そのAP-Girlsは書く程にその化け物ぶりが加速して歯止めが効きません……。
ラブとポッ○ーゲーム♡
「わお!当初目標の五両を上回るとはあの子達もやるもんだねぇ…いや善哉善哉♪」
「いや善哉善哉♪じゃなくてさぁ、いいのラブ姉?私らこんな場所でこんな事やってて?」
AP-Girlsの各車が聖グロ相手に単騎駆けで奮戦する最中、行方を晦ましたLove Gunが何処に行ったかといえば、最初にクルセイダ―三両を討ち取ったキルゾーンに舞い戻り、その近くの市大病院前交差点にあるコンビニの駐車場に堂々とLove Gun止め、今は持ち込んだお菓子を食べつつのんびりおやつタイムと洒落込んでいた。
「いいのいいの♪私達はこの後が大変なんだから。あの子達にしたってこれがこなせなきゃ、この先通用しない事位は充分解ってるんだから。ここはあの子達に任せて私達は体力温存が仕事よ」
ラブの図々しさに呆れつつ一応瑠伽は聞いたものの、予想通りの返答であり言う事も事実であるだけにそれ以上の言及はしなかった。
「それにあの子達なら大丈夫よ、必ず最後までやり遂げるわ。私はそう信じてるもの」
「そりゃ私だって信じてるわよ、伊達に一緒にあのハードな訓練潜り抜けて来た訳じゃないもの」
「でしょ?それよりさ…ん~♡」
話はそこで終わりとばかりにラブは手にしていたチョコポ♡キーを咥えると、瑠伽に向かってその咥えたチョコポ♡キーをスッと突き出す。
「ラブ姉こんな時に何考えてんのよ?私はやらないよ!大体もし愛にバレたらそれこそ何されるか解ったもんじゃない!」
ラブと魅惑のポ♡キーゲーム、こんなお誘いまほ達なら速攻で喰い付くかもしれないが、愛の性格をよく知る瑠伽としてはこんな危険な誘いに乗る訳には行かない。
「ん~♡」
それでもなおも執拗にラブは瑠伽に向ってポ♡キーを咥えたまま迫って来る。
「だ~!ラブ姉しつこ過ぎ!」
「ん~!」
更に拒絶する瑠伽に対しラブは不満げに眉を下げ唇を尖らせると、悲しげな表情で瑠伽の瞳をジッと見つめ始める。
「う゛…ちょっとだけだぞ……」
「ん♡」
途端に表情を輝かせたラブは、瑠伽がポ♡キーの端を咥えた瞬間物凄い勢いでカリカリとポ♡キーを齧り始め、あっと言う間に瑠伽の唇に急接近して来た。
「…!」
あとちょっとで形の良い二人の唇が重なるその瞬間、瑠伽は慌ててポ♡キーを噛み砕き顔を離す。
「…っぶねぇ!ってハイ終わり!」
「………」
頬が火照るのを意識した瑠伽はそっぽを向いてそれを誤魔化すのだった。
「あの子たちゃ一体試合中に何やってるのよ…?」
スタンド中で黄色い歓声が巻き起こる中、モニターの中で突如始まったポ♡キーゲームに、すっかり毒気を抜かれた英子は呆れ顔で投げやりに呟いた。
横を見れば一同目が点になって固まっているが、アンチョビだけが目はモニターを食い入る様に見つめつつ、手はいつの間にか取りだしたいつものメモ帳に高速で何かを書き付けている。
「千代美ちゃん、あなたって本当に……」
アンチョビのその姿に英子もそれ以上の言葉が出て来ない。
「それにしてもアレね、聖グロも反撃を始めてるけどAP-Girlsの方が何枚も上手って感じね。あとどれ位トラップがあるか解らないけど、事前の下調べを入念やってるにしてもだよ?何が何処にあるというより何をどう、どのタイミングで使うかアレはよく考えてるよ」
英子の言葉にハッとする一同だが英子は構わず更に続ける。
「よく二手三手先を読むとか先の先なんて言うけどアレは違うね、最初から全体を見越して組まれた予定の中で、状況に合わせて逐次その予定を組み替えて動いてる様に見えるよ。でも見てご覧よ、そろそろ次の段階に移行するんじゃない?トラップを効果的に使いつつ徐々にだけど距離を開け始めてるじゃないか。今度は何をやる気かね?ねぇみほさん、あなたはあのお姫様に発想が近いみたいだから何か予想が付かない?」
「ほえぇ!?わ、私ですか?」
「そう、あなた」
突然英子に話を振られたみほだが、ラブの考えなどみほですらそう簡単に予想は出来はしない。
