ガールズ&パンツァー 恋愛戦車道   作:肉球小隊

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前回以上にタイトルが酷い…しかも元ネタが古過ぎて……。

試合が終わればお約束のお風呂回ですが、
今回はラブとケイが二人揃って色々やらかしてる感じです。


第四十二話   湯気とボイン

「とっても綺麗、ここの海は本当に蒼いのね」

 

「うん……」

 

 

 廃坑となった鉱山島で破壊の限りを尽くして行われたサンダース対三笠女子の戦車戦は、終始ラブ率いるAP-Girlsが試合を支配していたものの、最終的には少々変わった形の幕切れではあったがサンダースが勝利し、ラブとケイは今迎えのS-LCACを待つ間最終決戦の舞台となった海岸の、波消しブロックの上に並んで座り眼前に広がる深い蒼の海を見ているのであった。

 海を見つめるラブの横顔を伏し目がちに見つめるケイの目には、冬の日差しにキラキラと輝く海を背に時折吹く海風に深紅の髪を揺らすラブの姿がとても眩しく映っていた。

 

 

「ん~?どうしたのよ~?」

 

「べ、別に!」

 

 

 不意討ちで極自然にすっと顔を覗き込まれたケイは、少し語気を強めると慌ててそっぽを向いた。

 瞬間的に顔が熱くなり自分が沸騰している事を自覚したケイは、その顔色も真っ赤になっているであろう事は解っており、思い切りラブに背を向けるのであった。

 

 

「ん~?なによ~?変な子ね~」

 

「う、うるさい!」

 

 

 ケイは背を向けたまま腕を組みそう怒鳴ると、自分の胸のドキドキを誤魔化そうとしていた。

 だが波消しブロックの上に密着して並んで座っている為に、ラブが背後から更にケイの顔を覗き込もうとするとどうしてもラブのたわわがケイの背中を圧迫するので、別の方向で熱くなったケイは勢いよく振り返ると一気にその怒りをぶちまけた。

 

 

「あんたねぇ!最後のアレは何よ!?言うに事欠いて私に向かってひ、ひ……」

 

 

 勢いよく捲し立て始めたが、その屈辱的なワードが口に出来ず口ごもった瞬間ラブがケイの背中に腕を回すと有無を言わさずギュッと彼女を抱き締めた。

 

 

「馬鹿ねぇ♪そんな事気にしてるの~?ウソに決まってるじゃな~い、だけどああでも言わなきゃアナタ撃たないんだもの。確かにフェアに戦おうとする精神は大事よ、でもそれだけではダメなのはケイだって解ってるでしょ?隊長なら非情な判断を下さなければいけない場面は多いわ、それが出来ずに敗れた時、それはそれまで付き従って来た者達への裏切りである事も自覚しておかなければいけないわ。それにね、ケイも来年には進学して下っ端に逆戻りするのよ?その時その考えのまんじゃ苦労するわよ~?あのメグミさんだっているんだからさ」

 

「う゛…解ってるわよ!だけどそれとこれとは──」

 

「ホント馬鹿ねぇ♪まだ気にしてるの~?ウソって言ったでしょ、ケイのおっぱいは形もサイズも素晴らしいわ……それにね♡」

 

「え……!?な、ナニ!?」

 

 

 ケイを抱き締めるラブのたわわがその身を微妙に揺らすと波打つような心地の良い波動となり、ケイのたわわにも伝わって来てその敏感な先っちょを刺激する。

 

 

「どう?気持ちいいでしょ♡」

 

「あ…一体ナニ……あぁん♡」

 

 

 ラブに耳元で囁かれ、甘い声と体内を走り抜ける電流のような快感にケイの身体はピクリと反応してしまい、その様子にラブは蠱惑的な表情でクツクツと満足げな笑い声を漏らす。

 力が抜けくったりとしたケイは、まるでラブに抱かれたまま弄ばれているように見えた。

 

 

『きゃ~♡』

 

 

 観戦エリアでその様子に黄色い歓声が上がった瞬間、映像の方は放送事故の危険性ありと判断した中継スタッフの手により素早く可愛い仔猫の映像に差し替えられていた。

 

 

「何をやっとるんだアイツらはぁ!?」

 

 

 両手で顔を覆いつつもしっかり指の間からその様子をチェックしていたアンチョビが、映像が切り替わると同時にわざとらしい声と表情で言った時、思わぬ人物から思わぬ発言が飛び出し一同驚愕し騒然となるのであった。

 

 

「いやあアレは気持ちいいんだよねぇ……♡」

 

