ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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今回もサービス回になるんかなぁ?

2月なんて大概暇なのになんで今年はこんなに忙しいんだろう?
おかげで最近尺が長めになってるのもあり中々直しが出来ず更新も遅れがちです。


第二十話   Macaroni Western Carnival

 紅白戦も無事に終了したその日の夕飯時、笠女学園艦の大食堂は、ケーキバイキングで散々食べたにも拘らず集まった少女達が旺盛な食欲を示していた。

 

 

「このアジフライ肉厚プリプリの衣サクサクで美味しいですわ~♪」

 

「うおっ!五十鈴殿もう十枚目でありますかぁ!?」

 

「あれがあんこうチームの強さの秘訣なのか!?」

 

「やだも~!華!恥ずかしい~!!」

 

「私も負けていられませんわ!リミッター外しちゃいますわよ!」

 

「こら!ローズヒップ止めんかこの馬鹿!」

 

「ルクリリ様ももっと淑女らしくして下さいまし…」

 

「いやおもしれ~からやらしてやれって~」

 

 

 食事の度のこの光景も既にお馴染みのものになりつつある。

 厨房を預かる給養員学科の生徒達も満足げな表情でその光景を眺めていた。

 

 

「しかし連日こんな大盤振る舞いしてていいのか?」

 

「いいのいいの♪給養員学科の子達は、昼間のケーキ作ってたパティシエール部の子達も含めてこれが実習でそれが成績に反映されるんだもの。こう言っちゃなんだけど笠女ってかなりのスパルタよ、入試だって筆記だけじゃなくて実技試験もあるからそれなりの事が出来ないと入学すら叶わないわ。各学科卒業時には高卒の段階で、第一線で通用する人材の育成が目標なんですもの」

 

 

「専門課程以外の一般教科はどうなっているんですの?」

 

 

 情報処理学部に所属するだけあり、アッサムは笠女の教育内容や授業の進み具合などが大いに気になるらしく興味深げに聞いて来る。

 

 

「あ~、それはあまり聞かない方がいいかも~、もしどうしても気になるのならウチは随時短期留学を受け付けてるからどうぞ。っていってもまだ一年生しかいないんだけどね~」

 

「ふむ、それもそうですわね……」

 

 

 アッサムは何か考え込むがその表情をもしオレンジペコ辺りが見れば、それは悪い予感しかしない表情だったであろう。

 

 

「まあそんな事は置いといて明日の予定なんだけどね~」

 

「今日も最高だったけどまだ何かあるのかしら!?」

 

 

 カチューシャが目を輝かせワクワクした表情で聞いて来る。

 

 

「うん、前に言ったけど戦車も乗員もそしてそのポジションも、全部その場でクジ引きで決めるシャッフル戦なんてどうかな?乗った事の無い戦車にやった事無いポジションになる可能性も高くて、それはそれで面白いと思うんだけどな♪ルールとしてはね、一対一で背中合わせで停止した状態から一定距離前進した後に旋回して撃ち合う、云わば西部劇のガンマンの決闘スタイルを考えてるの。ただ一対一だから通信士のポジションは無しになるけど」

 

「それは新しいな!予定では明日が最終日だしそんなお遊びスタイルも面白そうだ♪」

 

 

 まほも興を引かれた様で笑顔で乗って来た。

 それ以外の者も口々に面白そうだと言い、この企画も即決定と相成った。

 

 

「ところでラブ、部屋割りの事なんですけど宜しいかしら?」

 

「ええ、心得ているわ」

 

 

 ダージリンの言葉に打てば響くでラブが即答する。

 

 

「梓ちゃんとペコちゃんの荷物は既にツインルームに搬入済みよ~♪」

 

「まことに結構♪」

 

『コイツらくっ付けオバチャンか!』

 

 

 心の中でそう突っ込みを入れつつも全員その顔は実にゲスい。

 食後に戻った宿舎のフロントでは、変えられた部屋割りに梓とペコが慌てて顔を真っ赤にして抗議するも、再びノンナとナオミの手により強制的にツインルームに放り込まれてしまう。

 そして明けて翌朝の朝食の時間、大食堂に現れた梓とペコは前日のみほとエリカの様な状態で歩き回っているのだった。

 但し梓のパンツァージャケットの裾を掴み付いて回るのはペコの方であったが。

 

 

『あ!攻守逆転してる!?』

 

『夜もヤングタイガー!』

 

『ペコ狩られちゃった!?!』

 

 

 興味津々の視線の中二人は朝食のトレーを手にふらふら彷徨っていた。

 

 

「その…あんざい……黙って食べます……」

 

 

 今日も並んで朝食を取るまほとアンチョビだが、どうやらまほが昨夜と同じ失態を犯したらしく、今朝はとうとうアンチョビが一言も口をきいてくれないらしい。

 果たして笠女学園艦に滞在中にアンチョビの苦労が報われる日は来るのだろうか?

