ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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昨日は仕事が立て込んで投稿出来ませんでした。
今日も夕方忙しくなると思うので今のうちに…。

プラウダ編も今回で終わり、そしてお約束のお風呂回です♡


第三十三話   たわわなロシアンルーレット♡

「Rock 'n' roll!」

 

 ステージ上のラブが、自らを鼓舞するように拳を突き上げ声を限りに絶叫する。

 青森港に隣接する青い海公園に築かれた仮設ステージで始まったAP-Girlsのミニライブには、驚くべき事に試合中止後にはもう帰ったと思われた観戦客の殆どが戻って来ていたのであった。

 これはやはり、今人気急上昇中のAP-Girlsのライブが無料で見られるというのが大きいようだ。

 それが例えミニライブであったとしても、既にライブチケットがプラチナチケットと化して中々手に入らなくなって来ており、この無料のミニライブであれば見られる可能性が高く、諦め切れない人達が試合中止後もAP-Girlsが帰ってくればもしかしてと、直ぐに帰らず観戦エリアに留まっていたというのが真相のようである。

 ライブが始まる直前にそれまでの吹雪が嘘のように収まると、小雪舞う中ラブ達は試合が中止となった無念さをそのステージにぶつけるが如く暴れ回っていた。

 

 

「あれだけの目に遭った後なのに凄いわねぇ…やっぱり若さかしら……?」

 

『あははははは……』

 

 

 今回の対戦校であるプラウダの選手と共にセンター特等席に招かれた亜美と審判団であったが、亜美のぼやきのような呟きに、皆揃って引き攣ったように笑うしか出来なかった。

 アンチョビと杏の機転により大成功となったミニライブを終え、ラブ達がステージを降りると待ち構えていたカチューシャとノンナが両頬にキスの雨を降らせ、それがラブにとっては一番のご褒美なのか満足気な笑みを顔いっぱいに浮かべるのであった。

 

 

「うふふ♪二人共ありがとう。でもまだ気が早いわ、明日はもっと凄いわよ!覚悟しててね♡」

 

 

 翌日のライブに向けそう宣言したラブに、今度は両側からいい子いい子するように頭をナデナデするカチューシャとノンナに、ラブはご満悦の表情で甘えている。

 その様子を少し離れた場所でアンチョビ達はニヤニヤしながら眺めていたが、ラブはそれに気付くとアンチョビと杏に向かい両手を広げこちらへ来いとアピールをし、傍に来た二人に同時に熱烈なハグを以って感謝の意を伝えるのであった。

 

 

「コラコラ落ち着けって!しょうがないヤツだなぁ♪」

 

「うひゃあ♪」

 

 

 抱きしめられたわわに翻弄されるアンチョビと杏だが、今日こうしてライブが出来たのは二人の機転があればこそで、ラブとしては功労者の二人に最大限の感謝の意を表さずにはいられなかった。

 

 

「Hey!私達もいるんだけど!?」

 

 

 笑いながらも頬を膨らませ文句を言うケイも含め、皆がライブが出来ない事で悲嘆に暮れていたラブがこうして笑顔になった事で満たされた気持ちになり、達成感で幸せだった。

 

 

「ほんとアンタ達のお蔭ね!実は観戦客が帰ってなかったってのも凄いけどあの機転がなかったらライブが見られなかったんだもの、ホント良くやってくれたわ!」

 

 

 カチューシャからも賛辞が贈られ一同も微笑んでそれに応える。

 

 

「カチューシャ様……」

 

「ええそうね、いい頃合いだわ」

 

 

 カチューシャの名を呼びその後は目配せしたのみのノンナに向かい、そう返したカチューシャはその場に集まっている者達に対して声高らかに宣言をした。

 

 

「さあ!それじゃみんなで温泉入りに行くわよ!」

 

 

 カチューシャの宣言に目を丸くしたのはアンチョビ達だけではなく、亜美を始め審判団の者達もそれぞれ自分の顔を指差し『私も?』といった表情になっているが、それに対しカチューシャは腕を組み鷹揚に頷くと改めて声を上げた。

