ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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果してまほはカッコいいのかポンコツなのか…。

確実なのはチョビ子がとても良い子な事♪


第二十五話   まほ襲来

「違う…それは違うよ千代美」

 

 

 自身も膝を突くと、ラブはそのまま崩れ落ちそうになるアンチョビを抱き止める。

 

 

「千代美は卑怯者なんかじゃないわ、千代美に言われなくても後で榴弾も撃つつもりだったもの。もしあの時千代美が電話をくれなかったら、私は誰にも気付かれる事無く独りこの世から消えていたわ…謝らなければいけないのは私の方よ、何も言わずに勝手にみんなの前から消えて、私を助けてくれた千代美にずっとその事で辛い思いをさせ続けて…許されない事をしたのは私の方、いけないのは大好きな千代美をこんなにも苦しめた私の方なの。千代美…そしてみんな…本当にごめんなさい」

 

「ラブ……」

 

 

 遂にアンチョビは大きな声を上げ泣き始めた。

 ラブもまた涙を流しながらより一層強くアンチョビを抱きしめる。

 歓喜の再会を果たしてなお、その心に重く圧し掛かっていたものを吐き出せずにいた苦しみは如何許りか、それを想うと一同も涙を堪える事が出来ない。

 

 

「あなた達は何も悪くない…そう、ここに居る者は誰も……」

 

 

 口元を覆い顔を背けていたダージリンが絞り出す様に言う。

 

 

「安斎…ラブも……」

 

 

 気丈にも流れる涙もそのままにまほは膝を突き支え合う二人に歩み寄ると、力を籠め二人を抱きしめた後に渾身の力で同時に二人を立たせる。

 

 

「改めて言う…安斎、ラブを、大事な家族を救ってくれてありがとう。そしてラブ、良く帰って来てくれた…誰も二人を責めたりはしない。こうして再び巡り合えた…それだけで充分なのだから」

 

「にしずみ……」

 

「お願いだからもう独りで苦しまないでくれ」

 

「ありがとう……」

 

「ラブも同じだ、もう何処にも行くんじゃない」

 

「うん…ごめんなさい…」

 

 

 それから暫しの時間を要し漸く皆の涙も消えた頃、遂に本当の別れの時間が訪れる。

 今一度別れのハグを交わすとそれぞれが乗り込んだスーパースタリオンが、一機また一機と秋晴れの空に舞い上がりラブはそれに向かい力の限り手を振ってそれを見送る。

 

 

「行っちゃった……」

 

 

 それぞれの学園艦に向け飛び去るスーパースタリオンを見送りながらラブは呟く。

 

 

「ラブ、こちらにいらっしゃい」

 

 

 ダージリンに声を掛けられそちらを見れば、アッサムがヘリデッキの片隅に細やかなお茶の席を用意してラブを手招きしていた。

 

 

「こちらでお借りしたものですがお茶を頂きながら皆を見送りましょう」

 

 

 アッサムはそう言いつつ慣れた手付きで紅茶を入れ始める。

 その流れる様な華麗な所作を見て、ラブも嬉しげに用意された席に着くと紅茶の注がれたカップから湯気と共に芳醇な香りが流れて来て少し寂しかったラブの心の中が暖かくなった。

 

 

「落ち着きましたか?」

 

「うん…」

 

「そう、それは結構」

 

 

 香りを楽しみつつ紅茶を口にしたラブに、ダージリンとアッサムも穏やかな笑みを向ける。

 

 

「私とアッサムからあなたに伝えておく事があります」

 

「ん?」

 

「私達二人の進路の事です」

 

「!」

 

 

 ラブの鼓動が一瞬高く跳ね上がる。

 まだ幾何かの時間があるとはいえ、二人も年が明け春になれば学園艦を巣立って行く。

 ラブの胸の中にまた少し寂しさの芽が顔を出すのも無理からぬ事であった。

 

 

「私達は二人揃って地元横浜の大学に進むのよ。幸い大学の方から戦車道で推薦を頂いて、私達は二人共それを受ける事にしました。ですからこれからも私達はずっと横浜に居続けますわ」

 

「え!ホントに!?」

 

 

 アッサムのその言葉に少し沈み掛けたラブの表情が明るく輝いた。

 

 

「ええ、本当よ。ですから何かあった時は直ぐにいらっしゃい、もう何も遠慮する事は無いのよ」

 