『ナニぃ!?』

 

 

 全員が声の主に注目すると、声の主は困ったようにへにょりと眉を下げ後頭部をポリポリした。

 大洗戦の折りのラブとのファーストコンタクト際に、ラブの熱いスキンシップをフルコースで体験させられていた杏の発言は、彼女がラブの大好物な容姿な為に一同の脳内を妄想の暴風が吹き荒れ、それだけで鼻血を垂らす者も現れた。

 

 

『体験済みなのか?イッたのか?イカされちゃったのか角谷杏ぅ!?』

 

 

 目を血走らせる一同は、気が付けば全員ケダモノのスイッチが入っているのだった。

 

 

『ウソ…ナニコレ…先っちょだけで……き、気持ちいい…わ、私行く…逝く…イク……イク!?ちょっと待って!ダメ…ダメ……』

 

 

 蕩けた雌の表情に落ちかけていたケイが突如大きく目を見開くと、彼女を抱擁するラブを力強く振り解き突き飛ばそうとした。

 

 

「ダ、ダメぇ!」

 

「うわ!?って、あぶな!」

 

 

 波消しブロックの上でバランスを崩し危うく海にドボンしそうになる処を、ラブは必死にバランスを取り自分とケイを支え何とか落ちるのを免れた。

 

 

「あ…危なかった……」

 

「ご、ゴメン……」

 

 

 冷や汗を拭ったラブがふ~と溜め息を吐くと、ケイも状況を理解し一応謝りはしたが内心のドキドキが止まらずされた事を想い出しラブを睨み付けたが、当のラブはもう綺麗さっぱり忘れたかのように耳に届く轟音に気付き沖合を指差しS-LCACが迎えに来たとのんきに喜んでいた。

 

 

『な、なんなのよもう!私さっきは一体…身体の…芯が熱い……』

 

 

 頂点に達する事なくラブを突き放してしまったケイは、その後暫くその体内に炭火のように中々消える事のない熱い何かを抱え悶々とした時間を過す事になるのであった。

 尤もラブもこれが原因でお約束の自爆をする事になるが、それはもう少しだけ後の事。

 

 

「しまったわぁ…もうちょっと考えて壊せばよかったわねぇ……」

 

「いわゆる想定外ってヤツね……」

 

 

 S-LCAC揚陸後展開した回収部隊が作業に入った結果、今回の試合会場となった島を所有する企業から壊し放題、むしろ積極的に破壊して欲しいという言外の要望があったせいか、AP-Girlsとサンダースの双方とも無意識のうちに間接攻撃を多用した為、島内の団地等の居住区画は徹底的に破壊され今もくすぶり煙を上げるその様は、内戦中の某国を思わせる光景であった。

 だがその破壊の限りを尽くした市街地に取り残され擱座した車両の回収は、瓦礫に阻まれ相当の時間が掛かる事が判明した。

 

 

「う~ん、さすがに人任せで先に帰るのはちょっとねぇ……」

 

「だよねぇ……」

 

「かといって両校挨拶とミニライブ待ってるお客さんほったらかしって訳にもねぇ……」

 

「試合が早く終わったのにこれは誤算だったわねぇ……」

 

 

 隊長二人難しい顔で考え込んでしまった処に、何故か嬉々とした顔で妙にテンションの高い声で何か叫びながらイエロー・ハーツの車長である凜々子が駆け寄って来た。

 

 

「ラブ姉!回収作業班から聞いたけど撤収に時間掛かるんですって!?」

 

「何ようるさいわねぇ…それに何でそんなに嬉しそうなのよぉ……」

 

「そうなんだ、間違いないのね!?時間いっぱい必要なのね!?」

 

「いや、だからさぁ……」

 

「これはアレね?遂に私達の出番が巡って来たという訳なのね!」

 

「あぁ、そういう事か…さすが凜々子抜け目ないわ」

 

 

 ハイテンションの凜々子の意図を察したラブは、疲れたように言いながら盛り上がる凜々子に目をやったが凜々子の方はそんなラブの様子など全く意に介していないようだ。

 

 

「それはいいけど帰投する脚はどうするのよ?いくらなんでもその為だけにS-LCAC使えないわよ?」

 

「それなら全く問題無いわ!回収作業班から話を聞いた段階でスーパースタリオンの出動要請を艦の方に入れておいたから。ホラ!噂をすればもう来たみたい、さすがうちの艦は何やっても仕事が速くて気分がいいわ♪じゃあねラブ姉!後は私達に任せてゆっくり帰って来てくれればいいから!」

 

 

