八幡の短編集   作:天・プラ子

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予定は未定なのです。

今回でラストじゃなかった…
思ったより長い…
ではどうぞ


その漫画は誰のため 4

「ぷっ…くく…あははは!」

 

俺が肝心なところで噛んだ後こうして河内は笑い続けている。

 

「…どんだけ笑うんだよ」

 

「いやー、比企谷があんな可愛い噛み方するから」

 

「忘れてくれ…」

 

「嫌に決まってるじゃない。だってあんな………ぷっ、あははは!」

 

「おい」

 

「あははは!ごめんごめん。んで、私に話って?」

 

「割と真剣に話そうと思ったんだがな…」

 

「だからごめんって。てか、比企谷が噛むからでしょ」

 

「まぁそうなんだが。流石に笑いすぎだ」

 

「まぁまぁ。それよりもうすぐ閉会式なんだから早く話してよ」

 

「ちょっと待ってくれ。少し場所代えるぞ」

 

「そんな必要あるの?」

 

「人が多いからな」

 

「わかったわよ」

 

俺は河内の視線を背中に受けながらベストプレイスへ歩みを進めた。

 

 

 

「で?話って?」

 

「はぁ、まぁあれだ。お前の事なんだが」

 

「わたし?」

 

「ああ。……夕べには骸に」

 

「っ!?」

 

その言葉を聞いた途端、河内の顔が強張った。

 

「まだ、ダメみたいだな」

 

「…話はそれだけ?わたしもう行きたいんだけど」

 

明らかに不機嫌な顔になる河内。

だがここで話を終わらせるわけにはいかない。

 

「まだ心残りなのか?」

 

「あんたには関係ないでしょ」

 

「ああ、関係ないな」

 

「ならもういいでしょ」

 

「お前の描いたやつ面白いと思うがな。お前の描いたやつのほうが面白いという奴も普通にいると思うぞ」

 

「あんたには私の気持ちはわからないでしょ」

 

「わかんねぇな。お前が過去の自分を否定する理由も。どうして過去の自分を肯定してやる事が出来ない」

 

「うるさい」

 

「はぁ」

 

「なによ」

 

小町、すまんな。やっぱり俺にはこのやり方しかできないみたいだ…

 

「…いい加減にしたらどうだ?いつまでも過去の事を根に持って、挙句の果てに後輩にまで八つ当たりのようなことして、恥ずかしくないのか?」

 

「な!?」

 

「だってそうだろ。いつまでもあの本の作者に嫉妬して自分の心を隠しながら漫研でお山の大将気取り」

 

「な、なんで…」

 

「なんでって、お前のやってる事が見てて酷く不愉快だからだ」

 

「あんたに関係ないでしょ」

 

「だから見てて不愉快だからだと言ってるだろ。電車とかで他人に注意してる人とかいるだろ?あれと一緒だ」

 

「だからって」

 

「はぁ。お前にとって伊原は眩しすぎるのかもしれない。どこまでも自分に正直で、漫画に対してまっすぐなあいつの姿はお前には眩しく見えるだろ。何故だかわかるか?」

 

「………」

 

「それはお前が俺と同じ日陰者だからだ。お前がつけているお山の大将の仮面やら学校生活での友達に見せている仮面やらで偽ろうとも、お前の奥底のお前自身はどこまでも醜く自分勝手な臆病者だ。お前は自分を守りたかったんだ。今までの自分を否定して作った、新しく脆い自分自身が崩れ去らないよう、味方、基今の自分を肯定してくれる奴に囲まれて自分を守っているだけだ。ちがうか?」

 

「……」

 

「まぁ、そういう事だ。お前は俺と同じ最底辺でさいて「比企谷先輩!!」え?」

 

パァーン!

 

乾いた音が聞こえて少ししてから自分が叩かれたことに気が付いた

一体誰に?

 

「比企谷先輩。貴方はいつもあんな感じですけど、本当に相手が嫌な事はしない人だと思っていました」

 

どうやら叩いた相手は伊原の様だ。

まさしくヒーローの様なタイミングだ。

思わず笑みがこぼれた

 

「何笑ってるんですか」

 

「いや、なんでもない。俺はずっとこんな奴だ。お前に人を見る目がなかっただけじゃないか?」

 

「最低ですね。河内先輩。行きましょ」

 

「そういえば、伊原。これを」

 

「なんですか…」

 

「例の奴だ」

 

「………約束は守るんですね」

 

「世の中生き辛いからな。なるべく約束は破らないようにしているだけだ」

 

「…河内先輩、行きましょう」

 

「……うん」

 

伊原は河内の手を引きながら俺の前から立ち去った。

 

「……やっぱヒーローにはなれないな…」

 

「君はもともとヒーローというガラではないだろう」

 

突然俺のひとりごとに答えるような声が聞こえた

 

「教室に戻ったんじゃなかったのか。入須」

 

話しかけてきたのは教室に戻ったはずの入須だった。

 

「教室から貴方達が歩いているのが見えてね。方向的に恐らくここだろうと様子を見に来たのよ」

 

「そしたら俺がお前の友達に暴言を吐いていたと」

 

「まぁ、外から見れば概ねそういった所だろう」

 

「含みがある言い方だな」

 

「君ほどじゃないと思うがな」

 

「それで?俺に報復でもしに来たか?」

 

「……君はまた自分を傷つけるのね」

 

「…………何のことだ」

 

「さっきの事よ」

 

「……」

 

「君は自分の事を過小評価しすぎよ」

 

「女帝としての言葉か?」

 

