ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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今回はラブの幼少期と謎が少し明らかになります。

作中登場するⅡ号戦車ですが西住家が所有するのはF型でしたね。
以前うっかりとL型の愛称のルクスと書いてしまいました。
後程修正しておきますので御了承下さい。


第三話   火の国の記憶

「それってもしかして小っちゃい頃のラブの写真もあるのかぁ!?」

 

 

 目を輝かせて聞くアンチョビにみほは胸を張って答える。

 

 

「もちろん!小さな頃のラブお姉ちゃんも凄いよぉ?」

 

「うおぉ!頼むみほ早く見せてくれぇ!」

 

 

 座り込んでアルバムを開くみほの周りにみんな集まって来た。

 

 

「何を持って来たかと思えば恥ずかしいなぁ」

 

 

 ラブも恥ずかしそうにしながらも皆と一緒に覗き込む。

 

 

「うはぁ♡こ、これは!」

 

「本当にお人形さんみたい…」

 

「な、何?この胸のドキドキは?」

 

「お姫様にしか見えないわ……」

 

 

 ページを捲る毎に歓声が上がるが、成長に従い皆の見る目がある一点に注がれる様になる。

 

 

『それにしても…大きい!』

 

 

 それに気付いたラブは頬を膨らませ抗議の声を上げた。

 

 

「も~!みんな止めてよね~!ドコ見てるのよ~!?」

 

「いやあ、そう言われてもなぁ……」

 

 

 何かの祝いの席だろうか、幼稚園の制服のブレザーを着たラブは胸の膨らみが明らかで、それを見ながら零れたアンチョビの言葉に一同ラブに目を向けるが、自然と視線はそのたわわに集中する。

 

 

「もう止めてってば~!」

 

 

 ラブは胸元を両手で覆いそっぽを向く。

 

 

『そのポーズがエロいんです……』

 

 

 皆のど元までその一言が出掛かったが、堪えて更にアルバムのページを捲る。

 その度に溜息や歓声が上がり興奮は高まる一方だ。

 しかし途中それまで弾ける様な笑顔の写真の連続だったラブの表情から笑顔が消えた。

 

 

『あ……』

 

 

 そのページの写真を見た瞬間まほとみほが同時に小さく声を上げ、少し表情を曇らせる。

 

 

「どうしたんだ二人共?」

 

「う、うん……」

 

「その……」

 

 

 突然歯切れの悪くなった二人を訝しむアンチョビだが、それにはラブが代わりに答えた。

 

 

「ああそうか、ちょうどあの頃の写真ね…私こんな表情してたのよねぇ……これね、丁度(たつき)パパと麻梨亜(まりあ)ママのお葬式の後、横須賀から熊本に来た頃の写真なのよ」

 

 

 その言葉にしほと亜梨亜、まほとみほ以外の者達はハッとさせられ思わず視線をラブに向ける。

 

 

「みんなでそんな顔しなくても大丈夫よ、昔の事だもの。まあ確かにあの頃は亜梨亜ママも直ぐに一緒に暮せなくて、無駄に広い家でいきなり一人になっちゃってお先真っ暗って感じだったけど。だから熊本に来られて嬉しかったのよ?大好きなまほとみほと毎日朝から晩まで一緒に居られたしね。しほママも常夫パパもとっても優しいし、菊代ママや他の人も私をまほやみほ同様に可愛がってくれたし。だから暫くしていつまでもこのままじゃいけないって私も思ったのよね~」

 

「それでか…それで急にハイテンションで騒ぎ始めたのか……」

 

「も~、だからそんな顔しないでってば~」

 

 

 俯いてその顔を曇らせるまほにラブは手をぱたぱたさせつつ笑いながら言う。

 

 

「熊本に来て毎日楽しかったのは本当よ?みほと悪戯するのはホント楽しかったわ♪」

 

「そういえばそれまでもだったけど、みほの悪戯はラブが来る度にエスカレートしてたよなぁ…ん?オマエか?みほの悪戯はラブ、オマエの仕込だったのかー!?」

 

「あははははは♪今頃気が付いたの~?まほはホント鈍過ぎ~!」

 

 

 ラブに笑われ腕を組んでむくれるまほだが、それを切っ掛けに思い出は次々と蘇る。

 

 

「でもラブ、短期転校で私と同じクラスに居た頃は、家じゃみほと大暴れしてたのに学校じゃホントに猫被ってたよな?」

 

