スミマセン、今週はハンパに忙しくてあまり投稿出来ませんでした。
その日横須賀の市街地はちょっとした特需に沸いていた。
小さな街に七校の戦車道の隊員以外にも各学園艦の生徒と住民が市街地に繰り出し、IDの割引サービスを最大限に駆使してもなお、余裕の売り上げを達成したからだ。
更に笠女と聖グロを除く五艦が物資補給も行った為、市内各業種の業者に落ちたお金は只事ではなく、後日市の商工会と市役所から亜梨亜の元に感謝状が届く程であった。
ラブ達もまた嘗て皆で行った思い出の場所を巡り、途中通った地元レコード店の店頭でCD発売日が大きく入ったAP-Girlsのポスターを見つけ大いに興奮したり、以前の様にアメリカンドックやソフトクリームを食べては笑い、改めて揃いのドッグタグを作り直したりして一日を過ごした。
「ふう、今日は何処に行っても必ずどこかしらの生徒が居たなぁ」
横須賀港を見渡すヴェルニー公園の外れにあるコーヒーショップのテラス席で皆と一息つく中アンチョビはカプチーノを啜りつつしみじみと呟いた。
「さすがに七艦もの学園艦の生徒が一斉に上陸すると凄い事になりますわね」
コーヒーショップの紅茶はやはり納得が行かないのか、ダージリンとアッサムは抹茶のフラペチーノを飲みつつアンチョビの言葉に頷きそれに続けて言う。
「まあ横須賀って狭い街だからね~」
何故かラブはニヤニヤとアンチョビの顔を見ながら、甘さを増し増しにしたキャラメルのマキアートを飲んでいる。
「何だラブ人の顔を見ながらニヤニヤと気持ちの悪い」
「ん~?別に~」
更にニヤニヤしながらラブが答えるとアンチョビはムッとした表情になる。
「何なんだ全く…」
アンチョビが少し文句を言いつつ再びカプチーノに口を付けると、すっと背後から寄って来た人の気配が不意にアンチョビに声を掛けた。
「千代美ちゃん……」
突然後ろから名前を呼ぶ聞き覚えのある懐かしい声。
振り向いたアンチョビはその人物の姿を見るなり驚いて大きく目を見開き、文字通り飛びあがって立ち上がるとそのままその人に抱き付いた。
「英子姉さん!」
「わっと!ち、千代美ちゃん!千代美ちゃん…その…怒ってるよね…?」
「え?何を?」
アンチョビはキョトンとした表情で英子の姿を改めて見る。
久しぶりで再会した英子はベリーショートだった黒髪を背中まで伸ばし、より素敵な大人の女性の雰囲気が増していた。
「だって私口止めされたとはいえ、厳島さんの事を千代美ちゃんに黙ってたし……」
「怒るだなんてそんな!ラブが国内で訓練出来るよう手配してくれた英子姉さんには、感謝こそすれ怒るなんて事ありません!」
「ホント…?」
「ハイ!それより英子さんのそのヘアスタイルとっても素敵です♪」
「千代美ちゃん♡」
「英子姉さん♪」
感動の再開に二人は嬉しそうに抱き合うが、どうしても千代美の行動全てが恋する少女のそれに見えてしまい、まほは色々な意味で独りオロオロしている。
「まほ、ゴメンね。今日だけは許してあげてね」
「う?あ、あぁ、解ってるよ」
そっと耳打ちして来たラブにまほはそう辛うじて答えた。
「でも英子姉さん今日はまたどうしてここに?」
「ああ、それは私がみんな横須賀に来るのが決まってから直ぐにご連絡したの。初めてお会いした時に知波単との演習の件でメアドも交換していたから。」
「今夜のウェルカムパーティーに私もご招待を受けてるのよ」
「ホントですか♪」
「ええ、私は一度帰宅してからバッチリおめかしして伺うわ」
「英子姉さんはそのままでも素敵です」
「ありがと千代美ちゃん♪それにしてもここまでよく頑張ったわね、普通の高校生ではとてもあそこまで出来ないわ。大学選抜戦での活躍も見事なものだったわよ、それに観閲式でのドゥーチェコールには私感動しちゃったわ!」
「あ゛ぁ゛ぁ゛~!アレはもう忘れて下さいぃぃ~!」
「うふふ♪ああそう言えば西住の妹さん、確かみほさんだったわね?」
「は、ハイ!」
突然名前を呼ばれたみほは驚いて立ち上がり直立不動の姿勢になるが、よく見ればアンチョビとニコニコ寛いで座っているラブ以外は気が付けば、全員背筋を伸ばし緊張した表情で座っていた。
やはり三年前の出来事は一同に強烈な記憶を植え付けていたのだろう。
