てか八幡が八幡してないってなんだよ...
てなわけで本編どうぞ
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「ミラノ風ドリアとドリンクバーで。一色は?」
「たらこソースシシリー風とドリンクバーで」
「以上でよろしいですか?」
「はい」
「繰り返します。ミラノ風ドリアとタラコソースシシリー風。ドリンクバーがお二人様ですね」
「はい」
「ドリンクバーはセルフとなっています。あちらにございますのでご自由にお取りください。ではごゆっくり」
そう言って店員は去って行った。
「んじゃ飲み物とってくる」
「あ、わたしリンゴジュースで」
「………」
もともと取りに行くつもりだったが、相手に言われると嫌になるのはなぜだろう。
そんな事を考えながら俺は、黙って飲み物を取りに行った。
戻ってきたら一色はまたまた顔を顰めながら携帯をいじっていた。
「ほらよ」
「ありがとうございまーす」
俺は座りながら一色に聞いた
「それで、何を聞いてほしいんだ?」
「あ~。それなんですけど。これ見てくださいよ~」
そう言われ俺は差し出された携帯を見た。そこには
『いろは大丈夫か?もしアイツになにかされたら、すぐに俺に言うんだぞ。すぐに助けに行くから!』
『いろは、返事遅いけど何かあった?ちゃんと言ってくれよ?絶対に守ってみせるから!』
『いろはが心配なんだよ。いろはにへんな奴が付きまとわないか。俺が何時でもいるから』
「………」
「どうですか?」
「いや、どうですかって…。その一喜君?とやらとお前は付き合ってんの?」
「そんなわけないじゃないですか~!」
「まぁ、そうだろうな」
これはもはやストーカーだろ……
「正直に言うと、怖いんです……。学校じゃ他の人もいるから変な事はされないと思うんですけど。それでも、生徒会の仕事の後に帰り道で何かされるんじゃないか…とか」
そういった一色は目に涙をためてわずかに震えていた。
「この事は誰かに話したのか?」
「いえ。まだせんぱいだけです」
「そうか…。先生とかに相談でもしないのか?」
「お世話になった城廻先輩の卒業式がもうすぐなので…あまり問題は起こしたくないんです」
「なるほどな…」
こんな時に他人の心配をするなよ…
「お待たせいたしました。ミラノ風ドリアとたらこソースシシリー風です」
注文してたものが来たようだ。
「とりあえず食べるか」
「はい」
俺は一色を励ます言葉も見つからず、そのまま食事が終わって店を出た。
「おい、一色。お前の家はどっちだ?」
「え?もしかしてわたしの親に挨拶ですか?まだお付き合いもしていないのでお付き合いを始めてから挨拶に来てください。ごめんなさい」
「ちげぇよ。流石にあんな話を聞いた後に一人で帰す訳にはいかねぇだろ。まぁ親が迎えに来るならいいが」
「あ、そういう事ですか」
「ああ。そうだよ。俺と一緒が嫌って言うなら、俺もさっさと帰るが」
「い、いえ!そんなことありません。では家までお願いしますね」
一色は話しながら俺の自転車の荷台に乗ってきた
「なんで自転車に乗ってくるんだよ。ほら、降りろ。歩いて帰るぞ」
「何言ってるんですかせんぱい。歩いて帰ってたら時間がかかるじゃないですか~」
「それぐらいいいだろ」
「よくないですよ~?もう8時過ぎてますし、こんな時間まで娘を連れだしている先輩をうちの親はどう思いますかねぇ」
「は?」
「まぁ先輩が乗せてくれたら、私がごまかしてもいいですけど」
「はぁ。わかったよ。んじゃ行くぞ」
「はーい」
掛け声とともに一色が抱き着いてきた
「お、おい離れろ!」
まじでヤバイ。女の子特有の柔らかい感触が背中に!
