ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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しぽりんとちよきち登場♡




第二話   火の国の乙女達

「ホント酷かったんです…あのカレー臭は……」

 

 

 まほに対するお仕置きタイムも済み一段落した一同は、菊代の入れたお茶を頂きつつどうしても外せない用件で出ているしほの帰りを待っていた。

 その間のお茶請け話としてエリカが学園艦カレー事件の際のまほの様子を皆に語って聴かせると、当然視線はまほに集中し、まほはただ座布団の上で小さくなるほか無かった。

 

 

「大体顔がカレー色ってどんな状態よ~?」

 

「見ますか?」

 

「え?」

 

 

 呆れかえった調子で聞くラブに、エリカは制服のポケットから携帯を取り出し操作を始める。

 

 

「ああ、これです」

 

 

 エリカの差し出した携帯を覗き込んだ一同は見た瞬間一斉に噴き出した。

 

 

『ブっ!』

 

「こ、これは!!」

 

「うえぇ、見るんじゃなかった…」

 

「これはキモい…」

 

「あらあら、まほお嬢様も相変わらず愉快な事をなさいますこと」

 

 

 それぞれ言いたい放題だが、液晶モニターの中には文字通りカレー色の顔をしたまほが、収監されている重営倉の鉄格子にしがみ付く姿が映し出されていた。

 

 

「エリカさん、これ私の携帯に転送してくれる~?」

 

「え?ええ、構いませんが…」

 

 

 エリカが空メールに画像を添付しラブの携帯に送信すると、画像を確認したラブは人の悪い笑みで何やら携帯を操作している。

 

 

「一体コレをどうするんですか?」

 

「ん~?みんなに送って評価して貰おうと思って~♪」

 

「……!」

 

「っと、これでよしっと♪」

 

 

 短文に画像を添付し一斉送信の準備をした処で、それまで沈黙して小さくなっていたまほが送信を阻止しようとラブに飛びかかった。

 

 

「ラブ!お願いだから止めてくれよぅ!」

 

「うわ!ってなによ急に…あ!」

 

 

 送るフリだけで止めるつもりのラブであったが、まほが飛びかかった事により不幸にも本当に送信ボタンが押されてしまったのだった。

 

 

「あ~、ホントに送信しちゃったわ……」

 

「あ…あぁ……」

 

 

 まほは頭を抱え力無く畳に突っ伏した。

 そしてその直後アンチョビとみほとまほの携帯の着信音が同時に鳴り響く。

 

 

「うわ!私にも送ったのか~!?」

 

「要らないよ!こんなお姉ちゃん!」

 

「いやあ…グループ一斉送信だったから……」

 

 

 ラブも些か申し訳なさそうな顔で頭をポリポリと掻く。

 そして暫くするとラブの携帯のメール着信音がたて続けに鳴り始めた。

 再び携帯を操作してラブは着信したメールを確認する。

 

 

「え~っと…最初はカチューシャか……」

 

 

 From :カチューシャ 

 To  :ラブ

 

『グロ画像送るんじゃないわよ!』

 

 

「…次はノンナか……」

 

 

 From :ノンナ

 To  :ラブ

 

『暫くカレーが食べられません』

 

 

「……ケイは…」

 

 

 From :ケイ

 To  :ラブ

 

『F●ckin!』

 

 

「ナオミ…」

 

 

 From :ナオミ

 To  :ラブ

 

『ふざけんな』

 

 

「あれ?アッサムだけ…?」

 

 

 From :アッサム

 To  :ラブ

 

『詳細は練習試合の時にでも』

 

『追伸:ダージリンは今、過呼吸を起こして医務室に運ばれました』

 

 

「だって……まほ、ゴメンね~」

 

「酷い……」

 

 

 ラブは眉をへにょりと下げ片手で拝む様にまほに謝ったが、時既に遅くまほは頭を抱えて畳に突っ伏したまま涙を流していた。

 しかしこの状況でも動じる事無くひとりお茶を啜る亜梨亜もやはり普通ではないかもしれない。

 暫しそんな様子で騒いでいると不意に菊代が立ち上がる。

 

 

「どうやら奥様がお戻りになられた様ですのでお迎えに行って参ります」

 

 

 菊代が座敷を出て暫くすると足早な複数の足音が近づいて来るのが聴こえた。

 そして日頃であれば礼儀作法に煩いしほらしからぬ勢いで襖を開けると、そのままの勢いで座敷に飛び込み一目散に亜梨亜の元に駆け寄るとその膝に縋り付くのだった。

 

 

「亜梨亜様!」

 

「しほさん……」

 

「しほママ…」

 

 

