ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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恋愛戦車道も第三章に突入しました。
これからも宜しくです。

まほは安定のポンコツぶり、
そして今回は遂に菊代さんが登場します♪


第三章 閃光Girls
第一話   火の国に集う華


 十一月に入り大気温度も大分下がり、そろそろ冬を意識するようになった頃。

 太平洋上を東から西に飛び行く一機の異形の機体がいた。

 Bell Boeing V-22 Osprey、自衛隊導入に先んじて厳島が導入したこのティルトローター機は、笠女及び厳島のグループのイメージカラーであるマリンブルーに染め上げられ、よく見れば細部も軍用とはかなり異なる部分が見受けられる。

 実際契約交渉段階から多くの仕様変更のオーダーが出され、メーカー内にあっても初の民間用のこの機体は厳島カスタムの愛称で呼ばれており、今後の販路拡大の一つの指針になっていた。

 その機内はといえば国際線ファーストクラスの様な設えで、凡そベースが軍用機とは思えない内装に仕上げられているのだった。

 ラブ率いるAP-Girls衝撃のデビューから一週間。

 その人気は急上昇中で、CDの売り上げスピードの方も最初の一週間で驚異的な記録を叩き出しており、業界関係者を騒然とさせるものだった。

 更に来週からは聖グロを手始めに大洗にプラウダ、サンダースにアンツィオ、最後は黒森峰の順番で練習試合を年内に終える日程で組まれておりそのスケジュールは過密を極めている。

 そんなハードスケジュールの合間を縫う様にラブと亜梨亜は今、そのオスプレイの機上の人となっており、その機体が向かう先は火の国熊本。

 ラブがしほと約束した通り、親子二人事故後初めて西住家に挨拶に向かう旅路の途中なのだ。

 しかしこの今回の空の旅には更に二人の同乗者が居るのだった。

 

 

「それであの~、何で私まで…それにねえ…?」

 

 

 突如本庁経由で厳島家からの熊本行きの招待を受けた英子は、同じく学園長経由で招待され制服姿で隣に緊張した面持ちで座るアンチョビに目を向けた。

 横須賀を立った後、同じく太平洋を航行中だったアンツィオの学園艦からアンチョビをピックアップしたオスプレイは、現在四国沖合を熊本めざし飛行中だ。

 

 

「学園長に呼び出されて熊本に行くように言われて、待ってたらこんなとんでもないのが飛んで来るし、乗ってみれば英子さんまで乗ってるし…なあラブ一体どういう事なんだ?」

 

「ん~?えっとね、しほママが三年前の事で改めて直接お詫びとお礼がしたいんだって~」

 

「いや、それだったら私は家元から直筆の詫びの書簡を頂いてますし……」

 

「私もあの時充分謝罪の言葉を頂いてるぞ?」

 

「今回千代美にはそれだけじゃないみたいだけど~?」

 

「う゛……」

 

 

 心当たりがあるアンチョビはその言葉で思わず次の言葉に詰まる。

 

 

「それにね~、みほが来てからだけど私も二人にお願いしたい事があるんだ~」

 

「なんだそれは?」

 

「まあそれはみんな揃ってからという事で~♪」

 

 

 ラブは人の悪いニヤニヤ笑いで話をはぐらかす。

 

 

「いつもながら我儘な娘で申し訳御座いません。ただしほさんも良い機会なので、恋の帰還を皆で祝いたいのでお二人も是非にとの事でしたので」

 

「はあ…そういう事でしたらば……」

 

 

 例によってのらりくらりなラブに代わり亜梨亜が二人に頭を下げる。

 

 

「それにしても…まさか私がオスプレイに乗る日が来るとは…仕事柄ヘリは何度かあるけど……」

 

「私もです…ラブから話しには聞いてましたけど…乗ったら中は更にビックリだし……」

 

『ねぇ?』

 

 

 思わず同時にそう言って目を合わせるアンチョビと英子。

 しかしラブと亜梨亜は至って普通に仲睦まじい親子を演じており、つくづく住む世界が違うと思うアンチョビと英子であった。

 

 

「そ、そう言えばパレードとデビューライブの中継見たぞ!CDの売り上げも凄いじゃないか!」

 

「ほっほっほ、と~ぜん♪」

 

「こら、何ですか恋、はしたない」

 

