それにしても今回のタイトルは過去一番ヒドイ……。
そしてラブの奇策を考えるのはホント大変です。
紺碧の海を背景に美しい歌声が海岸に響き渡る。
輝く海には不釣り合いな5両の無骨な戦車が海岸に横一列に並び、その戦車をステージに見立てたように車上には25人の美少女が立ち並び、美しいその歌声はその口から生まれ出ていた。
隊長であるラブの指揮で海に纏わる様々な曲を、アカペラのメドレーで時にアドリブによるソロのアレンジなども加え次々と歌うAP-Girls。
中継のモニターの方も、試合中であるにも拘らず今は戦車上で歌い続けるAP-Girlsの姿を流し続けている。
「歌ってる……今は試合中よね?」
「ラブ達が試合中に歌うのはよくある事ですよ」
「でも試合中にラブお姉ちゃんが歌う時は怖い時だよ……」
メグミの疑問に答えたまほと、それに続き既にその洗礼を受けているみほが言った事の意味を今ひとつ掴み兼ねたメグミが首を捻るが、そこにダージリンも説明を加えた。
「ああしてあの子達が試合中に歌う時は、何かを仕掛ける前触れと思えばよい事ですわ」
澄ました様子でそう言うダージリンであったが、みほ同様こっ酷くやられているのでその表情は、やはりどこか冴えない。
「ライブなどの時にも感じる事が多いのですが、歌っている時の彼女達は一種のトランス状態とでも呼べばいいでしょうか……歌う事で強烈な自己暗示を掛けているような気がします」
務めて冷静に語るノンナであるがその声には何処か、何か危惧するような色合いが滲んでおり、ラブとAP-Girlsが発揮する常軌を逸した集中力に対する漠然とした不安感があるのだろう。
「そうね…あの意識を集中してシンクロした時の彼女達の動きは、どこか並列化したコンピューターのように感じる事がありますわ。彼女達にとってはあの歌が並列化の為のデバイスといった処かしら?いずれにしてもあの状態の彼女達が手が付けられない強さになるのは確かですね」
ノンナの後を受けてアッサムがそう続けたが、やはりその声に含まれるニュアンスはノンナと同質のものであり、それは皆に共通するラブに対する想いの表れだろうか。
言葉として表に現れる事はないが、言外に含まれる彼女達のラブに対する想いをメグミも感じ取り、如何にラブが仲間達から愛され慕われる存在であるかを改めて知るのであった。
「歌…?ラブ達が歌ってるっ……!?」
残存部隊を再編し小学校の校庭を進発して暫く、もう隊を分散させる事無く隊列を組み索敵を続けていたケイの耳に、海岸方向から風に乗ってラブ達の歌声が届いた。
「全軍停止!先頭車、徒歩で斥候を出しなさい!」
『了解!』
隊列の先頭にいたシャーマンから一名の乗員が飛び降りると、戸建て住宅の間を用心深い動作ながらも素早い身のこなしで声のする方へと走り去って行った。
そして程無くして海岸近くの物陰からAP-Girlsを発見した斥候役を務める少女は、その試合中にありうべかざる光景を、思わず二度見した後血相を変えてケイの下へと駆け戻った。
「た、隊長!AP-Girls発見しました!さ、最初に揚陸した海岸に綺麗に一列横隊でⅢ号を並べて…全員その上に並んで歌ってます!」
「なんですってぇ!?」
息せき切って駆け戻った隊員からの報告に、思わずケイも牙を剥き声を荒げてしまった。
「ご、ごめんなさい!」
「あ…ゴメンあなたは悪くないわ、偵察任務ご苦労だったわね!」
偵察から戻った隊員の前で大声を出してしまい、それで涙目になってしまった一年生隊員に向かいケイは慌ててフォローをするのであった。
「そう…そこを最終決戦の舞台に選んだって事なのね……いいわ、乗ってやるわよ!」
最後は再び声を大にすると、ケイは大きく目を見開き拳を強く握り自分の決意を表す。
ラブとAP-Girlsの驚異的なまでの暴れっぷりに部隊の半数を失い、中でもナオミのファイアフライとアリサのM4A1を失った事はそれだけでも充分ケイのプライドはへし折っていたのだが、それだけやった上で更に挑発的な態度で自分を待ち受けるラブにケイも完全に沸騰している。
「あら?やっと来たのね、待ってたわ♪」
ちょうど一曲歌い終わった処に雪崩れ込んで来たサンダースの戦車隊は、ここまでに受けた攻撃によりどの車両もボコボコにされていて、それはAP-Girlsと比べれば敗色濃厚に見えるのはどちらかと聞かれれば、十人が十人サンダースと答えるであろう程のやられっぷりであった。
「ハンッ!海を背に背水の陣のつもり!?」
「ん?ああコレ?この方が中継映像が映えるからに決まってるじゃな~い♪」
「相変わらずふっざけてるわね!今日こそヒイヒイ泣かせてやるから覚悟なさい!」
「え~?ヒイヒイ笑わせてくれるって~?そんな身体張らなくていいのに~♪」