 

 

「今日は此処にいる()()()()()がいなかったら本当にどうにもならなかったわ!だからせめてみんなで温泉に入って一日の疲れを取るのよ!」

 

 

 大したことをしたつもりの無かったまほもノンナに視線で『いいのか?』と問うてみたが、ノンナも無言で微笑を浮かべ静かに頷きそれを答えとした。

 カチューシャ達に先導され移動した青い海公園からすぐの桟橋には、爆音と共に3機の大型ヘリが積もった雪を吹き散らして降下しつつあった。

 天候も急速に回復しこうしてヘリも飛べる程になっていた事に、朝からの状況を考えると雪に慣れぬ者達は驚きの表情を隠せなかった。

 

 

「うわっ凄い!Mi-26じゃない!」

 

 

 ラブが驚きの声を上げる目の前には、世界最大8枚翼のヘリ、Mi-26がその巨体を誇っている。

 

 

「クラーラがこちらに戻って来る時一緒に届いたのよ。これでウチも機材搬送が楽になるわ!」

 

 

 カチューシャが得意げに胸を張りながらも皆に早く搭乗するよう急き立てる。

 

 

「さ、乗って乗って♪まずは三沢に飛んで銀河の乗員を回収するわよ!そこからは一気に飛んでみんなで温泉を堪能するのよ!」

 

 

 そのカチューシャの説明を聞いた審判団が、思わず一斉にペコリと頭を下げる。

 しかしカチューシャとしては今回の試合で苦労した者達全ての労を労うつもりらしく、救助に参加した笠女の支援車両の搭乗員達にも声が掛けられており、その大所帯を連れこの世界最大の大型ヘリMi-26で一気に移動する気の様だ。

 

 

「でもヘリで行くなんてどんな温泉なの?随分遠そうなんだけど……」

 

「まあ距離もあると云えばあるけどね、この人数ならこの方が楽でいいわ。向かう温泉はね今日の試合会場にも近い酸ヶ湯(すかゆ)温泉よ!」

 

「スカユ……?」

 

「ええ、そうよ。みんなには酸ヶ湯温泉の総ヒバ造りのヒバ千人風呂を体験してもらうわ!」

 

「ヒバ…千人風呂?」

 

「まあ行けば解るわよ」

 

 

 話を切り上げたカチューシャに促され、ラブ達が乗り込んだMi-26は再び爆音と共に青森の空に舞い上がると、一旦三沢に向かい現地で待機していた審判員をピックアップした後に、一気に八甲田の酸ヶ湯温泉目指し編隊を組み飛び行くのだった。

 

 

「うわ!デカ!」

 

 

 酸ヶ湯温泉のヒバ千人風呂を見たラブは思わず驚きの声を上げた。

 千人風呂の名に違わぬその広さに他の者達も口々に驚きの声を漏らしている。

 

 

「ふふん、どうやら驚いた様ね♪」

 

「ええ、これはほんとビックリだわ~」

 

「この酸ヶ湯温泉は日本最初の国民保養温泉地なんですよ」

 

 

 カチューシャと共に広い浴室に入って驚くラブに、ノンナがそう説明を付け加える。

 

 

「ねえラブ…しかもここは混浴なのよ♡」

 

 

 だがノンナは真面目な説明の後に蠱惑的な表情になると背後からそっとラブを抱き、背中に直接形の良いたわわを密着させ悪戯っぽい口調でそんな事言う。

 

 

「えぇぇ~!?」

 

 

 ラブが硬直し大声を出して驚くとカチューシャとノンナがクスクスと笑い出し、ラブも自分が二人にからかわれた事に気付いた。

 

 

「安心なさい、今日は特別にプラウダの名前で貸し切りだから大丈夫よ!」

 

 

 笑いながら種明かしをするカチューシャと、珍しく迫真の演技でおふざけをしてみせたノンナに、ラブは頬を膨らませ文句を言うがその顔は笑っていた。

 

 

「も~!二人ともひどいよ~!」

 

 