「え~?だって~」

 

 

 腕を組み反っくり返るラブを窘める亜梨亜だがその表情は穏やかで楽しそうだ。

 

 

「それと駅前に居たの元臨中の隊員達だろ?」

 

「うん…みんなまたこれから戦車道始めるって…それとね、臨中も来年度から戦車道復活するって……ずっと…ずっと気になってたから嬉しくって……」

 

 

 嬉しげながらも涙ぐむラブに、アンチョビは敢えて飛び切りの笑顔で祝福の言葉を送る。

 

 

「良かったなぁ!」

 

「ありがとう…千代美」

 

「あ、そういえばあの時英子姉さんも映ってましたよ」

 

「え?マジで?」

 

「ハイ、とってもカッコ良かったです♪」

 

 

 アンチョビの言葉に四人で一斉に笑う。

 

 

「でもビックリしたよ、この間貰ったお土産を帰ってから開いたら、発売前のCDまで入ってるんだもの。さすがに申し訳ないからオンラインショップでも注文しちゃったよ」

 

「あ、私も地元のお店で予約してたから家用と車用で聴いてるわ♪」

 

「え~?そんなにしなくてもよかったのに~。でも今プレスが追い付かなくなって、届くのが大分遅くなると思うの、ゴメンね」

 

「そんなになるまで売れてるのか、凄いなぁ…でもどっちにしても学園艦暮らしだとモノが届くのに時間が掛かるのは慣れっこだしなぁ」

 

「私達はアメリカに居た時はそれで酷い目にあったし……」

 

「あぁ……」

 

「え?ナニナニ、何の話?」

 

「う゛ぅ゛…千代美…説明お願い……」

 

「何で私が…しょうがないなぁ──」

 

 

 アンチョビは英子にラブ達がヤキマに居た頃のコンビニ事情の話をラブに代わり話し始めたが、それを聞いていたラブまで涙目になる処を見ると相当トラウマになっている様だった。

 

 

「それは大変だったわねぇ…」

 

 

 英子は苦笑交じりにラブに声を掛けたが、ラブは隣に座る亜梨亜の膝に突っ伏して泣いている。

 

 

「もうあんな思いはたくさんよ~」

 

「何もそこまで泣かんでも……」

 

 

 これにはさすがにアンチョビも呆れるしかなかったが、どうせラブの事だから直ぐ復活するのは解っているのでそのまま放っておく事にした。

 実際その通りでその後も暫く四人他愛も無い談笑をするうちに、チーフパーサーが間も無く熊本に到着する旨を伝えに来た。

 しかし機体サイズが大きいオスプレイの為、今回は西住本宅に降りる事は出来ず、西住流道場の演習場にあるヘリポートに着陸する事になっていた。

 

 

「これが西住流道場の演習場か…凄いなぁ……」

 

「ホントね…」

 

 

 初めて見る西住流総本山にアンチョビと英子は感心するが、ラブと亜梨亜にとっては懐かしい場所であり感慨深いものがある様だった。

 着陸したオスプレイから地上スタッフが荷物を降ろしている処に、管制職員と思しき人物がラブ達の元へやって来た。

 

 

「もう後二十分程でみほお嬢様のバートルが到着致します、もし差支えなければ管理事務所のロビーでお待ち頂けますでしょうか?その間にお荷物は車の方に積んでおきますので」

 

「ええ、私達はそれで構いません。敷島様と千代美さんもそれで宜しいでしょうか?」

 

「あ、ハイ大丈夫です」

 

「私も…それにしてもラブ、今回は一泊なのになんか荷物が凄くないか?」

 

「えへへぇ♪お土産もあるけどちょっとね~」

 

「またそれだ…まあいいや、どうせ後のお楽しみなんだろ?」

 

「うん、そういう事~♪」

 

 

 四人は職員に導かれ管理事務所のロビーに向かう。

 建屋に入ってからも何人かの職員とすれ違ったが、古くから居ると思われる者達はラブと亜梨亜の姿を認めると、目に涙を浮かべ深々と頭を下げ歓迎の意を示していた。

 二人もまた同様に頭を下げそれに応えるのであった。

 ロビーのソファーでみほの到着を待つ間、やはり目に涙を浮かべつつお茶出しをしてくれた年配の職員がラブと亜梨亜に感極まった様に挨拶をしてくる。

 