「入須として、あなたの親しき仲としての言葉よ。君が残してきた結果を見れば君が自分の事を過小評価していたから残せた結果なのかもしれないが、それでも君は自分の事を見つめなおすべきよ」

 

「人の価値観を見出すのはいつでも他人だ。だからいつでも人は他人の目を気にする。つまり俺は自分の事を評価する必要はない」

 

「では君が自分の事を価値の低い存在と評価しているのはなぜ?」

 

「ただ今までの他者評価の結果がそうだったと言っているだけの事だ。つまり事実を言っているだけだ」

 

「相変わらず屁理屈が多いんだな」

 

「……」

 

「まぁいい。これから河内とはどうするんだ?」

 

「もう関わることもないだろ。俺の学校での睡眠時間が増えるだけだ。いつもとかわらん」

 

「わたしはそうなるとは思えんがな。そろそろ閉会式だ。比企谷も急いだ方がいいぞ」

 

「………ああ」

 

河内と伊原が去って行った道を見ながら立ち上がり体育館へと向かう。胸の中の空虚感に気付かないふりをしながら。

 

 

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

 

私は河内先輩の手を握りながら連絡通路まで来た

 

「伊原、もう大丈夫だから」

 

そう言って河内先輩は私の手を振りほどいた。

 

「はぁ。みっともないとこ見られちゃったな」

 

「いえ、悪いのは比企谷先輩ですから」

 

「……本当にそうなのかな」

 

「え?」

 

「んーん。なんでもない。それで、持ってきたの?」

 

おそらく夕べには骸にの事なんだろうけど。

 

「あのまた今度にしませんか?」

 

「どうして?結局なかったの?」

 

「い、いえ!そういう訳じゃないんですけど…」

 

「私の事はいいから。あるの?ないの?」

 

「あります。」

 

そう言って私は比企谷先輩から預かった袋を覗いた。中にはちゃんと夕べには骸にが入っていた。夕べには骸にを取り出すと袋は軽くなったが、まだ確かな重量感が袋には残っていた。

 

「これは…」

 

中にはまだ本が残っていてそれを取り出してみる。

それは去年のカンヤ祭、私が中学生の時にここにきて夕べには骸にと一緒に買った『ボディトーク』だった。

 

「…あったんだ。ん?2冊も持ってきたの?」

 

「い、いえ。これは」

 

「え?」

 

河内の目が見開かれている

 

「すいません。違うものまで持って来てしまって。でもこれもこの本と同じぐらい好きなんです!」

 

ビクっと河内の体が強張った

 

「どうしてそれを?」

 

「…実は両方とも私のじゃないんです」

 

「え?」

 

「夕べには骸にもボディトークも比企谷先輩に借りたものなんです。先輩はこの漫画のこと知っていたんですね」

 

「比企谷か…いや湯浅かな」

 

「河内先輩は作者の人と友達だって」

 

「友達か…。そうね、はるな元気でやってるかな」

 

「河内先輩はこの漫画を読んだんですか?私、河内先輩のいう事も少しわかります。おもしろいかどうかは、結局読む側の問題だっていう事。でも、やっぱりそれが正しいとは思いたくありません。だってそれってあまりにも悲しいじゃないですか!」

 

「私だって本当に正しいだなんて思ってないよ。ただ、悔しかったんだよ。余りマンガ読まないねって思ってた友達が初めて描いた原作でそれを出して。シャレにならなかったよ。なんだか惨めで、悔しくて、辛かった。だから名作なんて何処にも無いって事にして自分を守ってたんだよ。そうでもしないと描いていけない気がしてね。でも、つくづく巡り合わせだね。いつかは向き合わないといけないんだね」

 

そういうとおもむろに河内は私の手の中の二冊の本を取って読み始めた。

 

「…………やっぱり、まだかなわないぁ」

 

夕べには骸にを読む河内の手に力がこもり本に皺が出来た。

次に河内はボディトークを読み始めた

 

「はぁ、絵にも粗が多いし言葉回しも悪い」

 

「え?」

 

「うわぁ、ここの背景も…」

 

「あ、あの」

 

「ん?ああ、これ描いたの私だよ」

 

「え?」

 

「あれ?知らなかった?」

 

「はい」

 

「まぁ去年もコスプレしてたしね。ふぅ。この話はおしまい。さて、そろそろ閉会式も終わったかな?」

 

「あ!?」

 

本当だ!あれから30分も時間がたってる…

 

「今更急いでも仕方ないし先に教室で待ってるかな。あ、そうそう、伊原」

 

「どうしました?」

 

「ごめんね。いろいろと」

 

「いえ、別に、そんな」

 

「嫌な事なんていっぱいあったでしょ」

 

「……」

 

「あいつの言った通り伊原が眩しかったんだ。いつもまっすぐな伊原が。だからかな、前までの自分を見ているようで胸がざわついた。こんな情けない先輩でごめんね」

 

「河内先輩は尊敬している先輩の一人です」

 

「お世辞でもありがと。まぁお詫びといっては何だけど、今度私の家ででも一緒に漫画の練習しよっか」

 

「え?いいんですか?」

 

「私がいいって言ってるのよ。それに伊原の漫画はダメなところが多いから先輩として指導してあげないとね」

 

そう言ってから河内は私に背を向けて歩き出した。

 

「あ、それと、あいつの事あんまり悪く思わないで上げてね。あいつが動くときはいつでも誰かのためだから。方法は最悪だけどね」

 

そう言って今度こそ河内は校舎の中に消えて行った

 

 

 




後日談というかエピローグというかオチを次で書き切れたらいいなぁ

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