ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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聖グロとのお話は後もう一回。
我ながらストーリーを簡素に纏める能力無さ過ぎです…。


第十五話   好敵手の証しとThe British Grenadiers

 激戦を制した聖グロリアーナ隊長のダージリンの眼前には悪夢のような光景が広がっている。

 どうやらダージリンは破壊され尽くした八景島で、知波単の絹代とクリスマスデートの予定だったらしく、耳聡いラブが気付き茶々を入れまたしてもダージリンをキレさせている。

 暫くしてやっと騒ぎが収まり全ての者が乗り込んだS-LCACのエンジンに火が入り、巨大なファンが回りエアクッションが膨らみ独特の浮遊感が生まれると、滑る様に後退し海上に戻るとあっと言う間に鳥浜にあるアウトレットに辿り着いたのであった。

 

 

「さあ、()()()()は櫻達に任せてくれていいわ。私達はステージに向かいましょう」

 

 

 皆を先導してラブはS-LCACから降り立ったものの、耳に入ったやたら激しいリズムに硬直した。

 

 

「ゲ…!この音ってもしかして……」

 

「ああ、これは愛達ピンク・スラッシュがステージに上がってるわね」

 

 

 ラブの隣を歩いていた砲手の瑠伽が事も無げに言う。

 

 

「ピンク…何ですの?」

 

 

 二人の会話と聴こえて来る激しいリズムにダージリンが疑問を口にする。

 

 

「あ?ああ…私達AP-Girlsって車両毎のバンドも存在してるのよ。それで私達が戻るまで余興で何かやって時間繋ぎするように言ったんだけどねぇ……」

 

 

 そこまで言ったラブは右手で顔を覆って黙り込む。

 

 

「それで?」

 

「…う~ん、それで今そのステージに居るのは愛のピンク・ハーツのメンバーで組んでるバンドなのよ……これがどういう訳かピンク・ハーツの子達って愛を筆頭にスラッシュメタル大好きでね……」

 

「それでピンク・スラッシュ?」

 

「うん……お客さんがドン引きしてなければいいんだけど……」

 

 

 恐る恐るステージまで辿り着いたラブ達が目にした光景は縦ノリ状態の観客と、圧巻のピンク・スラッシュによるステージであった。

 

 

「愛さんがドラム担当……」

 

「うん、あの子のパワー凄いのよ…装填速度はAP-Girlsの中でもダントツの一位だもの……」

 

『エェ!?』

 

 

 驚く聖グロの隊員達だが構わずにラブは続ける。

 

 

「まあそれはいいんだけどさ…あの子小さいでしょ?だからドラムセットに隠れちゃってステージ下から見ると無人でドラムが鳴ってるみたいなのよねぇ……」

 

『……』

 

「いずれにしてもメンバーが揃ったからAP-Girlsのライブを始めるわ。ダージリン達も客席に行って楽しんで頂戴ね」

 

「え、ええありがとう。でも大丈夫?ラブ達だって疲れてるでしょうに無理はしないでね」

 

「は~い、でもその前に両校揃った処でまずは試合後の挨拶をしましょうねぇ♪」

 

「あ、蝶野教官♪」

 

「そうでしたわ、これは私とした事が大事な事を失念していましたわ」

 

「うふふ、今日は私も素晴らしい戦いが見られて審判長を買って出た甲斐があったわ♪」

 

 

 亜美の評価に皆揃って頭を下げると双方全員整列し試合終了後の挨拶をする。

 改めて聖グロの勝利がコールされ両校握手を交わすと、お待ちかねのライブの始まりだ。

 

 

「それではラブ、本当に無理はしないで下さいね」

 

 

 気遣いを見せるダージリンに礼を言うとラブ達もステージに上がりAP-Girlsのライブが始まる。

 デビュー以来CDの売り上げも絶好調の彼女達のライブが、練習試合の後のミニライブの時は無料で聴けるという事もあり大盛況であった。

 本格的な専用アリーナと違いそれ程セットも凝った事は出来ないが、それを補って余りある彼女達の美声が観客たちを魅了した。

 一時間程のミニライブは大盛況のうちに終了、ステージを降りたラブ達を聖グロ戦車隊隊員達の歓呼の声と拍手が迎える。

 

 

「実に素晴らしかったですわ♪」

 

 