「うん…うん!ありがとうダージリン!アッサム!」

 

「ほらもう、直ぐに泣かないの、美人が台無しですわ」

 

「えへへ…」

 

 

 アッサムが微笑みながら取り出したハンカチでラブの目元を拭ってやると、ラブもはにかんだ表情で素直にされるに任せる。

 そこから暫くは三人で寛ぎ紅茶を楽しんでいたが、仲間を送って行ったスーパースタリオンがそれぞれの艦から離艦すると各艦一斉に抜錨するのが見えた。

 すると別れの挨拶とばかりに笠女と聖グロの学園艦が揃って汽笛を鳴らし、ゆっくりと動き始めた五校の学園艦も一斉に汽笛を鳴らす。

 

 

「ありがと~!元気でね~!またみんなに会えて本当に良かった~!」

 

 

 ラブはヘリデッキからそれを見送りながら両手を口元に添え大きな声でそう叫んだ後、今度は飛び跳ねながら右手を大きく振り続けた。

 ダージリンとアッサムもそんなラブを微笑みながら暫くは見守っていたが、ラブが席に戻り一息ついた頃自分達もそろそろ出港する事をラブに告げるのだった。

 

 

「最初の練習試合の対戦相手は、やはり私達になりましたわね。日程が調整つき次第連絡頂ければ、最優先でこちらも対応いたしますわ」

 

「うん、ありがとダージリン♪」

 

「そうそう、九月は間に合いませんでしたけど、年明け二月にはまた元町のセールがありますわ」

 

「あ!チャーミングセール♪」

 

「ええ、その時はまた昔の様にね」

 

「うん!絶対行く!やった~♪また二人と元町に行けるんだ~♡」

 

 

 ラブは子供の様にぴょんぴょん飛び跳ね体中で喜びを表す。

 

 

「あらあら♪」

 

 

 二人も口元を隠しながらも嬉しそうに笑うのだった。

 

 

「あ!そうだ忘れるトコだった!ねえ、二人共これも持って行ってね♪」

 

「あら?お土産ならもう頂きましてよ?」

 

「うん、でもコレは別。まだ封を開けてない祁門(キームン)の茶葉があるから。やっぱり解る人に飲んで貰った方が茶葉も嬉しいと思うの」

 

「まあ!なんて嬉しい事を♪でもライバルに紅茶を送るのは我が聖グロリアーナの伝統。アッサム、これはお株を奪われてしまいましたわね」

 

「ええ、全くですわ」

 

 

 ダージリンとアッサムがそう言った後楽しげに笑う。

 

 

「あ!そっか~♪」

 

 

 ヘリデッキに設けられた即席の茶席は三人の少女の笑い声で満たされていた。

 

 

「ダージリン様」

 

「あらペコ、もうそんな時間?」

 

「はい、出港準備は全て整いました」

 

「そう、わざわざありがとう。さて、それでは私達もお暇致しますわ」

 

 

 ダージリンの言葉にアッサムも席を立つとラブに先導され一同は桟橋を目指す。

 降り立った桟橋には聖グロの隊員達が一糸乱れぬ隊列を組み整列をしており、ラブ達が現れると一斉に美しい敬礼で別れの挨拶をする。

 

 

「それではラブ、御機嫌よう。練習試合でお会いしましょう」

 

 

 ダージリンは隊長の顔になると澄んだ声で優雅に一礼をし、隊員達に乗艦を命じた。

 

 

「うん、ダージリン、アッサムまたね」

 

 

 二人はラブと別れのハグを交わした後、舷側のラッタルを登って行く。

 そしてラッタルが収容されると舫が解かれ、タグに曳かれた目の前のビルの様な聖グロ学園艦の巨体が少しずつ桟橋から離れ始める。

 遥か見上げる高さの舷側に並ぶダージリンとアッサムを中心に、聖グロ戦車隊の隊員達が優雅に手を振り始めるとまずは笠女学園艦が別れの挨拶の汽笛を鳴らす。

 聖グロ学園艦の答礼の汽笛が鳴り、それが止むとラブは手を振りつつ精一杯の声で叫んだ。

 

 

「みんなありがとう!練習試合で会おうね~!」

 

 

 その後ラブは聖グロ学園艦の姿が見えなくなるまで見送り続け、一人残った桟橋で空を見上げた。

 