「Shut up!」
ヘラヘラとやっすい挑発を連発され解ってるのに乗ってしまうケイの姿に、会場にいる者達が一斉に受けて口々に好き勝手な事を言い始めた。
「いやあ、この構図久しぶりに見たなぁ」
「ほんっとケイって乗せられ易いわよね!」
「あの減らず口には絶対勝てないの解ってるんだから止めときゃいいのになぁ」
「お馬鹿さんとしか言いようがありませんわ」
「またそんな容赦ない事を……」
「え?え?一体何を言ってるのよ?」
事情を知らないメグミはポカンとした顔でキョロキョロしてしまう。
「あっはっは!私ら全員舌戦でラブに勝てた事一度もありませんから♪」
「ええ!?ナニソレ!?」
「自分がやられると腹立つけど、人がやられてるのはすっごい面白いのよね~♪」
呆気に取られるメグミを余所に揃いも揃って言いたい放題だ。
だがそんな盛り上がりなど関係無しに、試合の方もいよいよ最終局面に突入する。
「言ってなさい!もうあなた達にはロクに弾が残ってないのは解ってるんですからね!」
直接戦いながらその辺りを見切っているのはさすがではある。
だがそれだけではラブ相手には決定的なアドバンテージににならない事が、やっすい挑発に乗ってしまった今のケイには見えていないのかもしれない。
「……まあいいわ、忘れてるなら思い出させてあげる」
ほんの一瞬ガッカリした様な表情を見せたラブだが果たしてそれにケイが気付いたかどうか。
そのラブが指をひとつ鳴らすとAP-Girlsの少女達は粛々と各車に乗り込んで行き、最後にラブが乗機Love Gunのコマンダーキューポラに収まると、その美しさと圧倒的な迫力に見る者は飲み込まれそうになりそれに抗うだけでも大きく気力を削がれそうであった。
ケイもまた目を吊り上げラブを睨み付けるが、ラブは不敵な笑みを浮かべるだけだ。
そして色っぽい視線をケイに向けたまま、腕組みから頤に右手の指先を当て何かを考える表情を見せた後、妖艶な笑みを見せケイに対し再び挑発のセリフを口にした。
「
そう言うと頤に当てていた指先をケイに向け、クイッと招く仕草を入れるのも忘れなかった。
「絶対泣かす!Go ahead!」
完全にブチ切れたケイが突撃を指示する。
その様子にラブはクスリと笑うといつもの号令をAP-Girlsに与えるのだった。
「AP-Girls!Get ready! Get set!」
『
弾かれたように動き出した5両のⅢ号J型が、瞬く間にサンダースの隊列に肉薄するとその間に割って入りそのまま一気に突き抜け、全車がドリフトターンでピタリとケイ達の背後を取ると、同時砲撃でフラッグ車の背後を固めていたシャーマンの機関部を撃ち抜いた。
「サンダース大付属、シャーマン走行不能!」
「なっ……!」
電光の早業にケイは顔色を変え言葉を失う。
「Kei…Strike one……」
口角を釣り上げ見る者を凍り付かせるような美しい笑みを浮かべるラブ。
一方のケイはと見れば肩が小刻みに震え、コマンダーキューポラの縁を掴む手は指先が白くなる程力が入っている。
「あ~あ~、しょうがないなアイツは…昔散々やられただろうに……」
「アレは完全に忘れてるな……」
「しかもいきなりあっさりやられて……」
ドツボにはまり過ぎたケイに対し尽く容赦がない。
「ね、ねぇ…あなた達一応友達よね?なんでそんなに容赦がないの?」
あまりの言われようにメグミの困惑は止まらない。
「昔からお互いこんなもんですよ…それにこの方が面白いじゃないですか」
まほの口から飛び出たまさかの言葉にメグミはぎょっとした表情になり、周りで聞いていた者達も馬鹿受けして手を叩きながらケラケラと笑っている。
「何なのこの子達……」
短くそう呟いたメグミは来年の春には目の前の怪獣達が大学に進み、確実に選抜チームに招聘されるであろう事実に気付き一瞬目の前が真っ暗になった。
来年はとんでもない事になる、そう考えたメグミだが目の前の怪獣達を向こうに回し更にその上を行くラブという少女が、不幸な事故が原因で共に同じ道を進めない事に思い至り、今ケイと全力でぶつかる彼女の胸の内を想うとなんともいたたまれない気持ちになるのであった。
「うん?どうかしましたか?」
「え?ああ、何でもないわ……」
「そうですか……」
ちょっとした表情の変化に気付いたらしいまほが声を掛けたが、そこはメグミも受け流した。
『そうか…この子達も残された時間が解ってるから敢えてこうして騒ぐのか……』
何となく自分の中でそう結論付けたメグミは再び視線をモニターに向ける。
戦闘を再開して早々に1両撃破されたサンダースの戦力は残り9両、だがAP-Girls側も予想される残弾数は各車一桁まで減っており、まだ現段階で勝敗の天秤がどちらに傾くかは解らない。