「え~?そっかな~?」

 

 

 とぼけるラブだがまほは当時を振り返り、皆にラブの所業を語って聞かせた。

 

 

「──そんな風にもう学校じゃ悲運の厳島のお姫様って感じで先生まで完全に騙されてたぞ、帰ってくりゃみほとやりたい放題の悪戯三昧だったのにな」

 

「でもまほだって私にちょっかい出した男の子達を、護衛の騎士様宜しく片っ端からぶっ飛ばしてたじゃないよ~。私のスカート捲った子なんかぶっ飛ばされて鼻血吹いて大騒ぎになったじゃない」

 

「あの時は後が大変だったのよ……」

 

 

 当時を思い出したしほが眉間に指を当てつつ溜め息を吐く様に言った。

 

 

「厳島のお嬢様に不貞を働いた悪ガキが、西住のお嬢様に成敗されたって噂が出回ってご両親が青い顔で謝罪にいらしたのよね…スカート捲りした当の本人も相当こっ酷く叱られたのでしょうね、ウチに連れられて来た時には元の顔も判らない位に顔を腫らしてジャガイモみたいになってたから……」

 

『どんだけなんだ?西住と厳島は!?』

 

 

 一同はドン引きするが、ラブがまほに改めて感謝を伝える。

 

 

「それでも嬉しかったわ、いつもまほが私を守ってくれて。ありがと、まほ♡」

 

 

 そう言った後ラブがまほのほっぺに軽く感謝のキスをすると、まほの顔は瞬間的に沸騰した。

 それを見た一同が一斉に笑う中、みほが更にアルバムの次のページを捲った。

 

 

『ぐっはぁ!』

 

 

 捲られたページの写真を見た瞬間ラブと亜梨亜以外の者が鼻血を吹いて引っ繰り返る。

 

 

「わ、私が撮った写真なのに油断していたわ……」

 

 

 しほは菊代が差し出したティッシュで鼻を押えつつ呟いた。

 開かれたアルバムのそのページには、大きく引き伸ばされた写真が一枚だけ貼られている。

 その一枚の写真には、家庭用と言うには大きいビニールプールの中で、年相応のスタイルと水着姿のまほとみほを両側に従えたラブが、ビキニ姿でお色気ポーズで写っているのだった。

 美しいもののまだ幼さの残るロリ顔に、既に立派なたわわと括れたウェストライン、その破壊力たるや確かに凄まじいシロモノである。

 

 

「こ、これで一体幾つなんだ~!?」

 

 

 アンチョビは真っ赤になった顔を両手で覆いつつ、開いた指の間からしっかりと写真をガン見しながらも質問をした。

 

 

「家で暮らしてた頃だから小学一年の夏の写真だよ……」

 

 

 みほが困った顔で頬を掻きながら答えると一斉に驚きの声が上がる。

 

 

「ウソ!?これで小1~!?」

 

「そんなバカな……」

 

「神様は理不尽だ…」

 

「マジか……」

 

「もうホント止めてよね~!」

 

 

 またラブが叫ぶが隣りの亜梨亜は一人冷静にしほに問い掛ける。

 

 

「しほちゃん、私この水着も写真も知らないんだけど?」

 

「ハッ!…申し訳御座いません!私が調子に乗って買い与えてしまいました~!」

 

 

 しほは青い顔で平べったくなって亜梨亜に許しを請う。

 

 

「後で焼き増しして頂戴ね」

 

「は、ははぁ!」

 

『やっぱこの人もどこか変だ……』

 

 

 亜梨亜の鷹揚を通り越した反応に一同そう思わざるを得なかった。

 その後もページを捲る毎三人の可愛らしい写真が続き思い出話にも花が咲く。

 

 

「ん?このまほが腕を組んでドヤ顔してるのはなんだぁ?」

 

「あれ?これはなんだっけ?」

 

 

 アンチョビが指差す先の写真を覗き込んだみほは首を捻るが、しほは少し考え込んだ後、何かを思い出したらしく吹き出し掛ける。

 

 

「こ、これは…ぷっ……何かの話の弾みで…くっ…西住流と厳島流の後継者の話になった時…この子ったら私が恋をお嫁さんにすれば問題無いって言い出して…それが可笑しくてつい撮って…ククク…ダメ、お腹痛い……」

 

「な!お母様!?」

 