 

「ヨシ!」

 

 

 そう言うとラブは自らに気合を入れる様に自分で両の頬をピシャリと叩き、背筋を伸ばし真っ直ぐに前を見据え自らが女帝として君臨する笠女学園艦へ戻って行くのだった。

 その日からAP-Girls正式デビューとなる月末のCD発売日の地元イベントに向け、厳しいレッスンと戦車道の訓練の日々が始まった。

 更に通常の授業も観閲式以降滞った分上乗せされ、元々恐ろしく速かった授業スピードは更に加速し進学校でもあり得ない状態になっていた。

 

 

「ラブ姉、後で絶対埋め合わせしてもらうからね!」

 

「なによ~、みんなだって楽しんでたクセに~」

 

 

 授業中にあまり宜しくない目付きの凜々子が鋭い小声でラブに文句を言って来る。

 ラブもまた小声で反論したが今度はメンバー全員の鋭い視線が返って来た。

 

 

「愛までぇ……」

 

 

 そんなこんなのハードな日々が続き迎えた週末の金曜日、ランチタイムの大食堂は多くの笠女の生徒達とカレーの匂いで溢れていた。

 

 

「ウム、実に旨い。やはりこのカレーは絶品だな♪」

 

 

 既におかわりした五枚のカレー皿を重ねたまほは、六皿目を前に満足げに頷いていた。

 

 

「……で、まほ、アンタ何で此処に居んの?」

 

「うん?何でってそれは当然金曜日はカレーの日だからな」

 

「いや、そうじゃなくて──」

 

 

 ラブがそこまで言い掛けた処で携帯の着信音のパンツァー・リートが鳴り響く。

 着信音に話の腰を折られたラブが携帯を取り出し液晶モニターを見れば、そこには黒森峰の副隊長であるエリカの名前が表示されている。

 

 

「ハイ、もしもし…」

 

『あ、もしもしラブ先輩、私です…エリカです。突然で申し訳ありませんが、もしかしてそちらに黒森峰(ウチ)の隊長がお邪魔してませんでしょうか…?』

 

「……居るわ、今私の目の前で六皿目のカレー食べてる……」

 

『アーっ!やっぱり!申し訳ありません!昨日の朝辺りから挙動不審だったので、警戒してドラッヘの燃料抜いておいたのですが午後から姿が見えなくなって探していたんです!』

 

「…今日の午前中、高速の連絡艇が来てたけどアレか…でも挙動不審ってどういう事?」

 

『どうも水曜の夜には、お土産に頂いた学園艦カレーのレトルト食べ尽くしたみたいなんです…』

 

「え…?ちょっと待ってよ、まほにはちょっと多めに渡したはずなんだけど?」

 

 

 カレーの王女様のまほの為ラブは他の者と違い、一箱二食入りの学園艦カレーの六箱入りセットを計三箱渡していたのだ。

 それを一週間経たずに完食したまほは、こうして学園艦カレーを食べる為だけに、わざわざ笠女学園艦の停泊する横須賀に単身舞い戻って来たのだった。

 

 

『ええ…あっと言う間に食べちゃったみたいなんです……それで笠女の学園艦カレーが懐かしいとか妙にコソコソしてるんで、機甲科全体で警戒態勢を敷いてはいたんですが……』

 

 

 エリカの話を聞きながらラブが呆れた顔で見る目の前でまほは七皿目のカレーに突入していた。

 

 

「まあ…来ちゃったもんはしょうがないわ、明日の連絡艇で送り返すから」

 

『それが…明日の朝から練習試合の予定があるんです……』

 

「えぇ!練習試合!?今黒森峰の学園艦何処にいるのよ!?」

 

『熊本に戻る途中要請があって岡山に寄港中なんです……』

 

 

 そう言ったエリカの声は涙声になっている。

 

 

「えぇ~!おかやまぁ!?」

 

 

 それを聞いた瞬間ラブは椅子を引っ繰り返して立ち上がり叫んでいた。

 目の前のまほはそれでも動じず満足げにカレーを黙々と貪っている。

 

 

「ま、まほ!あ、アンタこんなトコで何やってんのよ!?」

 

 

 叫びながらまほを指差すラブだがその指先は小刻みに震えている。

 

 

「ん?そりゃオマエ何って金曜はカレーの日だからな」

 

