ほぼ全編書き直すことその数7回…もうホント嫌になりました。
理由は作戦の組み立てで中々梓っぽくならなくて…。
これでもまだ梓っぽくないかなぁ?
「あ、あの!厳島先輩にお願いがあります!」
「ん~?な~に梓ちゃん?」
ラブは
「私達と最初に対戦した時のアレをお願い出来ますか?」
「え?ええ、いいけどいきなり大胆ね~♪」
「AP-Girlsの皆さんにやられる前に出来れば先手を取りたいんです」
「あ、ああそういう事!大丈夫よ、それは無いから~」
「え?でも……」
「ホント大丈夫よ~、まだあの子達だけじゃ出来ないから~」
ラブはそう言うと笑いながらヒラヒラと手を振る。
しかし梓は訳が解らないといった顔で首を捻るしかない。
「成る程、そういうカラクリでしたのね」
「Why?どういう事よ?」
「あのAP-Girlsが全車一斉にノックして来たのは全てラブの指示で撃っていた、違う?」
「さすがダージリン鋭いわね~♪」
「おい、いいのか?そんな簡単にネタばらしして?」
「いいのいいの、どうせあなた達には直ぐ見破られる事だし~。それにホラあっちでも愛達がネタばらししてるみたいよ、大方千代美辺りが提案したんじゃないかな~?」
「ええ、カチューシャ様が悔しそうな顔をしているから多分そうでしょう」
ラブの言う事をノンナも肯定するが、隊長達の会話に付いて行けない梓は独り戸惑うばかり。
「あの…どういう事なんですか?」
「あら、梓さんごめんなさいね。AP-Girlsの子達はまだあの超長距離の予測射撃を修得していないという事よ。あの子達はラブが指定したポイントに撃ち込んでいるだけ、尤もそれを正確に実行するあの子達の技量も相当な事なのは確かですけれど」
『そしてそれを実行させるラブが普通ではない』
隣に居るまほはそれを口には出さず心の中でのみ呟くのだった。
「まあでも悪い手じゃないわ。ヨシ!ここはひとつ私も頑張っちゃおうかな~?でもそれには協力が必要だから今から言う車両のメンバー集めてくれる~?」
ラブの指示により大洗のカバさんとレオポン、プラウダからノンナのIS-2とKV-2、更に黒森峰からは直下のヤークトパンターの乗員が集められた。
「取り敢えずはこんな感じかな~?それに私とウサギさんチームにも参加してもらうわ。でも正直これ以上は私も無理ね、無駄弾になるだけだわ」
「あの、私達のM3もですか?」
「そう、総大将も最初にドカンと撃って景気付けしましょ♪」
「はあ…それで具体的にどうすればいいんですか?」
「やる事は簡単よ、私の指定した座標に撃ち込めばいいだけ、発砲タイミングも私が指示するから」
「それだけ…ですか?」
「うん、それだけ~♪でも先手をそれで取るとしてその後はどうするのかしら?」
梓は少しの間逡巡するも顔上げると自分なりの考えを述べ始める。
「その後……えっとえっと…」
「梓さん、あなたがペコの立場ならどうするかしら?」
「私がペコさんの立場なら…?」
「そう」
ダージリンの青い瞳に見つめられ梓はオドオドしながらも必死に思考を巡らす。
「あの、えっと、いつもの聖グロの戦い方はしない気がします…」
「浸透強襲戦術の事かしら?それはどうして?」
「その、こちらにはダージリン隊長が居ますし、向こうには西住隊長とアンチョビ隊長が居ます、だから何か違う事をやってくるかもしれません」
「それで?」
「ペコさんと何度かお話ししていて気付いたんですけど、彼女意外といたずらっぽい事が好きなんです。それで向こうに西住隊長がいるなら、この市街地区画で何かしてくるんじゃないかと」
「ペコがねぇ…それは知りませんでしたわ」
ダージリンは今まで気が付かなかったペコの一面を知り少し意外そうな顔をする。
「あ…もしかすると……」
「何かしら?気になる事があったらどんどん言って構わないのよ?」
ダージリンは聞き役に徹し巧妙に梓の思考を引き出している。
それに気付いた面々も興味津々で二人のやり取りに聴き入っていた。
「ペコさんやっぱり浸透強襲戦術やって来るんじゃないかって…でもそれは見せ掛けで……」
「成る程欺瞞作戦ね、アンチョビが向こうにいるなら尚更その可能性は高いわ」
「ハイ、それで西住先輩が別に動いて市街地を抑えに来るんじゃないかと」
「Wow!ラビット中々鋭い読みをするじゃない!」