 ラブもまた亜梨亜の隣に来ると、泣き崩れそうになるしほを二人で支える。

 しほは暫くの間大粒の涙を流し、声にならぬ声で泣き続けるのであった。

 そのしほが漸く落ち着いた頃、意外な同行者が座敷の外から控えめに声を掛けて来た。

 

 

「お帰りなさいませ亜梨亜様」

 

「千代さん…」

 

「え!愛里寿ちゃんのお母さん!?何で家に?」

 

 

 そこに座る声の主、島田流家元であり島田愛里寿の母でもある島田千代は、声を掛けると同時に亜梨亜に対し三つ指を突き深々と頭を下げていた。

 亜梨亜としほに菊代そして当の本人の千代以外の者達が困惑する中、今度は頭上からパリパリというローター音と共にダウンウォッシュを叩き付けながら一機のヘリが西住家の庭に降下して来る。

 OH-1、通称ニンジャと呼ばれる陸上自衛隊の観測ヘリコプターだ。

 

 

「ああ、お見えになられた様ですね」

 

 

 菊代はそう言うと出迎えるべく立ち上がり座敷を出て行く。

 

 

「げ、アレは……」

 

 

 その迷彩塗装の機体を見た瞬間英子は嫌そうな顔をする。

 英子のその反応でアンチョビはその機体の主が誰だか察し、苦笑いをするしかなかった。

 

 

「家元、遅くなりまして申し訳ございません…って英子!何でアンタがここにいんのよ!」

 

「亜美、その言葉そのまま返すわ」

 

 

 英子を指差しワナワナと震える亜美に対しそっぽを向いて言い返す英子。

 先日も自分だけ参加出来なかった横須賀でのAP-Girlsのウェルカムパーティー後に、頂いたお土産を並べた厭味ったらしい写メを送られ盛大にキレ、電話越しに大喧嘩をしたばかりであった。

 

 

「英子!後で覚えてらっしゃい!」

 

「ケッ!」

 

「これで全員揃った様ですね」

 

 

 しほの言葉にハッとした英子と亜美は真っ赤になって頭を下げる。

 

 

「蝶野様、まあここでは何ですからどうぞ中へ」

 

「あ、ハイ失礼致しました」

 

 

 菊代に促され座敷に入った亜美だが、そのまま上座に座るよう導かれる。

 

 

「え?あの、これは一体…?」

 

 

 亜美は戸惑うがそれに構わず菊代は他の者も上座に行くよう促し、自分は壁際に控える。

 千代もまたこの席では部外者である旨弁えており自ら一旦下座に下がりエリカもそれに続き、亜梨亜も千代とエリカの配慮に一礼した。

 

 

「亜梨亜様どうかこの様な事は──」

 

 

 何かを言い掛けたしほを亜梨亜は軽く手を上げ制すると、ラブと二人座布団から下座へにじり降りると揃って三つ指を突き深く深く首を垂れた。

 

 

「しほ様、あの日より三年一切の音信を絶ちました御無礼、誠に申し訳御座いません。ここに親子二人、心よりお詫び申し上げます」

 

 

 亜梨亜がそう言うと再び揃って首を垂れる。

 口元を両の手で覆っていたしほは再び大粒の涙を流し懇願する様に言った。

 

 

「亜梨亜様、どうかもうお止め下さい。全ては恋の為、それは当然の事ですからもうどうか──」

 

「有難う御座います、そのお気持ち有難く頂戴させて頂きます」

 

 

 ここで亜梨亜は亜美に視線を向けると、先程同様親子で三つ指を突く。

 

 

「蝶野様、事故当時迅速に対応して頂いたにも関わらず、一度もお目通りする事無く姿を消した事をお詫び致します。本当に申し訳御座いませんでした」

 

「亜梨亜様、私は当然の事をしたまでで御座います。今はただお嬢様の無事の御帰還を喜ぶのみで思いは家元と同様です、ですからもうどうか頭をお上げ下さい」

 

「蝶野様のお心遣いに感謝いたします」

 

 

 亜梨亜と恋が亜美に一礼した処で、英子が他の者を代表し亜梨亜の機先を制する様に声を発した。

 

 

「厳島様、私達はもう幾度と無くお言葉を頂いております故、これ以上はどうかもう」

 

 

 英子の配慮に二人はただ無言で深く首を垂れると、改めて三つ指を突き礼を述べた。

 

 

「皆様に賜りました御恩は私達親子二人、生涯忘れません。本当に有難う御座いました」

 

 

 亜梨亜が礼を述べ終えると、今度はラブに促す様に声を掛ける。

 そして下座に下がっていた千代とエリカにも上座に戻る様促した。

 