「え、えっとあの私にも解りません…ラブお姉ちゃんの考え方って宇宙人過ぎて……」
『おまえが言うな』
全員の目がそう語る中、英子は笑いながらも話を続ける。
「まあ確かにね…私だって全部を見た訳じゃないし、直接戦って来たあなた達の方が解ってるだろうと思うけど、恋お嬢さんも昔はあそこまで搦め手を使う事は無かったでしょ?でも今はそうせざるを得ない明確な理由があるのは解ってる?」
一瞬顔を見合わせる一同に一つ息を継いで英子は続ける。
「圧倒的に足りない戦力…これは解ってると思うけど、彼女が背負わされてる肉体的ハンデについてそれがどの程度のものか把握してる?私は捜査する関係上随分色々な資料を見て来たけど、そうと気付かせないレベルまで健常にふるまって見せていても、リカバーする為に掛かる負担は身体的にも精神的にも相当なはずよ。でも決して彼女はそれを人には見せないし気取らせない。今もああしてお気楽に休憩して見せてるけど、アレも体力温存して最終局面に備えているんでしょうね。何をする気かは解らないけど相当なものが見られるはずよ。」
英子の言う事に改めてラブが背負わされた物の大きさを認識する一同の前で、モニターの中のラブはなおも瑠伽を相手におふざけを続けている。
「努力を怠らない天才、自らに対して一切の妥協を許さない天才は恐ろしいわよ」
最後に纏める様に放った英子の言葉が重く響く。
「砲撃が止んだ……?」
奇襲に次ぐ奇襲に翻弄され続け休む事も許されず、濃い疲労の色を滲ませ始めた聖グロの隊員達の中に在ってそれでも奮戦を続けていたルクリリがその異変に気付いた時、それまでは巧妙に遮蔽物を使い姿を隠していた四両が、徐々に距離を取りつつも姿を現すと一斉にスモークを焚き縦横無尽に走り回り始めた。
まるでその場で全てを使い尽くす様な勢いでスモークを焚きながら走り回る為、周囲はあっと言う間に濃いピンクの霧に包まれ隣にいるはずの僚車の姿を確認するのもままならない。
「同士討ちになるぞ!砲撃中止!」
声を限りのルクリリの叫びにやがて砲撃音も止み、耳を澄ますと既に走り回っていたAP-Girlsの走行音も聴こえなくなっており漸く執拗な奇襲攻撃も一先ず終わった事をルクリリも悟った。
「ダージリン様!」
「ええ、解っているわ。周囲の警戒を厳にしつつ現戦闘区域を離脱、部隊を再編します」
スモークに阻まれその姿は確認出来ないが無線を介したダージリンの声もまた、既にAP-Girlsが作戦を終了し何処かへと立ち去っている事を確信している様だった。
「しかしここまで奇襲を受けていた間、ラブ先輩の姿だけは確認出来なかった…一体何処に……」
訝しむルクリリであったが、丁度その頃当のラブもまたその重い腰を上げた処であった。
「ん~、砲撃音も止んだね~。時間の方も丁度いい頃合いだわ」
右腕だけを上に伸ばし、ん~っと声を上げ伸びをしたラブは首を左右に振った後、にっこりと微笑んで一緒におやつタイムに興じていたLove Gunのメンバーに緩い声で号令を掛けた。
「それじゃ行こっか~♪」
その声に応じて香子がエンジンに火を入れると、辺りに鋭い爆音が響きLove Gunが目を覚ます。
堂々と休憩していたコンビニの駐車場を右折して出たLove Gunは、そのまま電気団地前の信号まで進むと再び右折し、今度はそのままシーサイドラインの高架下を全速で進んで行く。
途中反対車線をすっ飛んで来たイエロー・ハーツの凜々子とすれ違いざま敬礼を交わしながらも、止まる事無く金属団地前の交差点までそのまま一気に突き進み、交差点の真ん中で右折回頭すると先程まで愛達が聖グロ相手に暴れ回っていたリサイクル業者の集まる区画の方を向いて停止した。
「あっら~こりゃ凄いわ~、まだあの辺りピンク色のまんまじゃない。あの子達本当にスモーク全部ぶちまけて来たんじゃないの~?」
「そうしろと言ったのはラブ姉でしょうが」
額の上に右手を翳し500m程先の未だスモークが晴れず、ピンク色に霞んだエリアを見ながら呆れた様な表情で笑いながら言うと、砲手の瑠伽がすかさず突っ込みを入れる。
「まあそうなんだけどさ…さて、ダージリンはどっちから出て来るかねぇ?」
