Gunを中心に一列横隊の隊形で集結しエリカの指示を待っていた。

 しかしさすがにエリカも何の事前情報もなしでは訓練プログラムの組みようがなく、右隣に並ぶブルー・ハーツの車長の夏妃に今日の予定を問い質した。

 だが残念ながら夏妃から返って来たのは役に立つどうこう以前のレベル話だったので、たまに見せるラブの適当さを思い出したエリカは腹立ち紛れに手にしたクリップボードを砲塔に叩き付けていた。

 

 

「アタイにそう言われても…けどクレヨン弾が用意してあったから流鏑馬はやると思うんすけどねぇ……」

 

「クレヨン弾?流鏑馬?私に解るように説明しなさいよ…つかクレヨン弾って一体ナニ……?」

 

 

 流鏑馬はともかくとしてクレヨン弾などという今までに見た事も聞いた事もない弾種に、コイツ一体何を言い出したと胡散臭げな顔をする。

 

 

「え~っと、どう説明すりゃいいんだ…クレヨン弾はまぁアレだ、ペイント弾の一種っスね……」

 

 

 エリカにクレヨン弾が如何なるモノか説明しようとした夏妃だったが、生憎彼女はこの手の事が非常に苦手だったのであまりに下手過ぎて何の説明にもなっていなかった。

 

 

「夏妃!アンタはどうしてそう────」

 

「凛々子も黙りな、煩いったらありゃしない」

 

「何ですって────」

 

「ホラ煩い、時間の無駄だから黙んなさい」

 

「ぐ……」

 

 

 夏妃が何かやる度噛み付くのが習い性になっている凛々子が案の定声を荒げかけると、下らない事で時間の浪費をしたくない鈴鹿が騒ぐ凛々子を封殺した。

 

 

「煩くてごめんエリ姉、クレヨン弾ってのは弾頭を粘性のある固形塗料でコートした模擬徹甲弾の通称なのよ、最初はラブ姉の思い付きで自作してたんだけど効率悪いんで今はメーカーに特注でお願いして作って貰ってるの…用途はそう……それはまぁ見て貰えば解ると思うからその説明は要らないわね」

 

「は?今自作って言った?徹甲弾をラブ姉が自作ですって!?」

 

「あぁ、これは言い方が悪かったですね、単に模擬弾の弾頭に色を塗っただけだから安心して下さい」

 

 

 欠陥榴弾で瀕死の重傷を負ったラブが徹甲弾を自作と聞きエリカはギョッとするが、自らの表現が誤解を招いたと直ぐに察した鈴鹿はエリカが安心するよう補足説明を付け加えた。

 

 

「色を塗った?弾頭に……?一体何の為に…そもそもそんなモノ何に使うのよ……?」

 

「使い道ですか?だからそれは見れば分かりますって…まぁ見てのお楽しみ……あんま楽しくもないか」

 

「オイ……」

 

 

 模擬弾とはいっても砲弾である事には変わりがないので、エリカはラブが危険な改造に手を付けた訳ではない事にホッとした半面彼女の頭の中には新たな疑問が次々と湧き上がっていた。

 ところが彼女の不安を解消する一方で疑問にははぐらかすのみで答えようとせず、鈴鹿の態度に苛立ちを覚えたエリカの声は1トーン低くなっていたのだった。

 

 

「…ったくコイツはホントに……けど模擬弾を特注?ペイント弾の時もだけどウチ(黒森峰)だってさすがにそこまではやらないっつーか出来ないわよ……チッ!これだからブルジョアは……」

 

 

 鈴鹿のみならず他の連中もとぼけて答えずクレヨン弾なる模擬弾の用途も不明、おまけにそのクレヨン弾も特注となると恵まれた環境で戦車道をやっているエリカですら面白くないらしく、思った事をそのままブチブチと呟いていた。

 

 

「エリ姉?もういつでも行けるけど……?」

 