「あぁ、あの時とは訳が違うからそんな緊張して畏まらなくてもいいわよ」
英子は微笑みながらそう言うとみほに座る様促す。
「は、はあ……」
「エキシビジョンと大学選抜戦では
「そんな!あの戦いは誰か一人が欠けても勝てる事はありませんでした。私達大洗の隊員も、全員が心から感謝しています」
「ありがとう、そう言って貰えると助かるわ。それにしてもみんな本当によく頑張ったわね、あの木端役人始めとっ捕まえた連中は今、上の方がギッチギチに締め上げてるから安心してね」
英子がそう言って凄惨な笑みを浮かべた為、全員の背中に冷たいものが奔るのだった。
「それじゃあ私は一度署に戻って帰宅後出直すからまた後ほど」
そう言い残し英子が颯爽と立ち去り姿が見えなくなると一同一気に脱力した。
「やっぱ怖い……」
涙目のカチューシャがぼそりと言うとアンチョビがすかさず反論する。
「そんな事無いぞ!英子姉さんはとっても優しくて素敵な人だ!」
「それは
「アンチョビだ!ったく!」
アンチョビは即座に反応するダージリンを睨みつけた。
「ああそうだ~、絹代さん始め知波単の皆さんも、今夜のパーティーに招待したからね~、もう迎えのヘリも出てる頃よ。ダージリンも愛しの絹代さんに会えるわよ~♪」
「な!ま!だ、誰がそんな……フン!」
ダージリンは顔を赤くして頬を膨らませるとそっぽを向いた。
すかさず意趣返しとばかりにアンチョビがニヤニヤ笑いでダージリンの頬を指で突くと、更にダージリンは顔を背けその様子がみんなの笑いを誘う。
「さ~て、みんなはもう少しのんびりしてから戻って来てね、私は軽くだけどリハがあるからひと足先に戻ってるね」
ラブはそう言うと立ち上がり手を振りながら去って行く。
「アイドル…芸能人になるのかぁ……」
ラブの背中を見送りながらアンチョビが何となく呟くと、ケイは考え込みつつ続けて言う。
「Ummm…でもAP-Girlsって歌唱力も、ダンスもちょっとその辺のアイドルとはレベルが違うと思うのよね。ラブは私達と同い年にしても他の子達はまだ春までは中学生だったのに……」
「それまでの境遇を考えると覚悟が違うのだろうな…」
「うん、お姉ちゃん私もそう思う…それを思うと私達って本当に恵まれてるのに、これまで何やってたんだろう……」
「二人に何も恥じるものはありませんわ、もっと胸をお張りなさい」
「ありがとう、ダージリン」
姉妹二人ダージリンの言葉に揃って頭を下げ、ダージリンもそれに微笑む。
「ちょっとこれをご覧なさいな」
ラブが去った後、愛用のノートPCで何やらやっていたアッサムがモニターを皆の方に向けた。
「え~っと何々?本日観閲式参加校全ての撤収が完了…ですって~!?」
『あ゛!?』
アッサムが皆に見せたのは戦車道連盟のHPでそのヘッドラインには、今日の昼になって高校戦車道観閲式に参加していた学校のうち、残っていた最後の二校の撤収が完了した事を伝えていた。
それを読み上げたカチューシャの声に一同も驚愕の顔をする。
「コレ完全にワースト記録だろ~?」
「まさか私達がこれだけ楽しんでいた間も足止めされてたとはね…」
信じられんといった表情で言ったアンチョビにナオミも青い顔で続く。
「さすがにこれは何とかしないと問題になりそうですね……」
来年以降の後輩達の事を思うとノンナも険しい顔になる。
「まあでもそれは
「ですわね…さあ、ここでそれを論じても始まらないしそろそろ戻りましょう」
「だな…」
アンチョビとダージリンがそう締めて一同はベースに戻るべくその場を後にした。
ビッグバンドのキレのあるサウンドが笠女学園艦内のAP-Girls専用アリーナに鳴り響く。
六艦の学園艦の横須賀寄港を歓迎してAP-Girlsと第七艦隊音楽隊と合同で開催されたウェルカムパーティーは、七艦バンドの演奏するスタンダードジャズナンバーでその幕を開けた。
ジャズに合わせスィングするAP-Girlsの少女達も、その衣装を50年代風で可愛く纏めている。
「噂には聞いていたけど歌だけじゃなくてダンスも凄いのね」
供される食事も堪能しつつ英子は感心した様に言う。