「うん、良い読みだと私も思うぞ」
梓の予想にケイとまほも感心した様に頷く。
「もしそうなったら西住先輩の別働隊を市街地に閉じ込められないでしょうか?」
「脱出口を重戦車で固めてしまえばさほど難しくはないな、それは黒森峰中心にやろう」
「お願いします、それで本隊なんですがダージリン先輩にお任せしてもいいでしょうか?」
「あら?梓さんはどうするの?」
「私は…私も別働隊を作ってペコさんの本隊に奇襲を仕掛けたいんです、私が先陣に立ちます!」
「まあ!随分と大胆だこと♪」
「それであの…ケイ隊長は私と一緒に来て頂けますか?」
その梓の問いにケイは満面の笑みで親指を立てると快活に応えた。
「OK!ラビット♪頼りにしてくれていいわ!」
「ただ…AP-Girlsだけがどう動くのか全く予想が出来ないんです」
梓はここで視線をチラリとラブに向けた。
その視線を受けたラブは梓の意を即理解し笑いながら梓に言う。
「あ~、ウチの小娘達なら私に任せて~。あの子らは間違い無く別働隊に加わって突っ込んで来るわよ。私が市街地に入れば確実ね。こんな時位は他の隊とやり合って経験値積めばいいのに、ここぞとばかりに私の事狙って来るからその時は私が面倒見るわ。ねぇケイ、何両かシャーマン私に預けてくれる?それとまほは私とみほが市街地に入ったら蓋しちゃってくれる~?」
「Ok!」
「ああ任せろ、だがその時は私も市街に入ってみほの相手をしてやろう」
「梓ちゃん、こんな感じでいいかな~?」
「宜しくお願いします!」
梓は勢いよく三人に向かい頭を下げる。
「大筋は決まったな、後は細かい編成だがそうだな…ルクリリ君はダージリンと一緒だしそうだな、ノンナとエリカは本隊に加わって敵の本隊を手厚く歓迎してやってくれ。ポルシェティーガーとKV-2に直下は市街地封鎖組だな、三突は梓君の奇襲組が連れて行くといいだろう。それ以外の振り分けは各隊長でやればいい。それとカルパッチョ君、アンチョビは君に任せていいか?」
「あ、はい!任せて下さい」
「そうか、まあ後は出たとこ任せだな。何しろこれは祭りだ、存分に楽しめばいい。こんな感じでどうだろうか梓君?」
そう言ったまほは梓に向かい珍しくチャーミングなウィンクを披露して見せた。
「あ、あああ、ありがとうございます!」
まほの意外な行動に梓はそう言うと真っ赤な顔で俯き、他の者も呆気に取られるのだった。
一方その頃オレンジペコの陣営の作戦会議はというと──。
「基本は浸透強襲戦術か…でもそれは当然読まれてるだろ?」
アンチョビは頭を掻きつつオレンジペコにそう言う。
「はい、あちらにはダージリン様がいらっしゃいますから」
「だよなぁ」
「ですから私が先陣を切って進軍したいと思います」
「オイオイ、それはまた大胆だなぁ」
きっぱりと言い切るオレンジペコに呆れつつもアンチョビは先を促す。
「それで本隊にはカチューシャ隊長、ナオミ様とアッサム様、西住隊長には別働隊として市街地を抑えて頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
「了解よ!」
「任せて」
「総大将に付いて行きますわ」
「お姉ちゃんとラブお姉ちゃんは私の所に来るだろうなぁ」
「そんならアタイらが別働隊と一緒に行ってラブ姉の相手するわ」
夏妃が嬉々とした顔で手を上げて進言する。
「ウチのぺパロニと聖グロのローズヒップも連れて行け、引っかき回すのに最適だ」
「あははは……」
みほは困ったなといった顔で頬を掻く。
「それと恐らく市街地に突入すると今度は封鎖して来ると思われますので、その部隊への対応は赤星さんとアリサさんで部隊を編成して当たって貰いたいのですが宜しいですか?」
指名された二人も承知とばかり頷く。
「アンチョビ隊長──」
「解っている、私に敵本隊への奇襲をやらせたいのだろう?おーい、みほ!大洗の連中を私に預けてくれるか?」
「あ、ハイ!了解です!」
「まあザッとこんなもんだろ、どうだペコ?」
「はい、これで宜しいかと思います」
「まあ後気になるのはラブのノックだがあれは不運クジみたいなもんだからなぁ…」
「ですねぇ……」
両陣営大まかな作戦方針は決まったのだが双方の各隊長達の内心はというと──。
『お互い読めてるだろうから結局ガチのどつき合いになるんだろうなぁ……』