 

「恋……」

 

「はい、お母様……皆様本当に申し訳御座いませんでした。そして有難う御座います」

 

 

 ラブはそこまで言うとポケットからヘアクリップを取り出し、右目を隠す様に垂らしている前髪をたくし上げ手にしたヘアクリップで留めた。

 露わになる惨たらしい傷痕、生気溢れる左目と違いその右目には光を宿しておらず、始めて見る者は口元を覆い目に涙を溜め、息を飲む。

 

 

「御見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。ただ、ご覧になってお判りかとは思いますが、今の私の右目は殆ど見えません。観閲式の際に蝶野教官がお察しになられた通りです。そして左肩にも可動範囲制限があり、一人では衣服の脱ぎ着もままならない場合が御座います。それでもこうして皆様の前に、戦車道の世界に帰る事が叶いました。私はもう逃げません、力の限り我が身に課せられたものに抗います。今日ここにそれを皆様に御誓い申し上げます」

 

 

 毅然とした態度で真っ直ぐ前を見据え決意を述べるラブの姿は何よりも美しい。

 あの忌まわしき日より三年、長き苦難の日々も漸く終着点に辿り着いた瞬間であった。

 

 

「本日島田流家元様に偶然とはいえ御同席頂きました事は全くもって僥倖の極み、戦車道二大流派の家元様のお二人に大事なご報告をさせて頂きます。」

 

 

 何事かと問い質し掛けるしほと千代の前でラブは居ずまいを正すと、更に続ける。

 この瞬間事前に聞かされていたまほ達は、あの事かと微妙な表情になっていた。

 

 

「私厳島恋は、この春三笠女子学園への進学を機に母亜梨亜よりその座を引き継ぎ、厳島流家元を襲名致しました事を御報告申し上げます。西住流家元西住しほ様、並びに島田流家元島田千代様に於かれましては、何分若輩者故今後共ご指導ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます」

 

 

 実に堂々たる口上ではあったがそれを聞いた瞬間しほと千代、更には亜美の三人は正座の姿勢そのま後ろにパタンと引っ繰り返った。

 

 

『まあそうなるわな……』

 

 

 笠女学園艦滞在時に直接ラブから聞かされていた一同と、みほから聞いていたエリカ、横須賀で偶然厳島親子と再会した際に聞いていた英子はそう心の中で呟く。

 

 

「ええとちよきち……」

 

「な~にしぽりん…?」

 

『ちよきち!しぽりん!?』

 

 

 引っ繰り返ったままうっかり学生時代のあだ名で呼び合う二人に驚く一同。

 

 

「なんか今、恋が厳島流の家元を襲名したって聞いた気がするけど気のせいかしら?」

 

「そうね、私も聞いた様な気がするわ」

 

 

 正座で引っ繰り返ったまま尚も心此処に在らずな会話を続ける二人。

 すると菊代が背後に回り込み二人を起き上がらせるとたて続けに背中に喝を入れた。

 

 

「ふんっ!せいっ!」

 

『ふぁ!?』

 

「お目覚めになりましたか?」

 

「あ?ああ、ありがとう菊代…」

 

「どう致しまして、っと蝶野様はと…あらま白目を剥いていらっしゃる」

 

「ああ、コイツは私がやりましょう」

 

 

 英子が菊代に代わり、亜美を起こすとその背中に鋭い一撃を打ち込んだ。

 

 

「哈!」

 

「ぐは!…って何すんのよこのイノシシ女!?」

 

「目ェ覚めたか?」

 

 

 そう言うと英子は周りを見る様亜美に視線で促す。

 

 

「…た、大変失礼致しました!」

 

 

 状況を飲み込んだ亜美は顔を赤らめ座布団の上で小さくなった。

 

 

「それでええと…そう厳島流……家元!あ、亜梨亜様!?」

 

 

 やっと我に返ったしほも口をパクパクしつつも、どうにか亜梨亜に事の次第を問い質そうとした。

 

 

「先程恋が申し上げた通りです。これは我が一門親族会議に於いて満場一致で決まりました故、お二人にもどうか御理解頂きたく思います。また、それに関してもう一点、是非お力添え願いたい事があるのですが宜しいでしょうか?」

 

「それは一体?」

 

 

 ここでどうにか家元の顔に戻ったしほが亜梨亜に尋ねる。

 

 

「来月より私共厳島流も連盟の家元会議に復帰致します──」

 

「ああ!亜梨亜様、そういう事でしたら私達にお任せ下さいませ」

 

 

 言い掛けた亜梨亜に対し打てば響くとばかりに、しほは亜梨亜の意図を察し胸を張り答えた。

 隣に座る千代もまたしほの後に続く。

 