だがメンタル面ではAP-Girls、いやこの場合はラブが確実にこの試合を支配しているのは明らかであり、それに関してはケイも自覚しているが故にそれに抗うべくラブに噛み付くのだろう。
「あのピンポイント砲撃…また進化してるね……もうどんな体勢からでも撃てるんじゃないかな?」
まだこれから何回かは対戦する機会があるみほは、ちょっと困った様な顔で笑う。
「あら?来年度は前年全国大会覇者の大洗相手に全力で挑んで来るのではなくて?良かったわねみほさん、あなたはまだ一年ラブとの戦いを楽しめるんですから♪」
「うぇぇ…ダージリンさぁん……」
ここぞとばかりにコロコロと笑いながら黒い事を言うダージリンに、みほはゲンナリとした顔で力なく抗議の声を上げたがそんなものが通用する女でない事はみほ解っており、その視線を同じく来年は隊長として戦うルクリリとエリカに向けたのだが、二人揃って同時に巻き込むなとばかりに目を逸らし、みほはガックリと項垂れ呪詛の言葉を吐き出した。
「うぅ…この薄情者ぉぉ……」
そのみほのあまりに情けない声と姿に堪え切れず皆一斉に笑い声を上げた。
「ほらほら、ラブ達が動き始めましたよ。フィナーレも近いですわ、しっかりと見届けましょう」
仕切り直しの挨拶も済んだとばかりにAP-Girlsの5両が得意の激しい機動で走り始め、サンダース側もケイのフラッグ車を軸に守勢を固めつつも反撃のチャンスを窺っている。
自発的に配下の戦車に周りを固められてしまったケイは不満を抱えているようではあるが、フラッグ車が倒されればそこで全てが終わるフラッグ戦においてこの状況では仕方ないだろう。
半数以下に撃ち減らされたとはいえ、まだ総数と火力ではAP-Girls上回るサンダースは普通に考えれば無理をする必要はない訳だが、相手が相手だけにこれまでの経緯を考えるとやる事が過剰になるのもやむを得ない事かもしれない。
「なんだか古代ギリシアの
高速機動で走り回るLove Gun上から、サンダースが組んだ極端な密集隊形を見たラブは呆れたような感心したような何とも形容し難い表情でそれを表した。
「あの状態じゃ機動力はないに等しいから、どっちかというとマジノ線の要塞じゃない?」
開いたサイドハッチから様子を窺っていた瑠伽がそのサンダースの様を表してそう言ったが、それに対してラブも苦笑しながらサラッと辛辣な事を言う。
「それじゃあ攻略するのにカール自走臼砲が必要になるし、第一マジノ女学院に失礼よ」
確かにフラッグ車を取り囲み守りを固めれば、いくらAP-Girlsであってもフラッグ車に対し手を出す事は出来ないが、同時にほぼ動く事が出来ないサンダース側は砲を左右に振るのみで高速機動するAP-Girlsを追尾しきれず発砲もままならない状況に陥っていた。
もしこの状況が長引くと、下手をすればサンダース側は無気力試合として失格判定を下される可能性もあり、これは実にリスクの高い選択である事に果たしてケイ達が気付いているのかどうか。
「状況的にはそれもありだけどね~」
そう言うラブのは明らかにつまらなそうな顔をしていたが、勝ちを取りに行くという観点からはそれを否定する気はなく、それがケイの意志で行なわれていない事も解っているようだった。
「まあケイも人望があって部下に慕われているのは良い事だわ♪」
今度は一転ニッコリと笑うと、厚い壁の内側で右に左に走り回るLove Gun上のラブを目で追うケイに向かい、ひらひらと手を振ると投げキスを放ってやる。
付き合の長さからラブの心中が分かるのか、ケイはキーッと牙を剥いた後今度はお返しにラブに向かってあかんべを返すのであった。
「で~?どうするのよ?このままじゃ埒が明かないわ」
「まあ竹の子の皮むきして中から青い瞳のかぐや姫を引っ張り出さなきゃねぇ……」
「かぐや姫が入ってるのは青竹じゃね?」
「細かいなぁ……」
実際このままでは埒が明かない事はラブも承知しているが、如何せん残弾の少なさと照らし合わせ攻め方も工夫が必要で、一発たりとも無駄弾は許されない状況にさすがのラブも難しい顔になる。
「これは竹の子の皮むきって言うよりスイカ割りって感じねぇ…よし、まず前衛の2両をイエローとブラックで履帯切り行くよ!後退して陣形組み直すしかない状況に押し込んでやれ!後退の瞬間にLove Gunが突出、相手が一瞬判断を迷った瞬間にピンクとブルーが力技で切り崩せ!行け!でっかいスイカを真っ二つにしてやりな!」
恐ろしい程に美しく挑発的な笑みでラブが命を下すと、AP-Girlsの少女達はそれこそ魔法を掛けられたように更に激しい機動でサンダースに襲い掛かる。