その英子の出で立ちはといえば背中まで伸びた髪を夜会巻きでアップにし、シックなワインレッドのパーティードレスを纏い大人の女性の魅力たっぷりでアンチョビをドキドキさせていた。
憧れの眼差しで頬を染めたアンチョビはその英子の言葉に質問をする。
「歌だけじゃないって英子さんは聴いた事があるんですか?」
「横浜がキー局のFMで発売間近という事もあって何度かね、CMも良く流れてるし」
「ラブは本当にアイドルになるんだなぁ…」
アンチョビは英子の話しになるほどとは思うものの実感はまだ湧かない。
「横須賀じゃ厳島のお嬢様という事で元々有名人だし、そのお嬢様が芸能界デビューともなれば、それはそれなり騒ぎにもなるわよ。今日はずっと一緒だったんでしょ?街中歩き回っててかなり視線を感じたんじゃないかしら?」
言われてみれば今日一日、視線を感じる事が何度と無くあったのはそういう事だったのかとアンチョビも漸く合点が行ったのだった。
ステージ上では三曲続けての演奏とダンスが終わり、AP-Girlsのメンバー達が横一列に並びその中からラブが一歩前に出ると挨拶を始めた。
「みなさん横須賀へようこそ!今夜は私達AP-Girlsと第七艦隊音楽隊とのスペシャルナイトです!全力で頑張りますのでどうか最後まで楽しんで下さい♪」
ラブの挨拶が終わるとそこからはもう怒涛の展開だった。
AP-Girlsと七艦バンドが競う様にテンションを上げ、結果相乗効果で恐ろしくレベルの高いセッションがステージ上で繰り広げられている。
前回同様登場したLove Gunのレプリカを始め、ド派手な舞台演出に目まぐるしく行われる衣装チェンジ、息吐く暇も無い程のラブが宣言した通りの全力のステージは見る者を只々魅了し続けた。
だがそんな中に在って知波単の隊員達だけが少々違う方向で興奮状態にある。
「た、玉田殿、細見殿!旗日でもないのにこの様な御馳走を頂いて宜しいのでありましょうか!?」
「う、狼狽えるでない福田!」
「そ、そうだ、ドンと構えておれば良いのだ!」
例え良家の子女達はいえ、日頃知波単の些か行き過ぎた質素倹約を旨とする食糧事情に慣れきった者達にとって、この様な席は全くの初体験であり興奮した福田を叱責する玉田と細見の両名も、言葉はうわずりよく見ればその手も細かく震えているのだった。
「お願い…恥ずかしいから止めて……」
「……」
後輩達の繰り広げる会話に英子は恥しげに小さくなりアンチョビも掛ける声が見当たらない。
因みにこの頃にはそのステージの雰囲気もあり、ダージリンもすっかり周りが見えなくなり、やっと会えた絹代と二人何処か違う世界に行ってしまっていたのだった。
「いやあ、厳島殿にはいつも驚かされますな。この様な席にまさか私共までお呼び頂けるとは」
「そう、それですわ何故私に直ぐ教えて下さらなかったのかしら」
些か意地の悪い含みを持たせたダージリンのもの言いに、絹代も困ったなといった表情でダージリンの顔色を窺う様に弁明をする。
「それはその、私も初めはダージリン殿と厳島殿が旧知の仲とは露程も存じませんでしたし、何より大先輩の敷島殿より徹底的に秘匿すべしと厳命を受けておりました故、ダージリン殿にもどうかご容赦願いたいのでありますが」
「あら?徹底的に秘匿という割には観閲式ではラブに随分と
「あいやそれは…!」
すぐ傍に座るオレンジペコはジト目でダージリンのやり様を見ているが、それにも気付かぬ程にダージリンはこの状況を楽しんでいる様だった。
皆それぞれ、多少歪んだ状況もあるがステージと食事を楽しんでいる。
そしていよいよステージもラストパートに入ると、ピンスポットに照らされラブのみが独りステージに戻って来た。
その出で立ちは気合の入った15㎝のピンヒールに、破壊力満点のボディーラインがモロに見える艶やかな深い蒼色のシルクサテンのイブニングドレスで、大胆に開いた胸元からはグランドキャニオンの深い谷が、スリットからは高校生とは思えぬ脚線美が垣間見え、その場にいる者全員が完全にノックアウトされる。
しかし同色のロングスリーブの手袋や胸元のレース、肩にはシースルーのショールやストッキングなどでラブを苦しめる事故の傷痕は巧みにカバーされていた。
「うぅ…同い年の女としてのプライドが木端微塵に撃ち砕かれるんだが……」
