ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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恋のお母さん登場。

まあ…ありがちな展開です。


第七話   mother

 ラブが、恋が居る…今、私の目の前に前に恋が居る。

 

 

「ちょ、千代美ちゃんしっかり!」

 

「お嬢さん大丈夫ですか?」

 

 

 ラブが…いや違う!ラブによく似た女性が私に歩み寄り手を差し伸べて来る。

 その手を借り立ち上がった私と英子さんに深々と頭を下げこう言った。

 

 

「申し遅れました、私が恋の母、正確には伯母の厳島亜梨亜(いつくしまありあ)と申します。この度は仕事とはいえ私が外地におりましたので、大変なお手間をお掛けいたしました」

 

「…伯母…様?」

 

「はい、私はあの子が幼き頃に他界した生みの親、厳島麻梨亜(いつくしままりあ)の双子の姉、厳島亜梨亜と申します。見ての通りよく似ているので驚かせてしまったようですね、申し訳ございませんでした」

 

 

 そう言うと再び深々と頭を下げる亜梨亜。

 

 

「これまで姪として恋を育ててまいりましたが、私の事業がこれ以上忙しくなる前にとこの春に正式に恋を養女として迎え入れましたので」

 

「そういう事情でしたか、立ち話もなんですからこちにお掛けになって下さい」

 

 

 英子さんが亜梨亜さんにソファーを進める。

 それにしても驚いた、似ているなんてもんじゃなかった。

 生き写しってこういう事を言うんだと思う。

 でもお母さんの双子のお姉さんという事ならそれも納得だ。

 それにしても今のラブだってとても美人だが、きっとラブが大人になったら亜梨亜さんみたいな美しい素敵な女性になるのだと考えたらまたちょっとドキドキした。

 

 

「あなたが安斎さん、安斎千代美さんでいらっしゃいますね?」

 

「ハ、ハイ!私が安斎千代美です!」

 

「千代美さん、千代美さんと御呼びしても宜しいかしら?」

 

「か、構いません」

 

「ありがとうございます」

 

 

 そう言うと私に向かい亜梨亜さんは深々と三つ指を付く様な形で頭を下げこう続けた。

 

 

「この度は娘の恋の為奔走して頂いたとの事、恋になり代わり礼を申し上げさせて頂きます。千代美さんのお働きが無ければ恋はその場で命を落としていた事でしょう。このご恩は親子揃って生涯忘れません、本当にありがとうございました」

 

 

 そして再び頭を下げる亜梨亜。

 

 

「そんな!どうかお手をお上げ下さい、私は友達として当然の事をしただけです」

 

「恋はとても幸せな子なのですね、こんなにしっかりしたお嬢さんが友人に居て」

 

「ええ、私も昨日から一緒に居て、この年齢でこれ程の子はそうは居ないと思いました」

 

「ちょ!英子さんまで止めて下さい!」

 

 

 英子さんの言葉に思わず私は狼狽えて声を上げてしまう。

 

 

「あら?本当の事よ、大の大人でもあなた程の思考と行動は簡単には出来ないもの」

 

「何とかしなきゃと思って突っ走っただけなんです…」

 

 

 その後千代美と英子はこれまでの経緯を途中売店で購入して来た軽食を取りつつ、順を追って亜梨亜に説明する。

 そしてそれが如何にタイトロープオペレーションであったか改めて痛感するのであった。

 

 

「…そうでしたか、千代美さんには改めて感謝しなければなりませんね」

 

「伯母様、どうかもうこれ以上は…」

 

 

 そんなやり取りがあって暫くして、遂に恋の手術が終了したとの知らせが来る。

 時間は既に手術開始から二十五時間が経過していた。

 

 

 手術室の前に行くとラブを横たえた寝台が搬出されて来る処だった。

 そしてそのままICUに入るのだという。

 ちらりと見えたラブの姿…。

 包帯にネットにテープに全身を覆われている様だった。

 酸素吸入、点滴や医療機器が繋がれた痛々しいその姿。

 そしてどう見てもあの美しい深紅の長い髪は無残に切り取られている。

 

 