 だが一頻り笑った後もノンナがラブを抱き締めたまま腕を解かず、ラブも背中に密着したノンナのたわわから伝わる温もりに意識が集中してしまう。

 

 

「ねえ…処でさノンナ……そのね、背中にこれ以上そうやっていられると、今日の私はちょっとこれ以上理性を保っていられる自信がないんだけど……」

 

 

 実の処今日のラブは、瑠伽の攻めで着いた火が今も身体の奥底でくすぶっており、その火はちょっとした刺激で再び簡単に燃え上がる状態にあったのだ。

 

 

「あら?ラブに蹂躙されるのなら私は本望よ?」

 

 

 事情を知らぬノンナがおふざけの延長で更にラブの中のケダモノを刺激してしまうのだが、ノンナはまだラブがいつもと違う事に気付いていない。

 そう、後遺障害由来の熱は直ぐに下がっていたのだが、違う熱は未だ下がっていないのだった。

 

 

「なんとエロい組み合わせ……」

 

「ちょっとアダルト過ぎて付いて行けない……」

 

「動画撮りたい!せめて写メだけでも!」

 

「あの間に挟まれたい!」

 

 

 周りは好き勝手な事を言っているがラブは実際かなり必死だった。

 

 

「と、とにかくいつまでもこんな処にいないで入りましょ……」

 

 

 ノンナを振り解くように洗い場に向かうラブと、すぐ後ろを追うようにノンナは付いて行く。

 その様子を見ていたAP-Girlsの少女達は、今回ラブが皆と温泉に入る事を躊躇しなかったのは好ましい事と受け止め微笑んで見守っていたが、瑠伽を筆頭にLove Gunのメンバー達は今日の自分達の所業を思い出してラブの暴走を予感しているようだ。

 いつもであればラブに影の如く付き従う愛が少し距離を置いているのは、ラブの発熱時すぐに駆け付けられなかった事と、ピンク・ハーツのメンバー達からその事で説教を喰らいどうやら今は少し拗ねているらしく、いつものと変わらぬ無表情ながら、その解り易さに仲間達は全員生温い視線を送りつつも、いつまでもラブを生殺し状態にしている愛を真剣にシメるかと考え始めていた。

 

 

「ふう……」

 

 

 洗い場で掛け湯をした後にゆっくりとした足取りで湯に浸かったラブは、そこでひとつ大きく息を吐き色々とあり過ぎた今回のプラウダ戦を振り返っていた。

 

 

「いやあ今日はどうなるかと本当にヒヤヒヤしたよ~」

 

「あ、杏♪」

 

 

 一息ついて乳白の湯に浮かぶラブのたわわが薄っすらとピンクに色付き始めた頃、そのラブの元に今日の功労者の一人である杏が明るく笑い話にするような口調と共にやって来た。

 

 

「杏、今日は本当にありがとね♪」

 

「That's right!アンジーにもっと感謝しなさいよね!」

 

 

 現れた杏のすぐ横で、ケイが形もサイズも素晴らしいたわわをたゆんたゆんさせながら、両の腰に手を当て何故かドヤ顔でラブに向かって言い放った。

 

 

「いやいや、わたしゃそんな大した事した訳じゃないよ、おケイ」

 

「うふふ♪ホント感謝してるわ。改めてありがとうね。処でさ、ケイは杏の事アンジーって呼ぶのねぇ。とっても可愛いわ…私もさ、アンジーって呼んでもいいかなぁ?」

 

「ほえ?そりゃ私は構わないけど……」

 

「アンジー♡」

 

「うひゃあ♪」

 

 

 杏がおっけ~した瞬間歓喜の声と共に、ラブが杏を抱き締め黄色い悲鳴が上がる。

 その様子をケイがちょっとムッとした表情で見ているのに気付いたラブは、少し意地の悪い笑みを浮かべながら、次戦の時ケイの為にひと肌脱ぐかと決意したのであった。

 

 

「うふふ……♪」

 

「何だか楽しそうですね」

 

 

 杏を解放しケイに()()した後、サンダース戦の際二人の為に何をしようか想いを巡らせていると、こちらも何処か楽しげに探るような口調でノンナが接近しつつあった。

 