ラブがそんな事を言っている傍からスモークの中から一両這い出して来るのが見えた。
「ん~、あれはクロムウェルかな?って事はニルギリさんか……」
そう呟きつつラブは懐を弄ると、内ポケットからネックストラップに繋がれた単眼のコンパクトな直進ズーム式のスコープを取り出し左目に当てた。
「あぁ、やっぱりニルギリさんのクロムウェルだわ…あらら、咽せちゃって可哀想に」
自分でやらせた事を棚に上げてラブはその様子を眺めているが、スモークの中から這い出して来たばかりのニルギリの方は、まだ前方に止まるLove Gunの存在には気付いていない。
「お~い花楓、ニルギリさんにこっちの存在気付かせてあげて~」
「はいよ……」
ラブの意図を理解した花楓が突撃らっぱのホーンボタンを押すと、辺りに間抜けな騎兵隊の突撃らっぱの音が響き渡る。
「げほげほ…今日はいったい何度こんな目に遭えば済むのでしょう……」
やっとピンクのスモークから這い出したクロムウェルのコマンダーキューポラ上で、車長であるニルギリは刺繍の入ったハンカチで眼鏡を拭きつつぼやいていたが、突如その耳に聞き覚えのあるというかここまで何度か聞かされた嫌な予感しかしない音色が飛び込んで来た。
「……!あ、あれは!ルクリリ様Love Gunが居ます!」
合流後隣にいたはずだがスモークで姿が見えなくなったルクリリに向かい、ニルギリは大声で呼びかけたが、次にスモークの中から這い出して来たのはダージリンのブラックプリンスであった。
「げほげほげほ…何処にあのミルクタンクが居るですってぇ!?」
ニルギリ同様モロにスモークを吸い込み咽こんでいるダージリンも、同じくスモークでやられた眼を真っ赤に血走らせながら辺りを見回している。
「だ、ダージリン様!?あ…12時方向、距離約500m…ちょうど電気団地の交差点のど真ん中です」
一方ラブの方もやっと現れたブラックプリンスをみとめると、装填手の美衣子と砲手の瑠伽に挨拶がてらの砲撃の指示を下す。
「美衣子、徹甲弾装填!瑠伽、目標は紅茶女のブラックプリンス!距離は約500m、真正面に一発キツいのぶち込むよ!」
ラブのこの指示で俄かにLove Gunのメンバー達は豹変し、眼光鋭く好戦的な表情となる。
「装填完了!」
「目標照準ヨシ!」
美衣子と瑠伽がたて続けに声を上げラブも一つ頷くと即座に砲撃命令を下した。
「よおし!撃て!」
乾いた鋭い砲撃音と火球を残し、500mの距離を一気に飛び抜けた徹甲弾は、見事ダージリンのブラックプリンスの正面装甲に直撃し激しい爆炎を上げた。
それが例え有効打にはならずとも喧嘩を売るには充分な一撃であり、ダージリンの瞳にも怒りの炎が宿り、砲身から発射煙をたなびかせるLove Gunを射殺す様な勢いで睨みつけている。
「いいでしょう…その喧嘩買って差し上げますわ……」
「ダージリン様……」
「ペコ、もう好きにさせましょう。ああなっては言っても聞かないわ」
ダージリンを落ち着かせようとしたペコの肩に手を置きそれを制止させたアッサムは、もう匙を投げたとばかりに首を左右に振る。
「ルクリリ!再び隊を二つに分けます、マチルダ隊八両は二両一組でAP-Girlsを追撃、残りは私と共にLove Gunを仕留めます!」
「ダージリン様!」
「ルクリリ、あなたは私に付いて来なさい」
「…了解致しました……」
一度はダージリンを思い止まらせようとしたルクリリであったが、そのダージリンの目を見た瞬間それ以上は何も言えなくなった。
そして自分も腹を決めてからのルクリリの行動は素早く、やっとスモークから抜け出た全部隊を即編成し直すとダージリンに報告し、自身のマチルダを前衛としてブラックプリンスの前面に押し出しすと、隣に並ぼうとするニルギリのクロムウェルを手を上げ制する様に押し止めた。
「ニルギリ、済まないがお前のクロムウェルは後衛に回ってくれ」
「ですがルクリリ様!」
再びルクリリは手を上げるとニルギリの言葉を制し話を続ける。
