ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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今回は何となくいつもの面々が登場します。
誰が誰かはまあすぐに解っちゃいますね。

それと舞台にしている地元アピールも抜かりなく。


第六話   記憶と困惑と

病院に向かう車の中で運転中の敷島刑事が不意にこんな事を言って来た。

 

 

「ねぇ千代美ちゃん」

 

「はい、何でしょう?」

 

「私は千代美ちゃんって呼んでるのに私の事は敷島刑事とか敷島さんってさあ…」

 

「……」

 

「千代美ちゃん?」

 

「ええと…え、英子さん?」

 

「ありがと」

 

 

 英子さんはにっこりと微笑むと病院前の交差点を右に舵を取る。

 

 

「あ~、やっぱり昨日よりマスコミの数が増えてるわねぇ…」

 

 

 病院の方を見やれば正門付近は脚立や中継車が並び、通院患者であろう歩行者も迷惑そうにそれを避ける様に歩いているのが見える。

 病院敷地内へは警備員が規制線を張り患者と関係者以外入り込まぬようにしている様だ。

 

 

「千代美ちゃん、用心の為良いと言うまで頭を下げていてくれる?昨日と同じ様に車を裏手の職員用通用口に回すから」

 

「はい」

 

 

 私が耐衝撃姿勢よろしく頭を下げると車は正門前を通り抜け裏手に向かう。

 

 

「もういいわ、さあ行きましょう」

 

 

 昨夜同様に通用口を抜け手術室のある病棟への床の指示ラインを辿る。

 エレベーターに乗り英子さんが階数のパネルにタッチして病院特有のスピードで扉がしまると指定した階に向けエレベーターは上昇を開始した。

 ストレッチャーごと乗れるようになっているエレベーター、こんな処もまた不安感を煽って来る気がしてこの僅かな時間すら心に苦痛を与えて来る。

 

 

 

「やはり手術はまだ終わっていなくてまだまだ時間が掛かるそうなの」

 

「そんな…」

 

 

 手術開始から既に二十時間近く経過している、そして更に時間が掛かるという事がそれだけ恋が負った傷の深さを指し示していた。

 

 

「千代美ちゃん、手術患者の家族用控室をひとつ借りてあります。まずはそこに腰を落ち着けましょう、話はそれからよ」

 

「分かりました英子さん」

 

 

 新しい病院だけあって狭いながらも個室になっている家族控室は設備が整っていた。

 専用のトイレに仮眠も取れる様なソファー、ミニシンクには電気ポットとミニ冷蔵庫も置かれている。

 二人はソファーに並んで腰掛けた。

 

 

「あのね千代美ちゃん、厳島さんなんだけどやはり全身に飛散した金属片を浴びてしまっているの。それらの摘出に時間が掛かっているそうよ。尤も命に係わる重大な物は既に摘出を終え今はそれ以外の部分の処置をしているそうなの」

 

「……」

 

「それとね、これは伺った時に聞いたのだけど彼女ドッグタグをしていたそうで直ぐに血液型が分かり搬送段階で連絡して迅速に輸血準備が出来たらしいわ」

 

「!!」

 

 

 それを聞いた瞬間自分の胸元を両手で抑え込む千代美。

 

 

「私の頃はそんな事しなかったけど今の子はみんなそうなのかしら?」

 

「それは!…そのドッグタグは…前に横須賀で合同練習をした時に…みんなで記念にとドブ板通りに行って作った物なんです!」

 

 

 胸元から自分のドックタグを取り出し指し示す千代美。

 

 

「そうだったの…でもそれが彼女を助ける一助になったのね」

 

 

 千代美の脳裏にあの時の思い出が一気に蘇る。

 初めて見た記念艦三笠と南極観測船しらせ。

 ベース前でかじったアメリカンドックやソフトクリーム。

 ドッグタグと同様にお揃いで買ったダサいスカジャン。

 あの時はみんなが居た。

 ひとつひとつ全てが大事な思い出だ。

 

 

「う、うぅ…ラ、ラブぅ…早く帰って来ておくれよぅぅっ!」

 

 

 今日もまた千代美の目から大粒の涙が零れ落ちる。

 

 

「千代美ちゃんごめんなさい!私の配慮が足りなかったわ」

 

 

 千代美を抱きしめ謝罪する敷島。

 

 

「本当にごめんなさい、昨夜だって一睡もしていないのに本当にごめんなさい」

 

 

 千代美の背中をあやす様に軽く叩きつつ更にこう言う。

 

 

「まだ先は長いから今はここで少しでも休みましょう」

 

 

 どうにか少し落ち着いた千代美は軽く頷くとソファーにその身を預けるのだった。

 

 

 

 

 胸の大きな金髪の少女と長身にショートヘアにそばかすの少女が、アメリカンドッグにかじりついて貪る様に食べている。

 それに対して金髪を編み込んだ少女が自身も二つめのソフトクリームを舐めながら、もっと品良く食べろとたしなめる。

 同じく隣に居たロングの金髪をリボンで纏めた少女は、口元に手のひらを当てて呆れ顔で驚いている。

 そしてそれは私に言っているのかと、えらく小柄な少女がケチャップで口の周りをベタベタにしながら噛み付く。

 その少女の横には長身でロングヘアの黒髪の少女がしゃがみ込んで、ナプキンで小柄な少女の口の周りのケチャップを拭いている。

 それを見やりながらやれやれなどと言いつつ焦げ茶でショートヘア、精悍な顔立ちの少女は三本目のアメリカンドッグを買っている。

 そしてその後ろでは似た様なヘアスタイルで栗色の髪の大人しげな顔立ちの少女が、お姉ちゃんも食べ過ぎだとあわあわしながら抗議の声を上げている。

 

 

 私の隣ではそれを見ながらガードレールに腰掛けた、燃える様な赤いロングヘアの少女がソフトクリームを舐めつつケラケラと指をさしながら笑っている。

 

 

 

 記憶…思い出…夢…。

 

 夢…私は夢を見ているのだろうか?

 

 そんな酷くぼんやりとした感覚の中に身を置いている私の耳に、何かを打ち付ける様な音が

近付いて来るのが聴こえる。

 私は眠っていたのだろうか?あれは夢だったのか?

 少し意識が浮上して来たその時。

 

 

 扉の向こうで近付いて来た音が止まる。

 どうやら足早なヒールの足音であったらしい。

 そして『こちらです』という声の後扉をノックする音がする。

 

 

「どうぞ」

 

 

 英子さんがそれに応えると扉が開き一人の女性が入室して来た。

 私はその女性を見た瞬間驚いて立ち上がってしまった。

 

 

「え!?そんな!?…どう……なんで!?」

 

 

 そして今度は立ち上がった勢いそのままに今度は床にへたり込んでしまった。




高評価を頂いている事に驚き。
お気に入りもどんどん増えてて更に驚き。

それにしてもキリの良いトコで切ると話の尺の長さににばらつきが出ますね。
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