「解ってるわよ!え~いPanzer vorだ!サッサと行けこの悪ガキど────」

 

「お先っ!」

 

「なっ……?」

 

 

 ラブに隊長の仕事を押し付けられた挙句、学校の経済力の差をまざまざと見せ付けられすっかりやさぐれたエリカは、鈴鹿に促されるといつも以上に悪い目付きでAP-Girlsに前進を命令しようとした。

 だがその直後彼女が命令を出し切るより一足早く、まるで抜け駆けするように夏妃のブルー・ハーツが隊列を離れ戦車とは思えぬ高加速で走り去って行ったのだった。

 

 

「夏妃!アンタまたセコイ真似を!」

 

「追って」

 

「ちょっと油断した、行って」

 

 

 ブルー・ハーツが飛び出した直後キンキン声で怒鳴る凛々子を乗せたイエロー・ハーツが後を追い、更にその後にピンク・ハーツとブラック・ハーツが続き、最後にエリカの騎乗するLove Gunが彼女の指示も待たずに急発進で前を行く四両を追跡し始めた。

 

 

「ちょ!何なのよ急に!?コラ香子何考えてんのよ!?」

 

 

 何も知らされないまま演習場に向け進発しようとした彼女の出端を挫くように、突然AP-Girlsはレースの真似事を始めコマンダーキューポラ上のエリカは訳が解らず操縦手の香子を怒鳴り付ける。

 

 

「ごめーんエリ姉!破産したくなかったらちょっと黙っててくれるー?」

 

「破産!?」

 

 

 一応Love Gunの車長を任された自分の指示も待たずアクセル全開で飛び出した香子を咎めるも、返って来た破産の一言意味が解らないまま、困惑顔で右に左に激しく揺れるLove Gunのコマンダーキューポラから転がり落ちぬよう必死にしがみ付いていた。

 

 

「何なのよ一体!?」

 

 

 突然始まった暴走劇と破産の関係がまるで理解出来ず、前傾姿勢で体勢を維持するので手一杯なエリカはそう叫ぶ事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

「へっ!やりぃ♪わりぃな鈴鹿ゴチになるぜ!」

 

「今回はまんまと出し抜かれたわね……」

 

 

 演習場の入り口、戦車道履修者(AP-Girls)及びその関係者以外の立ち入りが制限される事を示すラインを超えるなりスピンターンでブルー・ハーツを停止させた夏妃は、結局一番最後にやって来た鈴鹿に向かって会心の笑み浮かべて二本指の敬礼を投げて見せた。

 

 

「アンタはまた汚い手を使って!」

 

「ケッ!オメェが言うかぁ?」

 

 

 夏妃を追って真っ先に飛び出したはいいが、ブルー・ハーツを抜こうとした処を狙って走行ラインをブロックされ、結果後続の二両に抜かれた凛々子はより一層甲高い声で喚き散らす。

 しかし何処か上機嫌な夏妃は野良犬でも追い払うようにヒラヒラと手を振って彼女の相手をせず、それに腹を立てた凛々子の声は2ストロークエンジンのエキゾーストばりに甲高くなっていた。

 

 

「ちょっとアンタ達!」

 

 

 だがそれを上回る怒声が轟くと凛々子のキャンキャン吠える声もピタリと止まり、辺りには五両のパンターG型のアイドリング音しか聞こえなくなった。

 

 

「な、なんすかエリ姉……?」

 

 

 馬鹿に機嫌の良い夏妃はいつもであれば煩いだけの凛々子のヒスを余裕でいなしていたが、怒れるエリカを前にすると途端に腰が引けて挙動不審になる。

 

 

「さっきのレース紛いの暴走行為は一体ナニ!?一から十まで細大漏らさずキッチリ説明しなさい!もしちょっとでも誤魔化したりウソついたりしたら承知しないわよ!?」

 

「えっと……」

 

 