 

「ええ?まあね……」

 

 

 まだナイショと云わんばかりにはぐらかすラブの隣に、するりと滑り込むように座るノンナ。

 二人の見事なたわわが湯に浮かぶ光景に、あっと言う間に周りの視線は集中する。

 高校生でありながらその年齢から逸脱した二人のナイス過ぎる肢体に、気の早い者は既に鼻から赤い物を滴らせており、その刺激の強さを示していた。

 

 

「何をするにしても、決して無理のないようにするのですよ。今日の寒さなどもラブには相当に負担が掛かっているはずですからね」

 

 

 真実は知らずとも事実を言い当ててくるノンナはやはり鋭いと思うラブだが、口ではそんな事を言いつつ上からは見えぬ乳白の湯の中で、穏やかで優しげな表情のままラブの内股の辺りを微妙なタッチで撫でて来るノンナの抜け目なさに半ば呆れていた。

 

 

「う、うん解ってるわよ…私背中流して来るわ……」

 

 

 ノンナの魔手から逃れるように立ち上がり洗い場に向かうラブであったが、いつもなら傍にいるはずの愛が傍におらず、オロオロする姿は如何にラブが愛に依存しているかを表していた。

 

 

「愛……」

 

 

 広い千人風呂に大人数という条件が揃っては直ぐに愛を見付ける事が出来ず、仕方なくラブは自力で背中を洗う事を試みたものの、やはり可動制限のあるラブの肩では思うように行かず苦戦を強いられていたのだが、ここに再びノンナが湯煙の中から湧き出す様に現れた。

 

 

「お困りのようね、私で良ければ流して差し上げましょう」

 

「の、ノンナ!?」

 

 

 気が付けば再びノンナに背後を取られたラブが、狼狽えつつ周りを見回すとネタ拾いに余念のないアンチョビを筆頭に、仲間達が揃ってかぶり付き状態でなりゆきを見守っており、カチューシャまでもが早くやれと言わんばかりに拳を握りしめワクテカでこちらを見ていた。

 

 

「さあラブ、私とあなたの間で遠慮は無用ですよ」

 

「そ、そんな事言われても…あん……♡」

 

 

 抵抗する隙を与えずノンナはラブの背中を泡々にして洗い始め、その合間に何か余計な技を入れているらしく、ラブは時折り身悶えながら色っぽい声を上げている。

 

 

「だ、ダメ…今日は絶対ダメなの……」

 

 

 軽いおふざけの延長を楽しんでいたノンナであったが、ラブの色っぽいハスキーボイスが漏れる度に、段々ノンナ自身もその気になってしまいとうとう奥の手に手を出してしまう。

 

 

「あぁ…!この感触はぁ……!?」

 

 

 一体何処でそんな荒業を覚えて来たのかラブの声ですっかりその気になったノンナは、あろう事か自身のたわわをラブの泡々な背中に押し付け身体を上下させる。

 そのぷるんぷるんでぬるんぬるんな感触に、ラブがそれまで必死に抑えていたものがここに来て遂に決壊してしまった。

 

 

「ノンナ…ノンナが悪いんだからね……私一生懸命我慢してたのに……」

 

 

 いつもののんびりした雰囲気が一変し、素早い身のこなしで振り向いたラブが、今度は攻守交代とでもいったようにノンナの美しい肢体を攻め始めた。

 立ち上がりノンナを引っ張り上げ、そのまま抱き締めると泡々なたわわ同士を重ね合わせるが、その弾力で互いに反発し合いばいんばいんに弾け合っている。

 

 

「あん…ラブも遂にその気になってくれたのですね♡」

 

 

 蕩けた表情のノンナは更にラブに燃料を注入してしまい、いまやラブの表情は完全にサキュバスのそれと化しノンナの全てを貪り尽くさんとしていた。

 ノンナのたわわの弾力を存分に堪能したラブは、背後に回り込むと昼間自分が瑠伽にされたようにノンナの首筋に舌を這わせ、右手はいつも自分がされるようにたわわの先っちょを攻め左手は下腹部に伸び秘湯ならぬ秘境の谷間を目指す。