『ぶははははは~!』

 

 

 しほの暴露でまほ以外の者が皆一斉に笑い出す。

 

 

「お、お姉ちゃんバカス~!」

 

 

 みほもまほを指差し大笑いするが、しほが必死に笑いを堪え付け加えた。

 

 

「な、何を言ってるんですかみほ…その後で恋お姉ちゃんを…お、お嫁さんにするのは私だ~!ってまほと取っ組み合いの大ゲンカを始めたではないですか…も、もうダメ…たすけて……」

 

「ふええぇぇぇぇ~!?」

 

 

 ショックを受けて固まるみほに周りの笑いは更に大きくなる。

 

 

「も~、二人共おバカさんなんだから~♡」

 

 

 ラブだけは両の頬に手を当て嬉しそうな顔をしており、まほとみほは赤い顔で俯くしかなかった。

 

 

「あぁ可笑しい…あら?この写真、まほお嬢さんとみほお嬢さんだけ涙目で…?」

 

 

 亜美は笑い過ぎて目じりに零れかけた涙を指で拭いつつ、西住家の玄関前で撮られたらしい一枚の写真を指差す。

 写真の中ではまほより既に頭一つ分以上背の高い、ちょっと困った様な表情のラブを真ん中に、涙目のまほとみほが縋り付く様にして一緒に写っていた。

 

 

「あ…これはね…亜梨亜ママと漸く一緒に暮せる様になって、この家を出る日に最後に一緒に取った写真なの…えっと、ちょっと待ってね……」

 

 

 ラブは制服の内ポケットに手を入れると自身の生徒手帳を取り出し、開いて表紙裏を差し出す。

 

 

「ほら……」

 

 

 そこにはアルバムと同じ写真が挿し込まれており、度々取り出すのか大分角も丸くなっている。

 

 

「ラブ…いつも持ち歩いてたのか……」

 

「うん…だって一緒に暮した間に、大事な妹達と最後に撮った写真だったもの…」

 

「だ、誰が妹だ!?」

 

 

 まほは歯を剥いてラブに向かい顔を突き出し、ラブもまた同じ様にして言い返す。

 

 

「え~?だって私の方が誕生日全然早いし、実際に後何日か早く生まれてたら学年も私の方がいっこ上だったのよ~?」

 

「う、うるさい!お前の方が全然子供っぽいじゃないか~!」

 

 

 こつりと二人の額が重なる。

 

 

「……うふふ」

 

「ふっ…お帰り、ラブ」

 

「ありがと…まほ」

 

 

 二人のその姿に皆も心の中がほんの少し暖かくなるのを感じるのであった。

 

 

「ねえみほ、この辺りからなんだかラブ先輩だけどんどん大人っぽくなって行ってない?何て言うかその間の成長過程が抜けてる様な……」

 

 

 その先にページを捲ったエリカが不思議そうにみほに聞いた。

 

 

「え?ああ、この頃はラブお姉ちゃんも長いお休みの時だけ遊びに来る様になってたから」

 

「あ~そうか~、そうよね~。私熊本から横須賀に帰らずに、そのまま亜梨亜ママと一緒にアメリカに渡っちゃったからね~。次に会ったのは二年生の夏休みだったかな~?」

 

「え?アメリカに?」

 

「そうよエリカさん、確か五月の頭に熊本に来て十一月だったかな?日本を離れたのは…それで日本に帰って来たのが四年になる直前だったのよね~」

 

 

 ラブの実の両親である樹と麻梨亜の死後、亜梨亜と一緒に暮せる目途が立つまでの約半年を熊本で過ごした後、ラブは当時の亜梨亜の仕事の拠点であるニューヨークへ移り住んでいた。

 その後横須賀に戻るまでの二年ちょっと間にも何度か熊本に訪れてはいたが、その度に恐ろしい勢いで成長しているラブの姿に西住家の面々は驚愕させられたのであった。

 

 

「そういえばその頃からだったなぁ、ラブの話し方が今みたいに間延びしだしたのは…」

 

「あぁ…それは……」

 

 

 当時の様子を思い出したまほの呟きに、珍しく亜梨亜が歯切れ悪く困った表情で語り始める。

 

 

「この子は渡米してからあっと言う間に英語を修得したのですが、どうやらその間に頭の中で第一言語である日本語と、第二言語であるはずの英語が逆転した様なのよ」

 