 ダーっと一気にしゃべった凜々子は、ラブに何か言う機会を与えぬまま最後はパッと敬礼を投げてあっと言う間に走り去って行くのだった。

 

 

「…ほんと凜々子って抜け目ないわぁ……」

 

「何今の……?」

 

 

 ラブと共にポカンとした顔で凜々子を見送ったケイは、言っていた意味がひとつも理解出来ずラブに向かい代わりに通訳を求めるような視線を送った。

 

 

「凜々子のイエロー・ハーツのメンバーで組むユニットで全員帰投するまでの繋ぎをやる気なのよ、ただあの子のグループは仕掛けが色々大変で今まで中々出番がなかったからね。こういうタイミングを虎視眈々と狙ってたんだと思うわ……」

 

「あ、そう……」

 

 

 ケイはそう言うのがやっとであったが、その視線の先では降下して来たスーパースタリオンに凜々子達イエロー・ハーツのメンバーが次々飛び乗ると、早々に離陸しサッサと飛び去ってしまった。

 

 

「ま、いっか…どうせ聞いても訳解らない事だらけに決まってるし……」

 

 

 やる事がぶっ飛び過ぎて直ぐには理解出来ないとケイは深く追及する事を放棄して、そんなこと以上に試合中に気になった事をラブに聞くのだった。

 

 

「それよりも問題はあの子よ!あの鈴鹿って子は一体何者な訳?今日のサンダース(ウチ)は実質あの子一人にやられたようなもんじゃない!アンタはともかく普通じゃないわよ、本当に一年生なの?サバ読んでない?あり得ないわ!」

 

「私はともかくって失礼ね~、人をバケモノみたいに~」

 

「違うの!?」

 

「ヒドイ…まあそれはおいといて鈴鹿は正真正銘一年生よ」

 

「アンタと違ってね」

 

「ぐ……それ言う?」

 

「あ……ゴメン」

 

「まあいいわ、確かに鈴鹿はAP-Girlsの中でも頭一つ飛び抜けた感じはあるけど一年生なのは本当よ。ある程度は話したけどあの子達も色々抱えてるの、これ以上は察して頂戴」

 

「解ってるわよ……」

 

 

 今日のサンダース戦に於ける暴れっぷりで、鈴鹿が他のAP-Girlsのメンバーより突出した存在である事がより鮮明になったのはラブも認める処ではあった。

 実際メンバー全員が揃うと、ラブに次ぐ高身長である鈴鹿はそのラブを除けばかなり目立つ存在であり、そのクールな美貌と相まってここまでの連戦の間に各校の隊員達を、学年に関係なくかなりドキドキさせてかなり濃いファンを増やしつつあった。

 何しろ高校一年にしてノンナ並みの身長に、規格外過ぎるラブには及ばないが抜群の存在感を誇る胸のたわわ、そして対外的には人当たりも良く聡明な印象でAP-Girlsのスポークスマン的役割もこなしており、既に各校の幹部隊員達からもかなりの信頼を得ると同時に熱のこもった視線を向けられてその辺本人に自覚があるかは解らぬが、モテ度の高さは相当なようだ。

 

 

「解ってるけどさ…でも何であの子が副隊長じゃないの?そりゃあの愛だって凄いとは思うわよ、だけど今日だけに限っても総合力で云えば鈴鹿が一番上だと思うんだけど?」

 

「めんどくさいから嫌なんだって」

 

「はぁ!?」

 

「だから鈴鹿はそう言う面倒な事は嫌だって言って副長になるの拒否したのよ」

 

「面倒て……」

 

「しかたないじゃない…鈴鹿も言って聞く子じゃないもん」

 

 

 ケイはこのふざけた集団に本気で頭が痛くなって来た。

 だがラブが言った事は事実であり、散々説得したにも拘らず鈴鹿が首を縦に振る事はなく紆余曲折を経て愛が副長に決まった時も、気が付けばラブ以外の全員で決めておりその理由もラブは聞かされていないという事にケイはすっかり呆れ果てていた。

 

 

「アンタ隊長でしょ?何やってんのよ?」

 

「だって全然言う事聞かなくて何日かしたらみんなして愛を副長にしたって言うんだもん……」

 

「さっきから聞いてりゃ子供かよ!」

 

 