 

 

「ら、ラブ……?」

 

 

 頭の芯まで蕩けさせられながらも、ここに来てラブの様子がいつもと違う事にノンナも漸く気付いたが、時既に遅く静かに暴走するラブはジワジワとノンナを侵食して行くのだった。

 

 

「あ…ラブ…そこは……す、凄い……そんなつまんじゃ…なんてテクニック……あぁん♡」

 

 

 背も高くスタイルも抜群なラブとノンナの二人が立ったままで絡む姿は艶めかしく、今千人風呂にいる全ての者の耳目はこの二人に集中している。

 

 

「す…凄い……」

 

「で、でもいいの……?」

 

「あぁ…もうダメぇ……」

 

 

 審判団三人娘のひびきとレミと香音は始めて見るラブの生たわわと、その衝撃的な展開に完全に飲み込まれ、暴発するのも既に時間の問題な領域に到達していた。

 

 

「若いんですもの、自分に正直であるべきよ!」

 

 

 鼻息も荒くそう力説する亜美の目は既にケダモノモードに突入していて、凡そ監督指導する立場の人間のものではない。

 

 

「え…?教官?」

 

「あ…目が逝ってる……」

 

 

 しかしこの時既に貸し切りの千人風呂全体がケダモノの巣窟と化していたので、後はもう早い者勝ちで誰が真っ先に行動を起こすかという状況だ。

 

 

「私…私、ラブお姉さまになら何されてもいいわ!」

 

「えぇ!?」

 

「か、香音!?」

 

 

 香音の突然の宣言に戸惑うひびきとレミだが、二人の中でももう押え切れない何かが破裂寸前まで膨れ上がっていて、ちょっとした刺激があれば簡単に弾けそうだった。

 

 

「ラブお姉さま……」

 

「え……?篠川…さん?」

 

 

 ノンナを陥落させ翻弄していたラブの元に現れた香音は、熱っぽい瞳でラブを見つめながら一気にその距離を詰めると思いの丈を口にするとそのたわわに躊躇する事無く飛び込んだ。

 

 

「ラブお姉さま好き!」

 

「ちょ!?篠川さん?ああん♡」

 

 

 恍惚の表情を浮かべラブのたわわに埋もれる香音の姿に、アンチョビ達は新鮮な感動を覚えた。

 

 

「おお!何と直球な!」

 

「人間素直になる事が大事ね!」

 

「なんだかとっても眩しいわ!」

 

 

 口々にさも素晴らしい事のように称えているがやってる事はケダモノの所業であり、結果として皆それを見て辛抱堪らん状態になった者達が一斉にラブに突撃し、あっさりと攻守が逆転していつも通りの展開となってしまっている。

 

 

「え?あ、ちょっと!そんな大人数で!いやん…またそんないきなり大技で…だから先っちょはダメって……うん♡クラーラさんそれが…ロシア仕込なの!?ダメ…ダメそんなあぁ~ん♡」

 

 

 人数が人数な為、激しい突撃の連続にラブは白旗が揚がりっ放しの戦いとなってしまった。

 しかしここまででいつもと大きく違ったのはその突撃にAP-Girlsの姿がなかった事だろう。

 いつもであれば率先してラブに突撃する彼女達が、今日に限って隅の方で固まってまるで静観しているようなのだが、よく見れば彼女達は愛を押さえつけるように取り囲んでいる。

 

 

「いつまで拗ねてる気?」

 

「大体愛は素直じゃねぇんだよ」

 

「そもそもこんな事で拗ねたりするクセに一向にラブ姉の気持ちに応えないとかさぁ……」

 

「見てご覧よ、ラブ姉完全に欲求不満じゃん」

 

「愛、アンタがラブ姉の事いつまでも生殺しにしてるからあんな事になってるって解る?」

 