『ハア?何それ!?』

 

「恋、あなた話す時英語で考えてから日本語に訳して話してるでしょう?」

 

 

 亜梨亜もまた長年疑問に思っていたらしくそれをラブにぶつけてみた。

 

 

「ん?ん~、うん…そっかな~?」

 

『なんじゃそりゃ!?』

 

「やっぱり……」

 

 

 何となく予想していた事が当たり、亜梨亜はガックリと肩を落とす。

 

 

「え?え?それじゃあラブ先輩の独特のしゃべり方って……」

 

「ええ、あの妙に間延びするのは、その間に頭の中で和訳しているからという事になるわね…」

 

「でもどうやったらそんな事になるんだぁ?」

 

 

 アンチョビが珍獣でも見る様な目でラブを見ながら聞いてみる。

 

 

「ん~っとねぇ…英語習い始めた時にね~、いちいち日本語で考えてそれを英語に訳すのが面倒になってね~、それで最初から英語で考えればいいんだ~って気が付いたの~」

 

「んなアホな…何と言うか頭良過ぎるのも考えもんだなぁ……しかしそれじゃあ何でその逆の事が出来ないんだ?そうすれば日本語も普通に話せるだろ~に」

 

「むり~」

 

「むり~って、全く器用なんだか不器用なんだかよく解らんなぁ…でもさっきの口上なんかは随分ハキハキ喋ってたじゃないか、それに真面目な話の時なんかも割と普通な気がするんだが?」

 

「さっきの口上は練習して来たし、難しい話も先に考えてから話すけど普段は疲れるからイヤ~」

 

「難儀なヤツ……」

 

「大体この子はちゃんとした英会話講師を付けたにも拘らず、覚えた英語がどういう訳かブロンクス訛り…所謂ニューヨーク訛りを覚えてしまってやたらと早口なのよ……それも生粋のニューヨーカーも舌を巻く速さだもんだから、大の大人でも言い負かされて逃げ出す様になってしまって……」

 

 

 相当苦労したらしい亜梨亜は当時を思い出したのか大きく溜め息を吐いた。

 

 

「え~、だって英語で考える様になったらその方が丁度いいスピードだったんだもの~」

 

「はあ…それじゃケイが早過ぎて聞き取れないっていうのも無理ないか」

 

「昔ダージリンが、ラブは英語になると酷く口が悪いと言ってたなぁ」

 

「そりゃあダージリンのトコはキングスだからなぁ」

 

「全くこの子は……」

 

「えへへ、照れるなぁ」

 

「褒めてません!」

 

「そういえばテストの時も変わってたなぁ…」

 

「まほさんまだ何かあるの!?」

 

 

 亜梨亜はいっそ悲壮とも言える表情で我が娘を見やる。

 

 

「え?あ、いや時々算数の授業中に十問位のミニテストがあったんですけど、ラブは始めの声が掛かっても最初の一分位は何というかぼんやり問題を眺めてるんです。それで暫くすると一気に答えを書いて出来ましたって手を上げてたんですよ」

 

「え?どういう事でしょう?」

 

 

 まほの言った事に対し亜梨亜以外の者達の顔にも疑問の色が浮かぶが、ラブだけは何かいけない事した?って表情で可愛く小首を傾げている。

 

 

「恋、あなた一体どうやって問題を解いているの?」

 

「え~?どうやってって言われても…最初に問題全体を見て、解けたら纏めて答え書いてるだけだけど…みんな違うの~?」

 

『え゛?』

 

「ええとな、ラブよ…それは問題全部を同時に計算したりしているという事でいいのか?」

 

 

 アンチョビが両のこめかみを両の手の人差し指で押えつつラブに問い質す。

 

 

「うん…そうだけど~、それが普通じゃないの~?」

 

『ハァ!?』

 

 

 ラブの返答に全員のメダマが場外に飛んで行く。

 

 

「いやいやいや!ラブよ、それは全然普通じゃないから!」

 

 

 さすがのアンチョビも堪らず力強く否定した瞬間、何を思ったかみほが突然立ち上がると座敷を飛び出して行き、皆が何事かと思ってるうちに再び駆け戻って来た。

 

 

「ラブお姉ちゃん!これ私が黒森峰の一年の時の数学のテキストなの。ちょっとこのページの問題解いてみて、直接書き込んじゃっていいから!」

 

 