 頬をピンクに染めたダージリンが代表してラブを出迎えハグで称賛する。

 

 

「ん~♪ありがとうダージリン♡」

 

「でもせめてお色直ししてからの方が良かったのではなくて?その姿では折角のAP-Girlsの可愛さが勿体無い気がしましたわ」

 

 

 試合終了後の姿そのままにステージに上がったラブ達は汗と煤に塗れ、ステージに上がるアイドルとしては少々艶消しの感があるのは否めずダージリンがいう事も尤もであった。

 

 

「ううん、それは逆よダージリン。これは私達が全力で戦った証だもの、だから私達は練習試合後のライブには、全員この姿で何ら恥じる事無くステージに上がるのよ」

 

 

 ラブの言葉にダージリンはラブ同様汗と煤に塗れた己がタンクジャケットを見下ろすと、襟を正し真っ直ぐにラブに対し頭を下げ、傍らに控えるオレンジペコに指示を出す。

 

 

「ごめんなさい、そうでしたわね。私が間違っていましたわ…ペコ例の物を」

 

「畏まりましたダージリン様」

 

 

 オレンジペコがダージリンの声と共に、恭しく捧げ持って来たのは籐で編まれたバスケット。

聖グロがライバルと認めた者にのみに送るティーセットが収められたバスケットを、宮廷女官の様な優雅な仕草と共にオレンジペコはラブに向かい差し出した。

 

 

「え?いいの?だって私初っ端からあんな酷い手使ったのに……」

 

 

 珍しく気後れした様な表情でラブはおずおずとダージリンに伺う様に言う。

 それを受けたダージリンもやや苦笑しつつ答えた。

 

 

「確かにアレはやってくれたわね、でもいいのよ。イギリス人だって恋愛と戦争には手段を択ばないもの。それよりやっとあなたにもこれを渡す事が出来てホッとしていますわ」

 

「ありがとう…ダージリン……」

 

 

 ラブも目じりに涙を浮かべその宝物をそっと優しく抱きしめる。

 

 

「あ、あのね…私からもみんなに渡す物があるの」

 

「あら、何かしら?」

 

 

 小首を傾げるダージリンの前にAP-Girlsの少女達が、自分達も学校から支給され使用しているシャンプーとコンディショナーのセットを次々と運んでは並べて行く。

 熊本滞在の折に皆に配る事に決めた例の物だ。

 

 

「これは一体?」

 

「うん、厳島(ウチ)のグループで作ってる物なんだけど皆さんにも使って貰おうと思って」

 

「これ…知ってますわ……でもちょっと高校生には手が出ない物よ」

 

 

 渡されたセットを凝視してアッサムは呟く。

 

 

「ラブ、これはさすがに頂けないわ」

 

 

 ダージリンもまたアッサムに続きそう言うが、ラブが熊本での経緯を説明するとやっと納得したのか微笑みながらやっとセットを手にしたのであった。

 

 

「そうでしたの、そういう事でしたら喜んで使わせて頂くわ」

 

「うん♪私達戦車道選手の髪って傷みやすいでしょ?だから是非使用感を聞かせて貰えると嬉しいの、今後の商品開発の重要な参考になるから」

 

「ええ、私達聖グロリアーナ戦車隊選手一同、全面的に協力させて頂きますわ」

 

 

 胸を張って優雅にダージリンが答えると、その場にいた者皆が揃って愉快そうに笑いだす。

 ダージリンもまた一頻り一緒に笑った後にふと右手の人差し指を頬に当て考え込むと、ふいに悪戯っぽい微笑を浮かべ芝居めいた口調で話し始めた。

 

 

「でもこんな頂き物をしてしまうとティーセット位では釣り合いが取れないですわねぇ……」

 

 

 仕草まで芝居めいた様子でダージリンはラブの手を取ると、ラブを屈ませその頬に口づけをした。

 

 

「うふふ♪これで少しは釣り合いが取れたかしら?」

 

 

 その瞬間ぱ~っと顔を輝かせたラブはそのままダージリンを熱烈に抱きしめる。

 

 

「こ、こら!ラブお止めなさい……!あ…ああ、でも何て柔らかくて夢の様な感触……♡」

 

 