「私達だってラブ姉の事を想う気持ちは愛に負けるつもりはないよ。ラブ姉が私達の事を心の底から大事にしてくれている事も解ってる。でもラブ姉が愛の事を特別大事にしてる事は、私達全員承知の事だし納得もしてる。それは私達も愛の事を好きだから納得出来るんだ、それなのに肝心の愛がそんな調子じゃみんな気持ちを何処に落ち着けたらいいんだよ?何より一番可哀想なのはラブ姉だよ、最近は特にお前の事大事に扱ってるのに私達が気付かないとでも思ってる?いい加減素直になりなさいよ、私達がラブ姉に悲しい思いさせてどうするのよ?」 

 

 

 最後に鈴鹿が皆の気持ちを代弁する様に意見を纏めると、愛以外の全員が揃って頷きその視線を愛に向ければ愛は俯いたまま拳を握りしめ肩を震わせている。

 

 

「愛……?」

 

「…さい…うるさい……」

 

「うるさいって、愛!」

 

「…私なんかじゃ恋とは釣り合わない……私なんかに恋の想いに応える資格はない…私なんか恋に相応しくない!それは自分が一番よく解ってる!」

 

「あ、おい!愛、何処に行くのよ!?」

 

 

 日頃感情表現に乏しく、どちらかというと眠たげな表情をしている事が多い愛が、最初は呟くような声から最後は怒鳴るような声で珍しく目を吊り上げ怒りの感情を露わにすると、皆の間をすり抜けて足早に脱衣所に向かって立ち去ってしまった。

 

 

「全くしょうがないヤツだな……」

 

「捻くれ過ぎなんだよアイツは!」

 

「それ夏妃には言われたくないかもね」

 

「なんだとぅ!?もういっぺん言ってみやがれ凜々子!」

 

「ハイハイ、もうその辺で止めときなさい」

 

 

 夏妃と凜々子の毎度お馴染みの展開に鈴鹿はめんどくさそうに割って入るが、その鈴鹿もまた確かに素直ではない愛に手を焼いており、その表情はこれ以上はない位のウンザリ顔だ。

 いずれにしてもラブと愛の関係はもう少し時間が必要なようである。

 一方その頃ラブはどうなったかと云えば、結局はいつものように皆のオモチャとなり散々弄ばれた挙句、今はカチューシャとノンナ、更にはクラーラも加わり三人がかりで泡々になりながら髪を洗われ、その泡で余計な事までされているのか時々色っぽい声を上げ周りを余計に刺激していた。

 

 

「ヴィーナス!」

 

「古典ラテン語ではウェヌスよ」

 

「泡姫♡」

 

「うわっ直球!」

 

 

 言いたい放題だがそう言う者達も、今回は人数が人数で事前に配布されていた厳島ブランドのシャンプーセットで泡々になっており、その香りの良さと手触りの良さに酔いしれ互いに洗いっこをしたりして方々でおかしな雰囲気になっていた。

 

 

「何だか私達までお相伴に与る形になってしまったようで悪かったなぁ」

 

 

 結局いつも通りの大騒ぎとなった入浴後、千人風呂から上がり身嗜みを整えた処でまほは仲間達を代表してカチューシャに礼を述べていた。

 

 

「いいのよ、アナタ達の機転がなかったらライブは開催出来なかったんだもの。その礼と考えたらこんなの安過ぎて礼にもならないわよ」

 

 

 カチューシャの好意に改めて頭を下げたまほは、その視線をラブに向けほんの少し声のトーンを落としカチューシャとの距離を詰めると話題を変え話し掛けた。

 

 

「処でだな、ラブ達…AP-Girlsは何か少し揉めていたようだが……」

 

「ええ、そのようね……」

 

 

 そう答えたカチューシャの視線の先では、ラブが服を着るのを愛ではなく瑠伽が手伝っていて彼女達の間に何かがあったのは明らかだが、その内容まではカチューシャ達も知る処ではなかった。

 

 

「私達が口を挟める事か解らないし、例えそれで解決したとしてもそれが彼女達の為になるとも限らないしね。だから頼まれない限りそれをしないのも必要だと私は思うわ」

 

「ああ、そうだな……」

 

 