 一瞬ヤベっと顔を歪めた夏妃もエリカの目を見てこれは誤魔化せないと悟り、問われるままに自分達が何をやっていたか洗い浚い白状したのだった。

 

 

「呆れた…アンタ達まさか毎日こんな事やってるんじゃないでしょうね?ラブ姉は何やってんのよ……?」

 

 

 夏妃の釈明を聞くまでもなく、彼女達がレースを始めた事はエリカも割と早い段階で感付いてはいた。

 そして香子の破産の一言からそのレースが賭けレースである事も見抜いていたので、白状した夏妃の証言内容からエリカは自分の予想が間違っていなかった事に呆れ、演習中にラブは何をやっているのだと怒りを露にしていた。

 格納庫前から演習場までの移動区間で行われるジュースを懸けた賭けレース。

 重火器類の使用禁止意外は何でもあり、最下位チームは上位の全チームに演習後ジュースを奢るのが決まりの賭けレースが日常的に行われていたのだ。

 

 

「え…いやだってその、言い出しっぺはラブ姉だし……」

 

「あの化け乳後でしば────く!!」

 

 

 勝者の余裕の笑みから一転激おこエリカに震え上がった夏妃は、更に尋問されるより先にこの賭けレースの発案者がラブである事を白状し自己保身を図ったのだった。

 だがラブの隊長にあるまじき所業にエリカの激おこは一層ヒートアップし、彼女の放つ怒りのオーラにうっかりいつも通り行動したAP-Girlsはゴクリと息を呑んでいた。

 

 

「私が甘かった……いいわ、今日は基礎から徹底的にやってやる!全員覚悟しとけ!」

 

 

 ほぼフィジカルお化けな連中相手に地味な基礎訓練など最初は時間の無駄だとエリカも考えたが、ラブを止めもせず彼女のお遊びに乗っかったヤツ等相手に情けは無用、泣く子も黙る黒森峰の鬼隊長の本領を発揮するのだった。

 

 

『どーすんのよ!?エリ姉がいるのにアンタが調子こいて飛び出すから悪いのよ!』

 

『うるせぇ!真っ先に追っかけて来たのは何処のどいつだ!?』

 

「そこ煩いわよ!凛々子!そんなにしごかれたいなら望み通りにしてやる!」

 

「ヒィ!なんで私ばっか!?」

 

 

 半ば条件反射的に夏妃に噛み付いたのはいいがすっかりエリカに目を付けられていた凛々子は、早速雷を落とされお約束通り自滅する。

 

 

「オイ!このバカヤロウども!いいかぁよく聞けぇ!ここを地獄のキャンプ地とする!」

 

 

 何だかんだいってすっかりラブに感化されフリーダムが過ぎるAP-Girlsにキレたエリカは、コマンダーキューポラ内の足下に後付けされたラックからラブ愛用の校名入り拡声器を手に取ると、フルボリュームで体内に溜め込んだ怒りのマグマを一気に吐き出したのだった。

 

 

 

 




…もう三月……年が変わって最初の本編の投稿が三月……。
昨年はトラブル続きで投稿ペースがガタ落ちになり、今年は何とかしようと考えていましたが早々にけっ躓いてこの有り様……。
もう忘れられてるのではと気が気でなかったのですが、体力ガタ落ちで中々執筆出来ずどうにかこうにか連載再開に漕ぎ付けた状況です。

無理矢理短期留学させられた挙句、AP-Girlsの隊長の仕事までラブに丸投げされてエリカも災難ですが、面倒な事態になればなる程話的には面白いので仕方ありませんw
さて、クレヨン弾に流鏑馬などという謎のワードも登場しましたが、次回からAP-Girlsが日頃どのような訓練をしているか徐々に明らかになって行くのでお楽しみに。

随分間が空き読者の皆様にはご迷惑をお掛けしました。
やっと連載再開出来る処まで持ち直しましたので今後共宜しくお願いします。
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