 ラブのたわわなアハト・アハトに埋もれたダージリンは一人天国に落ちて行く。

 その様子をグランドスタンドから見ていた観客からは黄色い歓声と羨望の溜め息が漏れ、その中に在ってアンチョビのみが例によってメモを取るのに忙しく手を動かしている。

 

 

「千代美ちゃん……」

 

 

 隣に座る英子ももうそれ以上の言葉が見つからない様だった。

 

 

「次は私達か……」

 

 

 次にAP-Girlsを大洗の市街地で迎え撃つ事になっているみほも、さすがに今日の試合内容に難しい顔になっており、その言葉を聞いた梓も少々顔が青ざめていた。

 

 

「見に行きたいけどさすがに大洗は遠いわよねぇ」

 

 

 すっかり傍観者を決め込んでいる英子は無責任そうに言うが心底残念そうなのも事実、英子ならずとも全国大会奇跡の覇者大洗とラブを知る者であれば何としても見たい屈指の好カードであり、現に英子は手帳を取り出し改めて自分の休みの日程と照らし合わせガックリと肩を落としていた。

 

 

「尤もその日は最初っから仕事で無理なのは分かっちゃいたけどね……」

 

 

 例えその日が休みであったとしても、一度事件が起これば容赦無く予定など吹き飛ぶのが日常。

 悲しき公務員(警察官)英子は溜め息を吐きそっと手帳を閉じるのであった。

 

 

「さて、それでは私達は引き上げると致しましょう」

 

 

 ダージリンの目配せでアッサムは聖グロの隊員達に撤収の指示を出し、それを受けた隊員達は兵員輸送車に乗り込むと整列し出発の時を待つ。

 

 

「うん、それじゃあね。明日は楽しみにしててね、最高のパフォーマンスをして見せるから♪」

 

「ええ、楽しみにしていますわ…でも宜しいのですの?戦車隊全員がライブに無料招待だなんて」

 

「勿論よ、それがAP-Girlsの…ううん、笠女の学校としての方針なんですもの。戦車道の対戦校には感謝の気持ちを込めて私達の歌を聴いて貰う、これは笠女を創るに当って当初から決まっていた事。ステージに上がる私達だけじゃない、関わる全ての生徒にとっても日頃の成果を発表する場だもの、逆に来て貰わないと困っちゃうわ」

 

 

 ラブ達にとっては試合と翌日のライブは同等の存在であり、その両方をこなす事にこそAP-Girls存在意義があり、どちらか片方が欠けても彼女達の活動には意味が無いに等しかった。

 

 

「それでは明日は遠慮無くお邪魔させて頂くわ」

 

「うん!待ってるからね♪」

 

 

 元気良くラブがそう言うとダージリンとアッサムも微笑みを残して立ち去って行く。

 

 

「恋……」

 

「うん、やるよ!」

 

 

 傍らに控えていた愛がタイミングを計っていたかの様にその名を呼ぶと、ラブもまた分かっているとばかりに返事をし、それを合図にAP-Girlsの少女達は一斉に駆け出すとステージのバックヤードに飛び込んで行くのだった。

 

 

「ダージリン様、帰投準備は全て整いました」

 

「ええ、それではまいりましょうか」

 

 

 ダージリンの指示と共に進発する聖グロの隊列は、機銃を取り払いシートを増設したピンクパンサーを先頭に、幌を降ろした隊員達の乗るAECマタドールが続きその後ろにはブラックプリンスを載せたドラゴンワゴンを始め、ダイアモンドTにスキャメル パイオニアなどが続々と続いている。

 先頭にあってステアリングを握るペコと助手席に収まるダージリンに増設シートのアッサムはいつもと何ら表情が変わらぬが、そこに同乗させられているルクリリにローズヒップとニルギリは言い様の無い緊張感でその表情は強張っていた。

 特に突っ走った挙句に大失態をやらかしたローズヒップは、どんなお小言&ペナルティーを喰らうか戦々恐々した面持ちで完全に地蔵と化している。

 粛々と戦車輸送車の隊列が進み始めると、特設スタンド及びその先の沿道に集まった観戦客から聖グロの隊員達に惜しみない拍手が送られ、隊員達も起立すると敬礼を以ってそれに応えていた。

 隊列がアウトレットの会場から出た処でピンクパンサーに乗るアッサムがそれに気付いた。

 

 

「あら、ダージリンあれは?」

 

 

 アッサムの視線の先の沿道沿いにAP-Girls整列しているのが見える。

 ダージリンも目を凝らすと彼女達は何かを身に付けダージリン達の通過を待っている様子。

 

 

Atten Hut!(気をつけ!)Horns Up!(構え!)

