ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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今回も多分サービス回だと思うけど、ラブとチョビ子が超悪乗りしてます♪

小学生のダージリンとアッサム…想像すると……。


第七話   火の国の湯煙パラダイス(おかわり)

 ラブのミニライブも終わりラブと亜梨亜の帰還を祝う宴も、今はただ談笑の時間となっていた。

 

「そういえばラブ、いよいよ来週からだな。日程が連戦になってるが大丈夫か?しかも黒森峰(ウチ)も含めてそれぞれにフルオーダーで来るように依頼してる様だが?」

 

 

 来週から始まる練習試合に関して、その過密スケジュールと内容にまほも些か心配げな表情でラブに問い掛けて来た。

 そもそもまほとしてもラブの依頼を断る気は更々無いが、たった五両のⅢ号に対しマウスも含め黒森峰の決勝レベルでのオーダーでは、いくらラブとはいえさすがに荷が重過ぎると思うのも当然である。

 

 

「うん、まほが言う事は尤もよ。でもウチの場合あの子達は中学時代の経験があっても、文科省の不手際のお蔭で高校に上がってからの実戦経験はゼロなの。ヤキマや知波単との訓練はやっていたとはいえ、あれは実戦のそれとは大きくかけ離れたものだもの。私自身も三年の実戦経験のブランクは埋め様が無いしね。だからここである程度経験値を上げておきたいの、特に重戦車相手の経験があの子達には圧倒的に不足してるから。申し訳無いのだけれども、まほ達にはウチの叩き台になって欲しいのよ。だからまほ…お願い……」

 

「そうか…そういう事なら喜んで私達も力を貸すよ、なあ?」

 

 

 まほはエリカとみほとアンチョビに視線を向け同意を求める。

 それぞれもまた真摯な顔で頷きそれに応えると、ラブもまた頭を下げ礼を述べた。

 

 

「みんなありがと…こんな事を頼めるのはあなた達しかいないから助かるわ」

 

 

 まほはラブが背負わされた諸々のハンデを考えると胸が痛んだが、自分に出来る事は可能な限り応えてやろうと決意を新たにするのであった。

 

 

「初戦は聖グロかぁ…しっかしまあ、ブラックプリンスとクロムウェルまで引っ張り出させるとは驚いたぞぉ~。よく口喧しい聖グロのOG連が許可を出したもんだ」

 

 

 アンチョビもちょっと信じられんと言った風に感想を述べる。

 

 

「あ~、なんかアッサムが相当暗躍してくれたみたいなのよねぇ……」

 

『あぁ……』

 

 

 それだけで察しが付く辺りが、これまでの付き合いの深さを窺わせるリアクションだ。

 

 

「私とみほ以外だとラブはあの二人とが一番付き合いが長いんだったよな?」

 

「うん、小学戦車道からの付き合いだからねぇ」

 

「小学生の頃のダージリンさんとアッサムさんってどんな感じだったのかなぁ?」

 

「ん?そりゃ~もう可愛かったわよ~♡」

 

 

 みほの質問にラブは目を輝かせると陶然とした表情で答える。

 

 

「もうね~、本当に可愛いお人形さんみたいでね~、初めて会った時は、私思わず二人纏めてお持ち帰りしようかと思った位だもの~♪もし今私の目の前に、当時のダージリンとアッサムが現れたら迷わずお持ち帰りするわ!あぁ、何処かに小学生のダージリンとアッサムが落ちていないかしら♡」

 

『このロリのド変態が……』

 

 

 一斉に白い目でラブを見つつ心の中で毒づくが、ラブは我が身を抱き締め違う世界に行っている。

 

 

「でもねぇ…初めて会った時、二人共私の事中学生のお姉さんだと思ってたらしいのよ……」

 

 

 出会った当時を思い出したラブはそう独白するとガックリと畳に手を突いた。

 

 

『ぷふっ!』

 

 

 皆一斉に噴き出すと視線をラブから背ける。

 初対面でラブは必ず遥かに年上と思われるのがお約束であり、それでへこむラブの姿を見ては笑いを堪えるのも親しい者達の間のお約束であった。

 何しろ身内のまほでさえ初めて会った時はその見た目で年上だと思い、まだ舌足らずな言葉使いでラブの事を『恋おねえしゃん』と呼び、へこませると同時に萌えさせていたのだ。