「おばかー!も、もしもし?エ、エリカさん!?これから大特急でヘリでまほをそっちに送り届けるから、そちらの座標をこっちのブリッジに送ってくれる!?」

 

 

 さすがのラブも青い顔で電話口で涙声のエリカにそう言うと、AP-Girlsのメンバー達にも普段演習でも見せない様な真剣さで矢継ぎ早に指示を出す。

 

 

「凜々子!ブリッジ行って送られてくる位置情報貰ってフライトプラン作成して!鈴鹿!ヘリデッキに行ってスーパースタリオンをいつでも発艦出来るよう手配して!愛!給養員学科に言ってスーパースタリオンに積めるだけ学園艦カレー積んどいて!当分まほがこっちに来ないように撒き餌よ!他の子達も愛を手伝ってあげて!あ!夏妃は残って!」

 

 

 行きかけた夏妃をラブは慌てて呼び戻す。

 

 

「あ~?ラブ姉、アタイはナニすりゃいいのさ?」

 

「夏妃は私と一緒にこのおばかをふん縛ってスーパースタリオンにほっぽりこむのよ!」

 

 

 鼻息荒くラブはそう言い放つと再び携帯の向こうで待つエリカに話し掛ける。

 

 

「もしもしエリカさん?直ぐにヘリでまほをそっちに送るからもう泣かないでね」

 

『ら、ラブせんぱ~い!あ゛り゛が と゛う゛ご ざ い゛ま゛ず~!』

 

 

 言う傍から電話の向こうでエリカが大泣きする声が聞こえる。

 

 

「と、とにかく直ぐ連れてくから待っててね」

 

 

 エリカを宥める様に言った後電話を切ると、適当な紐を探しに行っていた夏妃が戻って来た。

 

 

「ワリぃラブ姉、こんなんしかなかったわ」

 

 

 そう言う夏妃が手にしているのはひと巻の布ガムテープ。

 

 

「このポンコツにはそれで充分よ!構わないから椅子ごとふん縛るわよ!」

 

「マジか…?」

 

 

 この期に及んでもまほはラブ達の会話が耳に入らないらしく、カレーは八皿目になっていた。

 

 

「夏妃、構わないからやっちゃって!」

 

「あ?ああ…」

 

 

 曖昧に返事をした夏妃はまほの背後からび~っと伸ばしたガムテをまほに巻き付け始める。

 

 

「ん?なんだ?夏妃君ちょっとカレーが食べにくいんだが?」

 

「黙れこのポンコツ!アンタ明日の朝から岡山で練習試合だって言うじゃない!何考えてんのよ!?エリカさん泣いてたわよ!この事はみほにも言うからね!」

 

「え?みほに?それは困るんだが」

 

「どの口が言うか~!?」

 

 

 とうとう切れたラブはまほの口に残っていたガムテをべったりと貼りつけると、夏妃と二人で厨房から借りて来た台車に椅子ごとまほを乱暴に乗せるとヘリデッキ目指し台車を押して走り出す。

 ヘリデッキに到着すると既に愛達の手で学園艦カレーがスーパースタリオンに段ボール箱で積みこまれ、何時でも飛べる状態で待機しているのだった。

 皆で協力しまほを機内に文字通りほっぽりこんだ処へ、ブリッジに行っていた凜々子がクリップボード片手に走って来る。

 

 

「ラブ姉!フライトプランは管制に提出して発艦許可も出たよ!」

 

「サンキュー凜々子!」

 

 

 凜々子からクリップボードを受け取ったラブは、機長にそれを渡すと振り返り何とも言えない顔で成り行きを見守るAP-Girlsのメンバー達に指示を出した。

 

 

「愛!午後の訓練はあなたが指揮を執って!私は悪いけどこのポンコツをエリカさんに引き渡してくるから!それと夏妃も申し訳ないけど私に付き合って!」

 

「…まあいいけどさぁ……」

 

 

 夏妃はぼやく様に返事をしつつも素早くスーパースタリオンに乗り込んだ。

 

 

「みんなホントにゴメン!出来るだけ早く帰るから!それじゃあ後を宜しく!」

 

 

 ラブがそう叫びハッチが閉まるとスーパースタリオンのローターが勢いよく回転を始め、一路岡山を目指し横須賀の空へ舞い上がって行った。

 

 

「あれ今日中に戻って来るかしら?」

 