「別にいいじゃないですか。こんな可愛い子に抱き着かれてるんですから役得ですよ」
「自分で可愛いって言うな」
「えー私ってかわいくないですか?」
「………」
「なんでそこで黙るんですか!?」
「あざとい」
「あざとくないです」
「とりあえず離れろ」
俺の言葉を聞いた一色は更に抱き着く力を強くした。
背中に触れる一色の体は震えていた。
「お願いです。今はこうさせてください」
「……」
何もできない俺は、黙って後ろでわずかに漏れる嗚咽を聞きながら自転車をこぎ続けた。
「ここです。すいません。ありがとうございました」
「いや。大丈夫だ。………すまんな力になれなくて」
「い、いえ!そんな。先輩は悪くないですよ」
「だが」
「本当に大丈夫ですよ」
一色は笑いながら答える。
しかし今の一色は無理しているのが丸わかりだ。
「やっぱりすごいな。一色は」
「はい。女の子も強くないといけないので。では、せんぱいも気を付けて帰ってくださいね」
「ああ」
それじゃあな。そう告げてこの場を去ろうとしたが、不意に一色の家の玄関扉が開いた
「いろは?いるの?」
そこには扉を開けた張本人。一色と同じ亜麻色の髪に悪戯っぽい瞳。一色とよく似た女性がでてきた。お姉さんか?
「お、お母さん!?」
「え。お母さ?お姉さんじゃなくて?」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。いろは、この人は?」
「あ、前に話してたお世話になった先輩の」
「比企谷八幡です」
「あ、あなたがあの!」
「あの?」
「何時もいろはから聞いてるわよ~。いつもいろはが迷惑かけてごめんなさいね」
「ちょ、お母さん!?」
「いえ、俺もいっ。いえ、いろはさんには迷惑をかけてしまっているので」
「ちょ、せんぱいまで!」
突然、下の名前で呼ばれた一色は顔を赤くする。
「それで?いつからいろはと付き合ってるの?」
「「ぶっ!」」
一色の母親の一言に2人して吹き出す
「あら、ちがった?」
「いや、いろはさんと俺じゃ釣り合いませんよ」
「そうだよ!私と先輩が付き合うはずないじゃん!」
「え、でもこの前せんぱいの事が」
「あああぁぁぁぁぁ!!!!」
いきなりカミングアウトしようとした一色の母親を何とか止める
「もう、うるさいわね。近所迷惑でしょ」
「お母さんのせいでしょ!」
「まぁいいじゃない」
「よくない!」
「あ、お母さんちょっと八幡君とお話ししたい事があるの。いい?八幡君。別に無理にとは言わないけど」
そういわれると逆に断りづらくなる
「わかりました」
「そう。よかった。じゃあ上がって」
「え?ここでじゃないんですか?」
「女性をこんな寒いところに居させるつもり?は、もしかして寒がってる私に抱き着いて身体で暖めるつもり?私には愛する夫がいるので浮気はできません。来世にでもお願いします。ごめんなさい」
何時もの一色のお断り芸は親譲りのようだ…。いつも通り何を言っているのかはわからないが、振られた事だけはわかる…
「違います…告白もしてないのに振らないでください…」
「あら、ごめんなさい。それで家に入ってくれる?」
一色の母親はうふふと微笑んでいる。これが大人の余裕か。
「はぁ、わかりました」
「ありがとう。それじゃあ入って頂戴」
お邪魔します。そう言って玄関を通る。中に入ると、いつも一色が抱き着いてきたときに香る匂いと同じにおいがした。
断じて俺は変態ではない。
「せんぱいこっちです」
一色が俺をリビングに促し、俺を椅子に座らす。
「甘いコーヒーで大丈夫かしら?」
「あ、はい大丈夫です」
一色が話していたのか。変なことまで話してないといいが。
一色の母親がおそらくコーヒーが入っているであろうカップをもちながらこっちに来た。
「いろは。さっきも言ったけど、お母さん八幡君と話したい事があるから、自分の部屋に戻ってて頂戴」
「いやだよ。お母さん先輩に何言うかわからないし」
「そんなに心配しなくても余計なことは言わないわよ。それより部屋に行かないんだったら、八幡君にいろはのアルバム見せながら、あれやこれや色々な話をすることになるけどいい?」
「あれやこれやって何!?」
「それはもう色々よ。それが嫌なら部屋にいて頂戴。大丈夫。悪いようにはしないから」
「む~」
それから一色はしばらく唸った後渋々リビングを離れていき階段を上るのであった。