 いい加減グダグダな内部事情を聞かされるのに嫌気がさして来たケイがラブをどやし付けたが、ラブは口を尖らせまさに子供の反応で不満を顕にしていた。

 これに関して後日ケイが鈴鹿に聞かされたのは、確かに面倒事が嫌で副長の任を拒否したのは事実だが、ラブと愛以外の者達が話し合い、何かと不安定なラブの傍にはそのラブが溺愛と言っていい程に大事にしている愛をおいた方が組織として安定すると、そう見抜いて結論付けた鈴鹿の提案を全員が支持した結果であり、愛もまた最初はごねたもののそれが一番自分達の愛する恋姉様の為だという鈴鹿の説得に応じたという話であった。

 それを聞いたケイも納得し、これは当人には言わぬが華だと自分の中に留める事した。

 だがこの段階ではそれは知らぬ事なので、暫くラブのグダグダに付き合う羽目となったのだ。

 

 

「子供じゃないもん!子供はこんなにおっぱい大きくないもん!」

 

「やっぱそれが自慢なんじゃない!このビーフボウル女!」

 

「もう訳わかんないわよ!」

 

 

 ケイがラブの両頬を引っ張ればラブも同じように引っ張って、そのお互い顔を見合って二人は同時に笑い出した。

 

 

「あ~あ、でもねウチの子達は現段階で全役職こなせるレベルまでは鍛えたつもりよ。来年度車両数が増えて新しい子達が入ってくれば、当然人員配置見直して車長任せる予定の子もいるしね」

 

「そっか、そりゃあそうよね。そうなると今のLove Gunもメンバーの入れ替えがあるわけか……」

 

「それなんだけどさぁ…私としては瑠伽にも車長やらせたいんだけどねぇ……」

 

「瑠伽ってあの砲手の子でしょ?」

 

「そう…でもあの子ったら自分は大砲屋だって言って聞かないしさ、他の子達までLove Gunには絶対の砲手が必要だとか言い出すんだもの」

 

「確かにあの子の砲術のセンスは凄いと思うわ」

 

「でも私としては今のうちに色々経験させておきたいんだけどねぇ…なんか最近はLove Gunだけは最後までこのままメンバー固定で行くべきだとまで言いだして困ってんのよね~」

 

 

 今ラブが隊長として悩んでいる事は自分が通って来た道なので、ケイにはその悩みがよく解り思わず苦笑いするとそれに理解を示すのだった。

 

 

「あ~、隊長の悩みは何処も一緒ね~。私の方が…私達の方がって言った方が正しいか……とにかく私達の方がひと足早く経験済みの事だから、困った事があったらいつでも相談しなさいよ」

 

 

 ケイは明るく言いながら屈託のない笑顔を見せると、がっしりとラブと肩を組んだ。

 

 

「うん、ありがと」

 

 

 それに応えラブもまたにっこりと最高の笑顔を見せる。

 その笑顔を見たケイは、これでまた少しはラブの抱えるものを軽くしてやれたかと思うのだった。

 

 

「これはいくらなんでも意表を突き過ぎだろ……」

 

 

 観戦エリアに組まれた仮設ステージでは撤収に時間が掛かる事を知った凜々子の発案で、ひと足先に帰投したイエロー・ハーツのメンバーによる繋ぎのステージパフォーマンスが行なわれているのだが、その意外過ぎる演目に一同あんぐりと口を開けその成り行きを見守っていた。

 帰投前から舞台設営の生徒達により何やら大掛かりなセットが組まれていたが、実際パフォーマンスが始まると、それは驚きと喝采の連続のステージであった。

 日本の伝統芸能ともいうべき水芸を取り入れた舞台装置を使いつつ、パワフルに三味線を鳴らしながらのロックナンバーの演奏は凡そ彼女達の容姿からは想像出来るものではなかった。

 これが彼女達のグループ、イエローチェリーブロッサム(黄櫻)得意の演目であり、その大掛かりなセット故にそうそう簡単に披露出来るものではないのであった。

 三味線の演奏の方も、イエロー・ハーツメンバー中最も華奢な凜々子が豪快に太棹をかき鳴らす姿がかなり観戦客の目を引いていた。

 但し華奢とはいってもそこはAP-Girlsのメンバーであり、胸のたわわなアハト・アハトはイエロー・ハーツ最凶を誇り、三味線の撥を振るう度にばるんばるんに揺れ放題だ。

 

 

「あの揺れがパフォーマンスの内容を霞ませている気もしますけど……」

 

「ダージリン……」

 

「本当に意表を突くのが得意な子達ね」

 

「あ、蝶野教官!」

 

 

 試合終了後の諸々の確認が終わりラブ達が帰投するまで手の空いた亜美が、スタンドにいる一同の元に訪れたが現れるなり言った言葉で全員噴き出しそうになった。

 

 