「戻って来るでしょ、それより私達ももう昼休み終わってるから教室行かないと」

 

「全然昼休みになってないじゃない……」

 

 

 ブツクサ言う凜々子をいなしつつ鈴鹿が教室へ戻る様急き立てる。

 一同も一斉に教室に向かい始めるがその足取りは何処か重そうだった。

 その一方でラブ達を乗せ機体の超過禁止速度ギリギリで飛行を続けたスーパースタリオンは、どうにか夕方には黒森峰の学園艦に到着し無事まほの身柄をエリカに引き渡す事が出来た。

 

 

「ラブ先輩ありがとうございます~!」

 

「エリカさんもう泣かないで、ね?」

 

 

 ラブに抱き付き大泣きするエリカを慰めつつ、小梅と直下に椅子に縛り付けられたまま連行されるまほを目で追いつつそっと溜め息を吐くラブ。

 

 

「当分大丈夫な様にカレーもいっぱい持って来たから」

 

「こんなに沢山…ありがとうございます……」

 

 

 機内から次々運び出される段ボールに呆然としつつもエリカはラブに礼を言う。

 

 

「それよりホラ、明日試合があるんでしょ?私達はこれで帰るから、エリカさんは少しでも早く準備して今夜はよく休んでね。まほには改めて私からも叱っておくから」

 

「はい…それでは失礼致します」

 

「うん、頑張ってね」 

 

 

 ペコペコお辞儀をしながら立ち去るエリカを見送り、そのエリカが見えなくなった処でラブは疲れたとばかりにその肩をガックリと落とす。

 

 

「紅白戦の時はカッコいい人だと思ったんだけどなぁ……」

 

 

 夏妃が頭の後ろで手を組みボソっと一言呟く。

 

 

「…まほって戦車降りるとかなりポンコツなのよ……」

 

「ねえラブ姉、西住流ってみんなああなのか?」

 

「…まあ、とにかく帰りましょ……」

 

 

 違うと即座に否定出来ないのがラブはなんとも悲しかった。

 そしてまほを岡山に停泊中の黒森峰の学園艦に送り届けてから数日後、練習試合後の残務整理を終えたエリカからラブに詫びを入れる電話が入った。

 

 

『先日は隊長がご迷惑をお掛けして大変申し訳ございませんでした』

 

 

 すっかり恐縮し疲れた声でエリカは謝罪の言葉を口にする。

 秋の午後の日差しが射しこむ笠女戦車隊の隊長執務室で電話を受けたラブは、労いの言葉を掛けつつもその後のまほの様子をエリカに聞いた。

 

 

「エリカさんお疲れ様、大変だったわね。ああ、私の方は大丈夫だから気にしないで。それでその…あの後まほの様子はどうなのかしら?」

 

『はい…それが…あの後も頂いたカレーを食べ続けてとうとう顔がカレー色になって来まして…更にカレー臭も酷いので、今は授業と訓練以外の時間は重営倉に投獄して、お粥だけ与えてカレーの色と臭い抜きの最中です』

 

 

 ラブは思わずマホガニーの執務机に頭を打ち付けて、その鈍い音が執務室に響いた。

 

 

「カレー臭…重営倉…あの馬鹿……」

 

『一応校医の見立てではカレーの食べ過ぎによる禁断症状というか中毒症状というか──』

 

「ウチのカレーに変なモノは入ってないわよぅ…」

 

『え、ええそれは解ってます。ただ私もカレーにあそこまで見境無しだとは思わなかったので…』

 

「…で?当の本人は反省してるの?」

 

『それがあんまり……』

 

「ちょっとお仕置きが必要ね…みほだけじゃなくて千代美にもチクってやる……」

 

『ラブ先輩?』

 

「え?ああゴメンなさい。しかしどれだけ食べればそんな状態になるのよ…?」

 

『ええと…一食につき一箱二食入り六箱セットを一箱ずつ朝昼晩と食べてた様で……』

 

 

 聞いただけで胸がムカムカして来たラブは、その後は改めてエリカに労いの言葉を掛けると話を切り上げ、電話を切りそのまま執務机に突っ伏した。

 

 

「もうイヤ……」

 

 

 この時ばかりはまほと遠縁であるとはいえ、親戚である事が恨めしいラブであった。

 

 

 




明日の晩はウチもカレーなんだよなぁ。
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