一色が部屋を出た後一色のお母さんはニコニコと笑いながら俺の事を見つめていた
「あの、娘さんを遅くまで連れ出して申し訳ありませんでした」
見つめられることに痺れを切らした俺から出た言葉はそれだった。
「いいのよ。生徒会の仕事の後にご飯食べてきたんでしょ」
「あ、知ってたんですね」
「いろはから連絡来てたから」
「では、話とは。俺はてっきりいろはさんを遅くまで連れ出していたことだと思ったんですけど」
「ちがうわよ。今日はお礼を言いたかったのよ」
「はあ、お礼を言われるような事をした覚えがないんですが…」
「んーん。去年の話しなんだけど、いろはが生徒会長になる事になりそうって言いながら家に帰ってきたの。わたしはてっきり自分でやりたくて立候補したのかと思ったんだけど、話を聞いてみたら本当はやりたくないって言いだして」
俺はあの頃のことか。と奉仕部が仲違いをしていた時期の事を思い出す。
「あの頃は毎日不機嫌そうな顔して帰ってきてね、なにか学校であったのかとか、助けられる事はないかとか聞いたんだけど、全部「大丈夫だよ」って返されたの。あの頃は困ってる娘を助けられない自分が情けなかったな。でね、ある時「私、生徒会長になる事にしたんだ」って言ってきたの。その時はびっくりしたわ。いつもやりたくないって言ってたのに、急にそんなこと言ってきたんだもの。最初は諦めて嫌々やるのかと思ったけど、そうじゃないみたいで、ものすごく楽しそうだった」
「そうなんですか?」
「ええ。その頃からかな。八幡君の事をいろはからよく聞くようになったのは」
「え?」
「最初は比企谷先輩が~とか言ってきてたんだけど、後からは名前が抜けて、先輩が~になってたわね」
そういって一色の母親はうふふとわらった。
「生徒会長になってからは初めての仕事に四苦八苦しながらも楽しそうにしてたわ」
それを聞いた俺は心の中で安堵していた。無理やりやらせたようなものだが、一色が嫌々ではなく楽しんでやってくれているのなら本当に良かったと思う。
「それでね、またいろはが項垂れながら帰ってきたの。今度はクリスマスイベントが上手くいっていないとかで。でもね、その時は特に辛そうじゃなかったの。困ってはいたんだろうけど、それなりに楽しそうだったわ。その時も八幡君が手伝ってくれてたんでしょ?」
「まぁ実際助けになれたかは微妙ですけど。あのイベントが成功したのもあいつが努力した結果ですから」
「ふふ。いろはの言うとおり捻くれてるわね。話は戻るけど。ある時先輩たちとディスティニーランドに行ってくるって言ってきてね。それで葉山君に告白するって。結果は八幡君も知ってるとは思うけど振られちゃったみたい。帰ってきたときは落ち込んでいたわ」
「そうですね。あいつがずっと思ってきた相手ですから」
「でもね、落ち込んではいたけど、それ以上にうれしそうだった」
「うれしそう、ですか?」
「うん。それでね私にこういったの。
――――わたし、やっと本物見つけたよ――――
ってね。その時のいろはの笑顔は凄く綺麗だったわ」
一色がそんなことを言っていたのか…。
「それからは本当によく八幡君の話を聞くようになったのよ。毎日本当に楽しそうでね。だからお礼。生徒会長の事も、クリスマスイベントの時も、他にも色々と助けてくれてたみたいだし。本当にありがとう」
そう言って一色の母親が頭をさげた
「ちょ、やめてください!俺は特に何もしていません。生徒会長も俺がお願いしただけですし、クリスマスイベントも俺だけじゃ何もできませんでした。生徒会の仕事も生徒会長に押しやった責任があるから手伝っているだけですし」
「それでもよ。いろはがあんなに心から笑ったりするのは八幡君の話が出てきてからなの。たしかに八幡君が言っていることも正しいのかもしれないけど、それでも私の娘を助けてくれたことに変わりはないわ」
そこまで言われては何も言えない…
俺は黙ってうなずいた
「ふふ。それでね、これからもいろはが躓くことは沢山あると思うの。だからその時は助けてあげてね」
一色の母親はそういってウインクをした。
流石一色の母親
「……あざといです。」
「これは素よ」
「……まぁできる範囲で努力します」
「ありがと。それがきけたら満足よ。それより、うちのいろはって可愛いと思わない?」
「へ?い、いきなり何聞いてるんですか!」