「今日は最後の最後で完全にやられたわ、お蔭で本業で危うく大失態演じる処だったわ~」

 

「ぷ……お、お疲れ様でした」

 

「まあ油断してた私のミスね…ってあら?メグミちゃんじゃない、でも何でこっちの席に?」

 

『メグミちゃん!?』

 

 

 一同その呼び方にハモって驚きの声を上げたが、現役自衛官、それも教導隊などという猛者の巣窟に属する亜美からすれば、いくら選抜チームの中隊長クラスの現役女子大生といえどもちゃん付けで呼んでしまう対象のようだった。

 

 

「あ…ども……」

 

 

 ハイエナのような連中の前で餌を撒かれてしまったメグミは、若干口元を引き攣らせながら亜美に挨拶を返したが、その時には既に全身に好奇の視線が突き刺さっていた。

 

 

「メグミちゃん!?可愛い♪」

 

「あぅ……」

 

 

 ここぞとばかりにメグミに抱き付く結依を見とめた亜美は、その少女が自分もよく知る笠女生徒会長である事に気付き、意味有り気な視線をメグミに向けるのだった。

 

 

「あら?木幡会長?ふ~ん、そうなんだ……」

 

「あぁぁぁぁ……」

 

 

 その生温い視線に、まだ何もしていないのに外堀をどんどん埋められて行く感覚に陥ったメグミは絶望的な呻き声を上げたが、意に介さない亜美が視線をアンチョビに向けると、アンチョビもビシッと親指を立てネタの提供に感謝といった顔をしていた。

 

 

「丁度今ここに来る直前に連絡があって、後少しで全車S-LCACに収容して戻って来るそうよ」

 

「瓦礫の山に団地内は道も狭くてかなり手こずってたみたいですわね」

 

「ええ、でもまあ前回程ではないけれどね」

 

 

 モニターの一部に収容作業も映っているので、その様子を見ながらダージリンの言った事に亜美もプラウダ戦の遭難騒動とタブレットの件を例に出して答えた。

 

 

「あぁ、そうでしたわね……」

 

「カチューシャさん、ノンナさん、前回は大事な試合を連盟の不手際で台無しにしてしまって本当に申し訳なく思うわ。大洗の件といい今回の件といい、連盟自体もそろそろ組織改革が必要な時期に来ているけれど、それでこれ以上現役選手に迷惑を掛ける事は無しにして貰いたいものだわ……」

 

 

 プラウダ戦のタブレット問題もまだ全容は解明されてはいないものの、大筋としては実戦投入直前の大掛かりなハードの仕様変更とソフトのバージョン変更が主な原因と見られており、それに際し連盟側も右から左でろくな検証をせず使用に踏み切った結果の事であった。

 

 

「いえ!タブレットの件がなくてもあの天候では試合自体中止は避けられませんでした!それにあの時の事態への対応で我々も貴重な経験値を得る事が出来ましたから!」

 

「カチューシャさん……」

 

「隊長の言う通りです、それにまだ機会はあると思いますから」

 

「ノンナさん…ありがとう」

 

 

 亜美は二人の心遣いに礼を述べ、それから暫くは一同と一緒にイエローチェリーブロッサムのステージパフォーマンスを楽しむ事に専念した。

 

 

「う~ん、これだけのパフォーマンスをするのに衣装も変えず、パンツァージャケットのままっていうのも何か勿体無い気がするわねぇ……」

 

 

 熱演を続けるイエローチェリーブロッサムのステージを見ながらも、彼女達が試合中そのままの煤けけて汗まみれの姿のままである事を不思議がる亜美であったが、これには以前同様に思いラブにそれを指摘した経験があるダージリンが解説を入れた。

 

 

「これは以前我が校との試合の後にラブが言っていた事なのですが、あの姿は自分達が全力で戦った証であり何ら恥ずる事のないものなので、試合後のライブにはそのままの姿で臨む事にしているそうですわ。まああの子らしいといえばあの子らしいですわね」

 

 

 それを聞いた亜美も成る程と頷きラブの気高さを再認識したのだが、その後に続いて口を開いたみほの情報には全員が微妙な顔をしていた。

 

 

「だけどさ…そんな事言いながらラブお姉ちゃんは大洗(ウチ)とやった時はしっかりあんこう踊りのあんこうスーツ用意していやがったよ!」

 

「えぇ!?」

 

「いやいやいや!さすがにアイツがアレを着たら放送事故だろう!?」

 

「うん!だから没収して即焼却処分したよ!」

 

「やっぱりあのおっぱいは油断なりませんわね……」

 

 