それまで別々に暴れていたイエロー・ハーツとブラック・ハーツの2両は、側面からそれぞれ別の軌道でサンダースの正面に回り込むと瞬間的に横並びになり同時に発砲し、その次の瞬間には再びそれぞれ別の方向に駆け抜けて行った。
2両が走り去り爆炎が晴れると、前衛としてフラッグ車の前面を固めていた2両のシャーマンは両車とも左の履帯を見事に断ち切られていた。
「チッ!全車後退!陣形を組み直せ!」
ケイもまた即座に状況を読みとり指示を出し、部隊もまた迅速にそれに従い動き出した。
だが履帯を切られ擱座した2両から離れ前面に僅かな空間が出来た瞬間、ここしかないという絶妙なタイミングで、Love Gunがラブの裂帛の気合いと共にケイの乗るフラッグ車目掛け切り込んだ。
「
「ラブ!?このっ!」
完全に本気にしか見えない奇襲に釣られたケイが思わず反応してしまい、砲手にLove Gunに対しての砲撃を命令し砲がLove Gunを指向すべく旋回を始めたその時、Love Gunとは反対側に出来た隙間から、ケイのシャーマン目掛けピンク・ハーツとブルー・ハーツの2両が急襲し、極至近距離からの同時砲撃を敢行しようとした。
「しまっ……!」
「隊長ダメです!!」
不意を突かれたケイは万事休すな悲鳴を上げかけたが、自分が弾着による衝撃に襲われる事はなく変わりに目の前に飛び込んで来た影が盛大に爆炎を上げていた。
「サンダース大付属、シャーマン走行不能!」
「あ、あなた達!」
撃破されたシャーマンは隊列を組んだ中でも後方に位置し、一時的に戦力にならずに遊兵と化していた1両であったが、それ故にある程度全体を見渡す事が出来ていたので、この車両の車長は咄嗟の判断で隊列を離れピンク・ハーツとブルー・ハーツとケイのフラッグ車の間に割って入り、見事フラッグ車の護衛の任務を果たす事が出来たのだった。
だがこれで12両が撃破され更に2両が履帯を切られ擱座しているので、その戦力差は遂に6対5となり残念ながら個のスキルとスペックでは、AP-Girlsの方がサンダースより数枚は上である為勝敗の行方は俄然ラブ率いるAP-Girlsに傾きつつあった。
「あっら~、えらい慕われようねぇ……なんかちょっと感動しちゃったわぁ」
香子の瞬時の見切りで急速に後退するLove Gun上のラブは、奇襲の失敗に顔色を変える事もなくのんきな事を言っているが、頭の中では次の手を求め視線は鋭く左右に奔っていた。
「これが厳島なのね…それにしてもケイはちょっと相手の手に乗り過ぎかな……?真っ直ぐなのがあの子の良いとこだけど、それも場合によってはアダになるわね。今も後輩の咄嗟の判断がなければ、完全に喰われて終わってた場面よ」
その瞬間の攻防に呼吸を忘れていたのかメグミは大きくふうっと息を吐くと、後輩であるケイに対するやや厳しめの寸評を口にしたが、それはケイを責める類のものではない事はその声の雰囲気から周りの者へも伝わっていた。
そこには来年度自分の後輩であるケイが、期待の新人として入って来るであろう事へのメグミの想いが込められていた。
「それにしてもよ…あの厳島さんって何時もあんな風に自分の身を晒すような戦い方をするの?」
「いや……まあ確かに元々目立ちたがりですけど今回は特に目立つように意図的に動いてますね。やっぱり自分を餌にして、AP-Girlsがどの程度動けるか試すのが狙いなんだと思います」
「でもな…いつの間にか目立って中心にいるってやっぱ天性っつ~か筋金入りだよな~」
メグミの疑問に姉妹同然であるまほがそう答えたが、その後即アンチョビが付け加えた事に全員一斉に笑う辺りにラブが生まれついての
「さあラブどうするよ?残弾も残り数発なはずだ、どんな手で私達を驚かせるつもりなんだ?」
笑った勢いそのままに、アンチョビはニヤニヤ笑いを顔に張り付け興味深げに見ている。
モニターの中、AP-Girlsはサンダース側の牽制の砲撃を躱しながら襲い掛かる隙を窺い尚も高速の機動を続け、決してサンダースに休む暇を与えはしなかった。
20対5の圧倒的戦力差でスタートしていながら、試合開始から常に守勢に回らされ試合の主導権を一度も握る事もなく、遂にはその差を実質1両になるまで撃ち減らされたサンダースの選手達はその様子も明らかに疲弊しており、そんなそぶりを微塵も見せぬAP-Girlsとは対照的であった。
疲れは見せぬとはいってもAP-Girlsもまた激しい戦いの結果、その姿は汗と埃と煤に塗れ、それは凡そ年頃の少女としてはどうなのかといった有り様だが、それでも彼女達は美しく光り輝き見る者の目を捉えて離さない魅力を誇り敵を圧倒していた。
だがしかし、そんな彼女達にも覆しようの無い物理的な限界点が目前まで迫っているのは事実だ。