「いえ……それは私も同様よ…」
まほの洩らした呻きに英子も力無く言葉を添えた。
ステージ上のラブはそんなどよめきを余所に、名だたる女性ジャズボーカリスト達が歌いヒットしたナンバーを、その魅力的なハスキーボイスで次々と歌い上げる。
中でものYou'd Be So──で始まる名曲を歌った時などは、曲が終わると同時にバックで演奏していた七艦バンドのメンバー達からも拍手喝采となった程であった。
後にこれが切っ掛けでこの場に居合わせた米海軍関係者からは、ラブのハスキーな声をヘレンのニューヨークのため息になぞらえ、ヨコスカのため息と称される様になる。
そしてやがては楽しい時間にもいよいよ終わりの時間がやって来た。
ラブが最後の曲を歌い終え、再びステージに登場したAP-Girlsの少女達や七艦バンドのメンバー達と共にカーテンコールに応えた後ラブのみがステージに残ると、客席から見て上手にあたる右側の袖から一人の女性が現れその容姿に客席は静まり返る。
デザインは異なるものの、ラブと同色のイブニングドレスを身に纏うその女性の容姿はラブに生き写しであり、事情を知らぬ者と知ってはいても実際に初めて会う者達にとっては充分にインパクトを与えるその女性、厳島亜梨亜がラブ同様三年ぶりに公の舞台にその姿を現したのだ。
「亜梨亜おば様!」
思わず発したまほの言葉に驚きで静まり返っていた客席にどよめきが起こった。
「おば様…って!?」
「じゃ、じゃああれが厳島さんのお母さん!?」
「そっくりなんてもんじゃないわ!」
「え?お姉さんじゃなくて!?」
「亜梨亜さんあの時から全然変わってない……」
亜梨亜はステージ上からまほ達の姿を認めると、軽く会釈をしつつラブの元へ歩み寄りそのまま隣に並び立ち、ラブと目線を合わせた後に二人揃って客席に向かい深々と頭を下げた。
そして頭を上げると一度客席に視線を巡らせた後、マイクの前に立ち挨拶を始める。
「御来場の皆様、私が私立三笠女子学園の理事であり、またこの恋の母でもある厳島亜梨亜で御座います。この度は我が娘、恋の我儘にお付き合い頂きました事、深く感謝を申し上げます。本来であればもっと早くご挨拶するべき処で御座いましたが、生憎所用で日本を離れておりました故このタイミングとなりました事深くお詫びを申し上げます」
そこまで話した処で改めて亜梨亜は恋と共に深々と頭を下げた。
「さて、御存じの方も多い事かと思いますが、三年前のあの日よりここまでの時間は、私共親子にとって只ひたすら苦難の道でありました。しかしそれも多くの方々に支えられ、ここに漸く帰り着く事が叶いました。また当時我が娘の事を優先するあまりに、お世話になりました皆様には大変な不義理を働きました事ここに深くお詫びを申し上げます」
ここでまた三度親子は深々と頭を下げる。
「ただ、今宵ここで語るには三年という歳月は余りに長くなる故、多くを語る事は致しません。今はただここに帰還したご挨拶と、これまでのお力添えに対する感謝の気持ちを述べるに留めさせて頂きます。皆さま我が娘、恋の為に本当に有難う御座いました」
決して長くはない簡素な挨拶ではあるものの、その表情に現れる感謝の念には欠片も偽りは無く、その美声もあり聴く者の心に響く挨拶であった。
最後にもう一度頭を下げた後ステージから降りると、親子揃ってまほ達の元へとやって来た。
「まほさん、みほさん本当に御免なさい。あなた達としほさんや常夫さんにはどれ程ご心配とご迷惑をお掛けした事か…本当にお詫びのしようがありません」
『亜梨亜おば様!』
泣きながら駆け寄るまほとみほを亜梨亜は優しく抱き留めると、暫し無言で三人抱き合う。
アンチョビもまたその姿を貰い泣きの潤んだ瞳で見つめ、改めてこの三年という月日に思いを馳せるのであった。
Saturday Night Liveといえば、
ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドのブルースブラザーズ。
しかし劇場版の観覧車先輩転がしてミフネ作戦とか、
1941ネタなんてパッと見でどの程度の人が理解出来たんだろう?
まあ前フリでウサギさんチームが見てたけどねぇ…。
かく言う私は1941は劇場で見てますw