「別にいいじゃない。で、どうかな?」
「ま、まぁ客観的に見たら可愛い部類に入ると思いますけど」
「本当に捻くれてるなぁ。今は八幡君の意見を聞いてるのよ」
「か、可愛いと思います」
「よろしい。ところでうちのいろはと付き合う気はない?さっきも言ったけどそこら辺の子より全然いけてると思うど」
「は?」
何を言ってるんだこの人は
「だから、いろはと付き合わないの?って聞いてるの」
「いやいや。無理ですよ。まずカースト最底辺の俺じゃあいつに釣り合いません。それにあいつが好きなのは葉山なんで」
「私が聞いてるのは、カーストがどうとかじゃないんだけどな。八幡君の気持ちが知りたいの。いろはの事をどう思っているのか」
「俺の気持ちですか…」
「うん」
俺の気持ち。一色いろはという女の子の事をどう思っているのか。正直真剣に考えたことはなかった。妹?確かに甘えてきたりあざとかったりする部分は妹っぽいが、生徒会長として頑張っているあいつを見ているときは、そういう風には見えなかったな。じゃあなんなのだろう。ただの後輩って言うには違う気がする。
俺が一色いろはををどう思っているか…
「正直解りません…」
「そっか。それならしかたない」
でも、
「でも」
「え?」
「でも、あいつには悲しい顔をしてほしくないって思います」
一色の泣き顔を見たら胸が締め付けられる
「しんどいなら手伝ってやりたいと思います」
助けを求められたら。断れない
「なにより…あいつには笑っていてほしいです」
一色が笑うと心臓の音が早くなる
「あざとい笑顔も、素の笑顔でもあいつには笑っていてほしいと思います」
これは恋なのだろうか
「これがあいつへの好きという気持ちなのかは、恋愛経験がない俺にはわかりません」
わからない。ただ、
「ただ、あいつには幸せになってほしいとは思います」
そう頬を染めながら返すと勢いよく階段を駆け上がる音が聞こえた。
まさか聞いていた?話に集中してたせいか降りてきてるのに全く気付かなかった…。最悪だ。また黒歴史を作ってしまった…次から恥ずかしくて顔みれねぇよ…
「あら、聞かれちゃってたみたいね」
一色の母親はとても楽しそうだ。
絶対この人一色が聞き耳を立ててるのに気づいてたな…
「気づいてたなら言ってくださいよ…。俺の黒歴史が増えちゃったじゃないですか」
「ごめんなさいね。おもしろそうだったから」
「面白そうって…」
「ありがとね。こんなにいろはの事を思ってくれてるなんて」
この人はずっと嬉しそうに笑っている
「別に俺に思われても気持ち悪いだけですよ…」
「そうかしら?」
「そうですよ。では俺はもう帰りますね」
「いろはに会わなくて大丈夫?」
「あんたは鬼ですか…こんな状況で会えるわけないでしょう」
呆れてため息が出る
「そう。遅くまでごめんね。じゃあ気を付けて帰ってね」
「はい。お邪魔しました」
俺は玄関を出て自転車にまたがった。不意に一色の家を見ると、二階の電気がついており、そこから半分カーテンに隠れた一色が手を振っていた。一色を見た俺はさっきの事を思い出し、また顔が赤くなるのを感じる。今は冬だというのに体は凄く熱い。
俺は一色に軽く手を振った後急いでペダルを漕ぎ、顔にあたる風で火照った体を冷ましながら帰るのだった。
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顔が熱い。まさか先輩からあんな言葉が出てくるとは思わなかった。お母さんが変なことを言わないか不安で、こそっと1階に下りて聞いていたら、私の恥ずかしい話ばかり。何回出ていこうかと思ったことか…。
でも、最後せんぱいから聞けた言葉。本当にうれしかった。夢じゃないか何度も頬を抓ったが走る痛みがこれは現実だと告げる。
「今日眠れないよ…。せんぱいのばか…」
そう口では言うが、口元はにやけるばかり。
「はぁ。明日からせんぱいとまともに話せるかな…」
まともにせんぱいを見れる気がしない。でもせんぱいといっぱいお話ししたい。そういった葛藤がいろはの中で起きていた。
それからいろはが眠りについたのは夜中の3時ごろだった。
読んでいただきありがとうございます。
おそらく次で最後だと思います。
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