 

「西住と島田、恋お嬢様の後ろ盾として全力で支えさせて頂きますので御安心下さいませ」

 

 

 二人の言葉に亜梨亜も安堵の表情を見せると礼を述べた。

 

 

「両家元の御配慮に感謝致します。是非宜しくお願い致します」

 

 

 しほと千代、二大流派とはいえ二人共家元としては充分に若く、それ故に苦労も多いので十代で家元となった恋に降り掛かる理不尽な苦難にも想像は難くは無かった。

 何しろ弱小流派とはいえ老害も数が集まればそれなりに厄介であり、しほと千代としても日頃の苦労を考えるとそんな渦中に恋を単身放り込む事など見過ごせる事では無かった。

 亜梨亜と恋の二人が改めて頭を提げると、今度は千代がしほに声を掛ける。

 その呼び掛けにしほが無言で頷き応え、厳島親子の前に歩み出て二人並んで跪くと、深々と頭を下げその額を畳に擦り付けるのだった。

 

 

「お二人共一体何を?」

 

 

 突然の事態に困惑する亜梨亜を余所に、まずしほが語り始める。

 

 

「この度の一連の騒動により、三笠女子学園の開校に際し多大なるご迷惑をお掛けしたとの事、深くお詫び申し上げます。更にパンターの件も聞くに及び、如何様な責めも覚悟しております故──」

 

「しほちゃん、千代ちゃんももしかしてその為だけに?」

 

『しほちゃん!千代ちゃん!?』

 

 

 突然のちゃん呼びにしほと千代はビクリと身を震わせると、飛び退り更に畳に頭を擦り付けた。

 

 

『お、お許し下さいませ夜叉姫様!』

 

「や、夜叉姫さまぁ!?」

 

 

 アンチョビが上げた素っ頓狂な疑問の声に、しほと千代が青い顔で代わる代わる説明を始めた。

 

 

「あ、亜梨亜様は高校時代、黒森峰の夜叉姫と呼ばれ恐れられていたのです……」

 

「特に私達が高校に進学した年には、夜叉姫様は隊長として全高校戦車道履修者から尊敬と畏怖の念を集めておられたのです……」

 

「また古い話を、それにいくらなんでも話が大袈裟ですよ」

 

 

 穏やかな微苦笑を浮かべつつ亜梨亜は言うが、二人は青い顔のまま続けた。

 

 

「全国から隊長格を集めた合同訓練合宿の時など、余りの厳しさに逃げ出す者が多数出ました…」

 

「私達も辛くて辛くて毎夜枕を涙で濡らしたものです……」

 

「鬼ババアの目にも涙…」

 

「何か言いましたか、まほ?」

 

「いえ別に……」

 

 

 ぼそっと呟いたまほに対し鋭い視線を向けたしほだが、まほはソッポを向いてとぼける。

 

 

『コイツ反省してねぇ……』

 

 

 お仕置きに参加した者達がまほをジト目で見る中、亜梨亜が二人に向け声を掛けた。

 

 

「まあそれはともかく当校の問題の責任は文科省にあり、決してあなた達の責任ではありませんよ。ただ…あの様な事に娘達を巻き込むのは如何なものかとは思いました。あなた達の世代はあの頃、流派同士の対立には無縁であったはずなのに…いつの間にか上の世代のいがみ合いの波に飲まれてしまった様ですね…これは嘗ての私の指導力が足りなかったという事でしょうか……」

 

 

 少々落胆した様な表情になった亜梨亜に対ししほと千代は慌てて弁明を始める。

 

 

「い、いえ!決してそのような事は御座いません!」

 

「全ては私達の不徳の致す処で御座います!」

 

「ともかくこの問題に関しお二人が気に病む必要ありませんのでこの話はここまでという事で。でもお気遣い頂き感謝致します」

 

 

 亜梨亜も二人に対し礼を述べると、手を取りその頭を上げさせるのだった。

 

 

「ありがとう…しほちゃん、千代ちゃん」

 

『亜梨亜様!』

 

 

 二人を抱き締めた亜梨亜にしほと千代も感極まって涙ぐんだ。

 その後三人の気持ちが落ち着いた頃合いを見計らった菊代が控えめながら声を掛けた。

 

 

「奥様そろそろお時間の方も宜しいかと」

 

「あ、ああそうね、お願い出来ますか?」

 

「畏まりました」

 

 

 控えていた菊代の呼び掛けにしほが応えると、菊代は座敷から下がって行く。

 暫しの時間の後、菊代を始め数人の使用人により座敷に重ねた膳が運び込まれる。

 