かくして両軍合わせて八十両に達する戦車が激突する大戦車戦はもう間も無くその火蓋を切る。
「それじゃあ各員念の為長期戦に備えてお弁当受け取ってね~♪」
作戦会議も終わりフィールド両端に分かれる前全員にお弁当が配られる。
「あ、華さんのはコレね~♪」
ラブがそう言いながら華に手渡すのは特大サイズのお弁当の包み。
そのサイズに周囲の者もドン引きしているが華のみが喜んでいる。
どうやら華の食べっぷりはすっかりラブに気に入られたらしい。
『つ、通常の三倍……』
「やだも~!」
そんなこんなで全員にお弁当が行き渡った辺りで、演習場を管理するコントロールタワーより判定用ドローンの準備完了を告げるアナウンスが流れた。
「ヨ~シ!それじゃあ始めようか~♪」
「梓さん、お互い頑張りましょう」
「ハイ!負けませんよ!」
「うふふ♪私もです」
ペコと梓が笑顔で握手を交わしそれを合図に各員乗機に搭乗して行く。
パドック内で待機中だった戦車達が一斉にエンジンを始動し、辺りは凄まじい轟音に包まれこれから始まる戦闘への緊張感と高揚感に包まれる。
そして一両また一両とパドックを後にしそれぞれの集結ポイントへと向かって行くのだった。
「さて、いよいよですわね」
「ああ、正直かなりワクワクしてるんだ」
「私も訓練以外でカチューシャ様と戦うとなると不思議な高揚感を感じます」
「That's right!信号弾が上がるのが待ちきれないわ!ってHey!ラビット!肩の力抜いて!」
「は、はいぃぃ!」
梓の反応に一同思わず笑ってしまったが気が付くとその輪にラブがおらず、視線を巡らすと既にLove Gunのコマンダーキューポラに収まっているがどうもその様子がおかしい。
弛緩した様な状態で俯きよく聴くと何やらブツブツと呟いている、また何かおかしくなったのかと一同慌てて駆け寄ると、Love Gunの砲塔側面ハッチから金の瞳にセミロングのシルバーブロンドをツーサイドアップにした少女が顔を出す。
彼女の名前は
「あ、申し訳ありません、今ラブ姉は
「演算?それは一体?」
「複数車両に対して同時超長距離予測射撃する時はこんな感じになるんです。相手の位置予測に集中しきってて、終わるまで何言っても反応しませんから。私達この状態を演算って呼んでるんです」
「そ、そうなのか…」
まほも一応安堵するものの、ラブのその一種異様な雰囲気に一抹の恐怖も覚えた。
中学時代ノックをして来たのはラブのみであり、この空白の三年の間にその才能をただ昇華させたのであれば全く問題は無いだろう。
しかしもしこれがあの事故の代償として手に入れた能力であると考えた場合、それがラブにどれ程の精神的負担を与えているか、この先を考えると不安を感じざるを得なかった。
「まほさん……」
「あ、あぁ…」
ダージリンも同じ不安に駆られたのか心配げな表情でラブを見つめている。
一同の不安を余所にラブは今も何かを呟き続けその不安感を一層煽るのだった。
「チャーチルの行き脚では…うふ、不安よね…各車超長距離の…警戒……うん、うんそうだよね…そう動くよね…ボヤボヤしてると確実に…千代美は…さすがね…でも…全く厄介だわ!…ふふ…そう行くんだ…ダメ元で17ポンド撃ち返す…それだとその場で……いっそ傘でもさそうかしら…意外に可愛らしい事……ラブ先輩確実に私も…ええ…熱烈なキスを…‥」
「相手になり切って考えるとは聞いていたがこれは…」
「ええ、自分だけならここまでではなかったはずですわ……」
まほとダージリンが何か得体の知れない薄ら寒さを感じたその時、ラブの左手が咽頭マイクを押えノック参加車両に対し指示を出し始めるが、その声もまた酷く抑揚に欠けるものだった。
「全車仰角最大で待機……三突5m前進傾斜に乗り上げて…左回頭3度…行き過ぎチョイ戻し…OK、ポルシェティーガー10m後退……砲塔右旋回…ストップ、仰角そのまま…IS-2、3m後退砲塔チョイ右…仰角1度下げ……KV-2.15m前進…砲塔仰角そのまま左旋回…チョイ戻し…ヨシ…ヤークトパンター…右前方傾斜乗り上げ、右回頭5度、もう少しOK…仰角2度下げ……M3、20m前進緩斜面へ……梓?」
「ハイ!」
「梓?」
「桂利奈、厳島先輩の指示に従って!」
「アイ!」
桂利奈は戸惑いながらもM3を緩斜面へと乗り上げる。