 

 

 ラブの鋭い号令と共に、そのラブの横に四人並んだ各車の車長がファイフ(横笛)を構える。

 ドラムメジャー役のラブがホイッスルで合図を出すと、ファイフを担当する車長達がイントロを奏で出し合図を出し終えたラブもまたそれに加わる。

 イントロに続き車長以外の少女達が叩くスネアとテナーとバスドラムがダージリン達の耳を打つ。

 

 

「これは…!」

 

 

 ハッとした表情になったダージリンの耳に届いた誰が創ったかすら知れぬそのメロディーは、その名もThe British Grenadiers、勇猛なる英国擲弾兵を称える行進曲である。

 軽やかなファイフの音色と勇壮なドラムライン、それは勝利を得て凱旋する聖グロを送る為にラブが用意した粋な贈り物であった。

 

 

「全くあの子は…どこまで私を喜ばせる気なのでしょう……」

 

 

 そっと呟きながらも沿道で拍手を送る観戦客に涼やかな表情で敬礼を送りつつ、ダージリンは思わず口元が緩みそうになるのを必死で堪える。

 こうしてここに、ラブ率いるAP-Girlsの初陣となった対聖グロ戦もその幕を閉じた。

 結果だけを見れば黒星発進ではあるがその内容に関しては、それを見守った者達にとって充分インパクトのあるものであり、一同その対策で既に頭の中はフル回転している様である。

 

 

「さて、それじゃあ私も帰るとしましょうか…それにしてもあのお姫様は本当に大したモノよね。あれだけ派手にドンパチやっておいてシーサイドラインには一切被害を出していないんだから。お蔭で私も楽に帰る事が出来そうだわ。しっかし最後までお姫様のエンターティナ―っぷりはハンパないわね、あんなネタまで用意しているんだもの」

 

『……!』

 

 

 立ち上がりつつ笑いながら何でもない事の様に言った英子の言葉に一同ハッとした表情になる。

 もしラブが本当にそこまで考えて作戦展開をしていたとしたら?

 その考えに全員背中に薄ら寒いものを感じずにはいられないのであった。

 

 

「ふむ…一応あの馬鹿(亜美)にも挨拶して帰るかねぇ…?あ、そうそう!ねぇ千代美ちゃん、大学に入って落ち着いてからでもいいから横須賀に遊びに来てよね?高校に入ってから全然来てくれないんだもの、私もう寂しくて寂しくて堪らなかったのよ~?」

 

 

 英子はそう言いながらアンチョビを抱き寄せると、その頬から頤に指をツ~っと這わせた。

 

 

「うひゃあぁぁぁ!」

 

「あぁぁぁぁ!」

 

 

 思わず悲鳴を上げるアンチョビと目をグルグルさせて狼狽えるまほ。

 英子は笑いながら手を上げると独り先にスタンドを降りて亜美のいる審判団本部に向う。

 

 

「……お、オホン!とにかくだ…我々も帰ってラブ対策を練り直さないと大変な事になるぞ……」

 

 

 赤い顔を誤魔化しつつアンチョビの言った言葉だが、やはりそれは事実でありその場に居合わせた者達も今日見せ付けられた現実に、アンチョビの言う通りその対策に頭を抱えるのであった。

 特に次に対戦するみほの大洗は時間も少なく特に深刻な表情をしている。

 

 

「うぅ…でもラブお姉ちゃんは宇宙人過ぎて私も対策の立てようが無いよ……」

 

『だよな……』

 

 

 完全にテンパってしまったみほの言葉に、揃ってそれしか言えないのも情けないと云えば情けないが、今日のラブ達の暴れっぷりを見た直後ではそれもまあ仕方に事なのかもしれない。

 とにかくここでこうしていても仕方が無いとばかりに、皆立ち上がりスタンドから降りかけた処で先頭にいたアンチョビが突然ピタリと立ち止まり危うく階段で将棋倒しになり掛けた。

 

 

「あ、危ないじゃない!アンタ何考えてんのよ!?」

 

 