 

「正式な亜梨亜様と恋の帰還祝いの席は、今宵主人が戻ってからと致しますが、細やかながら昼の膳を御用意致しましたのでどうかお召し上がり下さい」

 

 

 細やかとは言いながらもさすがは西住家、贅を尽くした品々が膳の上には並んでいる。

 それから暫くの間は用意された膳を頂きつつ、他愛のない話で盛り上がりながら和やかな時間が過ぎて行くのであった。

 

 

「え~?それじゃあ千代美がツインテとコンタクトに変えたのはそれが切っ掛けだったんだ~♪」

 

「ええ、アンツィオの制服にツインテにして横須賀に会いに来てくれた時は嬉しかったわ~♪」

 

「何ソレ!私聞いて無いわ!」

 

 

 英子がまた亜美を挑発する様に自慢げに話した為、間に座っていたアンチョビは首を竦めながら二人を仲裁するのに苦労する羽目になった。

 

 

「も~、英子姉さんも教官も止めて下さいよ~」

 

()()()()()!?()()!?ち、千代美ちゃん!?」

 

「あ……」

 

 

 藪を突いてヘビ処かキングコブラかアナコンダでも出してしまった事に気付き、英子と亜美の間でアンチョビは頭を抱える。

 

 

「あははははは♪あ、髪型って言えばね~、私も事故の後髪を殆ど切られちゃったの。あ!みんな深刻にならないで。えっとそれでね、その後時々カットしながら伸ばして行ったんだけど、丁度まほとみほ位の長さまで伸びた頃がね、これがもう自分でも笑っちゃう位まほそっくりだったわ~」

 

「え?そうなのか?」

 

 

 意外そうな顔で聞くまほにラブは笑いながら更に言う。

 

 

「そうよ~、私の髪って緩くウェーブ掛かってるでしょ?それがまほ位まで伸びて来たら見事に後ろ髪だけ跳ねて来て、あの時は亜梨亜ママもまほそっくりだって笑ってたもの~」

 

 

 聞いていたまほは何となく自分の後ろ髪の跳ねを触ってみたりする。

 

 

「多分ね~、まほって私と髪質似てるんじゃないかな?延ばすと緩いウェーブが掛かって私みたいな感じになるかもね~♪」

 

「そ、そうかな?」

 

 

 ラブの様なロングの自分を想像してまほは少しドギマギする。

 アンチョビも同じ想像をしたのか口元が緩んでいた。

 

 

「えっとね~、ちょっと待ってね~」

 

 

 携帯を取り出したラブは画像フォルダを開き何やら探し始める。

 

 

「あ、あった、コレだコレだっと……えいっ!」

 

 

 ラブの掛け声のすぐ後に、まほとみほ、アンチョビとエリカ、更に英子と亜美の携帯のメール着信音が一斉に鳴り響きそれぞれが着信したメールの添付ファイルを確認した。

 

 

「うわ!ホントだ!」

 

「確かにそっくり…だけど……」

 

「あ、傷の事は気にしないで、私はもう受け入れているから」

 

「そ、そうか……解った…」

 

 

 しほと千代もそれぞれ英子と亜美から画像を見せて貰ったが、そこには確かにまほ頭のラブが苦笑いしながら写っており、しほは思わず画面とまほを交互に見比べて『あらまあ』などと言っている。

 

 

「でもこうして揃うとやっぱり親戚なんだな~って納得するね」

 

「ですね、顔立ちもですけど何と言うか雰囲気とかが」

 

 

 しみじみと言ったアンチョビの言葉にエリカや他の者も同意する。

 

 

「そんなものかしら?」

 

「ねぇ…?」

 

 

 言われた亜梨亜としほもお互いの顔を見つめ合い首を傾げた。

 

 

「あ、写真っていえば!ちょっと待ってて!」

 

 

 突然叫んだみほはバタバタと座敷から飛び出して行く。

 

 

「これ!何です!お客様の前ではしたない!」

 

 

 しほがみほに叱責の言葉を投げるが走り去ったみほにその言葉は届かない。

 暫くするとみほはその手に数冊のアルバムを持って戻って来た。

 

 

「えへへ~♪昔の私達の写真持って来ちゃった~」

 

 

 みほは得意げな顔でアルバムを皆に向け掲げるのだった。

 

 

 




ラブと亜梨亜の顔立ちはしほさんに近いイメージかな~?
しかし黒森峰の夜叉姫とは亜梨亜さんはどんな隊長だったんでしょうね?
なんか思い付いたらスピンオフでも書くか……。

例によって長引いてしまって熊本編もあと一回で終わらない気がして来た…。

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