 ちょっといい話も即ぶち壊しな辺りもやはりラブらしいと云うべきか。

 暫くはそんな風に楽しんでいた一同の耳に、既に馴染みになりつつある雷鳴が如き轟音が近付いて来るのが聴こえて来た。

 

 

「あぁ、帰って来たわね。それじゃあ私はもう一仕事あるからこれで失礼するわ」

 

 

 亜美は立ち上がりそう言うと、軽く手を上げ颯爽と立ち去って行く。

 やがて近付く轟音が耳を弄する程になると、姿を現したS-LCACは接触寸前の隊列を組んだまま滑るように笠女学園艦の後部ウェルドックに飛び込んで行った。

 その早業には映像中継もあった為どよめきが起こったが、そこで抜け目なく凜々子が翌日にはS-LCACの体験搭乗が出来る事をアピールする辺りは大人顔負けの徹底ぶりと言えよう。

 それから暫くすると両校の隊員達が笠女学園艦から姿を現して、亜美の管理の下整列し両校挨拶を終えここに笠女対サンダースの試合も無事終了を迎えたのであった。

 

 

「よっしゃ~!それじゃ~やるよ~♪」

 

 

 休む間もなくステージ目指し駆け出すラブの背中を見送ったケイは、自身の疲労度を考えると彼女達のタフさに改めて驚き、そしてやはりラブの身体の事が心配にもなった。

 だがそんなケイの心配を余所にステージ上のラブは全開でライブをこなしており、その姿に今はケイもその杞憂を心の中にそっとしまっておく事にした。

 今回も誰一人帰る事なく待っていた観戦客と共に大いに盛り上がったミニライブを終えると、さすがに疲れの見えるラブ達がケイ達の元へと戻って来た。

 

 

「さすがにもうボロボロの出涸らしって感じね……」

 

「あはは…まあね……」

 

「よ~し!それじゃあみんなで汗と疲れを流しに行くわよ!」

 

 

 パンっと手を叩きそう宣言したケイをラブが怪訝な表情で見ると、ニンマリと笑ったケイは得意げに胸を反らしラブを指差しフフンと笑った。

 

 

「近場の温泉施設を貸し切りで押さえてあるのよ!」

 

「温泉…貸し切り……」

 

「何よ?嬉しくないの?」

 

 

 突然死んだような目になったラブに対してケイも唇を尖らせる。

 

 

「いや…嬉しいわよ、嬉しいけどね……」

 

「じゃあ何よ?」

 

「あのさ…アンタ達毎回毎回人の事温泉に引っ張り込んでさ、猥褻行為働く事しか考えてないんじゃないの……?」

 

「バッカじゃないの!?そんな事ある訳ないじゃな~い!」

 

 

 誠意の塊のような輝く笑顔と共に高らかにそう言い切ったケイであるが、その顔の表面にはデカデカと嘘の一文字が大書されていた。

 

 

「やっぱりその顔は絶対信用出来な~い!」

 

「やっかましいわ!Hey!girls!ラブを温泉に連行するよ!Hurry up!」

 

 

 ケイの出した指示に迅速に反応したAP-Girlsの少女達がラブを捕縛すると、それを待っていたかのように現れたサンダースのスクールバスに押し込まれる。

 

 

「あ!?何よアンタ達!裏切りもの~!」

 

「何?一体何事なの!?」

 

 

 押し込まれたスクールバスの車内では、ひと足先にアンチョビ達によってラブと同様押し込まれていたメグミが何が起こるのかとすっかり怯えてキョロキョロしていた。

 

 

「メグミさん!?ってアンタ達!」

 

「まあまあ、あまり深く考えちゃいかんぞ~♪」

 

「そうそう、そうですわ~♪」

 

「千代美!?それに結依ちゃんまで!?」

 

 

 ニヤニヤ笑いのアンチョビと、何も考えてない嬉しそうな笑顔でメグミに抱き付いている結依を交互に見比べたラブは、全てが最初から仕組まれていた事に思い至り悟ったような表情で溜め息を吐き、バスの最後尾にはケイ達に配る予定のシャンプーセットまで積まれているのを見付けAP-Girlsを睨み付ければ、揃ってそっぽを向くので彼女達もグルである事を理解した。

 

 

「ふう…ほんと良いお湯ね……」

 

 