 カチューシャの言う事も尤もだと思いながらもラブ絡みだとつい気を揉んでしまうのは、やはりまほにとってラブは姉妹同然だからであろう事とカチューシャも良く理解しているので、まほの表情を見てカチューシャも思わず苦笑してしまうのだった。

 

 

「まあある程度時間が必要な事もあるわよ。でも姉妹なら、つい余計なお世話で口を挟んでしまう事もあるんじゃないかしら?」

 

 

 カチューシャの見透かすような笑みに、まほはバツが悪そうに頭を掻きつつも頭を下げた。

 そしてまほもさすがに今すぐとは考えず、折を見て話してみるかと心に決めるのだった。

 様々な想いを乗せたプラウダのMi-26が青森港に戻ると、次戦のサンダース戦に向けそれぞれの学園艦に戻るべく足早に散って行く。

 

 

「Hey!ラブ!佐世保で待ってるわよ!」

 

 

 ケイはそう言い残して二本指の敬礼を投げるとナオミと共に去って行き、他の者達もそれぞれの流儀の挨拶を残して帰って行った。

 

 

「それじゃあ佐世保にも応援に行くからね~♪」

 

「え~?それじゃあ頑張らなきゃだねぇ♪」

 

 

 今はまだそんなやり取りが楽しい時期であろうラブと杏は軽いハグの後、明日のライブが終わるまで青森にいるラブが、手を振りながら杏とみほ達大洗組を見送る。

 まほ達も今日のラブの様子に色々思う処はあったようだが、今日は敢えて何も言わずに立ち去り残るは地元のカチューシャ達と明日のライブに備えるラブ達のみだ。

 

 

「さ、それじゃみんなで夕食にしましょ!」

 

 

 カチューシャが別れの湿っぽさを吹き払うように宣言する。

 笠女の学園艦に戻って何か適当に済ませるつもりだったラブは思わず目を丸くした。

 

 

「せっかく冬の青森に来たんですもの、ニーナ達が腕を振るう機会だって張り切ってるわよ!」

 

「何から何まで申し訳無さ過ぎるわ……」

 

「今更何言ってるの、さあ行くわよ!」

 

 

 カチューシャの先導で再び乗艦したプラウダの学園艦の学食では、ニーナとアリーナを中心とした地元出身の生徒達がいくつも並ぶ大鍋の間を飛び回り大量の魚や野菜を煮込んでいた。

 

 

「何だか凄いわねぇ……」

 

 

 ラブは驚いた表情でその光景を見ているが、カチューシャは満足気に頷いている。

 

 

「これがじゃっぱ汁よ!たっぷりの野菜と鱈のアラを煮込んで作るの、寒い時はこれが一番よ!」

 

「美味しそうね、寒い時はやっぱり鍋物に限るわ♪」

 

 

 プラウダとAP-Girlsが揃ってじゃっぱ汁を囲む、散々な目に遭った今日一日の労を互いに労いながらも更に交流を深めて行く。

 自分達を助ける為に奮戦してくれたプラウダの隊員達を、AP-Girlsのメンバー達も只のライバルなどではなく、自分達AP-Girlsのメンバー同様姉妹のように感じ始めていた。

 

 

「ラブ、ちょっといいかしら?」

 

「ん~?な~にカチューシャ?」

 

「昼間の事よ」

 

 

 カチューシャは怒ったりした素振りは見せず、努めて穏やかに語りかけているようだ。

 ノンナもまた同様の表情で隣りに控えていた。

 

 

「うん……」

 

「何があったかは聞かないわ…でも何かあったのは解っているつもりよ」

 

 

 『さすがだな』ラブは胸の中でそう思いながらもそれは口には出さず、黙ってカチューシャの話に耳を傾けている。

 

 

「大変なのは解るわ…でも自分を大切にするのよ、私達が言いたいのはそれだけよ」

 

「…ありがとう……カチューシャ、ノンナ……」

 

 