 みほは適当に開いたテキストとシャーペンをラブに突きだす。

 

 

「え~?何よ急に~?」

 

「いいからやってみて!」

 

「も~、しょうがないなぁ…」

 

 

 一同が固唾を飲んで見守る中ラブがテキストに目を落とすと、その瞬間ラブの顔から表情が消え瞳孔が開き心此処に在らずといった雰囲気になった。

 問題を目で追うといった兆候は見えず、敢えて言うなら全体を俯瞰して見ている印象だ。

 待つ事暫し、ふっとラブに表情が戻ると猛烈な勢いでテキストに解答を書き込んで行く。

 

 

『あ…この状態は超長距離予測射撃する時と一緒だ……』

 

 

 まほは心中そう思ったが亜梨亜の手前口には出せない。

 

 

「ん~、出来たよ~」

 

 

 みほにテキストを手渡すと、受け取ったみほは別冊の解答集と照合を始めた。

 

 

「凄い…全部合ってる……」

 

『え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛~!?』

 

 

 呆然と呟いたみほの言葉に一同驚きの声を上げるが、その目はもう完全に宇宙人を見る目だ。

 次々明らかになるラブの特異性に遂に亜梨亜も声を上げた。

 

 

「私はあなたの将来が心配です!」

 

『亜梨亜様、既に手遅れだと思います……』

 

 

 頭を抱える亜梨亜を前に誰もそれは決して口には出来なかった。

 

 

「なによ~、合ってるなら別にいいじゃな~い」

 

「まあ昔から変わってるとは思ってたがまさかここまでとはなぁ……」

 

「いや、変わってるとかそういうレベルじゃないと思うんですが…」

 

 

 腕を組んで唸る様に言うアンチョビに、ラブの解いたテキストを覗き込みつつエリカが言った。

 しほと千代は頭を抱える亜梨亜に声を掛けようとするが言葉が見つからない。

 

 

「あら?Ⅱ号ね…?」

 

 

 別にその場の空気を変えようと思った訳ではなかったが、何の気なしにアルバムのページを捲った英子が満面の笑みでⅡ号に乗るラブとまほとみほの写真に目を留めて呟いた。

 

 

「あ…エリカさんこの頃ね…」

 

「ええ、そうですね……」

 

 ラブの傍に来て写真を覗き込むエリカははにかんだ様な笑みを見せ、ラブもまた穏やかな笑みでそんなエリカを見つめている。

 寄り添うラブとエリカ、美少女というより既に美女と言っていい二人、そんな二人を見た周りの者達からは溜め息と共に様々な言葉が漏れる。

 

 

「何なの?この尊さは……」

 

「いやだ、ドキドキするわ…」

 

「こ、これで話が一本書ける!」

 

「はうぅ…増々自分が子供に見えるぅ……」

 

「そうだそれよりⅡ号だ!」

 

 

 そんな中まほが突如目を輝かせて声を上げる。

 

 

「お姉ちゃん!」

 

「ああそうだ!熊本に帰ったらみんなで乗ろうって約束してたじゃないか!」

 

「おぉ♪そうだった!」

 

 

 アンチョビも目を輝かせながら身を乗り出す。

 

 

 

「お母様!Ⅱ号は直ぐに出せますか!?」

 

「ええ、あなた達が帰って来ると聞いて常夫さんがしっかり整備しておいてくれましたよ」

 

「ありがとうございます!ヨシ!みんな行くぞ!」

 

「いいなぁ……」

 

 

 思わずぼそりと呟いてしまった英子に向かい、すかさずアンチョビが声を掛けた。

 

 

()()()()()()()()()()も一緒に行きましょう!いいよな?まほ?」

 

「勿論さ!それじゃあみんなで箱乗りだ!」

 

()()()()()!千代美ちゃんは何ていい子なの!?」

 

 

 亜美は歓喜の声を上げてアンチョビを抱き締めるが、即英子が怒りの声を上げる。

 

 

「ゴラァ亜美!どさくさに紛れて何をするかぁ!」

 

「うひゃあ!」

 

 

 負けじと抱き締めて来る英子と亜美のたわわに挟撃されたアンチョビが悲鳴を上げ、西住家の大座敷は笑い声に包まれるのであった。

 

 

 




第三章の熊本編も三話目ですが次の加筆修正始めたら、
どうも後一回で終わらない気もw
でも後一回で終わらせたいなぁ…。
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