 その事に言及した際には、まほは顔を真っ赤にしてワタワタと慌てて背後からラブにしがみ付きその口を必死に塞ごうとしたが、その様が可笑しく皆に笑われていた。

 

 

「まあ初めて会った時はみんな年上だと思ってたよなぁ、かく言う私も最初にラブに会った時は、臨中のOGが指導に来てるのかと思ったし」

 

「あの…私もそう思ってました……」

 

「うぅ…エリカさんまで……」

 

「でもあの写真見りゃ無理ないって」

 

「千代美ぃ……」

 

 

 皆にいじられラブはまたいじけかける。

 

 

「そうだ、この間から聞こうと思ってたんだが戦車と音楽はどっちが先だったんだ?」

 

「ん~?音楽よ…おぼろげにしか覚えてないけど、最初に与えられた小さなおもちゃのピアノを直ぐに弾きこなしたらしくて、暫くしたら本物のピアノがお家に届いたのよ」

 

「それは何時頃の話しなんだ?」

 

「ええと三歳になる少し前位だったかしら?」

 

『えっ!?』

 

 

 ラブは当時を思い出そうとする様に腕を組み首を傾げつつ答えた。

 アンチョビは驚きつつ更に質問を重ねる。

 

 

「なあ、普通ピアノってどれ位から始めるものなんだぁ?」

 

「う~ん…早くて三歳位からみたいだけどぉ、何か私の場合は聞いた曲をその場でおもちゃのピアノで弾き始めたらしいからねぇ。それで驚いた両親が急遽本物のピアノを取り寄せたらしいわ」

 

「そんな事って出来るのかぁ?」

 

「うん、耳コピは今も得意よ」

 

「オマエは本当にビックリ人間だなぁ……」

 

 

 半ば呆れた様な表情でアンチョビは呟く様に言うのだった。

 

 

「横須賀のお城にあるのがその時のピアノなのか?」

 

「そうよ~、ドイツ生まれのベヒシュタインよ♪ピアノのストラディバリウスと呼ばれてるの、私はスタインウェイ&サンズの音よりベヒシュタインの方が断然好きだわ♡」

 

「なんだか名前だけでも相当高そうな気が…いや、止めておこう……」

 

「…そうね、精神衛生上あまりその辺考えるのはお勧めしないわ」

 

 

 戦車道などという札束を大砲で撃ち合う様な世界に居ても、やはり高校生から見れば外国製ピアノの値段など考えるだけで恐ろしいものがある。

 アンチョビは首を左右にプルプル振ってその思考を頭から追い出した。

 

 

「でも事故の後渡米して、ほぼそのまま直ぐ学園艦暮らしになってから、滅多に弾けなくなったからちょっと寂しいのよねぇ…アメリカに居た頃はまだ腕も指も思う様に動かなくて、ピアノが弾きたい一心でリハビリに励んだわ。向こうで用意して貰ったキーボードも満足に弾けなくて、それが悲しくて悔しくて…それでやっと満足行く様に弾ける様になった時は心の底から泣いたもの」

 

『……』

 

「あ、ゴメン!しんみりしないで。今はもうあの通り全開で弾ける様になってるから」

 

 

 これ程多くの苦しみを背負わされながら、諦める事無く努力を続けるラブの姿に皆も深い感銘を受ける、そして同時に自分がラブの立場であれば果たしてここまで出来るだろうかとも思わされる。

 それぞれがそんな事を想いつつ会話を交わす中、亜梨亜達と話を弾ませていた常夫が一人立ち上ると座敷に居る者達に声を掛けた。

 

 

「明日からの技術指導で、今日の内に鹿児島に向かわねばならない。皆さんには申し訳ないが、私はこれで失礼させてもらいます」

 

 

 立ち上がりそう言った常夫は英子と亜美に改めて礼を言うと、ラブ達の元に赴きそれぞれに礼と別れの挨拶をすると最後にラブの頭を撫でつつもう一度語り掛ける。

 

 

「もう二度と何も言わずに消えたりするんじゃないぞ、私達は家族なんだからな。何時でも帰って来ていいし、困った事があったら何でも相談しなさい。いいね?」

 

「うん…ありがとう常夫パパ……」

 

 

 常夫はラブを軽く抱きしめた後、立ち上がると皆に一礼し座敷を出て行こうとする。

 

 

「常夫さん、鹿児島までの脚はどうされるのですか?」

 

 

 しほも立ち上がり常夫を追いながら問い掛ける。

 