「ニルギリはまだ直接ラブ先輩と相対した経験が無い。だが私は中学時代の経験と、多少はその人となりを知っている。ラブ先輩は……あの方は違うんだ…そう、他の誰とも違う。それをその目で見て、肌で感じ取って欲しい。これから先私達はラブ先輩と戦って行くのだから」
「はい……」
「勿論後ろで逃げ回れと言っている訳じゃない、後衛としてダージリン様の背中を守って欲しい」
「はい!」
「では任せたぞ!」
ニルギリのクロムウェルが後衛のポジションに付いたのを確認すると、再び前に向けたルクリリの視線の先には、今も彼女達が動き出すのを待つ様にLove Gunが静止していた。
「ダージリン様!」
「……前進」
ダージリンのその短い一言を合図にルクリリが振り上げた手を打ち下ろすと、聖グロの戦車隊は二手に分かれ動き出す。
本体と別れたマチルダ隊は更に二両編成で四隊に別れAP-Girlsを探し出すべく散って行き、ルクリリのマチルダを前衛とした本隊もLove Gunを討ち取るべく前進を始めた。
その距離が200mを切った辺りでLove Gunもまた180度転進回頭すると、まるで先導する様に前進を始め福浦二丁目交差点に到達した処で国道357号線、通称東京湾岸道路に左折進入して行く。
「いったいラブ先輩はどこまで…まさか!」
一向に戦闘を開始する素振りも見せず前進を続けるLove Gunを追いながら、ルクリリはそのラブの背中を見ているうちに何処に向かっているか気付くのだった。
「まさか…ラブ先輩はまさか八景島に我々を引き摺り込もうとしているのか!?」
八景島、横浜市港湾計画の一環で厚生施設として造られたこの人工島は、水族館やヨットハーバーなどが造られ島全体がレジャー施設となっている。
国道357号線の延伸計画がこの八景島でストップしている現在、島内の終着点は一般車の進入が禁じられている為に実質バス専用のターミナルとなっていた。
前を走行するLove Gunの進路上には八景島に渡る為の柴航路橋があり、ルクリリの勘が正しければ、Love Gunは間も無くその先にある橋に向かうスロープを登って行くはずであった。
ルクリリは無線のマイクを手にすると、背後にいるフラッグ車であるブラックプリンスを駆るダージリンを呼び出した。
「ダージリン様、Love Gunの行き先が解りました……八景島です」
無線に向かいそう言い切ったルクリリの目の前で、予想通りLove Gunはスロープを登り始める。
「ラブ先輩、確かにあそこならアナタの戦い方にうってつけの場所ですね……」
Love Gunを追う聖グロの隊列もスロープを駆け上がると、それをチラリと横目で確認したラブは操縦手の香子に増速を指示、Love Gunは一気に加速し聖グロを引き離し柴航路橋を渡り切ると八景島に突入し島内のトンネルを駆け抜けた。
このトンネルを抜けてしまえば国道357号線の取り敢えずの終着点である行き止まりに突き当たり、Uターン場所の先はネットフェンスで仕切られ道は無い。
だがLove Gunはそんな事はお構い無しにそのまま前進を続け、歩道に乗り上げると勢いそのままに戦車の相手をするには軟過ぎるネットフェンスの間にある鉄製の業務用出入り口の門を薙ぎ倒すと、その先にある斜面を一気に駆け降りて行った。
斜面を降りると現れた舗装路を鮮やかなドリフトで左折、スピードを殺す事無く一部が海上に突き出たジェットコースターの下を潜ると、その先右手にある人工芝のイベントスペースの入り口に車止めの様に植わる三本の細い松を難なくへし折り進入すると、その一番奥まで進みスピンターン気味に180度向きを変えた処で漸くLove Gunは静止した。
それから程無くしてルクリリのマチルダを先頭に、Love Gunの破壊した後を辿りダージリン達も到着し、さして広くはないスペースで目と鼻の先の距離で対峙する。
「この八景島が最後の舞台という事ですか──」
ブラックプリンスのコマンダーキューポラから顔を出し、そう話し掛けたダージリンをラブが手を上げて制すると、Love Gunの各部ハッチを開き搭乗員全員が顔を出す。