アンチョビ達だけではなく、既にケイも気付いている通りAP-Girlsは各車の残弾は一桁に達しており、その残りも徹甲弾のみで全車合わせても10発程度の処まで減少していた。
「さてどうしたもんかねぇ……」
結果不発に終わった奇襲以降一切発砲していないAP-Girlsと共に、それだけは変わらぬ激しい機動で走り回るLove Gun上のラブは、深紅の長い髪を揺らしながらも考え込んだようでいてどこかとぼけた顔をするが、その表情には深刻さも驕りといったものも見えなかった。
「だからその場になってから作戦考えるの止めろって言ってるでしょうが!」
弾切れ間近で出番が当分ない瑠伽はサイドハッチから顔を出し、上を見上げとぼけた事をぬかすラブに向かい大声で突っ込みを入れている。
「失礼ね~!ちゃんと最初から考えてあるわよ~!これは臨機応変って言うの!」
「やかましい!そういうのは行き当たりばったりって言うのよ!」
砲撃自体が散発的になりはじめ、中継映像も選手の声をよく拾うようになり今のやり取りもしっかりマイクが拾い観戦エリアに届いており、会場のあちこちで笑いが起こっていた。
「ねえ、昔からああなのかしら……?」
試合中、それも大詰めのかなり緊迫した場面であるはずなのに、緊張感の欠片も見られないラブと瑠伽のやり取りにメグミは死んだような目を一同に向ける。
「まあ…そうですね……」
「あれで勝ちに来て、実際やられたりするから腹立つのよ!」
まほが絞り出す様に答えたのに続きカチューシャが沸騰すると、一同嫌そうな顔をする辺りどうやらそれも全員経験済みであるらしい事はメグミにも容易に推察出来た。
「まあ確かにあんな調子で振り回されて、挙句負けたら確かに堪らんか……」
この時メグミはモニターの中で戦うケイの姿が、ほんのちょっと気の毒に見えたのだった。
ここまでは何とかラブの仕掛けた策を躱して来れたケイであったが数に物を言わせた形になった場面が多く、やはり内心では同数で戦いたかったケイとしては何処か後ろめたさも感じていた。
『オイ!ラブ姉!もう本当に弾切れになるぞ!最後はもうアレで一気に決めさせろ!』
決め手に欠くこの状況に、気の短い夏妃が無線の向こうで怒鳴っている。
夏妃は現状を打破する手段として、どうやら大洗戦で猛威を振るった嵐櫻の発動を希望しているようだが、これには頑としてラブが首を立てには振らなかった。
「ダメよ夏妃、今日は嵐櫻は絶対使わないわよ。安易に最終手段に頼ってはダメ、この程度の状況ならまだ手はいくらでもあるわ。夏妃ももう少し冷静に状況を見極める習慣を付けなさい」
『う…解ったよ……』
日頃ふざけた態度を取る事が多いラブであるが、ここという場面では厳島流家元してはっきりとものを言い従わせる辺りは、まだ少女と呼べる年齢でありながらも指導者としての資質も充分なものである事を示していた。
「夏妃にああは言ったけど、確かにちょっと手詰まりなのも事実よね……」
ドリフト旋回で挑発兼回避行動中のLove Gunのコマンダーキューポラ上で、旋回に合わせ視線を巡らせたラブは、その視野の中に最初の履帯切りで擱座させられ白旗も上がっていない為、その場で要塞砲宜しく必死に砲塔を旋回させAP-Girlsを補足しようとしているシャーマン2両に注目した。
「ふむ…ちょっと使わせて貰いましょうかねぇ……」
要塞砲状態のシャーマン2両と、密集隊形のまま亀の歩みで移動するサンダース本隊を交互に見比べ更に周辺状況を確認したラブは、何かを思い付いたらしく無線で各車に指示を飛ばし始めた。
「みんない~い?よく聞いて!これから石蹴りをやるよ!」
『マジかよラブ姉!?』
「マジよ夏妃!相手が遅いから少し手間が掛かるけど、擱座したシャーマンの後方の位置にサンダースの本隊を誘導するよ。誘導する囮は当然Love Gunが務めるわ、でなきゃ敵さんも喰い付かないからね!上手く誘導出来たらピンクとイエローでその間にスモークを散布して視界を奪うのよ!そしたらそこでブルーとブラックの出番!ブルーが擱座したシャーマンを、ブラックが本隊を狙いなさい!大丈夫、あなた達なら必ず出来る!訓練の成果を見せて頂戴!」
指示を出しAP-Girlsを鼓舞するようラブが無線に叫んだ後、Love Gunは確かに時間が掛かっているが微妙に挑発と欺瞞行動を交えながら、サンダースの本隊を動けなくなっている2両のシャーマンの後方に位置するポイントにそうとは気付かれないように誘導して行く。
他の4両もまた、まるで攻めあぐねているような動きでそれに協力し、ケイ達はずるずるとゆっくりではあるがラブが定めたポイントに向け移動している。