 

「亜梨亜様、恋お嬢様、お懐かしゅう御座います。よくお戻りになりました」

 

 

 そう言うやその女性は目元を指先で拭っている。

 

 

「加代さんこそお変わりなく、ご心配をお掛けした事をお詫びいたします」

 

 

 亜梨亜に続きラブも頭を下げると、加代と呼ばれた職員は慌てて二人に頭を上げるように言う。

 

 

「そんな勿体無い、加代はもうお二人がこうしてお戻りになられただけで充分で御座います」

 

「ありがとう加代さん、私もまたこうしてお会い出来た事を嬉しく思います」

 

 

 一頻り挨拶を済ますと今暫くお待ち下さいと言い残し、加代と呼ばれた女性は下がって行った。

 

 

「はぁ…ラブって本当にお嬢様なんだなぁ……」

 

「だね……」

 

 

 出されたお茶で喉を湿したアンチョビの言葉に英子も同意する。

 

 

「え~?何がよ~?」

 

「いやだって西住流の関係者がああして揃って頭を下げる辺りがなぁ…」

 

「やだなぁ、単に親戚ってだけだってばぁ」

 

 

 そんな話をしているうちに頭上からヘリの降下音が、みほの乗るバートルの到着を知らせる。

 

 

「ラブお姉ちゃん!亜梨亜おば様…え?それにアンチョビさんに敷島さんも…?」

 

「何だみほ私と英子さんの事は聞いてなかったのか?」

 

「うん……」

 

 

 返事をしつつもみほはつい英子をチラチラ見てしまう。

 

 

「そんな警戒しなくても大丈夫よ、それに英子でいいから」

 

「ハア……」

 

 

 そうは言われても英子の前では、やはりどこか畏まってしまうみほであった。

 

 

「よ~し、揃ったわね~。ちょっとみんなに大事な話があるのよ~」

 

「なんなんだいったい?」

 

 

 みほが合流するとラブは、アンチョビと英子を少し離れたソファーに行くよう促す。

 

 

「亜梨亜ママはそこで少し待っててね~」

 

「本宅で皆さんお待ちでしょうから手短にね」

 

「は~い」

 

 

 ラブの言葉に亜梨亜はひとり涼しい顔でお茶を飲んでいる。

 

 

「ラブよ、大事な話って一体何だ?」

 

「ああ、それはね──」

 

 

 アンチョビがそう問い掛けるとラブの表情が一変する。

 切れ長の美しい目と口角がつり上がり、戦車に乗る時の凛々しくも不敵な笑みとは違う凄惨な笑みになり、緩くウェーブした深紅のロングヘアーも気のせいか波打って蠢いている様に見える。

 その表情でラブはまほがやらかした学園艦カレー事件の顛末を皆に語ったのだった。

 そしてラブのまほに対するお仕置きプランを聞かされたた一同は──。

 

 

「今日という今日は許さない、エリカさんを泣かせた代償をきっちり払わせてやるわ!」

 

 

 エリカが泣かされたと聞いたみほは、そう言いながら両の手の指をボキボキと鳴らす。

 

 

「小説書いたりアンツィオの隊員相手にしてると、どうも小芝居ばかり上手くなってな」

 

 

 目薬とハンカチを用意しつつアンチョビはニヤリと笑う。

 

 

「大丈夫、私嘘泣きでも千代美ちゃんの涙見ただけでスイッチ入る自信あるわ」

 

 

 英子もまた嬉しそうに凄惨な笑みを浮かべ断言する。

 こうしてまほに対するお仕置きの用意は整った。

 そして先に到着しているまほはまだ、これから何が起ころうとしているのかまだ知らない。

 

 

「ククク…覚悟なさいまほ……」

 

『鬼だ……』

 

「もういいですか?そろそろ行きますよ」

 

「あ、ハ~イ♪」

 

 

 初めて見るラブの一面に怯える一同の前で、それを全く意に介する事も無くクツクツと笑うラブだったが、亜梨亜に声を掛けられると表情は憑き物が落ちた様にいつも通りに戻っている。

 

 

『コイツは…』

 

 

 恐るべき変わり身の早さに一同呆れる他は無かった。

 その後荷物も積み込み一同を乗せた車は一路西住家本宅を目指す。

 