 連行された温泉で湯に浸かるラブはもう何度目かになるか解らない溜め息を吐くと、湯に自身の異次元サイズのたわわを揺蕩わせながらグリグリと肩のツボを刺激していた。

 そんな様子からラブの生たわわ初体験なメグミは視線を外す事が出来ない。

 その視線に微妙な危機感を抱きつつもラブは肩への刺激を続けている。

 ラブだけではなくAP-Girls、いや笠女全生徒の共通の悩みである強烈な肩凝りは、彼女達のトレードマークである実り過ぎな程のたわわ由来であり、大きければ苦労もある事を物語っていた。

 

 

「アンタのサイズの肩凝りがどれ程のものか私にゃ想像も付かないわ……」

 

 

 ラブの隣で湯に浸かり、目の前に浮かぶドレッドノートなたわわを指先でツンツンしながらケイは何処か諦めたような表情で吐き出した。

 

 

「ちょ!?止めてよね~!」

 

 

 ラブは慌てて浮かぶたわわを抱き締め隠そうとするが、凡そその程度で隠せるサイズではない。

 

 

「まあいいわ…ここのお湯はね、金の湯とか赤湯とか言われてて鉄分イオンの含有量が桁違いなのよ。だからそういう事にも良く効くわ…それに古傷なんかにも特にね……ホラ、コッチに背中向けなさいよ、どこが凝るかは私もよく解ってるつもりよ」

 

「え?あ、いいよそんな……」

 

「だからホラ、私達の間で遠慮はなしよ!」

 

 

 ケイはラブの背中に回り込むと、すっかり張っているその肩を揉み始めた。

 

 

「ぐっ!あぁ!ソコはぁ……き、効くぅぅぅ!」

 

「オッサンかオマエは!」

 

 

 的確にツボを突かれラブは意味不明な声を上げ続ける。

 日頃AP-Girlsの仲間同士で互いにマッサージなどはするが、目先が変わるというか新鮮な心地良さが肩のツボを刺激しラブは完全に蕩けきっていた。

 

 

「まあこれだけ凝ってればそうなるわな…それにしても……」

 

 

 ラブの肩を揉む為背後に立つケイの眼下にはぷるんぷるんな重装甲が浮かんでおり、思わず生唾ゴックンしたケイは静かにラブの背後に屈みこむと、そっとその背に自分のたわわを押し付けながら優しくラブを抱き締めた。

 

 

「あ…え?ケイ?」

 

 

 マッサージの快感に蕩けていたラブは完全に虚を突かれ、ケイの抱擁にあっさり捕まってしまう。

 

 

「ねえラブ、どうやったらあんな事が出来るのよ?お蔭で私さっきからず~っと身体の芯が疼いたまんまなんだけどこの責任どう取ってくれるのかしら?」

 

「え?あ…しまった……」

 

 

 我に返るも時既に遅くケイの虜となったラブは、両校の隊員といつものケダモノ達が注視する中、ケイの手で公開凌辱プレイを受ける羽目になったのだ。

 

 

「ちょ、あ、ケイ?もう肩凝り取れたから…ありがと…ね?もういいから……」

 

 

 何とかその縛めから逃れようとケイに声を掛けるも、その声はケイの心に届かずどうにか振り返りケイの瞳を覗き見たラブは絶望的な表情になった。

 

 

「あ…これは逝っちゃってる目や……」

 

 

 ラブのその呟きが合図であったかのように、ケイの両の手はラブの敏感な部分を猛然と責め始め、刺激を受ける度ラブの身体はピクリと反応し、形良い唇からは艶めかし過ぎるハスキーボイスが漏れて、目を血走らせ取り囲んでかぶり付き状態のケダモノ達をこれでもかと刺激していた。

 

 

「イヤ…ん…ダメ、おね…お願いヤメ……あん…またそんな…先っちょばかりダメぇ……」

 

 

 ハァハァと荒い息のラブを、完全に目の逝っちゃっているケイが鼻息も荒く執拗に責め立てる。

 

 

「だ、だから…もうホント…そんな先っちょ♡……あ、あ…ああぁ~ん!」

 

 

 ケイがラブの首筋に舌を這わせつつ、たわわの一番敏感な先っちょを一層強く刺激した瞬間、ラブの全身に電気が奔ったかの如くビクッと震えると、大きく弓なりに身体を反らせた後寄り掛かるようにその身をケイに重ねグッタリしてしまった。

 

 

『え!?まさか…まさか今ので逝っちゃったのか!?』

 

 

 ケイの腕の中くて~っとなって支えられるその表情は、完全にR指定の放送コードに引っ掛かりそうな凡そアイドルが見せる表情ではなかった。

 

 

「うわぁ…ケイのヤツほんとにやりやがったのか!?」

 

「鬼畜よ!鬼畜の所業だわ!」

 