 

「ああ、それなら心配ない、今回は向こうから迎えのヘリを出してくれている、もう間も無く来るはずだからヘリポートに向かうとするよ」

 

 

 その言葉にヘリポート職員で飲んでいない者が車を出すと言うと、他の者達もそろそろ潮時とばかりに家元達や他の者に挨拶をすると退出して行き始めた。

 座敷の方も使用人達が片付けを始め、宴の時間もここに終わりを迎えるのであった。

 

 

「いやあ、久し振りに食事らしい食事を頂いたわ♪まともに夕食頂いたのなんて、お招き頂いた笠女のパーティー以来よ」

 

「あんた普段どんな食生活してんのよ?」

 

 

 伸びをしながら満足げに言う英子を白い目で見ながら亜美は毒づく。

 

 

「しょうがないでしょ~、当直やら殺人事件の捜査で最近ロクに帰る事も出来なかったんだから」

 

「そっか…ゴメン……」

 

「いいよ、刑事の生活なんてこんなもんだし慣れっこだもの」

 

「英子姉さんは、昔どんな状況でも寝られるって言ってましたね」

 

 

 ラブの榴弾の暴発事故の時、英子の部屋に世話になった際に英子の言っていた事を思い出し、改めて意外な処に人の縁というのはあるものだと思うアンチョビであった。

 

 

「まあこの商売そうじゃないと持たないわね、ただ帰ると風呂入って寝るだけってのも女としてどうなんだ?って思う事が多々あるのも事実だけど」

 

 

 自嘲気味に笑う英子だが、風呂と言うキーワードに亜美が反応する。

 

 

「お風呂!ねえ、休む前にみんなでもう一度温泉に入りましょうよ♡」

 

「お、亜美!それはナイスなアイディアだ♪」

 

「う……」

 

 

 その提案に思わず後ずさるラブだが、亜美がすぐさまパタパタ手を振り安心させる様に言う。

 

 

「恋さん、もうやらないから。ホントやらないから安心して♪」

 

「ホントかなぁ…?」

 

「ええ、ホントよホント♪」

 

 

 英子も追従して言うが、この連携が余計に怪しく思えるラブであった。

 しかし歌った事もあり少し汗ばんでいたので温泉の魅力には勝てず提案を了承する。

 

 

「入るのはいいがラブはまた髪を洗うか?」

 

「いや、そこまでしなくてもいいと思うわ」

 

「そうか、それじゃあ先に濡れない様に結い上げちゃった方が良さそうだなぁ」

 

「そだね……」

 

 

 ここで何かを思いついたのかラブはパッと顔を輝かせるとアンチョビに耳打ちをする。

 

 

「千代美、千代美♪あのね──」

 

「何だどうした?」

 

 

 ラブに耳元で何か囁かれているうちに、アンチョビも何やら人の悪い表情になって行く。

 

 

「ほほう、そういうのは嫌いじゃないし結構得意だぞ…ヨシ、やるか!」

 

「決まり!」

 

 

 小声で何か囁き合う二人に、仕度を整えたまほが訝しげな表情で見ながら声を掛けた。

 

 

「お~い、こっちは仕度出来たけどオマエ達は行かないのか?」

 

「あ、ああ、髪はもう洗わないからな、濡らさない様にしっかり結い上げてから行くから西住達は先に行っててくれないか?」

 

 

 アンチョビがそう答えるとまほも了解とばかりに手を上げ座敷を出て行く。

 それを見送った二人は顔を見合わせニヤリと笑う。

 

 

「それじゃあ始めるか」

 

「うん♪」

 

 

 仄かな明るさの間接照明と滾々と湧き出て流れる湯の音、夜も更けて入る露天の独特の雰囲気が湯に浸かる者達の疲れを癒して行く。

 

 

「遅いわね…何やってるのかしら?」

 

 

 ひと足先に湯に浸かっていた亜美が、中々来ないラブとアンチョビを少し心配する。

 

 

「って、言ってる傍から来たみたいよ」

 

 

 英子が言う通り、曇りガラスの向こうにラブとアンチョビらしきシルエットが現れた。

 その後直ぐにアンチョビの介助でラブが衣服を脱ぐさまがシルエットで見える。

 

 

「何と言うか…直に見るよりエッチな気が……」

 

「確かにコレは!」

 

「ちょっと夢に見そう……」

 

 