 

「わあ懐かしい!この辺何も変わってないや♪」

 

 

 車窓に流れる田園風景に、ラブは嬉しそうに歓声を上げた。

 

 

「うふふ♪あの駄菓子屋さんもまだそのままやってるよ」

 

「え!ホントに?」

 

 

 みほの言葉にラブは更に嬉しそうに笑顔を輝かせる。

 その様子にアンチョビは、ラブが帰って来れた喜びをひとり心の中で噛み締めるのだった。

 

 

「ここがまほとみほの育った家なのか…」

 

「……」

 

 

 初めて見る西住の邸宅に言葉を失うアンチョビと英子。

 

 

「えっと…横須賀のラブお姉ちゃんの住んでるお城の方が凄いと思うけど…」

 

 

 照れながら頬を掻くみほだがどちらも比較対象としてスケールが大き過ぎ、アンチョビとしては正直言ってその感覚には付いて行けない。

 

 

「亜梨亜様!恋お嬢様!」

 

 

 車から降り荷物を降ろして貰っている処に不意に二人の名を呼ぶ声がし、女中らしい着物姿の一人の女性が小走りに駆け寄って来るのが見えた。

 

 

「菊代ママ!」

 

 

 そう叫んだラブも走り出すと着物姿の女性に躊躇なく抱き付いたが、その女性もまた自分より遥かに上背のあるラブを苦も無く抱き止める。

 

 

「恋お嬢様!すっかりご立派になられて…あぁ!何という…美しい恋お嬢様の顔にこの様な…おのれ東邦火箭(かせん)許すまじ!かくなる上はこの菊代が赴き成敗してくれましょうぞ!」

 

 

 抱き止めたラブの顔の傷を認めるや事故当時の怒りが再燃し、今にもⅡ号を駆って突撃しそうな勢いの菊代にラブが苦笑しながら声を掛けた。

 

 

「ママ、菊代ママ。大丈夫、あの会社はもう亜梨亜ママが木端微塵にしたから」

 

「あ、ああそうで御座いました。これはお客様の前でとんだ処をお見せ致しました。私当家の女中頭の菊代と申します。ささ、どうかこちらよりお上がり下さいませ」

 

 

 ポカンとするアンチョビと英子を邸内へと誘う菊代。

 荷物も既に使用人達の手で運ばれており、状況に付いて行けないまま二人も玄関に向かう。

 

 

「…しかし前々から気になってたんだがラブのヤツは目上の女性はみんなママなのか?」

 

「あ、ラブお姉ちゃんは昔から自分を可愛がってくれる人はみんなそう呼んでたっけ」

 

「子供の頃のまんまという訳かぁ」

 

 

 アンチョビは腕を組み困った様な顔で笑っている。

 菊代に先導され一行は長い廊下の先の、広いあの襖絵でお馴染みの座敷に通された。

 

 

「ラブ!亜梨亜おば様ってアレ?」

 

 

 座敷には先に到着していたまほとその隣にはエリカも控えていたが、どうやら二人もアンチョビと英子も一緒に来る事は聞かされていなかった様で驚いた顔をしている。

 そのまほの姿を認めた瞬間ラブはみほとアンチョビ、そして英子の三人に耳打ちをした。

 

 

『それでは先生方、宜しくお願い致します』

 

 

 ラブの耳打ちを合図にまずはみほがまほに向かって突撃をする。

 

 

「お姉ちゃん!ラブお姉ちゃんから聞いたよ!よくもエリカさんを泣かせたわね!」

 

「うわ!みほ!何だ急に!?」

 

「問答無用!ていっ!」

 

 

 言うが早いかみほは、まほの鳩尾に鋭く爪先を入れる。

 

 

「ぐふっ!な、何を!?」

 

 

 みほは前のめりに崩れかけたまほの腰に腕を回すと、渾身の力でそのまま持ち上げる。

 更にまほを前後逆向きの肩車状態から天井に向け持ち上げ、そのまま背中から畳に叩き付けた。

 

 

「ぐはぁ!!」

 

 

 みほ必殺の大技、ラストライドを喰らったまほは畳の上で悶絶する。

 

 

「み、みほ♡」

 

「エリカさん!」

 

 