 まあそんな様子で悲喜交々の朝食時間も過ぎ、演習場グランドスタンド前には各校の戦車がズラリと並べられ、ラブ発案の乗員総入れ替えの戦車クイックドロー対決の準備が進められている。

 用意されたクジ引きの箱は使用する戦車と選手のポジション決めの二つ、これらを一戦毎に引き即席チームを二つ造り次々対戦して行く100%お遊びに振った戦車戦だ。

 今回に限り放送席が用意され、実況解説付きでグランドスタンドから観戦しつつ選手達は自身の出番を待つ事になるが、今日もケーキ等が用意されその準備にはそつが無い。

 

 

「え~、それでは間も無く第一戦目のクジ引きが行われますがその前に自己紹介を。私本日の実況を担当させて頂きます大洗女子学園の秋山優花里であります。そして解説は聖グロリアーナの隊長ダージリン殿でお送り致します。ダージリン殿宜しくであります」

 

「こちらこそ」

 

 

 優花里の実況への起用はその知識量を買われての事だが、ダージリンに関してはその方が面白いからとかそんな辺りだろうが本人はそれに果たして気付いているのかどうか。

 

 

「さあ、一回目のクジ引きでありますが、まずは戦車のクジを笠女の厳島殿が引かれております」

 

 

 実況を意識してかラブは笑顔で大袈裟に箱の中をかき回し一枚のカード手に取ると、続いてもう一枚引いた処で二枚のカードを映像学科の生徒が構えるカメラに向けた。

 

 

「おっと出ました!これはいきなり凄い対戦になりました!ティーガーⅠ対ティーガーⅡとはトップを飾るに相応しいと言いますかトリに取っておきたい様な対戦であります!」

 

「全くラブのクジ運には呆れますわ」

 

「さて今度は乗員とポジションでありますが、一対一の対決でありますので通信手のポジションは除外されております…っとカチューシャ殿が双方の車長を決めるクジを引かれましたが固まっておられます、コレは一体どうした事でしょう?」

 

 

 カメラがカチューシャの手元に寄りクジのカードをスクリーンに映し出す。

 

 

  ティーガーⅠ車長 丸山紗希   ティーガーⅡ車長 ニーナ

 

 

 スクリーンに紗希の名が映った瞬間、優花里も含め大洗のメンバーは全員椅子からずり落ちた。

 

 

「…何と言うか最初からオチが見えますわね……」

 

「し、失礼致しました、気を取り直して次は操縦手でありますが…今度は西住の姉上殿が固まっておりますが何があったのでありましょう?」

 

 

 ティーガーⅠ操縦手 ぺパロニ   ティーガーⅡ操縦手 ローズヒップ

 

 

 カメラが映すまほの手は小刻みに震えその顔は真っ青になっている。

 

 

「お願いだから壊さないで~!」

 

 

 エリカの悲痛な叫びがスタンドに響くと、アチコチから笑いと悲鳴が同時に巻き起こる。

 

 

「…続きまして装填手でありますがクジを引いたアンチョビ殿が片手で顔を覆っております」

 

 

 ティーガーⅠ装填手 カチューシャ   ティーガーⅡ 角谷杏

 

 

「ペイント弾とはいえ88㎜、持ち上げられるのかしら…?」

 

「そ、それを言ってはお終いの様なぁ…最後は砲手となりますがケイ殿まで固まって……」

 

 

 ティーガーⅠ砲手 河嶋桃   ティーガーⅡ砲手 ケイ

 

 

「……なんと申しますか、いきなり大洗から三枚もジョーカーを出してしまった様な気が致しますがとにかく第一戦目の組み合わせが決定致しました」

 

「これを一日繰り返す気ですの?」

 

 

 もう既に嫌そうな顔でダージリンが吐き出すが、優花里は聞かなかったフリをして実況を続ける。

 

 

「ここで改めてルールを説明致しますが、中央の仕切り線に背中合わせに停車した対戦車両が合図と共に前進、10m先のラインで180度転回し砲撃を開始します。なお砲塔の旋回と転回前のペイント弾の装填は禁止となっております。使用弾数は当たっても当たらなくても一発のみの文字通り一発勝負であります。さあ、両車決定した乗員も乗り込みもう間も無く第一戦目の開始であります!ダージリン殿はこの一戦どの様な展開になるとお考えでありますか?」

 

「どうせロクな結果にはなりませんわ」

 

 