「まさに畜生ですわ」

 

 

 日頃の自分達の所業を忘れ一斉にやらかしたケイを責めたてるケダモノ達だが、狼狽えたケイはラブを揺さぶり起こしながら必死に言い返している。

 

 

「な、ナニよ!?アンタ達だっていつもやってるじゃない!ちょ、ちょっとラブ!しっかりしなさいよぉ!何よあれくらいの事でぇ!」

 

 

 周囲の白い目に耐え兼ねて涙目でラブを揺さぶるケイの努力が実ったか、薄っすらと目を開き何かうわ言のように呟きながらラブは立ち上がり掛けたのだが、まるっきり脚に力が入っておらずふら付いてそのまま尻もちを付くように後ろにいるケイの上に倒れ掛かってしまった。

 

 

「うわっぶ!ラブぅ!?」

 

 

 倒れ込んだラブの立てた波を被ったケイが悲鳴を上げたが、別の意味で不幸だったのは最前列でかぶり付いていたラブ初心者のメグミであったかもしれない。

 初の生たわわに加えてケイの所業で目撃した蕩けたラブの表情に、止めとしてラブが倒れ込んだ結果目の前で御開帳をガン見する事となったのである。

 

 

「ラブお姉さまぁぁぁ!」

 

 

 理性のリミッターが外れ欲望全開の突撃砲と化したメグミが、自身のたわわにコバンザメのように結依を張り付けたままラブに突撃する。

 

 

「あふぅ!め、メグミさん!?」

 

 

 たわわに飛び付かれ正気に戻ったラブであったが、結局はメグミが呼び水となり火の付いたケダモノ集団に蹂躙され後はもういつも通りの平常運転となった。

 

 

「結局はこうなるんじゃない!ああん♡だから先っちょはダメぇぇぇ!」

 

 

 そしてぐったりとラブが湯船に浮かべば、お約束の時間も終了の印であった。

 

 

「コレ…本当に貰っていいの……?」

 

 

 AP-Girlsによって配られたシャンプーのセットを手にしたケイは、少し腰が引けたようにラブに聞くが、ラブもいつものように答えるだけだった。

 

 

「ええ、何も問題ないわ。もうみんなから聞いてるんでしょ?モニターとして感想を聞かせて貰えればそれだけで充分だから遠慮しないで使ってね」

 

「わ、解ったわ……」

 

「でも私まで頂いちゃって良かったのかしら?」

 

 

 同じセットを手にしたメグミも戸惑いながら声を上げる。

 

 

「是非使って下さい、実の処戦車道選手って髪が傷み易いからモニターに最適なんですよね」

 

「確かに…宿舎の浴室にあるのもこれと同じ物よね?仕上がりの良さにびっくりだったわ」

 

 

 既に体験済みのメグミは嬉しそうにセットを掲げウットリとしている。

 そんな様子にラブもただクスクスと笑うのみであった。

 そして既定路線となり始めた温泉イベントをクリアして基地に戻れば、今回のライブに招待を受けた杏以外の者達はそれぞれの母艦に帰投して行くはずであった。

 だが解散する直前に笠女生徒会の会長である木幡結依に呼び止められた一同は、そのまま先導され前回滞在時に宿泊したのとは別の宿舎に連れて来られた。

 

 

「なあ結依君、これは一体どういう事だろう?」

 

 

 皆の疑問をまほが代表して結依に問う。

 

 

「サンダースのケイ隊長と大洗の角谷隊長…と、言えば皆気付くはずだ……そう我が校の厳島隊長が申しておりましたが如何でしょう?」

 

『あ……』

 

 

 大学選抜戦の際に当初からケイが大洗の為に相当に無茶をしていたのは全員が知る処である。

 全国大会の頃から既にその予兆のようなものは見え隠れしており、そっち方面は特に勘の鋭いダージリンなどはそれに気付いていたらしく、今の結依の謎かけめいた問いには速攻で目をワクテカに輝かせていた。

 

 

「皆様には今宵はこちらにお泊り頂き、明日のライブでその様子を見届けるようにとの伝言を厳島隊長から授かっておりますが御了承いただけますでしょうか?」

 

 

 結依が芝居めいた口調でラブからの伝言を伝えると、全員が一糸乱れぬ見事な敬礼でそれに応え、結依もまた恭しくそれに頭を下げ答礼とした。

 かくしておせっかい且つ野次馬根性丸出しなミッションがここに発動したのであった。

 

 

 




今回はいつにもまして色々酷かったですね…。
でもラブがケイにやった技はいったいどんな技なんだろう?

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