 ノンナとクラーラにサンドイッチにされたカチューシャが、ノンナの背中に打ち付けた鼻の頭を押えながら原因である先頭のアンチョビを怒鳴り付ける。

 

 

「まあ諸君暫く待ってくれたまえ」

 

「何言って──」

 

「そう言わずにまずアレを見るのだ」

 

 

 アンチョビが顎で指し示す先、審判団本部前で英子と亜美が最初は何やら言い合っている様だったが、段々とその雰囲気が怪しくなって行き終いには亜美が内股でモジモジし始めている。

 

 

「ほうほう、これは今夜ひょっとするとひょっとするかもしれん……」

 

 

 視線は二人に向けたまま、アンチョビの手はまたしてもメモ帳に高速で何か書き付けている。

 

 

「Why?どういう事よ?」

 

「あ!それはね──」

 

 

 大好物な展開にスイッチの入ったみほが目を爛々と輝かせ一同に熊本での経緯を説明すると、それを聞いた者達も一斉に色で濁ったケダモノの視線を英子と亜美に向け始めた。

 

 

「──うぅ…今更何よ英子…ズルいわそんな誘い方!」

 

「いいじゃないよ、別に喧嘩別れした訳じゃなし。お互い忙し過ぎてすれ違ってただけでしょ?だったらいいじゃない、今日はヘリじゃないみたいだし今夜も西住の東京の宿舎だっけ?なら近いんだし今夜はウチに来なさいよ、久し振りに二人だけで()()()()()()じゃない」

 

「……!」

 

 

 英子の言い回しに反応し亜美の顔に瞬時に朱が奔りその頬が染まる。

 

 

「その様子ならイヤじゃないって事でOK?」

 

「…アンタ昔っからそうやってズルいのよ……」

 

「ふふ♪それじゃあそれで決定という事──!」

 

「どうしたのよ英子?」

 

 

 亜美は突然言葉に詰まった英子の様子を訝しむ。

 

 

「…背中に……背中に千代美ちゃんの好奇の視線を感じるわ……」

 

「うぇ!?」

 

「馬鹿!振り返るな!」

 

 

 職業柄勘の鋭い英子が感じ取った通り、スタンド上ではアンチョビが二人の様子をじ~っと見つめており、その周りの者達もギトギトに脂ぎった目でそれに倣って無遠慮にこちらを見ている。

 

 

「ど、どうするのよ!?」

 

「どうするって、とにかく誤魔化すのよ!」

 

「どうやって!?」

 

「い、いつも通りケンカするのよ…うはははは!ザマぁないな亜美!」

 

「…う、うるさいわね英子!おぼえてらっしゃい!」

 

 

 突如小芝居を始めた英子に追従する亜美であったが、二人揃って上げた大声のセリフはものの見事に棒読みで大根役者丸出しだった。

 

 

『うぅ…こんな事で千代美ちゃんを誤魔化せた気は全然しない……』

 

 

 まあ実際の処スタンド上ではアンチョビ始め全員がその二人の様子に生温かい視線を送っており、誰の目から見ても今夜二人がムフフな夜を迎えるであろう事は明らかだった。

 

 

「ふう、これは思わぬ処で良い収穫が得られたなぁ♪」

 

『コイツは~』

 

 

 メモ帳を閉じポケットにしまうアンチョビを全員がジト目で見ているが、本人は全く意に介した様子も無くそのまま話を続ける。

 

 

「さて、今日の処はこれ位にしておくか。出店の撤収もせにゃならんし、マジで帰ってからラブ対策考えんととんでもない目に遭うのが目に見えてるからなぁ」

 

 

 アンチョビがそう言うや全員即座に真剣な表情になり、ラブをどう迎え撃つか考え始めた。

 

 

「オイオイ、ここで突っ立って考えたってどうにもならんだろう?今日はもうサッサと帰って落ち着いて考えた方が得策だぞ~」

 

 

 一同の様子に苦笑しながらアンチョビがそう言うと、皆も揃って苦笑いしつつ頭を掻いたりし、その後は別れの挨拶交わすとお開きとなり、熱く激しい一日もやっと終わりを告げるのだった。

 

 

 




先週末バイクがお亡くなりになって連休の大洗行き諦めたら、
今度は昼休みに気分転換でいじってたレスポールから音が出なくなった…。
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