「行き過ぎ…0.5m後退…ヨシ、右6度旋回…ストップ」
他車への指示を出し終えたラブは最後に自身のLove Gunの乗員に指示を与え始めた。
「香子、18m前進」
Love Gun操縦手、栗毛色のエアリーショートに鳶色の瞳の少女、
「Ok、次、瑠伽。砲塔右旋回6度、仰角1度下げ…ヨシ……各車発砲指示まで現状待機」
ここまでの展開を言葉を失い見ていた一同に、ラブはその表情の消えたままの顔を巡らすと無言で各車への搭乗を促す。
「あ、ああ、解った…各員搭乗!」
「まほさん、この事は後でまた話し合いましょう」
「…そうだな」
短めに言葉を交わしそれぞれの乗機に散るのを見届けたラブは再び梓に無線で呼び掛けた。
「梓…指示を……」
「あ、ハイ!全車に通達!信号弾確認と同時に市街地封鎖部隊及び本隊と奇襲部隊は進発して下さい。超長距離射撃終了後参加車両もこれに追従します」
信号弾打ち上げ予定時刻まであと五分、周囲には戦車のアイドリング音以外は聴こえない。
遊びだからと言われても梓は緊張し喉が貼り付く様な感覚を覚える。
そして残り二分程の処でラブが再び指示を出し始めた。
「各車ペイント弾装填…以降15からカウントスタート、13でIS-2が発砲、10でヤークトパンターが、9でポルシェティーガー、7で三突、5でKV-2が、3でM3、ゼロタイミングでLove Gunが発砲し同時弾着攻撃を敢行する……」
自身で祭りと言いながら、まほも言い様の無い緊張感を感じながら手元のクロノグラフを見る。
秒針の進み方が異様に遅く感じる、そしてタイミングジャストで信号弾の破裂音が響く。
「パンツァー・フォー!」
「前進」
「Go ahead !」
それぞれの号令の元に各部隊が進発し、それと同時にラブのカウントも開始された。
「15、14、13!」
ラブのカウントする声が一際大きくなりIS-2の122㎜が火を噴く。
「12、11、10!9!8、7!6、5!4、3!2、1──」
その後もラブのカウントの声が強くなる度発砲は続きいよいよカウントはゼロになる。
「ゼロ!」
Love Gunの車内に鋭い発射音が響きペイント弾が撃ち出される。
その直後にラブは力が抜けた様にコマンダーキューポラに背を預け沈黙する。
「ラブねぇ~、終わったよ~?」
「ん…あ…ん~!私頑張っちゃったね~♪」
瑠伽の呼び掛ける声でラブはスイッチが入った様に元に戻っていた。
そして数秒後無線の共用回線でコントロールより全弾命中の報が両軍にもたらされる。
「オレンジペコ大隊、チャーチル、Ⅳ号、P40、T-34-85、ファイアフライ、マチルダⅡ、パンター、各車被弾数1カウント」
「え!ウソ!?当ったの!」
「そうよ~、梓ちゃんお見事~♪」
愕然とする梓にラブは元の調子でお気楽に梓を褒め称える。
「さあ私達も先行してるみんなを追い掛けましょ♪」
「は、ハイ!砲撃部隊パンツァー・フォー!」
「お~!」
一方では七両に対する超長距離同時弾着攻撃をまんまと喰らってしまったオレンジペコ大隊は、未だ軽いパニック状態から脱しきれずにいるのだった。
「ウソでしょ!?」
「つ、次が来る!?」
「みなさん落ち着いて!」
「散開しろー!」
「隠れろ!ってどこに!?」
例え自分の搭乗する車両が被弾していなくとも、この攻撃による精神的な揺さぶりは効果絶大で、警戒して予め広く展開していただけに隊列も大きく乱れ、ものの見事に出端を挫かれた形になった。
「冷静になりなさい!粛正するわよ!」
しかしそれもこの小さな暴君の大音声によりどうにか収まりを見せ始める。
「全く!やってくれるわ!」
「ああ、ものの見事にやられたな」
「はい、とにかく今は出遅れを取り戻さないと。ペコさん、指示を!」
「ありがとうございます…それでは各部隊当初予定通りの行動を…前進!」
ペコの号令と共に各隊隊列を組み直すとそれぞれの展開ポイントを目指し進軍を始めた。
「さて…この出遅れがどの程度後に響くかだが今は考えても始まらん。とにかく一刻も早く奇襲予定ポイントまで前進だ。奇襲部隊隊列組み終わったか!?ヨシ行くぞ、Avanzare!!」
このラブの最初の一手が後々の戦局にどう影響するか?まだその戦いは始まったばかりだ。
この紅白戦に投入された戦車の総数80両超え…大学選抜戦よりw
そしてまた何かラブに不安要素が…。