 一連のみほの鮮やかな動きにエリカは内股でキュンキュンしている。

 みほもエリカを抱きしめるとその勢いのまま襖の向こうに消えて行ってしまった。

 

 

「うぅ…痛い…一体何なんだ……」

 

「西住……」

 

 

 畳に転がり背中をさすりまほが呻いていると、今度は上から声がする。

 目を開くとそこにはアンチョビの覗き込む姿があった。

 

 

「あ、安斎……」

 

「オマエこの大事な時期に一体何をやってるんだ?」

 

「いや!それはその──」

 

「大事な試合をほったらかしにしてカレーにうつつを抜かして、それが隊長のする事か?そんな様子では進学もどうなるか…私との事もそんないい加減な気持ちだったという事か……」

 

 

 アンチョビはまほに背を向け両手で顔を覆ってしまう。

 

 

「そ、そんな事は無いぞ!私は──」

 

「じゃあどんなつもりなんだ!」

 

 

 再びまほの方に向き直り遮る様に叫んだアンチョビの頬を涙が伝い落ちる。

 

 

「あああ、あんざいぃ…!」

 

「貴様また千代美を泣かせたな?」

 

「え…?うわあああああ!」

 

 

 声のする方を見たまほは畳に座り込んだまま全力で後退る。

 忘れ様にも忘れられないまほのトラウマ、覚醒した鬼が其処に居た。

 

 

「やはり貴様に如きに千代美は過ぎた娘だ。千代美は私が貰って行く…行くぞ千代美」

 

「はい…英子さん」

 

 

 英子がアンチョビの肩を抱くと、アンチョビもまた英子の肩にしなだれかかり、二人並んで座敷を後にする。

 

 

「ああああんざいぃぃぃ……!」

 

 

 四つん這いで追いかけて、右手を上げそう叫んだ処で襖が閉まるとそのまま硬直するまほ。

 

 

「ん?どうしたまほ?」

 

 

 ラブの問い掛けに応えないので、壁際で見守っていた菊代が顔を覗き込む。

 

 

「あ…気を失ってます」

 

「どうやらクスリが効いた様ね」

 

 

 菊代が面白そうにまほのほっぺをツンツンするとそのポーズのままコテンと転がった。

 

 

「なんとまあタンスの裏で息絶えたゴ●ブリの様な」

 

 

 己の仕える家の次期当主に向かい身も蓋も無い事をサラッと言う菊代。

 

 

「まあこれで少しは懲りたでしょ。みんな~もういいわよ~」

 

 

 ラブの呼び掛けでアンチョビと英子、みほとエリカも座敷に戻って来たが、お約束でみほとエリカは若干着衣が乱れているのを敢えて全員見なかった事にする。

 

 

「菊代ママ~、おねが~い」

 

「畏まりました…ふんっ!」

 

 

 菊代がまほの背中に喝を入れるとビクリと身を震わせ意識を取り戻す。

 

 

「ぶは…!あ、あれ……?」

 

「まほ~、少しは反省したかな~?」

 

「うわわわぁ!」

 

 

 すぐ目の前に現れた美しくも恐ろしいラブの笑顔、まほは這いつくばって畳に頭を擦り付ける。

 

 

「わ、私が悪かった許してくれぇ!」

 

「謝る相手が違うでしょ~?」

 

 

 嫣然と微笑みつつもまほの顎をグイっと掴むとエリカの方に向けるラブ。

 

 

「エ、エリカ本当に済まなかったこの通りだ!」

 

 

 エリカの方に身体ごと向き直り平べったくなるまほに、みほは氷の視線を向けると低い声でドスを利かせて言い放つ。

 

 

「次は無いからね?お姉ちゃん」

 

「わ、解っている…」

 

「ま、こんなもんか。ハイ、お仕置きタイム終了♪」

 

 

 ラブはにこやかな顔でそう宣言した後思い出した様に付け加える。

 

 

「って、そうそう、まほ~アンタさ~ちょっと太ったんじゃな~い?」

 

「ぐっ……!」

 

『とことん鬼だ……』

 

 

 しっかりと止めを刺す事を忘れないラブにまほを囲む一同はつくづくそう思うのであった。

 

 

 




前章で話だけ出ていたオスプレイが登場しましたが、
正直自分でも驚きの仕様になりました。

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