「く、うぅ……」

 

 

 横に居た英子さんが私の肩を抱き寄せてくれる。

 

 

「厳島恋さんのご家族の方は?」

 

「はい、私です」

 

 

 手術室から出て来た看護師さんからの問い掛けに亜梨亜さんが応える。

 

 

「執刀医からの説明がありますのでこちらにお越し下さい」

 

「それでは我々は先程の控室に行っておりますので」

 

 

 英子さんはそう言うと私の手を引き手術室を後にした。

 控室に戻った私達は暫く無言で再びソファーに並んで腰掛ける。

 そしてその沈黙を破る様に英子さんが重い口を開く。

 

 

「ねえ、千代美ちゃん」

 

「はい、何でしょう英子さん」

 

「明日以降の事なんだけどね、陸自の処理が終わらない事にはどうにもならないけど、明日からは私も捜査に戻らなければならないの。それに千代美ちゃんも捜査協力という事にしても、そういつまでも学校を休めないでしょ?」

 

「はい、夏の全国大会も目前ですし…」

 

「それでね、今夜はもう一晩私の部屋で過ごすとしても明日には一度戻るべきだと思うの。あなたのお母様も心配しているでしょうしね」

 

「はい…私もそうするべきだと思います」

 

 

 そう、私もいつまでもここに居られないのは事実だった。

 期末試験、中学生活最後の夏の全国大会。

 今年こそ、今年こそ黒森峰の西住を持てる全力で叩き潰す!

 その為に隊長としてやらねばならぬ事は山ほどあるのだ。

 そしてその先にある未来の事。

 進路…夏の大会が終わったら答えを出さねばならない。

 時間、残された時間はもうあまり無いのだ。

 

 

 

 進路…未来…時間……ラブの未来はどうなってしまうのだろう……。

 

 

 

 そんな事に思いを巡らせていると、控室に亜梨亜さんが戻って来た。

 

 

「大分お待たせしてしまいました。ドクターからの状況説明と、今後の治療方針の説明に時間が掛かりましたので」

 

「それでそラブの…あ!ごめんなさい!私達仲間内では恋さんの事をそう呼んでいたので…」

 

「構いませんよ、あの子もそう呼ばれるのを喜んでいましたから」

 

「そ、そうですか。それでラブの容体はどうなんでしょう?」

 

「まず目の前にある命の危機は脱したそうです、当然予断を許さぬ状況ではありますが」

 

 

 それを聞いた途端全身から力が抜けてその場にへたり込みそうになったがどうにか堪える。

 

 

「怪我に関しては何分状況が状況なので詳しくは控えさせて頂きますが、ドクターのお話しでは一つ一つの小さな事が恋の命を救ったそうです」

 

 

 亜梨亜さんが聞いた話を纏めると、試合用のパンツァージャケットにミニスカートではなく作業用の難燃性のツナギを着ていた事、装填手用のグローブをしていた事、そういった小さな積み重ねが恋の命の細い糸を断ち切る事無く繋ぎとめたのだという。

 

 

「それに何より千代美さん、あなたの的確で迅速な通報が一番大きかったわ。先程伺った経緯をお話ししたら、そんな事が出来る中学生が居るのかとドクターも大変驚いていましたよ」

 

 

 そう言った亜梨亜さんが私の横に座り、私を抱きしめた。

 

 

「ありがとう…本当にありがとう千代美さん!あなたの、あなたのお蔭で娘の命は失われずに済みました!どれだけ感謝の言葉を言っても足りません、本当に…本当に!」

 

 

 亜梨亜さんの頬を涙が伝うのが分かる。

 英子さんも口元を手で覆い顔を少し背けて居る。

 

 

「わ、わたし、私…役に立てたんだ…ラブの役に立てたんだ!」

 

「えぇ…ええ!」

 

 

 もう何度目か解らない涙がまた私の目から溢れ出したのだった。

 

 

 




ここまでで思い付いた設定を差し挟みつつ来たら、
前提になる話が既に当初予定の倍近くまで長くなってしまいました。

でも当初のままだと話が相当スカスカだったと思います。
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