しかしそもそもラブの言った石蹴りとは何か?どうやら訓練まで行っているという事は何かの技である事は間違いないであろうがその真相はまだ解らない。
そしてジリジリとした時間が過ぎ漸くラブが想定した位置にケイ達が到達したその瞬間、まずはピンク・ハーツとイエロー・ハーツが擱座したシャーマンとサンダース本隊の間を、ピンクスモークを引きながら互い違いに進入すると一気に駆け抜けその視界を奪う。
その二両の後方にそれぞれ張り付くように付いて来ていたブルー・ハーツとブラック・ハーツは、中間点に来た段階で互い違いのドリフト旋回を開始した。
自分達も視界が利かぬ状況でありながら正確な軌道で旋回運動をこなす2両のその足元で、たて続けにゴツゴツと何かを弾くような音が響く。
「なっ、ナニ!正面撃て!」
「え?あ…待て!それは!」
AP-Girlsがスモークを張った直後、砲撃音は聴こえないが車体に激しい衝撃を受けたサンダースの本隊と擱座したシャーマンは、双方反射的にスモークの中に向け徹甲弾を撃ち出していた。
「サンダース大付属、シャーマン2両走行不能!」
スモークが晴れる前に検知された撃破判定により審判長である亜美の声で、シャーマン2両の撃破コールが観戦エリアと無線の共用回線から鳴り響いた。
「何!?撃ってないのに一体何をやったのよ!?」
スモークが風に流され向かい合う形で白旗を揚げる2両のシャーマンが姿を現したが、その2両は誰が見ても見間違う事がない程見事な同士討ちを演じていた。
「アレはもしかしてアレか?ラブのヤツはアレをやったのか?」
「ああ…多分そうだ……」
アンチョビの意味不明な問いにまほは何かを思い出したのか、ちょっとイラっとしたような恥ずかしいような表情で俯きがちにそう答えた。
周りの者もその何かを思い出したらしく、微妙な表情でまほを見ている。
「一体何の話?今何が起きたかアナタ達は解ってるの!?」
「まあ…大凡は……」
メグミの質問に、どこか言葉を濁すまほに続きアンチョビも皆が知っている事を匂わせた。
「ケイのヤツはテンパって思い出せないみたいですけど」
「それで一体ナニがあったのよ……?」
「ラブのヤツがね、石を蹴ったんですよ」
「は?何を言っているの?」
「そのまんまの事ですが」
「だからそれは何の事なの?」
意味不明な会話に若干焦れたようにメグミが質問を重ねた。
「ええとですね、サンダースがフレンドリーファイアやらかしたのは解りますよね?」
ここでやっとアンチョビが、メグミに向けて何が起きたのか詳しく説明してやるのだった。
「あの2両の間にメロンぐらいの石がいくつも転がってますけど解りますか?」
モニターの中、白旗を揚げた2両のシャーマンの間のスペースには、波で洗われたであろう楕円形の石が無数に転がっているのが映っている。
「ええ、でもあれが何か……って、まさか!?」
「ああ、さすがですね察するのが実に速い。そう、そのまさかですよ」
何かに気付きハッとしたメグミにニヤリとしたアンチョビが続きを話す。
「あれを使う為にラブのヤツは、時間は掛かったけどケイ達をあのポジションまで誘導したんですな。そしてスモークで視界を奪った処に、後続の2両が飛び込んでドリフトで文字通りあの石を蹴っ飛ばしてぶつけた訳です。砲撃音はしなくてもあのサイズの石がぶち当たれば結構な衝撃でしょう、サンダース側は視界の利かない状態で、まんまと乗せられて石の飛んで来た方向に向けて反射的に撃ち返してしまったんですよ」
「そんな……でもそんな事が可能なの!?」
「現に目の前でやって見せたじゃないですか」
「それはそうだけど……」
「私らは中学時代にアレの練習を見せられた事がありますよ。尤もその時飛ばしてたのは、石ころじゃなくてサッカーボールでしたけどね」
「えぇ!?」
「最初はコイツ何やってんだって思いましたけどね、でもその段階でほぼ百発百中でゴールにポンポンとシュート決めてましたよ。まあ私達もまさか試合中に本当にあんな曲芸使って来るとは思いもしませんでしたけどねぇ……」
そこまで語ったアンチョビが視線を隣に座るまほに向けた。
その視線を向けられたまほも、何処か恥かしそうにしながらも思い出し怒りなのかこめかみにバッテンを浮かべながらも吐き捨てるように語った。
「ええ、最初にやられたのは私です……」
「ラブのヤツは何か思い付くと、いつもまほを実験台にしてたんですよ♪」
アンチョビが思い出し笑いを堪えようともせず、楽しそうにまほの頬を指先でツンツンする。
「やめろよぅ!今ここでそんな事言わなくてもいいだろうが!」
恥ずかしそうに声を荒げたまほだが、それで更に仲間達の笑いは大きくなった。
「ホラ、ご覧の通り弄り易い性格ですもの♪」
「なんだとぅ!?」