 めんどくさそうにダージリンが答えると同時に試合開始を告げるブザーが鳴り響く。

 それと同時に双方前進を開始…しない。

 どういう訳か両車スタート地点からピクリとも動かず聞こえるのはアイドリング音のみ。

 

 

「これは一体どうした事でしょう!?両車一歩も動きません!何が起きているのか車内の様子を聞いてみましょう、音声さんお願いします!」

 

 

 放送席傍のPA機器担当の生徒が車内に取り付けたマイク音声を、実況スピーカーに繋ぐ作業を行なうとまず最初にぺパロニの怒鳴る声が、次いでローズヒップの叫びが飛び出した。

 

 

「オイ!車長!黙ってないで指示出せってんだ!」

 

「それは何語ですの!?何を言っているかさっぱり解りませんわ!」

 

 

 双方寡黙な紗希と訛りのあるニーナが車長になったのが運の尽きであった。

 放送席では初っ端からこの展開で優花里とダージリンが頭を抱えデスクに突っ伏している。

 そして遂には耐え切れなくなったぺパロニとローズヒップが勝手に前進を始め、ほぼ双方が同時に10mラインに到達し転回を開始、これでいよいよ決着が付くかと思うと再びトラブルが発生する。

 ダージリンの予想通り、ちびっ子装填手二人が車内で88m砲弾を抱え見事カメの子になっていた。

 

 

「な、なんなのよ!この重さは!」

 

「お~も~い~!や~ら~れ~た~!」

 

 

 予想通りのお約束の展開にグランドスタンドに居る隊員達も笑う事が出来ない。

 車内の大騒ぎが暫く続きその後どうにか装填し砲撃するも期待を裏切らぬ桃ちゃんが大外し、さすがにケイは当てたもののここまでの展開で素直に喜べず恥ずかしそうに帰って来た。

 帰って来た勝利チームにはそれぞれ笠女謹製校章であるZ旗をあしらった、中々センスの良いマグカップがそれぞれに贈呈されるも、皆やはり勝ち方が恥ずかしいらしく複雑な笑みを浮かべていた。

 まほとエリカに至っては、涙目で無事帰って来た愛機に安堵の溜息を吐くと同時にその場にへたり込んでいる程だ。

 そしてその後もあり得ない組み合わせによる珍試合が連発し、その場にいる者全てが腹筋に重大なダメージを受け続ける事になるのだった。

 

 

「そんなだからタカシさんに──」

 

「それは今関係無いでしょ!」

 

「こんな諺を知って──」

 

「それだ!」

 

「だから直下!何でオマエは前進するだけで履帯が切れるのだ!?」

 

「そんなの私にも解りません!」

 

 

 一発勝負だけに次々試合は消化されて行く中、コレ絶対仕込んだだろ?という組み合わせも発生しており、その中でも最たるものがまさかのエリみほの組み合わせで、使用戦車もカルロベローチェという嬉恥かしな事態にグランドスタンド全体のワクテカが止まらない。

 試合開始を告げるブザーが鳴り対戦相手は前進するも、エリみほのカルロベローチェはその場から動かないが何故か激しく揺れている。

 よせばいいのに音声さんが良い仕事をした為にスピーカーから生々しい声が漏れだした。

 

 

「みほ!みほ~!」

 

「あぁ!エリカさん!」

 

「ああ!これはマズイであります!放送コードに引っ掛かるであります!音声さんカットカット!」

 

 

 さすがのダージリンもマイクを薙ぎ倒しデスクに頭を打ち付け、そうこうするうちに反転した対戦車にペイント弾を撃ち込まれて試合終了となっても揺れは収まらず、全くもって盛りの付いたケダモノは手に負えない。

 数分後やっと車内から出て来た二人は、またしても着衣が乱れ必要無い咽頭マイクで喉元を隠し上気した顔で足早にどこかに走り去った。

 

 

「……そ、それでは試合を再開したいと思いますが…ダージリン殿?大丈夫でありますか?」

 

「……」

 

「え~、つ、次の対戦は‥あ…カ、カルロベローチェ同士の対決であります。それぞれ操縦手と砲手はといいますと……」

 

「どうなさいましたの優花里さん?」

 

 

 持ち直したダージリンが問い掛けると今度は優花里が絶句している。

 手元に回って来た対戦カードを見たダージリンも言葉を失った。

 

 

 操縦手 オレンジペコ   砲手 澤梓

 

 

「あのクジ引きの箱の中は一体どうなっているんですの!」

 

 

 そしてもう一方のカードの乗員も、別の意味で嫌な予感しかしない。

 

 

 操縦手 厳島恋   砲手 ノンナ

 

 

『……』

 

 