 一同の顔が火照っているのは温泉で暖まっただけではない様だ。

 雁首揃えて妄想しながらアホな事を言ってるうちに浴室への扉が開き二人が入って来た。

 

 

『ぶふぉ!?』

 

 

 一糸纏わぬラブとアンチョビだが、二人のその髪は揃ってある特徴的な形に編み込まれている。

 

 

「皆様ごきげんよう、私、偽ントグロリアーナ女学院の偽ジリンですわ」

 

「同じく偽ンジペコです」

 

 

 浴室に入って来るなり、二人は紅茶女とそのミニチュアコピーの独特のしゃべり口調と溜めの入れ方を真似つつ、その場で悪意満点のコントを演じ始めた。

 調理場からでも失敬して来たのかラブの手にはティーカップとソーサーではなく、会議室などでよく見掛ける紺地に白の水玉の湯呑と茶托、もう一方のアンチョビの手にはティーポットではなく同じ柄の大きな土瓶を持っている。

 

 

「ら、ラブお姉ちゃん!?」

 

「あら?そこにいるのはみほさんじゃありませんこと?」

 

「くっ……」

 

 ラブはみほに向かい軽く湯呑を掲げると、ズズ~っとわざとらしく音を立てお茶を啜る。

 

 

「偽ペコ、おかわりを頂けるかしら?」

 

「畏まりました偽ジリン様」

 

 

 アンチョビは誇張したペコのすまし顔で土瓶を傾けお茶を注ぐ。

 

 

「ほ、本当にお茶が入って……」

 

「まあ♪黒森峰の副隊長さんもいらっしゃったのね」

 

 

 ラブのダージリン風流し目に、エリカは慌てて視線を逸らすがその肩は小刻みに震えている。

 

 

「お…お前らいったいぃ……」

 

 

 まほも二人に何かを言おうとするが後が続かない。

 

 

「あらまほさん、どうなさいましたの?」

 

「や、やめろ…その決め顔はやめろぉ……」

 

 

 まほの腹筋も細かく激しく痙攣している様だ。

 

 

「偽ジリン様、あちらに蝶野教官がいらっしゃいます」

 

「ヒイっ!」

 

 

 次に名指しでターゲットにされた亜美はビクリと身を震わせ思わず後ずさろうとした。

 

 

「これは大変失礼致しました。蝶野教官、今度の練習試合の審判長、宜しくお願い致しますわ」

 

「お、おねがい…やめ……」

 

「ぶははははは~!あの聖グロの凸凹コンビかぁ~!」

 

 

 唯一エンカウントする心配の無い英子が豪快に笑い出した結果、それまで堪えていた一同の腹筋も遂に崩壊し一斉に笑い出した。

 

 

「まあまあ、皆様一体どうされましたの?ねぇ、偽ペコ?」

 

「さあ?私には理解致しかねます、偽ジリン様」

 

 

 容赦ない追い打ちに、全員湯船の中で時々溺れそうになりながら笑い地獄に突き落とされた。

 

 

「だ、だから…その決め顔…やめろぉほほほほぉ!」

 

「そ、その顔で…土瓶傾けるのやめ……!」

 

「ふ、二人の顔…見られなくなる…から!」

 

「ぶははははははははは!」

 

「え、英子もいい加減に…お願い…ホント…審判出来なく…もうやめ…あひゃひゃひゃひゃ!」

 

 

 笑いの発作で苦しむ一同の前で二人は決め顔のまま、静々とやたら優雅ぶった仕草で湯船に身を沈めながらなおも責める手を休めない。

 

 

「こんな格言を知ってる?」

 

「ドストエフスキーですね」

 

『なんでドストエフスキィィィィ……』

 

「偽ペコ?私まだ何も言っていなくてよ?」

 

「偽ジリン様のお言葉にあまり深い意味は御座いませんので」

 

「まあ!偽ペコも随分と言う様になったものですわねぇ」

 

「はい、もうすっかり聞き飽きておりますので」

 

「ぶははははははははは!」

 

「英子ぉぉぉ…!うひひひひぃぃぃ!」

 

「こ、こっちみるなぁ!くききききぃ!」

 

「お、おねがいだから…お、お腹痛い……」

 

「もうだめ…二人の顔…ゼッタイ思い出す……」

 

 

 延々続くラブとアンチョビのブラック過ぎるネタに、全員笑い過ぎて痙攣しながら過呼吸状態で土左衛門の様に湯船にプカプカと浮いている。

 