お上品な口調で便乗してまほを弄るダージリンに、まほが噛み付き笑いは更に大きくなる。
実際の処は最も実力の高いまほ相手だからこそ実験台になり得たのであったが、今ここで敢えてそれを口にする者はいなかった。
「うぅ…私はいつもそれの巻き添えだったよ……」
涙目でガックリと肩を落とすみほだが、ラブが姿を消すまでは黒森峰の中等部で常にまほとセットで居た為に、みほがラブのまほ相手の実験に巻き込まれる確率が高かったのは事実で、そういう意味では一番の被害者はみほといってもいいかもしれなかった。
「まあそんな尊い犠牲の下に生まれた技で、こっ酷くやられていたのが我々なんですが」
アンチョビが肩を竦めながらオチを付けた後、真面目な顔に戻るとモニターに目を向け付け加えるように今の状況に対して結論を述べた。
「このタイミングであんな曲芸を入れるという事は、ラブ達はいよいよ残弾が残り僅かと見て間違いないでしょう。恐らくはもうフェイントを入れる程の弾数も無くて、全車合わせても勝負を掛ける為の分ぐらいしか残ってないでしょう…そうだな、各車精々2発か良くて3発って辺りが妥当でしょう」
アンチョビが出した結論に皆頷いた後、更にまほがラブ達にとって最大の問題点を指摘する。
「ただ、一番の問題点はシャーマンが相手では、Ⅲ号の単体の火力だと余程接近してタイトにウィークポイントでも突かない限り太刀打ち出来ない事…果たして残り僅かな残弾でサンダースの防御陣を突き崩し、ケイのフラッグ車に痛打を浴びせる事が出来るか……さてラブ、最後はどう攻める?ケイ、お前はそれをどう防ぐ?」
モニターの中、双方陣形を組み直し雌雄を決するべく最後の攻防に向け動き出していた。
「
『りょ、了解!』
擱座しているもう一両のシャーマンに指示を出したケイはその時になってラブが使った手口を思い出し、まんまとそれに乗ってしまった自分に腹を立てていた。
「弾が無くてもラブは仕掛けて来るって解ってたはずなのに!いいわ!それならこっちも正面から堂々と受けてやる、もう弾切れ寸前で正面抜く程の策も取れないんでしょうから!」
ケイはキッとした表情で決意を固めると、動ける残存戦力に無線で檄を飛ばすのだった。
「残った車両はフラッグ車を軸に楔隊形でついて来るのよ!数は減らされても装甲と火力はこちらが上!弾切れ寸前のAP-Girlsなんか力でねじ伏せてやる!」
Love Gunを睨み付けながら叫ぶケイの下に残ったシャーマンが集まり変則的な楔隊形を組むと、狙いをLove Gunのみに絞り一気に打って出るのであった。
「ふうん、少しは考えたようね。確かに今の状況ならそれもいい選択よ…でもね……」
ラブの鋭い指笛の音が響くと即座にAP-Girlsは隊形を変え、あの強烈な破壊力を秘めた楔形を形成しこちらも正面からケイ目掛けて突撃を敢行する。
「Rock 'n' Roll!」
ラブの絶叫と共にAP-Girlsの少女達が、一斉にデビュー曲の激しいナンバーを歌い始めた。
「まずい!」
そう叫ぶと共にケイのフラッグ車のすぐ脇を固めていた三年生チームの車長が、自車を斜行させる形でフラッグ車の前に突出させた。
「なっ!?」
ケイが驚きそう声を上げた瞬間、突出したシャーマンの側面をAP-Girlsの5両同時の砲撃がピンポイントで貫き、身代わりとなったシャーマンは穿たれた穴から黒煙と炎を吹き上げながらそのままフラッグ車の前を走り抜け白旗を揚げると同時にガクリと停止した。
そして響く撃破のコールにケイは目を吊り上げラブを睨み付けその名を叫ぶ。
「ラブ!絶対に倒す!」
「うふふ♪良い目になったじゃない」
しかしラブもその程度で怯む事はなく、艶然と微笑み余裕でそれを受け流す。
だが今の同時砲撃でケイの乗るフラッグ車を仕留める事が出来なかったのは、かなりの痛手なはずだなのだが今も隊列を崩す事無く一撃離脱の形で走り抜けたAP-Girlsは、その楔形隊形を維持したまま鮮やかなドリフトターンを決めると、再度ケイのフラッグ車に襲い掛かるべく突進する。
「来る!何としても隊長を守ろう!」
青い顔をしながらも声を上げたのは、まだ最近車長に抜擢されたばかりの二年生で、ここまで生き残れたがこの場面で何も出来なかったらそれこそ一生悔いが残ると必死に自分を奮い立たせていた。
そして二番煎じながら再びAP-Girlsの砲撃前にフラッグ車の前に割って入り、見事同時砲撃からケイのフラッグ車を守る事に成功していたが、それは自車の白旗と引き換えにしてのものであった。
またしても身を挺して隊長を守るサンダースの隊員達に、ラブはこれ以上はない程の優しい笑みでその行為に対し敬意を込めた敬礼を送る。
だがその笑みに敬礼を送られた二年生の車長は見事骨抜きにされており、それがまたケイの怒りの炎に油を注いでいた。