 今は二人の気遣いにそう答える事しか出来ない事に、ラブは心苦しさを覚えながらもそのさり気なさに感謝をしつつその日の夜は更けて行った。

 明けて翌日はメインのライブを始め数多くのイベントが用意され、ラブ達は朝から忙しく駆けずり回っていたが気力は充分で笑顔を絶やす事はなかった。

 AP-Girlsのライブ及びイベントは一度として同じ内容で行われる事はなく、対戦校の特徴とその地元の特色を取り入れそれをAP-Girlsのライブの目玉としていた。

 今回はプラウダを構成する重要な要素のロシア民謡や踊り、青森の祭りであるねぷたなどを取り込んだ舞台構成は、来場者達からも高い評価と喝采を浴びていた。

 しかし毎回短期間でそれを準備して演じるのは困難を極めるはずであるが、それを可能にしているのはラブがAP-Girlsの少女達に叩き込んだ厳島流の教えの中で、尋常でないレベルに鍛え上げた集中力による処が大きかった。

 それなくしてAP-Girlsのステージは成り立たず、そしてまたステージで更に研ぎ澄まされた集中力が戦車道にも反映され、彼女達はより強くなって行くのだった。

 

 

「卒業までにはまだ少し間があります、再戦の機会もあるでしょう」

 

 

 全日程を終え出港間際の笠女学園艦を訪れたカチューシャ達。

 ノンナが穏やかな口調でそう言ったが、それを熱望しているのが伝わって来る。

 それは其処にいる者達全てが同様に思っている事で、人間の力ではどうする事も出来ない自然現象が原因とはいえ、試合を全う出来なかった事に対する悔しさは共通の想いであった。

 

 

「ええ、その時は最優先で予定を組ませてもらうわ!」

 

 

 拳を握りしめ宣言するように言うラブの姿に笑いが起こる。

 いつかまた、互いにそう誓い合いながら両校の隊員達が別れの挨拶を交わして行く。

 

 

「これを持って行くのよ!佐世保までの道中食べながら行くといいわ!」

 

「あ!これって♪」

 

 

 目を輝かせたラブの前にはカチューシャ達が運び込んだ箱が並んでいた。

 

 

「ええそうよ、シャルロートカよ!隊員達と人海戦術で用意したわ!」

 

「ありがとうカチューシャ!」

 

 

 初日に御馳走になってからすっかりお気に入りになっていた、林檎を使ったロシアのケーキを前に一気にテンションが上がったラブは、カチューシャを抱き締めその場でグルグル回り出した。

 

 

「うわわ!やめなさいってば!」

 

 

 そうは言いながらもカチューシャの顔は笑っている。

 

 

До свидания(さようなら) ()()()()

 

До встречи(また会いましょう) ()()()()

 

Пока(またね) ()()()()()()()()()()()♪」

 

 

 何時の間に覚えて来たのかロシア語の気さくな挨拶で返したラブに、ノンナとクラーラの二人は驚きに目を丸くしていた。

 

 

()()ってアンタ達やっぱり!?」

 

Что?(な~に?)

 

 

 三人の会話にあれはやはり夢ではなかったと声を上げたカチューシャであったが、その三人は人の悪い笑顔を浮かべると揃ってロシア語ですっとぼける。

 そして再び揃って笑い声を上げ別れの時間がやって来た。

 小雪舞う桟橋から離岸して行く笠女学園艦を見送るカチューシャ達の前で、腹に響く汽笛を鳴らし別れの挨拶を交わす両校の学園艦。

 やがて純白の学園艦は鈍色の陸奥湾に融け込みながら静々と遠ざかって行く。

 そして津軽海峡を経て太平洋に躍り出ればあらゆる航路記録を塗り替えながら、一路佐世保をめざし一気に南下して行くのであろう。

 待ち受ける最大勢力サンダースに対しラブは如何なる策を以って挑むのか?

 ラブと愛の微妙な関係に果してこの航海で進展はあるのか?

 様々な想いを乗せ白亜の巨艦は北の荒海に漕ぎ出して行く。

 

 

 




決着の付かなかったプラウダとの再戦をどうするか?
我ながら凄い仕事増やした感がいっぱいです……。

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