 

「ふぅ、やはり温泉はいいですわね。お蔭ですっかり暖まりましたわ」

 

「ええ、本当に」

 

「偽ペコ、でもそろそろ上がると致しましょうか?」

 

「はい、偽ジリン様」

 

「それでは皆様御機嫌よう」

 

 

 ダメ押しの如くそう言って、最後まで決め顔のままラブとアンチョビの二人は湯から上がると、それぞれ再び湯呑と土瓶を掲げて浴室から立ち去って行った。

 

 

「…死ぬかと思ったわ……」

 

「いやあ、笑った笑った」

 

「アンタ馬鹿みたいに笑い過ぎよ!」

 

「あの二人が組むとこんなに恐ろしいとは思わなかった……」

 

「お姉ちゃん……」

 

 

 二人が立ち去って暫く経った後に漸く息を吹き返した一同が、ふらふらになりながら湯から上がると疲れ切った顔をして脱衣所で身体を拭きつつ絞り出す様に会話を交わす中、入れ替わる様に温泉に入りに来た亜梨亜としほと千代が現れ、亜梨亜が代表して茹でダコの様になった一同に呆れお小言を言うのだった。

 

「いくらなんでもそんなになるまで入っては体に毒ですよ」

 

『……』

 

 

 あなたの娘のせいだとは言えず、ここは無言でその言葉を受け止め一斉に脱衣所を後にする。

 

 

『うぅ…酷い目にあったわ……』

 

 

 一同が同じ感想を胸に座敷に戻ると既にそこは片付けられ全員分の布団が敷かれており、ラブとアンチョビが布団の上に可愛くアヒル座りでちょこんと座り、仲良くフルーツ牛乳を飲んでいた。

 

 

「あ、お帰り~、フルーツ牛乳美味しいよ~♪」

 

『美味しいよ~♪っじゃねぇ……』

 

 

 些かグッタリしつつも改めて見ると二人共編み込んでいた髪を解き、お揃いで緩めのお下げに結い直しており、それがまた新鮮で大層可愛らしく見える。

 更にラブの方は浴衣が着られなかったので自前のピンクの猫の肉球柄のパジャマに着替えており、普段の出で立ちとのギャップに後から戻った全員がちょっと萌えたのだった。

 

 

「ちょっと意外というか可愛いかも♡」

 

「よくサイズがあったわね…ってか胸元のボタン結構ギリギリ……」

 

 

 亜美と英子の弁にラブは胸元を見下ろしつつぽつりと呟いた。

 

 

「ん~、着慣れないから違和感が強くて……」

 

『え?』

 

「だって普段寝る時は何も身に付けないから……」

 

「ちょっとまった!それってまさか…愛君も一緒なのか…?」

 

「うん…ベッドも一緒……」

 

 

 まほの発した疑問にラブが再びぽつりと答えると、全員の脳裏にモワモワと妄想が沸き起こり一斉に慌てて鼻を押えて上を向いて首をトントンと叩いている。

 少し落ち着いた処で手渡されたフルーツ牛乳を、一気に飲み干した一同は大きく息を吐く。

 

 

『あ、危なかった!』

 

 

 ちょっとでも油断するとボタンが弾けそうなラブの胸元につい目を奪われつつも、どうにか呼吸を整えると、少し声を震わせながら亜美は英子とヒソヒソと話し始める。

 

 

「ちょ!英子!今の子ってみんなそうなのかしら!?」

 

「私に聞かないでよ!解る訳ないでしょ!」

 

 

 自然二人は視線を現役高校生達に向けるも、ラブ以外の者達は一斉に左右に首を振る。

 その反応に二人も少しホッとしつつもやはりジェネレーションギャップを感じずにはいられず、思わず見つめ合うと疲れた様に笑う他は無かった。

 そしてそんな二人の様子を見ていたアンチョビの口から、彼女が前々から感じていた事に対しての疑問が投げ掛けられた。

 

 

「ねえ、英子姉さんと亜美姉さんはそもそも一体どういう()()()なんでしょう?」

 

『え…?』

 

 

 アンチョビのこの質問に()()()()()()の目が爛々と輝く。

 火の国の夜はまだまだこれからだ。

 

 

 




フルーツ牛乳も随分長い事飲んで無いなぁ…。
しかしダージリンにバレたらどうなる事か。

今回でトータル50話目、こんな続いてるのには自分でもびっくりです。

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