「この天然のたらしが!」
「ひっど!頑張った子を労っただけじゃな~い」
同じ軌道で円を描きながら旋回するラブとケイは、互いに睨み合うがこういう時はやはりラブがケイをおちょくる構図は変わらなかった。
「やっかましい!もう今のでアンタ達は弾が尽きたはずよ!?でなきゃこんな事しないで二の矢を放って来てるはずだもの!違う!?」
「さあ、どうかしら?」
クスクスと笑うラブに怒りで顔を真っ赤にしたケイが、更に声のボリュームを上げ決め付けるように指を突き付け最後通告を行なった。
「やっぱり!絶対弾切れになってるわね!もう諦めて降伏しなさいよ!」
ケイがそう叫んだ瞬間にラブがサッと手を上げると、5両のⅢ号J型は楔形を維持したままドリフト旋回を行ない矢尻の先をケイのフラッグ車に指向して停止した。
そしてケイもまた一旦加速してその鋭い矢尻の先から逃れると、隊列を組み直しAP-Girlsの正面に回り込み睨み合う形で停止したが真っ直ぐにケイを見つめるラブの真意がケイには掴めなかった。
「ケイ……」
「な、なによ!?」
「改めて教えてあげる、厳島流のドクトリンには諦めるという言葉は記載されていないのよ」
「撃つ弾もないのにどうしようって言うのよ!?」
「本当にそう思う?」
「きゃあ!?」
ラブが見る者の心を蕩けさせるような笑みでケイに問うたその瞬間の事だった。
轟音と共にケイのシャーマンが激しく揺さぶられ右の履帯と転輪の一つが弾け飛んだ。
「ほらね♪」
「え…な……!?」
我に返ったケイが視線をAP-Girlsに向けると、ラブの左翼最後尾を固めるブラック・ハーツが砲身から発射煙をたなびかせていた。
「まだ終わったわけじゃないのよ♪」
にっこり、そう呼ぶのが相応しい可愛らしい笑顔をケイに向けたが、その笑顔で我に返ったケイは自身の油断による失策に顔に朱を走らせた。
だが履帯を切られたものの白旗は揚がっておらずまだ勝敗は決していない。
その事実だけがどうにかケイの心を支えていた。
「まだ白旗は揚がっていないわ!今度こそ完全に弾切れでしょう?残念だったわね、今ので私を倒せなかった段階でもうあなた達の負けは決まったわ!改めて言うわ、諦めて降伏しなさい!」
「も~、ちゃんと聞いてなかったのかなぁ?あのさぁ、本気で私に勝ちたかったら撃ちなさい。ケイのフェアプレイ精神は大したモノよ、でも時には非情になる事も必要なの。ねえケイ、今のままではあなたはいつかそれが原因で行き詰まるわよ。撃ちなさい、勝ちたいのなら撃ちなさい。忘れたの?私はね……厳島はこの状態からでも戦えるのよ」
ラブを睨み付けるが唇を噛締めるケイはその命令が下せない。
フェアプレイを尊ぶケイの矜持がそれを許さぬのか、ラブの言う『撃て』の一言が発せない、
「しょうがないなぁ……」
ラブは困ったような顔をすると一度車内に潜り込み、再び姿を現した時にはその手にいつもの校名入りの拡声器を構えていた。
「本当にしょうがないなぁ……」
「な、なによ!?」
ラブの意図が掴めず身構えるケイに向けラブは拡声器を構えると、同時にその顔にこれ以上はない人の悪い笑みをにた~っと浮かべると更に嫌らしい視線でケイのたわわをねめつけた。
「な……なななナニよぅ!?」
その視線に耐え切れなくなったケイが、思わず自分のたわわを抱き締め隠そうとする。
クスリとラブの笑い声が零れた後、拡声器を持つ手に力がこもった。
「この貧にゅ──」
ズドン!
その最強の挑発の一言をラブが言い掛けた瞬間、覚醒したケイが素早く車内に飛び込み試合終了を告げる一撃を放ち、正面からそれを受けたLove Gunに白旗が揚がったのであった。
「ちょっとぉ~、最後まで言わせなさいよぉ~」
「やっかましい!このホルスタイン女ぁ!」
試合が決まったその瞬間観戦エリアでその様子を見守っていた全ての者達は、モニターから目を背けその肩と腹筋を小刻みに震わせていたのであった。
『み…三笠女子学園フラッグ車そ、走行不能……よ、よってサンダース大学付属高校の勝利!』
観戦エリアと交戦エリアに響く審判長の亜美の声も噛みまくりでプルプルしている。
完全に油断していた亜美はラブの攻撃の直撃を受けたようであった。
改めてAP-Girls破壊力を印象付けた一戦も遂に幕を閉じたが、同時に彼女達の抱える問題点も浮き彫りとなる試合であったのは間違いないであろう。
今回もまた圧倒的に試合を支配するも、初勝利を手にする事が叶わなかったAP-Girls。
彼女達に勝利の女神がほほ笑むのは果たしていつになるのであろうか。
う~ん、ラブのたわわは一体どうなっているんでしょうねぇ?
でもやっと書きたかったケイとのたわわ対決が書けましたよ♪