 完全に緘黙する実況と解説を前に、両チーム用意されたカルロベローチェに乗り込む。

 試合開始のブザーが鳴るとスタンドの隊員達も生唾を飲み込み動きを注視する。

 

 

『ま、また揺れるだけ!?』

 

 

 隊員達の予想に反して梓とペコのカルロベローチェは前進を始めるが、ラブとノンナが乗車するカルロベローチェが一切動かないのだが、こちらに関してはほぼ全員の予想通りで、ここでもまた音声さんが無駄に勤勉さを発揮する。

 

 

「せ、狭…胸が閊えて操縦桿が…」

 

「屈んでも照準が…」

 

「ってノンナもっとそっち行きなさいよ」

 

「ラブこそその無駄にデカいもの何とかなさい」

 

 

 色々と規格外な二人にとって残念ながらカルロベローチェは小さ過ぎ、頭も閊える為にハッチすら閉められず狭い車内で二人がジタバタするのも丸見えだ。

 

 

「やっ!ちょっと感じちゃうから押さないで♡」

 

「アナタこそドサクサに内股撫でないで!」

 

「あ、アンタ達そこで何やってるのよ~!」

 

 

 スピーカーから聴こえる二人の声にカチューシャの絶叫が重なる。

 この時既に10mラインまで前進し転進を終えた梓とペコは車内で困った顔でその様子を見ている。

 

 

「ええと、ペコさんどうしよう?」

 

「取り敢えず撃ってしまって宜しいかとは思うのですが…」

 

「じゃあ…撃ちます」

 

 

 梓はそう言うと射撃を開始し見事全弾命中させた。

 何も出来ずに頭の上から飛び散ったペイント弾の飛沫を浴びたラブとノンナは、狭い車内でお互いの図体のデカさを攻め合っている。

 

 

「いつもカチューシャ肩車してるクセに何でノンナは縮まないのよ~!?」

 

「食べた物の栄養が全部胸に行ってるラブに言われたくありません!」

 

「ちょ!何よ~ノンナだって私の事あまり言えないじゃないよ~!」

 

「三年ぶりに会ってみれば身長だって私より10㎝も高くなってたじゃありませんか!」

 

「誰よこんな企画考えたのは…」

 

「もうその年でボケましたか?ラブのずば抜けた記憶力とやらもアテになりませんね」

 

「な!?ちょっと言ってみただけじゃない!」

 

「あの~お二人共既に被弾しておりますのでそろそろその辺で出て来て頂けませんでしょうか~?」

 

 

 ここに来てやっと仲裁する様に実況の優花里が声を掛けると、全て聴かれていた事を思い出した二人はハッとして途端に恥ずかしさから赤い顔になる。

 

 

「うぅ…酷い目にあったわ……」

 

「豆戦車は私達には無理ですね…」

 

 

 冷静になった二人が肩を落とし並んで戻って来るが、勝った方の二人が逆にこれで若干冷静さを失ったのか聴かれているのを忘れ狭い車内ではしゃいでしまった。

 

 

「梓さんお見事です♪さあ、ご褒美の時間ですよ~♡」

 

「あ、ペコさんそんな…」

 

「ちゅ♪」

 

「じゃ、じゃあ私からも…」

 

「ん…♡」

 

「あの~お二人さんそちらも筒抜けなのをお忘れでは~?」

 

『ぴゃあ!!』

 

 

 優花里の困った様な呼び掛けにビックリした二人の可愛い悲鳴まで筒抜けで、グランドスタンド全体がその可愛さに黄色い笑い声に包まれる。

 隊員達がひとしきり笑った処で時刻は丁度お昼となり、例によってコントロールタワーより昼休みに入る宣言が艦内放送で通達された。

 

 

「みんな~!今日のお昼は大食堂で食べるから移動するよ~♪」

 

 

 ラブがいつもの拡声器でグランドスタンド全体にそう呼び掛けると、皆一斉に立ち上り大食堂目指し移動を始める。

 

 

「そう言えば今日はお弁当を貰っていなかったが何かあるのか?」

 

「今日は金曜日だから特別なのよ~。大丈夫、まほは絶対大喜び間違いなしだから♪」

 

 

 まほの質問にラブは笑顔で答えるとまほの背中を押しながら大食堂に向かう。

 皆も二人の後を追って歩き出しやがて大食堂が近くなると、それぞれの鼻腔の奥を独特な良い香りが刺激して来る。

 

 

「あ!この匂いは!」

 

 

 そう、大食堂の辺りにはまほの一番好きな香りが立ち込めているのだった。

 

 

 




ノンナの身長が172㎝(劇場版では176㎝)だとか。
それより10㎝高いラブの身長って…。

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