何事かと訝しむダージリン達の前で、Love Gunの上に立ち並んだ搭乗員達に向かってラブはリズムを取る様に指を振ると掛け声を上げる。
「せ~の♪」
London Bridge is broken down,Broken down, broken down──
ラブの指揮に合わせ突如可愛い声で有名な童謡を歌い始めるLove Gunの搭乗員の少女達。
呆気に取られるダージリン達の前で最後まで歌い切ると、飛び切りの笑顔で微笑みラブ以外は何事も無かった様に車内に戻って行く。
「ラブ…あなた一体何を…?ロンドン橋…落ちた……あなたまさか!?」
ダージリンの思考が何かに思い当った瞬間、突如背後の島の反対側から聴こえて来る連続した砲撃音と爆発音にダージリンもハッとして振り向いた。
その音の正体は無線越しにラブ達の歌を合図に、Love Gunと聖グロ本隊が渡って来た柴航路橋の陸地側のたもとの両側、ボート置場と松林に先行潜伏していたイエロー・ハーツとブルー・ハーツの二両による柴航路橋に対する砲撃のものであり、その双方十数発の砲撃により柴航路橋は水上部分が完全に崩落し、直下の水路に瓦礫の雨を降らし大量の水柱を発生させていた。
しかし遮蔽物の少ないボート置場から砲撃を敢行していたイエロー・ハーツは、連続する砲撃音に駆け付けて来たマチルダ隊の四両に即座に発見され、集中砲火を浴び始めた。
「まだよ!何としてでも海の公園側の橋も落とす!正面装甲マチルダ隊に向けろ!反撃はいい、砲塔旋回!橋を落とす事に集中!」
普段のお嬢様然とした雰囲気も丁寧な言葉使いもかなぐり捨て、凜々子は矢継ぎ早に指示を出し四両のマチルダからの猛攻を掻い潜り、もう一つの橋を落とす事に執念を燃やす。
受ける砲撃は貫通弾を受けぬ様、微妙に車体をずらし所謂『食事時』と呼ばれる角度を付け弾き、時にはフェイントで躱しながらもう一つの橋を落とすべく砲撃の手も休めない。
「よし!あともう一発…撃て!」
渾身の一撃が橋を直撃し遂に八景島への車両進入路を断つ事に成功した凜々子だが、業を煮やした一両のマチルダの体当たりを受け、フラットスピンに陥った処に残る三両からの砲撃を受けると、砕けた履帯と転輪を撒き散らしながら陸揚げされていたボートに激突し、その衝撃でボートを真っ二つにした処で遂に白旗が揚がりイエロー・ハーツは戦線を離脱した。
「三笠女子学園、Ⅲ号走行不能!」
アウトレットの特設スタンドに、イエロー・ハーツ戦線離脱のコールが響き渡るも観戦客は静まり返りモニターを見つめ一様に硬直している。
どちらかと言えばおっとりとしたお嬢様風の容姿の美少女である凜々子。
だがつい今しがたまでモニター内での大立ち回りを演じて見せた姿はまさに鬼神、観戦客はその姿に圧倒され言葉を失い会場は水を打った様に不気味な静寂に包まれていた。
そして今も、負けて尚眼光鋭く遠方から自分を写すカメラを、射抜こうかとするかの如く睨みつけており凡そ刀折れ力尽きた者の姿には見えない。
「あれが本当の凜々子君の姿か……」
静まり返ったスタンド上に、そう呟いたまほの声が存外大きく聞こえた。
「あ……アレ!」
モニターに釘付けになっていた中で、みほが分割映像の一つに気付き指差しながら声を上げた。
みほに指摘されるのを待ち受けていたかの様にその画面がクローズアップされ、丁度イエロー・ハーツと一緒に柴航路橋を砲撃していたブルー・ハーツが、念の為にと歩行者用の横断橋も破壊して潜伏していた松林から這い出して、凜々子のイエロー・ハーツを倒した四両のマチルダに向け突撃を開始する処であった。
「今度は夏妃君か…彼女の闘争心も只事ではないぞ、私は直接対決したからよく解る。私相手に一対一で全く臆する事無く戦いを挑んで来た、彼女もまた生粋の
まほの言葉を聞きつつ一同は再びモニターを注視しする。
モニターの中、柳眉を逆立て赤い瞳に強い光を宿らせるその美少女は、その容姿からは想像も付かない激しい怒りの咆哮を辺り一帯に轟かせるのであった。
加筆修正を繰り返した結果、聖グロ戦はあと四話分程になってしまいましたw
今週は木曜辺りにもう一本お届け出来るかと思います。